13番目のプルと赤い彗星   作:サクラモッチー

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今回も日常パート(キッチン編)系の話です。


赤い彗星inキッチン

シャアが目覚めてしばらく経った頃.......パパは、彼に対してこれからはジャーヴィス・キャメロンという名前を名乗って欲しいことと、そのジャーヴィス・キャメロンという架空の人物に関する偽りの過去....つまりはバックストーリーを伝えていた。

一応、パパが考えたバックストーリーとしては、ジャーヴィス・キャメロンは一年戦争時に家族と死に別れ、職を転々としながら生きていたものの、大怪我を負ってうちの病院に入院している.....的な感じの内容で、これでみんな納得してくれるのかな?と思っていたけど、意外にもあっさり信じてくれた。

アレッサに至っては号泣していたから、逆にこっちが申し訳ない気分になっていたのは言うまでもない。

 

シャアがそのことに素直に応じたのかって?

....まぁ、一応はね。

それでも、シャアの腹の中はよく分からないから監視してはいるけど。

火傷の方は完全に治っているので、問題はないとパパは言っていた。

だけど....問題なのはシャアの家事スキルの方だった。

実のところ、シャアはあんまり家事をしたことがなかったらしい。

なので、私はシャアの家事スキル上達のために料理の手伝い(玉ねぎのみじん切り)を頼むことにした。

 

「そうそう、玉ねぎはそんな感じで切るの」

 

トントンと心地よい音をまな板の上で響かせながら、玉ねぎを切っていくシャア。

.......玉ねぎを切るだけ赤い彗星。

何か凄い絵面だなぁ。

そんなことを思いつつ、私は玉ねぎを切るシャアを見守っていた。

 

「....このぐらいでいいのか?」

「うん!!いい感じに切れてるね!!」

 

ある程度みじん切りになった玉ねぎを見た後、視線をシャアに向けながらそう言う私。

すると、そのシャアの目には涙が浮かんでいて

 

「.....もしかして、玉ねぎで目がやられたの?」

 

私がそう尋ねると、シャアはハッとした顔になったかと思えば....涙を拭き、何もなかったかのようにこう言った。

 

「....何のことだ?」

 

....ほほぅ?そう来ましたか〜。

でも、ツンケンするよりかはマシかな。

そんなことを思いながら、シャアを見つめる私。

 

「......なんだ?」

「もぅ、素直に玉ねぎで目がやられたって言えばいいのに」

 

そう言った後、みじん切りにした玉ねぎをまな板から皿に移動させる私。

そして、私はシャアの手にピーラーとジャガイモを手渡すと

 

「じゃあ、次はジャガイモの皮剥きをお願いね」

 

シャアにそう言った。

 

「....私の仕事は終わったはずだが?」

「働かざる者食うべからず!!だからね!!」

 

私がそう言うと、ムッとしながらもジャガイモの皮剥きを始めようとするシャア。

でも、そもそもピーラーの使い方も知らなかったのか....ジャガイモの皮を剥くどころか自分の指まで怪我をしてしまったので、私はシャアの家事スキルの低さに対して色んな意味で凄いなと思ってしまった。

 

「.......」

 

血が出る指を見ながら、固まるシャア。

そんなシャアに対し、私は家の中にあった救急箱から絆創膏を取り出すと、それを彼の指を貼った。

それを見たシャアは不満そうな顔をしていたものの、私は彼に対してこう言った。

 

「分からないなら分からないって言った方が良いよ。そうした方が心が楽になるんだから」

 

私がそう言うと、シャアはさっきと同じムスッとした顔ではあったけれども

 

「.....すまん」

 

と、小声でそう言った。

.......全く、素直じゃないんだから。

そう思いながら、調理を続ける私。

シャアって家事スキルがないとはいえ、教えればキチンと覚えられるから凄いというか、何というか。

流石は赤い彗星、カリスマオーラが違うね。

 

「パンジー、お前はこういうのには慣れているのか?」

「まぁ、パパがこういうの苦手だから自然とね」

 

だって、パパがキッチンに入ると物理的に炎上するんだもん。

アレはある種の才能だよ、才能。

だから、パパだけキッチンへの立ち入りを禁止しているんだけどね。

 

「それにさ、あなたがいつか一人暮らしする時に家事の一つや二つ覚えておいた方がモテるよ」

「.....そういう、ものなのか?」

 

不思議そうに私の方を見ながら、そう呟くシャア。

.......赤い彗星もこういう顔もするんだ。

何か、意外だな。

 

「少なくとも、家事が出来ずにグータラする男よりかはマシだと思うけど?」

 

私がそう言うと、ヴッと声を漏らすシャア。

どうやら、図星だったみたいだ。

 

「あ、そうだ。後でコロッケのタネに衣をつけるのを手伝ってくれない?」

「あぁ、分かった」

 

そんなこんなで、私とシャアは夕食用のコロッケを作った後......それをパパと一緒に食べた。

シャアは最初、顔色一つ変えずにコロッケを一口食べたんだけど

 

「......美味い」

 

そう呟いた後、パクパクと食べ始めた。

その顔はとても柔らかくなっていて.......そんなシャアの顔を見た私は、彼に対してこう言った。

 

「指を怪我してでも作った甲斐があったでしょ?」

 

その言葉を聞いたシャアはピクッと反応すると

 

「.....そうだな」

 

こっちの方を向かずにそう言った。

......シャアって本当に素直じゃないんだから。

そう心の中で呟きつつ、私はコロッケを食べるのだった。

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