廃人ハンターのテイワット生活 作:バルファルクの襲撃に怯えるゴリラ
『うっひょー……こらデケェ』
璃月から少々離れてスメールの樹海。新大陸のトラウマを思い出す入り組んだ地形に若干表情が死んでいる”狩人”が、その中でもやけに目立つ1本の大木を見て感嘆の声を漏らす。
『あれ、新大陸の固有種だよな? って事は多分あれが俺だと思うんだが……地殻変動か何かでここまでズレ込んだか? この辺の地形は過去の俺のノートの地形とかなりズレてるな』
”狩人”は蟲とクローを駆使して適当な木の上まで登り、これまた適当に折れなさそうな枝に腰掛ける。そして、上から俯瞰しながらカリカリとノートに大木付近の地形を書き込む。
新天地でやるべきことの最上位付近に位置するこれは、”狩人”にとってはもう慣れた事である。
だから、近くに獲物も居ないというのに完成を間近にして手を止めるのは異常事態と言えるだろう。
『……ちょっと、妙だな』
ノートを閉じ、背中に背負った片手剣を握り込み盾を着ける。
『……食欲は違うな。近いのは共鳴か……? なんだこの引き寄せられるような感覚……』
ハンター特有の足腰を用いて30m程度からの跳び下りの衝撃を完璧に殺した”狩人”は、自らの本能が赴くままに足を進める。言語化は出来ないが、確かに彼を引き寄せる何かがこの付近にある。
というか大木に引き寄せられる何かがある。なんせ”狩人”が一直線に引き寄せられているのだから。
『……うお、この洞よく見りゃ整備されてやがるな』
大木の根本付近。となりのデカイモフモフの映画で幼女が覗いてたとこら辺に明らかに整備された洞があった。
『もしかしなくてもこの奥になんかありやがるな? 俺をここまで引き寄せるんだ、一体何があるのかね』
まさか俺の死体だなんてつまらない答えじゃないと良いが。なんてことを”狩人”は呟きながら洞へと足を踏み入れた。そんな彼の後ろを、トコトコと小さな誰かが着いていくが”狩人”は気付かない。
先程は整備された洞とは言ったが、整備したって洞は洞。それなりに険しい道のりに四苦八苦しながらも”狩人”は洞の奥、つまりこの大木の中心下部へと下る道を進む。
『近づけば近づくほど引き寄せられるな……もしかしなくても罠か? だとすりゃ逃げられねぇな』
片手剣を壁に突き刺したり、クローや蟲を使ったり。様々なモノを駆使して大木の中を進む。ふとした瞬間に古代樹の森を思い出すが、アレとは違い一直線なので迷わなくて良いやと”狩人”は笑う。
『うへ、どんどん強くなりやがるなこの感――おっと、ここか』
最後の下りを下り終え、少し開けた空間に辿り着く。開けた空間の最奥には数本の武器が突き刺さっており、その中心には鎧を着た死体が太刀に貫かれている。
『俺か』
それまさしく、過去の”狩人”である。
『んで、この引き寄せられる感じは……うん、俺の死体だな』
解り切った答えだったなとつまらなそーにしながらも、”狩人”は片手剣を背負いなおしながら自らの死体へと近付く。周囲に刺さる武器を回収しどこかへと消し去りながら、最後に自分の死体に突き刺さった太刀を引き抜きそれもまた溶けるように消し去る。
死体の着ていた鎧すらも、”狩人”が触れれば溶けるようにして消える。
『回収っと。ちょっとくらい盗まれてるかもって思ってたがそんな事は無かったな』
しっかり計14本あったことに安堵しつつ、用は済んだと自らの死体から”狩人”は離れようとして――
『……なんだよ、オイ』
――まだ、ここに何か自分を引き寄せるナニカがあることに気が付いた。
本能の赴くまま周囲を見渡し、なるほどここかと自らの死体を蹴ってどかしたその下に落ちていた物を”狩人”は拾い上げる。
『こりゃ……なんだ?』
落ちていたのはガラス細工のような装飾品。円形のガラス部分に金属のようなもので装飾されたそれは、どこか見覚えはあるモノだった。
『うーん……なんてったってこんなのに……?』
よく解らないが異様に自分がこれに惹かれているという事実に首を傾げながらも、今度こそこの洞から抜けてしまおうと後ろを振り向く。
『うおっ!?』
そこで初めて、自分の背後に少女が立っていたことに気が付いた。白を基調とし所々に緑のアクセントがあしらわれたワンピース。髪は綺麗な白髪。幽霊か何かかと勘違いしかねない見た目の少女に、一瞬”狩人”はたじろぐ。
「あら、その様子だと私が見えて居る様ね。こんにちは」
”狩人”のリアクションを見て自分が見えていることを確信した少女は、にこりと笑って挨拶をする。
(この感じ……マハールッカデヴァータ様に近しい物を感じる……眷属か何かか?)
