ACE COMBAT SW2 ―The Journey Home―   作:skyfish

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第7話「魔王降臨」

航空ウィッチのなかで一番強いのは誰か?

 

 この問は簡単には明言できない。何故なら状況しだいによって強弱は変動するからだ。だが、あえて言うなら各分野に置いて一番を占めているのは4人のカールスラント軍ウィッチ。

 

エーリカ・ハルトマン

全航空ウィッチで最多撃墜数300機以上のエース

ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ

アフリカ戦線で一番の撃墜数をもつエース(アフリカはヨーロッパよりも強力なネウロイが出現するため)

ハイデマリー・ウォルフガング・シュナウファー

夜間戦闘最多撃墜数のエース

 

そして、

ハンナ・ウルリーケ・ルーデル

地上ネウロイ最多撃破数をもつ対地攻撃エースウィッチだ。

 

 その彼女が504基地に来た。といっても、501基地に向かう途中でエンジントラブルで緊急着陸したに過ぎない。

 

 彼女のスコアは実に400を超えている。単純に考えても驚異的な記録になる。のだが、始末の悪いことにこの記録は信憑性が無い。400を超えているのが怪しいのではない。400よりもっと多いのではないか? という意味でだ。何故なら彼女は勝手に出撃する悪い癖があるからだ。気付いたときにはすでに飛び立ったあとだったなど日常茶飯事。そのせいで何度も撃墜されるも驚異のスニーキング技術の賜物か、五体満足で帰ってくるのがほとんどだった。誰が言ったか『朝起きて牛乳のんで朝飯食って牛乳のんで体操して出撃して昼飯食って牛乳のんで出撃して晩飯食って牛乳のんで出撃してシャワー浴びて寝るという毎日を送っていたらこうなった』

 

「なにそれ。というか、最後のは冗談でしょ?」

 

「いやぁあながち否定できないのがなんとも……」

 

 

 待機部屋でブレイズと話をするのはパトリシアとアンジェラ。彼女から今日やってきたルーデルという女性について話している。

 

「Ju87スツーカ………“悪魔のサイレン”か」

 

「なにそれ?」

 

「いや、独り言だよ」

 

 話を切る。世界大戦前期に活躍したベルカ空軍急降下爆撃機Ju87スツーカ。急降下の際に発生する音と正確な爆撃に連合軍地上部隊を苦しめた。この機体の初陣はジェリコと呼ばれる場所。両陣営の戦車が戦っている最中車内にいた戦車兵にも聞こえた甲高い音。5小隊の急降下爆撃でオーシア側は作戦に参加していた戦車の70%を損失した。ついた仇名が“悪魔のサイレン”“ジェリコのラッパ”。これ以降、この音が発生したとき地上部隊は恐怖から連携が鈍り、それを確認したベルカが別の機体にもこの音が出せる機材を取り付けた。低速が欠点だったため前線から消えたが、戦争前半期の地上攻撃を支えた航空機である。

 

「スツーカの放つ音がネウロイを怯えさせるという話を聞いたことあるな」

 

「あ、それ知ってる。“ジェリコのラッパ”でしょ? 一時期発音機取り付けた飛行機見たけど逆にネウロイに発見されるから今は付けてないんだよね」

 

 どうやらここでも呼び名は同じらしい。と、部屋のドアが開いた。

 

「ん?」

「は、え?」

「え、ええ!? ルーデル大佐どうしてここに?」

 

 入ってきたのは今話していたルーデル本人だった。牛乳瓶大量に入れた袋を担いでいるのがなんとも異様な光景だが……

 

「あ、あのー……どうしました?」

 

 パトリシアが恐る恐る聞いてみる。彼女の階級は中尉で相手はこの部隊隊長よりも高い大佐だ。どうしても引き気味になってしまう。そんな彼女の手を取り

 

「一緒にお茶をしないかいフロイライン(お嬢さん)?」

 

「へ?」

 

「「…………はぁ?」」

 

 瞬間、部屋の空気が固まった。ルーデルがイケメン顔で今の台詞を言ったせいかパトリシアの顔が若干赤くなっている。

 

(もしかして、この世界だと同性愛はわりとOKな世界なのか?)

