ACE COMBAT SW2 ―The Journey Home― 作:skyfish
6月。この時期からロマーニャは暑くなってくる。地中海気候に加えアフリカからの熱い季節風が流れてくるのも大きな要因である。空調がない室内は軽く40℃に達する。空調のある生活を送るブレイズにとってはこの暑さはキツイ。それでもサンド島にいたころ非番のときは炎天下の中釣りに行っていたことが何度かあるため耐性が無いわけではない。現在彼は海辺で釣り糸を垂らしていた。半袖短パンの麦わら帽子と完全に田舎臭い衣装であるが、今の素晴らしすぎる御姿(女体)のせいか絵になりマイナスどころかプラスである。たまにコーラを飲みこの状況を楽しんでいた。
「どーお? 釣れてるかしら?」
「ぼちぼち」
様子を見に来たフェルたち赤ズボン三人娘。彼女たちも釣竿を持っている。
「隣いいですか?」
「どうぞ。でも少しだけ離れてくれ」
「それくらい分かってるよー」
3mくらいの間を開けて4人が並ぶ。それにしてもこの暑さでも彼女たちの服装はいつものままだ。暑くないのだろうか?
「そりゃあ生まれてからずっとロマーニャから離れてないし」
「さすがに慣れちゃいました」
「これくらいヘーキだよ。扶桑の諺でいうなら『住めば都』」
「無理するなよ」
「アリー(ブレイズ本名の女性あだ名Ver)あんたそのコーラ頂戴」
「えー。これ僕の分だけど」
「もう3本も飲んでるくせに別にいいじゃない」
「じゃあ投げるぞー。しっかり受け取れよー」
「炭酸投げんじゃないわよ!」
キレたフェルを見てマルチナ、ルチアナが笑う。その後順調に釣るマルチナに餌を取られるマルチナ、盛大に地球を釣るフェル達。騒がしくなったせいか少しだけ引きが鈍くなったなと思いながらブレイズは釣りを楽しむ。因みにここでの僕の名前はアレキサンドラ・レイエスで通っている。女の子になっている今女性名で呼ぶことが徹底された(というよりももう皆がそっちで呼んでいるから)最初こそ嫌だったが、慣れという物は時に恐ろしいものだ。この名前に慣れてしまっている。軍人でもあるので状況への対応ができてしまっていることに感謝すべきなのかどうなのか。少なくとも今まで経験したのもに比べれば軽い方である。その後、大体1時間ほど時間が経ったころ放送が鳴った。
≪アリーさん。至急執務室へ来てください≫
「なんだ? じゃあ頑張って今晩のおかず釣ってくれ」
『はい』『任された』『でっかいの釣ってやるわ』の返事を聞きながらブレイズは執務室へと向かった。服装は変わってないが一応釣りすると事前に言ったから問題ないだろう。ドアをノックする。
「アレキサンドラ来ました」
「入って~」
「失礼しま……はい?」
「初めまして。あなたが……え?」
執務室に入って中にいる人を見て固まった。自分そっくりの顔をした人がいた。白衣姿でメガネをかけている、少し身長が低いくらいの違いである。これだと双子じゃないと言っても他人に分かってもらえないほど似ている。
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………姉さん、見ない間に成長しすぎです」
自分を凝視しながら長い長い沈黙のあと出たのがそれだった。視線は顔3割、胸7割くらい。
「ぶwww。もwwうwwだめwww我慢出来ないあははははははははははははははははwwwごほっwwwごほwww!!!」
大爆笑するフェデリカを見るにこの状況は面白がった彼女が造ったのだろう。隣にいた竹井が深い深い溜め息をしていた。思いのほかつぼったのか笑いで呼吸困難になっているフェデリカを放って竹井が続きを話した。
「えー……ハルトマンさん? 分かっていると思いますが彼女はあなたのお姉さんではありませんよ」
「あ、失礼しました。あまりにも似ていたのでつい。この人が?」
「ええ。彼女がアレキサンドラ・レイエス少佐よ」
「初めまして。ノイエ・カールスラント技術省兵器開発部のウルスラ・ハルトマン中尉です」
「アルダーウィッチーズ臨時戦闘隊員アレキサンドラ・レイエスであります。ハルトマンということは、貴女はエーリカ・ハルトマンの妹さんですか? カールスラントの技術省が自分に何の用でしょう?」
