ACE COMBAT SW2 ―The Journey Home― 作:skyfish
前作の伏線を少しずつ回収したいと思います
A-10サンダーボルトⅡ
地上攻撃に参加する航空機のなかでおそらく一番知られているだろうこの軍用機は配備されてからの20年間不遇の扱いを受けていた。もともと地上攻撃に特化した機体にするため夜間運用能力不足、低速度、行動前の制空権確保の必要性などの性能を省いた設計だった。同時期に配備されたマルチロール機F-16でも任務をこなせるため、A-10は活躍することなく消える運命だった。それを大きく変えたのが1995年に発生したベルカ戦争だった。当時ベルカ空軍の実力は高く、空戦能力をもつ機体は全て制空権確保の任務が主となった。そして、地上部隊への支援攻撃に活躍したのがA-10だった。30mmガトリング砲の高い攻撃力、高い防御能力による生存率の高さ、低速なため長い時間戦闘区域上空にいられるため味方の支援攻撃に大いに役に立った。この結果から上層部はA-10の再配備と近代化改修を決定。現在2020年まで運用を予定している。
そのA-10なのだが………
「なんでここにあるし……」
A-10を前にブレイズは頭を抱えた。近接航空支援専用機でもこの時代だとオーパーツだ。自分たちのなかでは低速のこいつでも最大時速706㎞と今のレシプロ機の性能を凌駕している。
「どうしたものかなぁ……」
F-14の隣に置いてある新しい機体を見る。竹井は見た目も設計コンセプトも違う二つの機体を部屋から見つめる。
「なんだかすごいことになったわね」
「すごいどころかいろいろ面倒だよ本当……」
テーブルに倒れるブレイズ。なんでA-10があるのか分からないが面倒なことは変わらない。特に整備とか整備とか整備とか。耐久力は高いからエンジンの損傷が無い限り長く飛べるだろう。でも弾の補充が面倒だ。出来なくはないが一度取り出す必要があるから本当に面倒くさい。
「買い出しだけど、えーと、赤ズボン隊だっけ? あの3人に任せてよかったの?」
アンナさんから頼まれた食品の買い出しに出て行った赤ズボン隊の3人を思い出す。
「いいのよ。あなたの姿はいろいろ問題だもの」
噂に聞くエースパイロットと瓜二つの自分が街中にでればどうなるか。簡単に想像できる。余計な混乱は避けたいのはどこの世界の軍も同じだった。
「そういえば本国(扶桑)から支援物資が今日到着予定なのよね」
「支援物資? この前届いたのは違うのか?」
「あれはどちらかというと501のために用意してもらったものを少し分けてもらったから」
「そう。因みに聞くけど。扶桑国はこの世界地図のどこ?」
そばにあった世界地図を広げる。自分たちの大陸と比べると大きく違うのは当たり前か。
「ここよ。この島国が扶桑よ」
一番大きい大陸の右端に位置する島国。これが扶桑皇国。
「へ~……」
地図をじっと見つめるブレイズ。しばらく見て「おもしろいな」と呟いた。
「何が面白いのかしら?」
「自分の世界とこの世界。まったく違うけど所々同じ地名が存在するんだ」
例えばと指差したのは太平洋と大西洋。
「自分たちの世界にも太平洋と大西洋という海が存在しているんだ」
次に指を指したのは北リベリオン大陸の北に存在する大陸グリーンランド。
「この大陸と同じ形をした大陸がこっちにも存在する」
世界地図から二つの世界の似ていることを一つずつあげていくブレイズ。その途中で基地のブザーがなった。
≪報告。扶桑の輸送機がまもなく到着します。担当員は準備にかかってください。繰り返す―――≫
「来たわね。私は行くわ」
竹井は部屋から出て行き、ブレイズだけが残される。
「大陸、国の名前は違うけど、1945年当時に使用されていた兵器は誤差はあっても概ね合致している………」
この世界ではあの黒い化け物ネウロイを相手に戦争状態になっている。ブレイズから見るとSFの世界の物語だ。
「同じ時期に戦争があったのも、ただの偶然でいいのかな……?」
ブレイズの世界でも1940年代に戦争があった。
世界大戦
ブレイズの世界で初めて経験した大戦争。この戦争で戦争史上初となる闘いが数多く生まれた。大量の兵士を投入し、新兵器が生まれた。数多くの国々が参戦した戦争。後年、教科書に載るのはオーシア・ベルカ間の戦争、ノースポイント・旧ユークトバニア間の戦争。
この大戦を後の軍事評論家は「航空機戦力の台頭の始まり」と評している。
オーシア・ベルカ戦線ではベルカは陸空双方連携による電撃戦により前半期の戦闘を圧勝。後、オーシアの技術力の向上により劣性になるも、オーシア首都オーレッドまで500㎞まで迫られた。また、この時にオーシア戦艦ワシントン(オーシア初代大統領の名より)とベルカ戦艦ビスマルク(ベルカ統一立役者より)の海戦史上初の戦艦同士の戦闘が発生している。
