廃人ハンターのテイワット生活   作:バルファルクの襲撃に怯えるゴリラ

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嵐へ

「それで、結局どうするんですか」

【……どう、とは】

「ナヒーダさんのことです」

 

 璃月の子供達と楽しそうに遊ぶガキ……ナヒーダを遠目に見ていると、甘雨がそんな事を聞いて来た。

 

【そうだ、な……これは、我の本能、にも近い、ナニカ、からの衝動だが……あの子の、好き、に、させた、い】

「それは……同情、ですか?」

 

 同情ねぇ……確かに生まれてから500年もの間監禁されてたってのはかわいそうだとは思う。助けられて良かったとも……まぁ、そりゃあ少しは思う。

 

【だがまぁ、同情、では、無いだろうな】

 

 俺は同情ってのが嫌いだ。そりゃぁそうだろう、同情ってのはハンターにとっては大抵邪魔な感情でしかない。実際、狩りの最中に同情心を抱いて良い事があった記憶が本当に少ない俺が居るんだから間違いないだろう。

 

 そんな俺を突き動かすナニカが同情ってのは絶対に違うと断言できる。

 

「そうですか……はぁ、貴方は昔から変わりませんね」

【そうだ、ろうか? 我、は、変わった、と、思うがな】

 

 あれから……まぁ数千年経ってるんだ。それで変わってなかったら嫌だよ俺。

 

「ふふっ……まぁ、貴方ならどんな困難でも打ち砕いてしまいそうですし……ナヒーダさんの好きなようにしても良いと思います」

【そう、か】

「ただし、余り派手な問題は起こさないでくださいね? ただでさえスメールからいつ問い合わせが来るのか心配なんですから」

【案ずるな、()()痕跡、は、残して、いない】

 

 そう、俺の証拠はね。

 

「……一体、誰の証拠を残したと言うんです?」

 

 流石甘雨、ちょっと強調したとはいえ俺が俺以外の誰かしらの痕跡を残したことに気付いた。気付かれたのなら仕方がない、そんな顔をしながらポーチから取り出しますはこちら!

 

「これは……割れてて分かり辛いですけど、ファデュイの仮面ですか?」

【ファデュイ、と、言うのか、この仮面の持ち主、は】

「あっ、知らないで罪を擦り付けたんですか??」

【璃月に、害、を、成していた、からな。是非、も、無い】

 

 ファデュイ……ファデュイねぇ……どういう連中なんだろうな。璃月に害を成してたからテキトーに罪を擦り付けただけだから分からねぇ。ナフィスって奴の部屋にあった資料やらで名前を見た気がするが……ま、良いだろ別に。

 

【どう、せ、ロクな奴ら、では、無いだろう、し、な】

「一応スネージナヤの公的な機関ではあるんですけどね……」

 

 それマジ? 国の公的な機関がアレとかそれこそエゲリア様辺りが黙っちゃいないだろ。あんな姿勢をどこでも見せてるんだったらどっかと戦争になっててもおかしくねぇだろソレ。

 

「まぁ、安心しました。相も変わらず、抜け目がないですね」

【我、だからな……と、どうした、んだ?】

 

 ふと足をつつかれた。下を見れば何やら少女がこちらを見上げている。

 

「あの! これ!」

 

 少女が何やら花を差し出してくれる。この花は……チラリとハンターノートを確認する。

 

【……瑠璃百合、か】

 

 俺の記憶にあるソレとは匂いが違うが……この見た目なら瑠璃百合で間違いはないだろう。千年単位で時間が過ぎたんだ、多少の品種改良ってのは行われてるモノだろう。

 

 受け取った花に一瞬だけ視線を向けていたら、その間に花をくれた少女はどこかへ走り去ってしまった。お礼を言いたかったんだがな。

 

「モテモテですね」

【嬉しい、もの、だ……】

 

 イヴェルカーナの力で瑠璃百合を芯から凍らせ、極力見た目を保ったまま保存することにする。今度、解凍して押し花なんかにするのも良いかもしれない。凍らせた瑠璃百合をポーチの中にしまい込んで、ふと子供達と遊ぶナヒーダの方に目をやる。

 

 楽しそうに遊んでいる彼女を見ると、これまた不思議な良い気分だ。

 

 なんと無しに雰囲気が変わった気がして、甘雨の方に視線をやる。なんか真面目な話でもするんかねと思って居ると程なくして彼女は口を開いた。

 

「……ナヒーダさんのスメールでの待遇の件ですが。解ってるとは思いますが私には……いえ、私達(璃月)には何も出来る事はありません」

【そうだ、ろうな。内政干渉、に、当たるだろう】

「ええ、ですからこれは私個人の……璃月七星秘書甘雨としてではなく、”狩人”に弓を教わった甘雨の独り言です」

 

 うーん、この言い草は誰に似たのか……十中八九俺だなこりゃ。

 

「私は、今でも貴方に連れられた冒険を覚えています。あの記憶は紛れもなく今の私の根本を成すモノです……ナヒーダさんにも、そんな記憶を……思い出を作ってあげて欲しいと思います」

【フハッ……嬉しい事を】

「ふふ……もちろん本音ですよ?」

【疑って、は、いない、さ】

 

 いやぁ、面と向かって言われると照れくさい。親戚のおじさんムーブしつつ言い訳の為に連れて行ってたこともあるのにそこまで思われてたなんてなぁ。クッソォ、こんなイイコトを言えるくらいイイ女に育ちやがってよぉ!!