【……ああ、こんにち、は、お嬢、さん】
それに対して半ば条件反射で挨拶を返す”狩人”。アイサツは大事だと古事記にだって書いているのだからハンターも当然アイサツを嗜む。アイサツ出来ないハンターは大体地雷なんだと”狩人”は4系統で学んでいた。
「ソレに込めた力は少しだから手短に言うわ。この国の首都、一番高い建物に私は居る……外を見てみたいの、エスコートをお願いできるかしら?」
【……どうして、我、に、頼む】
「貴方にしかお願いできないからよ。この国には、私の味方なんて殆ど居ないのだから」
【なるほど、な……我は、ハンター、だ。依頼、と、するの、なら、報酬、を、要求する、ぞ】
取れる金はしっかり取る。”狩人”がハンターとして生きて学んだ鉄則である。
妙なところでみみっちい”狩人”に笑みを浮かべた少女は、もちろんと言って頷く。
「私、これでもちょっと良い身分なの。報酬は期待してくれていいわ」
【そう、か……ならば、依頼、承った】
「ええ、交渉成立ね……それじゃあ、待ってるわ」
そう言って少女は綺麗さっぱり消えた。少なくとも”狩人”の目にはそう映った。
『……ははっ! どこぞの王女様を思い出すねありゃァ』
妙に肝の座った不思議な少女を見て、彼女を見てラージャンを飼おうとしたりしたお転婆王女を思い出した”狩人”はクククと笑いを押し殺す。
死体の下に転がっていたガラスと金属のアクセサリーは妙に好みなので腰のベルトに着けることにしたようだ。
『良いね、悪くない』
いくつかの装飾品と並んだアクセサリーを見て満足気に頷いた”狩人”は、洞を出ようと来た道を引き返し始めた。
『俺の推理力は、老いてますます健在ってか?』
やっぱりあのガキ、マハールッカデヴァータ様と関係があった。つーか、眷属どころか後継だったとはな。国のトップがそこらの浮浪者に駆け落ち依頼だなんて……派手にヤバいな、何考えてんだマジで。
『ま、依頼は受けちまったし……妙に気色が悪いんだこの国は。俺の直感があのガキを連れ出すのが正解って言ってやがる』
隠れ身の装衣のクールタイムをリセットするためにこのスメールシティのど真ん中、巨大な施設すら支える大木に身を潜めて装衣を一旦脱ぐ。
この大木の一番上に、俺の依頼主が居る訳だ。500年間外に出て来てないらしい神様がな。あのガキの言葉を鵜呑みにするってんなら監禁でもされてるんだろう。
『500年大人しくしてたってのは俺を待ってたって事か? 来るかも解らない俺を待ってたって? イカれてるぜ』
大木から町を見渡す。多分だがここに居る人間の大半はあのガキの事を知らないんだろう。つーか、あの頭の機械で気にしないようにさせてる気がする。マインドコントロールなんてする技術力があるならもうちょっとマシな使い方すればいいと思う。
最初気付かずに何人かに姿を晒したのはミスだったかもな。この町……なんならこの国に居る人間のほとんどがそのまま監視カメラになり得るってのは恐ろしい。既に俺の存在はあのガキを閉じ込めてる人間にバレているだろう。
マハールッカデヴァータ様の国の国民をあんまり殺したくはないからと途中からステルスに切り替えたのは正解だった。おかげでこの大木の中の一番偉そうなやつの居る場所に潜入できたしな。
創神計画だなんて……イコール・ドラゴン・ウェポンを思い出すクソみたいな計画だ。詳細までは見れなかったがどうせロクでも無いに決まってる。
下手すりゃ時空の裂け目からミラが来る。そうなりゃ……そうだなァ、稲妻以外が滅びた辺りで俺がなんとか狩れるかどうかってとこだろう。滅亡の化身としてやる気満々で暴れてる時のミラなんて俺ですら触れたくない。
つーか、あの時は完全に向こうが折れた末の和解だったからな。黒いヤツはなんやかんや理性的で助かる。白いのはクソやアイツマジで。
『っと、ボチボチクールタイムが終わるな』
この大木の施設……教令院って言ったか? ここでもうちょっと情報を集めよう。まさかモンハンじゃなくてメタルギアをすることになるとはな。
『さて、ショウタイムだ……って俺にゃあ似合わんか』
”狩人”:なんか面白そうだし興味を惹かれるしとロリの誘拐を企ててる。対人もそこそこやる。ミラ族とは因縁がある。
ロリ:白菜みたいなロリ。何やら企ててる。