目の前の女の子の所属を聞いて警戒度を上げた。兵器の開発部の人が自分を指名するなんて、何か裏があるに違いない。考えられるのは友好を装ってF-14とA-10を奪う事だろうか。確かにこの時代の物と比べものにならないくらいの性能を持つ兵器は喉からほしいだろう。それを使いこなせるか、解析できるかは疑問が残るが。
「ジェットの戦闘機に乗っているそうですね? あなたに試乗してほしい機体があるのです」
「試乗? 試作機のテストパイロットをしてほしいと?」
「はい」
ウルスラ・ハルトマンという名前の女の子はブレイズに試作機のテストパイロットをお願いしてきた。
(待てよ。ジェット機に乗る自分を指名したということは……)
ブレイズは1つの機体を思い浮かばせる。ジェットエンジン搭載の航空機は大戦前1940年より前にあったがどれも性能が低く、レシプロに劣るものばかりだった。そんな中旧ベルカが初めて成功・実戦配備されたジェットエンジン搭載の航空機。
「もしかして……Me262?」
「! やっぱり、ガランド中将の言う通りでした。貴女は本当に未来の異世界人なのですね。そうです、メッシャーシャルフMe262-v1。世界初の実用ジェット戦闘機です」
ブレイズ達の世界の世界大戦でその機体が出たのは終戦からわずか半年だった。物量で押し返すオーシアは最新鋭爆撃機B-29スーパーフォートレスを投入。高高度からのベルカ首都への直接爆撃作戦を決行した。投入された機体数は200機。護衛のP-51は100機。例え護衛機を突破されてもB-29に配備される20mmと12.7mmの機銃機関砲による圧倒的弾幕を前にベルカ主力戦闘機フォッケウルフFw190や爆撃機最大の天敵である最新鋭高高度戦闘機Ta152を容易く屠ることが出来ると確信していた。
作戦前誰もが結果を疑っていなかった。確かにオーシア軍関係者の予想は間違っていなかった。相手がいつもの機体だったなら。
報告を聞いた軍上層部はあまりの事実に言葉を失ったそうだ。
作戦自体は成功。しかし、爆撃機隊50%、戦闘機部隊20%の損失という散々な結果だった。このときベルカは次世代エンジンを搭載した新型機の開発に成功していた。
メッサーシュミットMe262シュヴァルベ
ジェット航空機の祖と言われる世界初の実用ジェット戦闘機の戦線投入。レシプロ機を大きく上回る速度。エンジンが機首から翼下になったため機首に集中配備された30mm機関砲4門とロケット弾による圧倒的な火力。当時の空戦では相手より30km速ければ優位を維持できた。Me262は最大速度870㎞。緩やかに降下した場合時速900㎞を超える。B-29の最大速度は570㎞。軽く300㎞近い差があり、Me262に乗っていたパイロットは「止まって見えた。ただの的だった」と口にする。Me262部隊が爆撃機に専念できるようにTa152が護衛のP-51の相手をする。但し、まだこの時配備中と信用性の低さから出撃できたのわずかは30機だった。しかし、圧倒的数的不利のなかこの作戦でMe262のB-29に対するキルレシオは1:5という数値を出した。防弾が充実した爆撃機にこれほどの被害が出たことに軍関係者は驚きを隠せなかったという。ベルカ首都への爆撃事態は成功したものの、その帰りも被害が出続けた。オーシア爆撃隊にとって悪夢の一日になった。
航空機に新たな世界を示した偉大なるジェット機の祖が鎮座していた。
「まさか原物を見るなんて」
昔資料で見たものと全く同じ造りをしている。このMe262は二人乗りになっているところ。剥き出しのエンジンはA-10のを彷彿させる。そして、一番の異なる点は車輪の位置。
自分たちが知るものは機首部分にタイヤがあるタイプであった。いわゆる尾輪式である。レシプロ戦闘機はその形状からそのほとんどが尾輪式が採用されている。といっているが実際は機体の形状から一番安定しやすいものを尾輪・前輪式から選んでいるに過ぎない。
試作機では尾輪式だったのが量産型には前輪式になっていた。オーシアに対する意識が関わっているのが理由らしい。前輪式降着装置は強度不足が相次いだと聞く。尾輪式に変わっているから大丈夫だと思いたい。塗装は派手な赤色。この機体でこの色だと彼のベルカエース“レッドバロン”を思い出す。
