翌日、目が覚めて顔を洗っていると放送が聞こえてきた。
『みなさん、おはようございます。訓練生は各部屋の扉前にある制服に着替え、07:30までに各寮の食堂に集まってください』
放送を聞き時計を見る、今は6時丁度だ。廊下へと繋がる扉を開けると江風、初月と書かれた箱が置いてあった。箱を回収しリビングに持って行くと、おそらく放送で起きたであろう初月さんが座っていた。
「おはよう、それがさっき放送で言ってた制服かい?」
「ああ、こっちの箱に入ってるのが初月さんのだね」
箱を手渡す、受け取った初月さんは箱を開けて制服を取り出した。それを自分の体に当てがいサイズを確認して大丈夫そうだと言い
「それじゃそれぞれの部屋で着替えようか」
そう言い残し部屋へと戻っていった。それじゃ僕も部屋に戻って着替えるとするか。制服はセーラー服のような服だし着替えるのは簡単だったけどやっぱりスカートは落ち着かない、なんというか心許ないというかスースーするというか……。それより髪が問題だ、この長い髪の毛を2つに纏めなければいけない、まだ今はリボンで纏めるだけでいいが、もし改二になることがあれば三つ編みで纏めることになる。纏めるなければいいじゃんって? それじゃ江風さんじゃないでしょ。
髪を纏め、着替え終わりリビングに出ると同じく着替え終わった初月さんが部屋から出てきた。どうやら彼もスカートは落ち着かないようでモジモジしていた。こちらを視認すると、さっきまでモジついてたのが嘘のように堂々とした立ち姿となった。
「さて、少し早いが向かうかい?」
そう言って時計を指差す、時計の針は7時に差し掛かるぐらいだった。事前行動は基本だ、それじゃあ向かうとしますか。
部屋を出ると同時に隣の部屋の扉が開いた。中から出てきたのは昨日会った三島幸村こと陽炎さんともう1人、茶色の長髪のメガネをかけた子だった。あれはおそらく望月だろう、初月さんが声を掛けてるとこちらに気づいた。
「お? おはようさん、よく寝れたか?」
「はっきり言ってあんまり。初対面の人と寝るのは緊張しちゃってね、寝室は分かれているけども」
「ま、そりゃそうよな」
陽炎さんと初月さん、2人で話していて僕たちの入る隙がなくなりどうしようかと思っていると望月さんが僕に話しかけてきた。
「やあ、初めまして、私は望月だよ。気軽に望月と呼び捨てでも構わないよ、私もそうするから」
「あ、はい。僕は……」
自分の名前を言おうとしたが望月に止められた。
「艦娘としての名前を教えて欲しいな、君も過去の肉体を捨てたのでしょう? だったら昔の名前なんて名乗ってもしょうがないじゃない」
過去の肉体を捨てた……僕は起きたら変わってたけど、もしかしたら深層意識でそう願ってたのか? 今とは違う自分になりたいって。確かにこの身体になる前……いや、この世界に来るまでは仕事して怒られて残業して帰って寝てまた仕事と、嫌気がさすほど同じことの繰り返しだ。そう願ってもおかしくはない、江風のように気が強く何事にも怯まないそんな自分に。もしかしたらアイツもそうなのか?
「……い、おーい。大丈夫かい? 顔色少し悪いけど」
「え? あ、うん、大丈夫。ごめんね、望月さん。いきなり考え込んじゃって」
「別に気にしてないよ。さっき陽炎から聞いたけど、君は転換したわけじゃないから、謝るのはこっちさ」
ある意味では転換したようなものだとは思うけど
「そんなことより、僕の名前だけど、白露型の江風さ。よろしく」
「こちらこそ、よろしく。江風」
望月さんと軽く握手をし、僕たち4人は食堂へと向かった。
◯
食堂に着くとそれなりの人数が既におり、みなそれぞれ会話を繰り広げていた。丁度集まって4人座れる席があり、僕たちはそこに座った。それからしばらくして、昨日寮に案内してくれた漣さんと潮と思しき人物がやって来て
「はーい、お喋りをやめてこちらにちゅうもーく!!」
大きな声で皆の注目を集めた。漣さんは周りを見渡して、うんうんと頷いた。
「全員いるね! 私は漣、んでこっちが潮、君たちの教官を務めるよ。それじゃ君たちがこれからこの訓練所でなにをするか簡単に教えちゃうよ」
そう言ってホワイトボードに書き始める、書かれたのは大きな字で戦場で生き残る術を学ぶとそれだけだった。
「漣ちゃん、それじゃ大雑把だよ。えーと、補足しますと、あなたたちには艤装の使い方等を私達が教えます」
潮さんはそう付け足す、すると誰かが質問を投げかけた。
「艦娘として戦うのはここに居る全員ですか?」
その質問に漣さんが答えた
「ここにいるのはあくまでも転換組だけだよ、元々女性の人達とは寮を分けてるんだ。まあ訓練は一緒にやるけどね。そしてこの訓練所に居るのは私たち教官を含め駆逐艦に分類されてるね。それとは別に提督組もいるけど」
それはまたおいおいねと漣さんは言う。
「基本的には班で訓練をしていくことになるよ。班の人数は6人、寮の区間3部屋ごとに分けてく感じだね。例えば101から103までを1班とする感じ、合計で10組になるよ」
「それでは、皆さん、席に班について書かれた紙が置いてあるので班ごとに集まってください。全班集まり次第朝食の時間となります」
その言葉を聞いて、置いてあった紙をみる。そこには班となる部屋番と名前、そして食堂での席が記載されていた。僕と初月は506だから同じ階層の4と5の部屋の子達と班になる。隣部屋の陽炎さんと望月さんと一緒の班だがもう一つの部屋の子たちの名前は……朝潮と白露と書かれていた。僕たちは指定された席に向かうと既に2人座っていた。黒髪ロングの子、朝潮がこちらに気づき、席を立ちピシッと敬礼をした。
「貴方達と一緒の班ですね? 私は朝潮です! よろしくお願いします!」
「あたしは白露だよ〜。よろしくね〜」
なんか対照的な2人だ、朝潮さんはゲームとさして変わらないが、白露さんはかなり違う感じだ。