ノースポイント・旧ユークトバニア戦線は史上初の空母機動部隊による戦闘が繰り広げられた。ノースポイントと旧ユークトバニアの戦闘はそのほとんどが大西洋上で行われていたため大西洋戦争と呼ばれている。旧ユークトバニアの侵攻から国を守るノースポイントの戦争。それを語る上で、悲しい出来事がある。それを彼女たちに話さなくて済むのに少しホッとする。
プロペラの音が聞こえてくる。輸送機が来たんだと思っていたが、思いのほか音が大きい。4発のプロペラはこんなに大きかったか? と呟きながら外に出てその正体に驚いた。
「ろ、6発!? ピースメーカー(B-36)か?」
そこにあったのは巨大な航空機だった。2000年代の大型航空機に引けを取らない巨体、一番目立つ六つのプロペラ発動機。40年代の大型航空機は4発が一般的である。全身濃い緑色に塗装されているそれはオーシアが世界大戦後に開発したB-36を彷彿させる。
目の前にあるその機体は『富嶽』。リベリオンのB-29に対抗して造られた試作機だった。ブレイズは知らないが、当時のノースポイントにも計画だけは存在したらしい。
その巨体だけに大量の物資が出されていた。樽、ドラム缶。木材の隣で竹井と黒髪メガネの少女が話している。竹井は笑顔で「やっぱりお風呂にはヒノキよね」としゃべっていた。その光景をブレイズは遠くから眺めていた。
本国からの補給物資のリストを確認していく。これだけの量を中継地無しに扶桑からリベリオンを超えてヨーロッパまで運んできたと思うも内心信じられない。船で運ぶものよりはるかに少ないが、船で1カ月かかる喜望峰ルートよりも2日まで短縮できる。ユーラシア大陸を横断するルートのほうが距離も短いがカイロからウラル山脈にかけてネウロイの巣に遮られているから実現は難しい。
「お久しぶりです。諏訪天姫、只今戻りました」
「お疲れ様。乗り心地はどうだった?」
「2日間も座っていたので少しお尻が……」
「それは我慢ね」
アルダーウィッチーズのメンバーで中島さんといっしょに配属された諏訪天姫さんである。ヴェベツィアの時は本国に帰国していたためいなかった。
「そういえば、物資の中にヒノキがあったけど」
「向こうで知らせを聞いたとき、必要になるかと思い急遽用意しました」
「諏訪さん。すばらしいわ。やっぱりお風呂は檜風呂よ。すぐにでも造り直さないと」
扶桑人はお風呂が大好き。湯船に浸かる文化はヨーロッパにもあるが温泉が湧いている地域に限られている。だから、扶桑人がいる部隊はその多くに風呂場が用意されている。ただし、水の確保が難しい部隊は普段使っていない。
荷物を確認しているなか、布に被せられているものの前に立ち止まった。その中身を確認する。濃い緑色の塗装、少しだけ曲がった翼、機体中央に描かれた扶桑のマーク。
「ついに完成したのね。美緒専用のストライカーが」
「飛び立つ直前で届けられたんですそれ。届けてきた研究者の人たちすごい隈ができていました」
徹夜で作業に取り掛かったのねと宮菱重工業の人たちに感謝する。自分は乗ったことないから分からないけど。美緒の要望通りの仕上がりになっていてほしい。荷物の確認を再開する……と、基地のサイレンがなった。
≪カールスラント軍の輸送機がエンジントラブルで本基地に緊急着陸します。各員緊急体制に移行してください≫
「カールスラントの……? 一体どこの部隊かしら」
近くの基地に配属される話は聞いていないのだけれど……。一体なんなのかしら?
しだいに機体が見えてくる。カールスラントで一般的なユンカースJu 52だ。右エンジンから黒煙が上がっている。着陸する。機体から出てきた人物を見て驚きのあまり2度見した。顔に大きな切り傷が印象の杖を持つ白髪の女性。
「ハンナ・ウルリーケ・ルーデル大佐だ。着陸の受け入れに感謝する。挨拶したいのだが、この基地で一番偉い人はどこだ?」
「ガーデルマンさん。起きてくださいよ、着陸しましたよ」
「む……? もう着いたのか?」
「いや、まだですけど。よくあの振動のなか眠れましたね」
「大佐の操る機体に比べればなんともない」
「まあそうですけど」
ルーデルの他に少女と男性が出てきた。
アーデルハイト・シャルノヴスキー
使用機材 フラックウルフFw 190 A-8
ルーデルの初代護衛ウィッチ。一度離れたが再びコンビを組むことになった。
エルンスト・ガーデルマン(33歳)
※注意! ここでは男性としています!
ルーデル専属の軍医。左頬に大きな古傷がある。もともとは普通の軍医だったがルーデルといろいろあって現在に至る。何気に呼び捨てで呼び合う仲。
負傷したまま出撃しようとする彼女を何度も止めている戦績を持つ。そのため上層部から黄金柏葉剣付ダイヤモンド騎士鉄十字勲章を授与しようかどうかの話があったとかなかったとか、真偽は定かではない。
次回予告
さあ! 作者からの問題だ! 解いてみろ!
基地にA-10が置いてある × ルーデルが来た → あっ()