 

 間違ったことを考えるブレイズ。と、誰かが部屋に突入した。

 

「見つけたあ! 死ねえ!」

 

 入ってきたのはドミニカ。すぐさま持ち歩いている拳銃の引き金を引いた。狙いはルーデル。

 

※ペイント弾です!

 

「甘い!」

 

 そんなのお見通しと華麗に避ける。通り過ぎた弾丸はそのまま進み

 

べちゃ! 「ぶ!」

 

 ブレイズの顔面にヒットした。ぞろぞろと他の人もなだれ込んでくる。

 

「大佐! これ以上はここの迷惑だ。部屋に戻りましょう!」

 

「断る! 折角の娑婆だいろいろ楽しみたいんだガーデルマン! 私は少女とお茶したいだけだー!!!」

 

「うわぁ、もういろいろとまずいですよ」

 

ガーデルマンとアーデルハイトがルーデルを取り押さえようとするも彼女はまるで知っているかのようにするりと簡単に避ける。その間にも青筋を浮かばせたドミニカの援護射撃は終わっていない。そんなこと気にせずルーデルとの格闘戦(?)に専念するガーデルマンに感心すればいいのかどうなのか………

 

「おい、これは一体何の騒ぎだ!?」

 

 痺れを切らしたアンジェラが怒鳴る。が、それでも止まらない。

 

「こらあなたたち! 一体なにやっているの!?」

 

 次に部屋に入ってきたのは竹井。それを見たガーデルマンは

 

「む。いかんな。あれはマズイ。戦略的撤退だ!」

 

と叫び、窓から出て行った。

 

「待てええええええ!!!」

 

 青筋浮かべたドミニカはすぐさま追いかける。ガーデルマンたちも後に続く。

 

「待て、ハン……ええい、竹井殿我々は後を追います。事情は彼女たちから聞いてください!」

 

 いくぞアーデルハイト! と叫ぶと彼は窓をまるで陸上競技のハードルを飛び越えるような体さばきで出た。窓枠は体の大きなガーデルマンには狭く感じる。だが、足を延ばし、上体をペタンと倒したその態勢は理想的であり、軍医としてはもったいない身体能力を彼は持っていた。

 

「ま、待ってくださいよ~!」

 

 無論彼女もウィッチだから運動能力は上だが、こと地上だと違ってくる。彼とは違い飛び込み

 

「へびゅっ!?」

 

 ドサッと共に変な悲鳴が聞こえた。すぐに走り出したが音が聞こえる。なんだったのかしら? と竹井が疑問に思っていると後ろからドタドタと足音が近づいてくる。メンバーは帰ってきたフェル、ルチアナ、マルチナと、諏訪と中島、ジェーン、フェデリカの7人。

 

「これは、一体どういうことですか……?」

 

 笑顔で聞いてくる竹井。後ろにゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと威圧する音が見えていると感じるのは間違いではない、はず。本能的に正座する皆々。

 

 

 

(ちょっと! めちゃくちゃ怒ってるけど!?)

 

(素直に話したほうがいいですよ……)

 

(ゲンコツ飛んできそうだけど)

 

(錦ちゃん言ったほうがいいんじゃ)

 

(私はワルクねぇ私はワルクねぇ私はワルクねぇ(ry )

 

(錦ちゃん!?)

 

(私見てただけなんですけど……)

 

(飛び火しそうだから大人しくした方がいいかもよ?)

