廃人ハンターのテイワット生活   作:バルファルクの襲撃に怯えるゴリラ

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やっぱり初投稿です


生態系崩壊への道

 英雄とは、得てして裏の顔があるモノである。

 

 それは、かの英雄”狩人”にも言える事である。

 

 ――モンドの歴史文献より

 

 

 


 

 

 

【狩り、とは、平等、だ】

 

 まだほのかに体温を感じる肉塊と肉片、鮮血と臓物。木の幹に地面に――あちらこちらに命だった物が散乱する。

 

【身分も、種族、も、関係ない】

 

 ゴシャリと鈍い音が響く。そうしてまた1つ命だった物が散乱する。

 

【ある、の、は、獲物、と狩人、の、関係だけ】

 

 口から血の塊を垂れ流しながら、”狩人”は笑う。

 

【嗚呼、気分が、良い。実に、良い】

 

 惨劇の中心で”狩人”は笑う。

 

 その身に宿すは竜をも狂わす病と龍すら蝕む寄生蟲。そして魔神や仙人すらも狂わす業障。その全てに生命力を削られながらも、それを是として”狩人”は立っていた。

 

【さて、時間、を、開けて、は、いけない】

 

 だってキュリアと狂竜症と業障を克服してしまうから。さっさと獲物をぶん殴って3つの災厄を維持しなければいけない。そうしないと攻撃力バフが消えてしまうのだから。

 

 元はTAを生業としていたハンターだ。自傷と火事場はデフォルトである。

 

 

 


 

 

 

「うーん……何かがおかしい……」

 

 璃月を守護する仙衆夜叉が1人、伐難は拭い切れない違和感に苛まれていた。

 

「なんだろう……悪い事じゃないとは思うんだけど……でもやっぱり違和感が……」

 

 彼女はムムムと頭を悩ませる。確かに何かが違うのに、それが何か解らない。その違和感は不快感を産み、彼女の心中にモヤモヤをもたらす。

 

 今日も今日とて妖魔を狩った彼女。渦の魔神の復活に中てられて璃月港に押し寄せた妖魔を滅して早数日。いくらあの時にかなりの量を滅したとはいえこの妖魔の数は少なすぎるのではないかと伐難は思う。

 

 だけどまぁ、そういう事もあるのだろうと納得した。そんな事よりも今はこのモヤモヤをどうにかしたいと彼女は頭を悩ませるのだ。

 

「兄者達に相談しに行った方が良いのかな……」

 

 山から山へと跳びながら、伐難はそんな事を呟く。

 

 そんな彼女の目の前に、ヴィシャップが打ち上げられた。

 

「……ん?」

 

 落下していくヴィシャップを見ながら、伐難はフリーズする。自分が居るのは山の山頂付近。それと同じくらいの高さまで打ち上げられたヴィシャップ。

 

「んん??」

 

 落ちて行くヴィシャップのさらに下を見る。なるほど、誰かが――

 

「うぇ!? なにあの量の業障!?!?」

 

 黒なんて生易しいものではない。ドス黒い人型のナニカが、ヴィシャップの落下地点で巨大な槌を構えて居る。僅かに紅色があるように見えるが、それにしたって圧倒的なドス黒さだ。恐らく光を99%吸収している。

 

「……あれだけの業障、人間は近付くだけでも無事じゃ済まないはず……!!」

 

 グルングルンと槌を回し、落下してくるヴィシャップへと狙いを定めたのであろう人型。グッと踏み込み、巨大な槌で再度ヴィシャップを打ち上げ――

 

 パンッと破裂音が鳴り、ヴィシャップだった物が飛び散る。あまりにも凄惨である。

 

 雨の様にヴィシャップの破片が降り注ぐ。そんな異常気象のど真ん中で立っていたドス黒い人型から黒が溶けるように消えて行き、残った紅色もハラリハラリと地に落ちる。

 

 となれば残るのは黒い鎧を身に纏った傷だらけの男。伐難はその立ち姿に見え覚えがあった。そういえば、魈の兄者が”狩人”が帰ってきたかもしれないと言っていたなと伐難は思い出す。

 

「ってことはやっぱり、”狩人”が帰って来たの……?」

 

 ”狩人”が居なくなった時……最後に璃月の仲間の前に彼が姿を晒した時、伐難はその場に居た1人であった。珍しく死の香りを漂わせていなかった”狩人”が、岩王帝君の目の前に跪いて「お暇を頂きたい」とだけ言って答えを聞かずに去って行ったあの光景を見ていた1人だったのだ。

 

 なんか1000年くらい生きていたとはいえ”狩人”はただのちょっと悪食でバカで自己中心的で考え無しな人間。どうせちゃっかり生きているのだろうと思って居たけどやっぱりだった。

