ACE COMBAT SW2 ―The Journey Home― 作:skyfish
ドッペルゲンガーというのをご存じであろうか?
自分と全く同じ姿かたちの他人が世界に存在し、もしそれに出会うと近い将来不幸に襲われる。または最悪死ぬと言われる怪奇現象である。実際リベリオンの過去の大統領や扶桑の著名な小説家、さらには扶桑の古い文献にそれらしき記録が残っているなど意外と昔からそれらしきものが確認されている。
信じる信じないは別にして面白い話だなと聞き流していたのをブレイズは思い出す。けれど最後の部分、近い将来不幸に会うという伝承は間違いではないと思い知らされた。
「大丈夫。体に問題はない」
「いえいえジェット乗ったあとの身体検査は私のお仕事なのでそこに横になってくれませんか?」(ワキワキ)
「ならその手は何だ」
「大丈夫。魔法です」(わきわき)
意味深な手の動きをする宮藤と距離を取る。笑顔でじりじりと詰め寄る宮藤と警戒心MAXで後ろに下がるブレイズ。胸に異様な執念を持つ彼女に捕まるのは一貫の終わりである。すでに2人(エイラ&ルッキーニ)に襲われ軽く胸触られる前にナガセ流CQCのお仕置きし撃退したのだが、この女の子だけは本気を出さないと逃げられないと第六感が告げている。こう、何度も何度も倒してもゾンビ並みの回復力で笑顔で這い上がってくるような悪寒がする。
そんな光景を遠い眼でチラチラと見ながらジェットストライカーの作業が進んでいく。
「どうかしら?」
「航空機に比べ機体の劣化はそれほどでもないですね。今までのストライカー同様使用者の魔力による若干の機体強化が反映されているようです」
「あちらのはそうでもないのか?」
「エンジンカバーを開いて音による簡単な検査をしましたが、歪みなどの異常はありませんでした。むしろあまり消耗していないようです」
ストライカーのカバーを閉じる。
「こちらでの試験を終了しましたら回収します。改良しましたら新しいバージョンのストライカーを送るかもしれません」
「これの改良版のことか?」
「それもありますが、現在別の開発チームもジェットの開発を進めています。そちらは航空機を主に開発しています。半年前に各国の開発チームに極秘裏に公開された例の機体はジェット開発に大きな影響を与えました」
半年前。その時期に考えられるのは彼らしかいない。飛べなくなったジェット機F-4ファントムⅡがジェット機開発に役立っているのだと察した。
「技術的に不可能なものも多いですが、一番得られたのは機体形状によるメリットです。以前から分りきっていたことですが、より速さを求めるためにはエンジンは胴体に内蔵、翼を後退翼にする必要があります。あの機体のおかげでジェット機の開発が進みました。Me262の場合は両翼下のエンジンを胴体に移した場合空気抵抗が減り、より音速に近いスピードが出せると期待できます」
「マジか!」
音速に近いスピードが出せると聞いてシャーリーが喜ぶ。
「あの機体は各国共同で研究が進められています。大変重要なものなので得た情報の共有を原則としています」
共同研究の上で決められたルールはただ一つ。独占の禁止である。F-4Eの技術の一つ一つが極めて重要であるために1つでも独占できれば各国より優位になるが、された場合は大変なことになるのは明白である。だから、各国がそれぞれ睨みを効かせる為に設けたものである。ある意味必要な措置だが、戦闘機そのものが大きいため独占は物理的に難しいのが現状である。研究はブリタニアの某所で行われ、最初はブリタニア・カールスラント・リベリオン・扶桑の研究者たちが集まっているが、今ではガリア・スオムス・オラーシャなどを含める多国籍研究者集団になっている。
「ジェット技術はカールスラントが元々進んでいたので私たちが最初に完成しました。噂だとブリタニアも近いうち試作機が完成するそうです」
「すごい発展ね。レシプロストライカーは消える運命なのかしら?」
「いや……そうでもないとない、と思うぞ。ミーナ」
やや疲れた声がし振り返る。ジェットストライカーのテストパイロットを務めているバルクホルンだった。
「ウルスラ博士。ジェットストライカーを履いてみたがあれは素晴らしい。まるで天使に後押しされているようだった。今までのストライカーの比じゃないのだが……」
「なにか問題がありましたか?」
「魔力を吸い取られているような気がするんだ。あ、いや、私がこれを使いこなせていないからだと思っている。これになんの問題もないとは思うのだが……」
次世代ストライカー、新たな翼、新兵器の性能に太鼓判だが乗ってみた違和感を開発者であるウルスラに伝える。これが前線に配備されれば戦況は一変する。だが、乗ってみたときの違和感が気になる。だけど、それの改善で配備が遅れるのは嫌だ。でも、もし欠陥だったら直せる物は直したほうがこれから履くだろうウィッチ達のためになるだろう。バルクホルンは葛藤し、開発者であるウルスラに伝えようと決断したのだ。
「魔力を吸い取られる感じ、ですか………実験部隊のヘルマさんは通常のウィッチよりも魔力量が多いからそんな話はなかったのですが………! そうですね。今すぐ実験してみましょう」