「準備が出来ました。資料はお読みになりましたか?」
パイロットスーツを着たウルスラがやってくる。ブレイズもいつものやつではなく、この時代のパイロットスーツを着ている。
「読んだから飛ばせるけど。どう飛べばいい?」
「501基地に向かってください。そちらにはこれと同じ機種のストライカーを先日送っています。そちらの点検も兼て飛行テストをお願いします」
「了解。さーてシュヴァルベのお目覚めだ」
「シュヴァルベ(ツバメ)?」
「俺たちの世界のこいつの愛称ですよ」
機体に乗り込みながら話す。さすが初のジェット機。配電盤がレシプロに比べものにならないくらいびっしりである。バートレット中佐が乗ってたF-4といい勝負だ。
「エルロン、ラダーともに正常。燃料も満タン。エンジン付けますよ」
「どうぞ」
ウルスラは後部席の風防を閉める。ブレイズはエンジンが付くまで風防を開ける。初のジェット戦闘機のエンジン音を直に耳に入れるためだ。
チチチチチチチチチチッ――――
点火する音が聞こえる。
ゥウウウウウウウウウウウゴオオオオオオオオオオオオオオオ――――
エンジンのモーターが動きだす。ジェットの始まりを告げる声が高々と咆える。
「エンジン異常なし。いつでも出れます」
≪テスト飛行楽しんでってね~。向こうのジェットストライカーの整備もあるからもしかしたらそっちで泊まるかもしれないわ。いってらっしゃーい≫
フェデリカのいつも通りの気の抜けた声が聞こえる。大分回復してきた504メンバーも見送りに外に出ていた。敬礼して応える。風防を閉める。
「ブレイズ、シュヴァルベ。出ます」
「行ってきます」
ジェットの祖たる鋼鉄の鳥は大空へと飛び立った。
501基地
「今日はスピード勝負……と言いたいところだけど少し待ってもらえるかしら。もうすぐジェット戦闘機が着くの。ジェットストライカーと同じ機種、ウルスラさんが同席しているそうよ」
「へ? ウルスラ来るの?」
「誰ですかウルスラさんって?」
「ウルスラ・ハルトマン中尉。エーリカさんの妹さんよ」
501基地では先日届いたジェットストライカーで既にテストに入っていた。部隊内で性能が高いストライカー、シャーリーがもつノースリベリオンP-51マスタングと比較テストをしている(表向きはそうだが二人の間では喧嘩に成り下がっている)
「バルクホルンさん大丈夫ですか? ひどく疲れてますよ?」
「いや……私は問題ない。それよりも……」
バルクホルンが外を見る。すると小さかった音がだんだんと大きくなってきた。特徴的な音。例のジェット戦闘機が来たのだ。
滑走路に出た頃にはジェット機は滑走路へのアプローチ中だった。
「あれが初のジェット戦闘機」
「ジェットストライカーと同じMe262-v1だ。しかし、赤いな」
「派手な色ですわね。遠くからでもすぐ見つかりますわ」
機体が地面に着いた後、機体後部からパラシュートが開いた。それを見た皆が驚く。
「飛行機にパラシュートですか?」
「着陸距離を短くするためにね。それにしても一体誰が操縦しているのかしら」
機体を滑走路の脇に止めエンジンが切られる。
「まさか900超えるなんて、ここのは自分たちのものよりもスペックが高いんだな」
「ありがとうございます。それでは、燃焼室を重点的にでいいんですね?」
「ああ。耐熱性のせいで速度上げると燃焼室が溶ける欠点がこっちじゃあったから念入りに―――それはそうと暑い」
操縦者とウルスラが真剣に話している。操縦者がパイロット帽を取り上着を脱ぐ。
「なっ!?」
501のほとんどが驚いた。その姿がハルトマン姉妹と瓜二つだったからである。
「ふおっ!」
一方宮藤は彼女の胸を見て声を上げた。目算に間違いなければリーネちゃんといい勝負だと確信した。
「芳佳ちゃん……」
ブレイズ「初めまして。長女のアレキサンドラ・ハルトマンです。いつも愚妹がお世話になってます」
エーリカ「誰だお前」
バルクホルン「お前なんかに渡さないぞ! お姉ちゃんは私だけだ!」
ミーナ「何言っているのあなたは………」