 

「……あれ、あれが”狩人”って事はさっきの黒いのと赤いのは…………あ゛!!」

 

 かつて、”狩人”が何もせずに他の魔神の臣民を全滅させた事があった。その際に”狩人”が使ったモノは本人が狂竜症とキュリアと称していた……黒い靄と赤い寄生虫がそれだ。

 

 さて、ついさっきの”狩人”は業障の他にも悍ましい黒と赤が体を纏っていた。普通にマズい。

 

「と、とりあえず”狩人”を叱らなきゃだよね! 確かあの力は帝君に禁止されてたし!!」

 

 そうと決まればと伐難は山頂から跳び下り、山肌を滑るようにして下っていく。近づけば近づくほど、なるほど確かに懐かしい気配だと伐難は思った。

 

「よっと」

 

 ピョンと飛んでスタっと着地。当然”狩人”は伐難に気付いている。

 

【貴様、は…………なるほど、伐難、か。久し、い、な】

 

 何処からか取り出したノートに一瞬視線をやって、その後にどこか嬉しそうな声で伐難の名を呼ぶ”狩人”。鎧に隠れて顔こそ見えないが、きっとあの時と変わらない笑顔なのだろうと伐難は思う。実際、”狩人”は懐かしき旧友との再会に鎧の下で笑顔を浮かべている。

 

「うん、久しぶり……じゃなくて! さっき使ってたのって帝君に禁止されてたヤツでしょ!?」

【……なんの、こと、やらな】

「誤魔化されないから! ちゃんと上から見てたんだよ!」

『Fuck……見られてやがったのかクソッタレ』

 

 テイワットのモノではない言葉で悪態を吐いた”狩人”は両手を上げて降参だとジェスチャーをする。

 

【そう、だ、な。使った、さ……あれが、今、一番、失せモノ、探し、に、効果的、で、あった、から、な】

「失せモノ探し……そんな危険なヤツまで使って何を探してるの?」

【ああ、俺、を、探して、いる】

 

 前の俺をな、と”狩人”は何でもないように言う。

 

「前の……”狩人”……?」

【確か、に、璃月、で命を、絶ったん、だが……どう、も、地形が、変わっていて、な】

「え、いや……ちょっと待ってよ……」

【てっきり、大樹、に、でもなっている、と、思ったん、だが……】

 

 さも当然といったように自分が死んだことを語る”狩人”に、伐難の胸はギュッと掴まれたような苦しさを感じる。

 

 だって、”狩人”が死んだとハッキリ知っている存在がこの2000年で誰一人として居なかった……つまり、”狩人”は誰にも看取られることも誰に知られることもなく1人ぼっちで死んでしまったという事なのだから。

 

 確かに問題児ではあった。けれど、それこそ”狩人”のおかげで私と兄者達は生きている。他にも”狩人”のおかげであの戦争を生き残ることが出来た存在は数知れないだろう。

 

 そんな英雄が寂しく死んだというのは、少しどころかとても悲しいことだと伐難は思った。

 

「そ、そっか……”狩人”は、死んじゃったんだね……」

【ああ、もう、戻れぬ、とは、思って居た、が……運命、とは、数奇だな。再び、戻る、ことが出来、た】

 

 ちょっとばかししょんぼりしている伐難。全く気付かず嬉しそうに話す”狩人”。やはり”狩人”には人の心が解らないのではないか。

 

【では、俺は、俺探しに、戻る。もし、前の、俺を、見つけた、ら、教えてくれる、と、助かる】

「あ、うん……分かった……」

【では、な】

 

 蟲とクローを駆使してあっという間に山へ”狩人”は消えて行く。相も変わらずの機動力――

 

「ってあー!! お説教するつもりだったのに逃げられた!!」

 

 と、伐難が気付いたころには”狩人”は姿形も気配も残さずどこかへと消えていた。その後、”狩人”を探そうと伐難が周囲を探索した結果、周辺の凶暴な獣や妖魔が悉く狩りつくされているのを発見し、頭を抱えたのはまた別のお話。




”狩人”:素の身体能力はそこら辺の神の目持ちに全然負ける。数多のアイテムと装備、それに付随するスキル。そして回避技術だけで飯を食っている。ブレーキが機能していない。

伐難:生きてる。割と夜叉という種族自体を”狩人”に救われているので好意的に見てはいるけどそれはそれとして敬意の欠片も感じないし問題児だとは思ってる。可愛い。

妖魔:誠に遺憾である。

ヴィシャップ:汚い花火になって死んだ。粉微塵になったのにしっかり素材を持っていかれている。
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