すごーく平和?な話かも?
宇宙世紀88年3月。
私が暮らすコロニーの季節は徐々に春へと変わりつつあり、家の庭の花も少しずつ咲き始めた。
こんな天気の良い日は散歩に行くのに最適だと思った私は、シャアと一緒に散歩に行くことにした。
散歩と言っても、公園を歩くだけだけどね。
「ん〜!!やっぱり春っていいよね〜!!」
背伸びをしてそう言いながら、シャアの隣を歩く私。
私とシャアが歩いている公園では、春の陽気のおかげなのか花がちらほら咲いていて、その花を見るために街の人達が遊びに来ていた。
いや〜、宇宙に居ても春を体験できるのっていいよね〜。
「この公園には綺麗な花が多いな」
「そりゃあ、ここは緑が多い公園だもん。花があってもおかしくはないよ」
シャアの方を向きながら、私がそう言うと....彼は視線をこちらに向け、こう言った。
「....確かに、このコロニーは緑が多いな」
そう言うシャアの顔はとても穏やかで、私の歩くペースに合わせながら公園内を歩いていた。
....一応、レディーファーストなところはあるんだね。
そう思いつつ、シャアの方をチラチラ見ながら歩く私。
すると、シャアはとある木の前で立ち止まると.......その木をジッと見つめていた。
「ジャーヴィス、どうかしたの?」
私がそう尋ねると、ジャーヴィスは
「......綺麗な花だな」
その木の花を見ながら、そう言った。
「でしょ?この木は梅っていう植物で、この季節になると綺麗な花を咲かせるの」
「梅....か」
私の言葉に対し、そう呟きながら梅の花を見つめるジャーヴィス。
この梅の木は、当時コロニー内に居た日本系宇宙移民の人々が植えたもので....私が暮らす街では、みんなこの梅の木のことが好きなのだ。
かくいう私もそのうちの一人で.....シャアの方を向きながら、私はこんなことを言った。
「ねぇ、知ってる?日本っていう国では梅の花はひな祭りっていうイベントの時に使うんだって」
私がそう言うと、シャアはその言葉に興味を示したのか
「ひな祭り.......あぁ、日本で春の時期に行われる女の子の成長を祝うイベントのことか」
そう言った後、再び梅の花を見つめていた。
「だからなのかは分からないけど、この時期になるとここら辺で写真を撮る人が多いんだよね」
「.....だろうな」
梅の木の近くで写真を撮る子供達の姿を見ながら、そう言うシャア。
その子供達の中にはシャアを知ってる子も居たのか、ジャーヴィスおじさんだ!!とかパン屋のおじさんだ!!とか口々に言っていた。
「へぇ、ジャーヴィスっておじさん扱いされてるんだ」
「....まぁ、一応はな」
シャア、アズナブルがパン屋のおじさん扱いされるとは、ジオン軍の人達は思ってもいないんだろうなぁ。
というか、そもそもシャアが生存していることすらも思ってないんだろうけど。
「あと、ここの公園には桜の木もあって、4月に入ると綺麗な花を咲かせるんだ」
「桜.....か」
ニコッと笑いながら私がそう言うと....シャアは誰かに思いを馳せたのか、寂しそうな顔をしていた。
.....目覚めてからのシャアって、時々こういう顔をするんだよね。
どことなく誰かを求めてる顔をしているというか、何というか。
まぁ、本人がそういうのを喋らないから憶測でしかないけどね。
「そういえば、ジャーヴィスって家族とかは居たの?」
そんな興味から、私はシャアに対してそう尋ねると
「....いるにはいた。かつてはな」
シャアは何となく含みのある言い方でそう言った。
......そっか、そりゃそうだよね。
赤い彗星にも昔は家族が居たよね。
と、そんなことを思っていたら
「だが、お前といると家族と居た時のような感覚になる。この感覚はいったい何なのだ」
シャアはサラッとそんなことを言った。
「.......それ、嘘じゃないよね?」
「..............」
ねぇ、何でそこは黙るのさ。
そこはせめて少しぐらいは弁明して欲しいな。
「あなたが我が家を心地良く感じるのは良いけどさ....私はパパが何と言おうとも、あなたの監視は続けるからね」
少なくとも、その腹の色が分かるまで監視するつもりだよ。
だから、怪しい動きはしないでね。
そういう意味を込めながら、そんな言葉を話す私。
「....手厳しいな」
「そういうもんでしょ?」
そんな会話した後、再び公園を歩く私とシャア。
.......シャアの言葉が本音かどうか分からない。
だけど、少なくともシャアが変わりつつあるのは事実ってことなのかな?