 

 いいかげん竹井の頭から二本の角が見えてきた。いやな顔をしながらルチアナが口を開いた。

 

「あ、あの……中島さんが“こっくりさん”? というものをやろうと言ったのが始まりでして………」

 

 始まりは至極単純なことだった。統合戦闘航空団の数は8部隊。その中で一番最初に設立された第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズは当然一番の戦果を挙げている。だが、去年の4月から9月にかけてその戦果が圧倒的に群を抜いている。それに疑問をもった中島は彼女なりに調べある事を耳にした。

 

過去活躍した英雄たちを憑依させて戦っている。

 

 それを知り真偽を確かめず納得してしまった。なるほど、それならあのふざけた記録も納得がいく。なら私たちも同じことをすればいいんじゃね? という思いつきで始まった“こっくりさん”

 

 準備が整い、皆を集め、降霊呪文も終了し、さあ始めよう。としたところで部屋が開けられた。鍵を閉め忘れていたのだろう。入ってきたのは案内していたフェデリカとやってきた3人。中の空気が吸い出される風が発生。ただ一人を除いで問題は無かった。無かった、はずなのだが………

 

「あの状態になったルーデルさんが、その……私の手にキスして………それ見た大将が暴走して………」

 

「……………はぁ。取りあえず中島さんは1週間トイレ掃除ね」

 

「ええ!? さすがに「なにか?」イエナンデモアリマセン、リョウカイシマシタ(泣)」

 

 反論しようとした中島を竹井はニッコリと笑顔を向ける。それを見て察した彼女は泣く泣く了承したのだった。

 

「まったく……アリーさんも大丈夫ですか? 顔にペイント弾当たりましたけど」

 

「問題ない。これが実弾だったら死んでたな……」

 

 タオルでゴシゴシとペイントをふき取るブレイズ。騒動に巻き込まれた上に災難だ。

 

「で、あれどうすんの」

 

 クイッと親指を外に向ける。外では

「どこ行ったーーーー!」

「そろそろ牛乳が切れる時間だ!」

「食堂で待ち伏せしましょう!」

と叫んでいる三人の声が聞こえてくる。

 

「……………極力触れたくないのだけれど、全員でルーデル大佐を捜索・確保しましょう。これ以上問題が起きる前に――――――」

 

 竹井が言い終わる前に、警報が鳴り響いた。

 

「こんな時に……! 中島、諏訪の2人は出撃準備! ジェーンさんは基地に待機よ!」

 

『はい!』

 

 重なる問題に頭を悩ませながら竹井は迅速に指示を出す。外でも

 

「ガーデルマンさん!」

「すぐにアイツのストライカーを確保しろ! 飛ばれる前にだ!」

 

と、忙しく走る。アリー……もといブレイズは指令所に向かった。今の自分は出撃できないし、できる機体もない。ここの機体を勝手に奪うのは軍法会議物だ。部屋に入り、状況を聞く。

 

「敵は単体。護衛はいないそうです」

「直線的にしか動かないタイプか……これなら501に任せても大丈夫ね」

 

 地図を広げる。特徴的なブーツの形をした大地。南部がロマーニャ、北部がヴェネツィアだ。そこにネウロイの予想進路を線で示す。その進路上はほとんどがアドリア海海上なので進路変更しない限り地上への被害はないだろう。一か所を除いて、ブレイズはそこを指差す。

 

「ちょっと待て。進路上のここって……!」

 

「アンナさんが住んでいる場所……!」

 

 ネウロイの進路上。アンナ・フェラーラさんが住む小島を通るルートだった。501の基地よりもここが近い。

 

「急いで竹井達を出撃させないと……」

 

 フェデリカが言ったとき、聞きなれない音が聞こえてくる。1人だけ分かった人物がいた。ブレイズだ。

 

「はあ!? なんで“あの”音がなってんの!?」

 

 冷や汗流しながら急いで窓から外を見る。F-14のとなりにA-10――――――は無かった。

 

 滑走路で既に離陸準備に入っている。目を凝らす。中にいるのは

 

 

 

 

 ハンナ・ルーデル。しっかりパイロットスーツを着こなしている。目と目があう。この日、最高の笑顔で親指を立てる。

 

≪ハンス・ウィルリッヒ・ルーデル。ちょっと出撃する≫

 

 エンジン全開で離陸していった。

 

 

 

「おいいいいいいいいいいいいいいいいい!!! あのヤロォおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 

 

 ブレイズの怒号が基地施設を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方

 