「もう一度履けばいいのだな?」
「いえ、これはその道の専門家にやってもらった方が言いと思います。彼に対してはもう機密も何もありませんので」
ウルスラは今だ取っ組み合いをしている彼女に目を向けた。
「うわぁ……」
「なんだ。もしかして怖気図いたか?」
「いや、それは問題ない。どうもまだ違和感が……」
今日。ブレイズは初めてストライカーを履くことになった。すでに箒で飛ぶことが出来るので今更これ(ストライカー)が空を飛べることに疑問は無い。ただ、いざ履いてみるとまるでMe262に乗っているようなイメージが頭に浮かんだのだ。面倒なことに目から見た情報に強制的にコックピットのイメージが付け加えられたものなので、どうしても普段通りになり、今のブレイズはストライカーを履いているが手は操縦桿を握るコックピットに座っているのと同じ仕草をしながらストライカーを操縦している状態だった。分かりやすく言うならストライカーから情報、飛行機のコックピットから見た情報二つを同時に見ているような錯覚なのだ。
≪どう? 飛べるかしら?≫
「機体に異常なし。慣れてないせいか違和感ありですが……出せます」
≪では実験を始めてください。なにか異常がありましたら報告お願いします≫
「了解。ブレイズ、ジェットストライカー離陸します」
ゆっくりとスロットルを上げる。初期のジェットは急激なエンジン出力の調節が難しくエンジンストールの危険性が出てくる。そのため離陸に必要なスピードに達するまで無理な操縦は厳禁なのだ。並走しているシャーリーが声をかけてくる。
「なあ。いつまで滑走路滑っているんだ? バルクホルンのやつの時はもう上がっていたぞ?」
「ジェットはエンジン出力の調節が難しい上にデリケートなんだ。ゆっくりとやらないとすぐ不調になってしまう」
規定の速度になり、ゆっくりと機首を上げ離陸する。
「こちらブレイズ。高度3000mまで上昇して速度を上げてみる」
≪了解≫
ゆっくりと旋回しながら高度を上げていく。3000mまで上がる。
「高度3000に到達した。これよりスピードテストを実施します」
テスト飛行を始める。
「速度500㎞……550……600……650……700……」
この時点で既存の航空機が出せる速度を上回る。隣に並んでいたシャーリーをおいて1人飛んでいく。
(どんどん魔力が持っていかれる。箒の燃費が1だとするとこれは………10万以上か? やはり燃費が悪いなあ)
実際たった30分の作戦でも燃料タンク増層込みフルで使ってやっとというものだったからまだまだ改良の必要があるのだろう。
そして、速度が900㎞を超えたとき異常が発生した。
「900………ん? っんん!? なんだこれ!?」
≪どうしました!?≫
「中止テスト中止! 900超えたあたりから消費魔力が急激に上昇した。基地に戻る」
機体の推進力を落そうと魔力をカットする。それでもジェットストライカーはブレイズの魔力を貪欲に吸い取ろうとした。格闘すること30秒。速度を500まで落としたところで異常はなくなった。気が付くと噴き出したように汗が出ている。極度の疲労が襲い掛かる。ストライカーを見るがエンジンから黒煙は出ていない。故障ではないとしたら考えられるのはなにか重大な欠陥だ。
「じゃじゃ馬の問題児どころじゃないぞこいつは………」
機体がパイロットのいうことを効かなくなるなんてあってはならない事態だ。これは徹底的に問題を探さないといけない。
基地に戻ってからが試練の始まりだった。あの胸フェチ3トリオの追跡から必死に逃走していた。あれに捕まったら終わる。そう確信したのだ。
ガチャ……(……撒いたかな?)
逃げ込んだ部屋の扉を開き廊下を見る。どうやら撒けたようだ。今ブレイズは誰かの部屋にいる。誰の部屋かは知らないけど取りあえず鍵をかける。されこれからどうしようかと悩んでいるとふと写真があるのに気が付く。そこに写るのは集合写真。第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ。その中の3人。知らない女性が映っていた。そのうちの1人はあのルーデルに似ていたがよく見ると似てるだけの別人。残りの二人は金髪と黒髪の女性。変なのは、着ている服が自分たちが良く見る服と同じと言う点。
「これは――――――」
そして、ブレイズは見つけた。彼女の着るジャケットに縫い付けられたワッペン。そのマーク。
「水色……リボンのマーク…………まさか」
カチャ。キィ―――
「見つけました! 診察のお時間ですよ」
「もう逃さないカンナ偽ハルトマン!」
「うじゅじゅじゅじゅふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
ブレイズは知らないがそこは宮藤芳佳の部屋だった。知らないうちに虎の穴に突入していたのだ。若干一名がもうどうにもならない状態になっているのを観なくても察した。
「アイキャンフラーーーーーーーイ!!!」
何が何でも逃げ切るため、ブレイズはここが三階なのも関わらず窓をぶっ壊して脱出した。
ブレイズ「変態だーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」