あの日.......シャアに料理に手伝いをさせて以降、彼は料理に興味を示すようになった。
まぁ、ウチでグータラするよりかはマシだね。
んで、特にシャアがハマっているのがパン作りで.....だからなのか、最近の我が家の朝食にはシャアお手製のパンを食べるようになった。
え?味はどうなのかって?
.......何というか、めちゃくちゃ美味しい。
てか、こっちが悔しくなるほどに美味しい。
シャアにこんな才能があったんだって思うぐらいに美味しかった。
それはパパも同じだったらしくて.......シャアはパパの知り合いのパン屋さんで働くことになった。
「やっほ〜!!ジャーヴィス」
「....パンジーか」
なので、今の私はシャアの監視と職場見学も兼ねてそのパン屋に来ていた。
ちなみに、今のシャアはオールバック&ハーフアップ的な髪型に加えて、眼鏡をかけているので完全にシャアとしてのオーラは消えている。
....人って簡単にオーラが消せるんだね。
「学校は終わったのか?」
「うん!!だから来たの!!」
シャアの言葉に対し、そう答える私。
うんうん、パン屋としての格好が様になってるね〜。
シャアを見ながらそんなことを思っていると、店の奥からパン屋の店主であるミルドレッドおばさんが出てきた。
「あら!!パンジーちゃんじゃない!!もしかしてジャーヴィスくんに会いに来たの?」
「みたいな感じだよ!!」
シャアの監視も兼ねているけどね。
とか何とか心の中で呟きつつ、ミルドレッドおばさんと話をする私。
「おばさん、ジャーヴィスはサボったりしてない?」
「えぇ、サボってはないわよ。むしろ、こっちが助かるぐらいに働いているわ」
そう言った後、ジャーヴィスの方を向くミルドレッドおばさん。
どうやら、この様子だとシャアは真面目に働いているみたいだ。
まぁ、何事も真面目が一番だし....シャアは騒ぎを起こすとまずいことは理解しているっぽいし、頑張っているのなら何よりだね。
「パンジー、お前は俺を何だと思っているんだ」
「ん〜....ダメンズ?」
私がそう言うと、シャアは軽くショックを受けたのか
「だ、ダメンズだと....!?」
物凄い顔でそう呟いていた。
一方、その言葉を聞いたミルドレッドおばさんは大爆笑していて
「アハハハハ!!パンジーちゃんは厳しいねぇ!!」
シャアの肩をバンバンと叩きながらそう言った。
そんなミルドレッドおばさんに対し、シャアは不満げな顔になったのは言うまでもない。
「でもまぁ....今は物騒な世の中だから、中々人手が足りないのよ。だから、ジャーヴィスくんがウチで働くってなった時は嬉しかったわ」
物騒な世の中と聞き、ピクッと反応するシャア。
.......グリプス戦役から一年が経ったとはいえ、宇宙や地球では未だに戦いが続いている。
現に、ネオ・ジオンとエゥーゴとの戦いが始まって既に二ヶ月は経っているしね。
ミルドレッドおばさんの旦那さんは一年戦争の時に亡くなり、息子さんはエゥーゴ側の兵士としてネオ・ジオンとの戦いに参加している。
でも、そんな世の中だけども前を向こうとしている人がいる。
シャアはミルドレッドおばさんを見てそう感じ取ったのか......さっきまでのムッとした顔はどこへやら、ミルドレッドおばさんの方を向いたかと思えば、こう言った。
「店長、それはこちらのセリフだ。私のような見ず知らずの人間を雇ってくれたあなたにはとても感謝している」
シャアがそんなことを言うと、ミルドレッドおばさんは一瞬ビックリしたような顔になった後、嬉しそうな顔になると
「もぅ!!褒めても何も出ないわよ!!」
再びシャアの肩を叩きながらそう言った。
「ジャーヴィスって何だかんだで優しいんだね」
「..........」
私の言葉に対し、顔色一つ変えずにそっぽを向くシャア。
....全く、そういうところは変わらないな〜。
そういうことを思いながら、店内に並ぶパンを眺める私。
すると、そのたくさんのパンの中にハロという機械に似たパンがあり......それを見た私はシャアが作ったんだろうなと思いつつ、彼に対してこう尋ねた。
「ねぇジャーヴィス、このパンってあなたが考案したやつなの?」
私がそう尋ねると、シャアはやれやれという顔になると
「そうだ。それがどうかしたのか?」
と、逆に開き直った。
「へぇ、ジャーヴィスもこういう可愛いパンを作るんだね」
私は、シャアに対してニヤニヤと笑いながらそう言うと.........ミルドレッドおばさんもまたニヤニヤと笑いながらこう言った。
「そうなのよ!!おばさんもジャーヴィスくんがこのパンを考案をした時はこれはイケる!!と思ったからねぇ」
あ、おばさんもそう思っていたのね。
そんなことを思いつつ、私はシャア考案のパン....ハロパンを買って帰った。
....結論から言えば、ハロパンはメロンパンみたいなパンでとっても美味しかった。
何か悔しいな。