「あ、ありのまま 今日 起こった事を話しますわ。坂本少佐に言われてアンナ・フェラーラさんの自宅に向かっている途中、ネウロイに遭遇したと思ったら甲高い音が鳴り響いて、見たことない飛行機が爆弾と機銃をネウロイに命中させ破壊しましたわ。な…何を言っているのか 分からないと思いますが、私も何がおきたのか分かりませんでした…… 通信が開いたままだったせいか

 

グーテンターク(こんにちは)、ネウロイ君。そしてさようなら』

『フハハハハハハハハハ!! いいぞ!やはりA-10こうでなくてはな!』

『たまたま拾った発音機取り付けて正解だったな』

『そこのフロイライン! 私と一緒にお茶でも……ん? なんだ、さっさと帰って来いだと? 分かったよ。では諸君、ビス・バルト(また会おう)!』

 

と言って去っていきましたわ。

頭がどうにかなりそうでした…… ネウロイとかウォーロックとかそんな物とは断じて違う。もっと恐ろしいものの片鱗を味わいましたわ」

 

「なにブツブツ言ってんだい? ちゃんと飛ばないと晩御飯抜きだよ!」

 

「ひゃっ!」

 

宮藤、リーネ、ペリーヌの3人は無事アンナさんの家に辿り着き、猛特訓を受けていた。

 

 

 

 一方―――

 

 返ってきたルーデルにブレイズは青筋浮かべて飛びかかった。怒りに咆える彼女は止まらず、ブレイズとルーデルのドックファイトならぬキャットファイトが続く……と思われた。

 

「静かにしてください」

 

 笑顔で2人にゲンコツをくらわせた竹井によって、2人は止まった(気絶した)。それを見てた皆は一同に再認識した。

 

 竹井を怒らせてはいけない、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~」

 

 機材のオイルで顔や作業服の汚れた少女。肩まで伸びたブロンド髪、メガネから大人しい印象を受ける。

 

「調子はどうだい?」

 

「あ、ガランドさん。お疲れ様です」

 

 入ってきた女性、アドルフィーネ・ガランドは少女にコーヒーを渡す。コーヒーを一口飲む。

 

「半年前に渡された“あの機体”は私たち開発チームに大きく影響しました。ですが、同時に厄介な存在でした」

 

「やはり無理か?」

 

「はい。大きな原因は私たちの技術力の圧倒的不足です。構造を理解できても、それコピーできるほどの技術が無いのが実情です。出来るのは、私たちが開発してきた物に改良を加えるくらいです」

 

「だが、ようやく形になったのだろう?」

 

「はい。これもストライカーと同じ時速900㎞以上の速度を出せるようになったはずです」

 

「それでだが、ストライカーを501に、航空機を504基地に送ってくれ。そして、お前は504基地に向かってくれ」

 

「分かりました。ですが、何故504に……?」

 

 ガランドはニヤリと笑う。

 

「専門家の声を聞いてみたいからだ」

 




今回遅れた理由はルーデルさんをA-10に乗せるためにはどうすればいいか悩んだからです。

いい案が思い浮かばず、ふと前作を振り返っていた際こっくりさん回を見て

こっくりさん
  ↓
ルーデルにルーデル憑依
  ↓
                                 ,.へ
  ___                             ム  i
 「 ヒ_i〉                            ゝ 〈
 ト ノ                           iニ(()
 i  {              ____           |  ヽ
 i  i           /__,  , ‐-\           i   }
 |   i         /(●)   ( ● )\       {、  λ
 ト-┤.      /    (__人__)    \    ,ノ  ̄ ,!
 i   ゝ、_     |     ´ ̄`       | ,. '´ハ   ,!
. ヽ、    `` 、,__\              /" \  ヽ/
   \ノ ノ   ハ ̄r/:::r―--―/::7   ノ    /
       ヽ.      ヽ::〈; . '::. :' |::/   /   ,. "
        `ー 、    \ヽ::. ;:::|/     r'"
     / ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ
     | 答 |     コ ロ ン ビ ア       │|
     \_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ


になった次第です。



次回やっとジェット機のお話に行けます。まあいつ投稿できるかが問題ですが
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