 

【それにしても、そうか、ありがたい、独り言だ、な……そうさな、なるよう、に、なるだ、ろうさ】

 

 うん。結局は俺がやりたいことをやるのが一番ってモンだな!

 

【ああ、なるよう、に、なる】

「その意気です……本当に大きな問題を起こさないでくださいよ?」

【善処する……おっと、お姫様の、おかえりのようだ】

 

 子供達と別れて、ナヒーダがこちらに駆けてきた。どうやら満足したようだ。ずぅっと見てたが特に問題も起きなかった辺り旅先でトラブルを起こす事は無いだろう。もしナヒーダがトラブルを起こした時は絶対に先に俺が何かトラブルをやらかしてる。

 

 自慢じゃないが問題を起こすことに定評があるんだ。

 

「本当に自慢じゃないのね……お出迎えありがとう、騎士様?」

【やめてくれ、我に、騎士、は、似合わない】

「私は結構似合うと思いますけど……」

「私もよ」

【……やめてくれ】

 

 騎士は嫌いなんだよ。騎士道とか非効率なモン背負いやがって。エルガドの騎士連中くらい砕けてないといやだぜ俺は。そも、くだける以前に正々堂々なんてモノとは無縁のこの俺に騎士なんて称号は似合わねぇんだよやっぱり。

 

 と、脳内で言い訳を組み立ててはいるけども。男の子なんだから騎士が似合うと言われると少しうれしくなるんだよな。男の子に産まれたのなら皆憧れるだろ、騎士と特撮ヒーローとラーメン屋。

 

【それで、もう、満足した、のか?】

 

 てなわけで話を逸らす。それにまぁ、そろそろ潮時だからちょうどいい。

 

「(話を逸らしたわね)えぇ、皆ももう帰る時間みたいだし、沢山遊べて満足よ」

【そう、か……ではナヒーダ、よ。お前、は、どうしたい?】

「そうね……稲妻に行ってみたいわ!」

【承った】

 

 近くまで寄って来たナヒーダを抱き上げる。やっぱり軽いな。

 

「無駄だとは思いますが一応。稲妻は今鎖国……入出国を違法にしています」

【そうか、なら我は犯罪者、に、ならねば】

「はぁ……解ってましたけど早速問題を……」

【フハッ、すまんな、甘雨、よ】

 

 ナヒーダの服に着けていたアクセサリーを確認する。オオナズチの力が弱まっているな、ボチボチそこらの仙人に彼女の存在がバレる頃だろう。

 

 スリンガーにセットした照明弾を確認し、空へと打ち上げる。街中だがまぁ、花火のような物だ、許せよ璃月。

 

「ちょ、なにやって――」

【ではな】

「案内ありがとう、楽しかったわ」

 

 何やら文句を言う甘雨を向きながら、ナヒーダをしっかりと抱きかかえる。そしてそこらのちょっとした段差から仰向けに倒れ込むようにして落ちる――その寸前、視界の端に映った黒い影目がけてクラッチクローを発射する。

 

 ガッチリと翼竜の足を掴んだクローを少し巻き上げ長さを調節すれば、あっという間に空の旅の始まりだ。

 

「スリル抜群ね!」

【楽しそう、で、何より、だ】

 

 さて、稲妻まではそこそこの時間がかかる。それに鎖国中らしいって事も考えると……まぁ、雷か嵐辺りを使った船除けをしている可能性が高いだろう。

 

 ま、雷にしろ嵐にしろアマツマガツチの力をちょっとばかし行使すればバレずに上陸できるはずだ。その後は稲妻観光としよう、ナヒーダの望むままにな。

 

【悪くない】

 

 俺ってば女に振り回されるのが意外と性に合ってるのかもしれないな。

 

 とりあえず、オオナズチの力をもう一度込めておこう。稲妻に入って即リスキルはちょっとシャレにならないからな。昔の俺がハンターノートにおっぱいソードに気を付けろって書いてるからそれにも気を付けよう。

 

 

 


 

 

 

「こうして”狩人”は万里の山を仙人かと見紛う程の速さで駆け、岩王帝君の元へと参じ――」

 

 ”狩人”の講談を聞きながら鍾離は茶を嗜んでいた。神を辞め凡人としての生を謳歌するようになった彼女にとって、こういった時間は至福の時間である。

 

 講談も盛り上がり、茶の替えを頼もうかと思った時――唐突に璃月と稲妻の境目付近で強大な気配が出現し、一瞬で消え去った。

 

「……ハハハッ、また何かしているなアイツは」

 

 講談も良いが、こうしてリアルタイムであの馬鹿の行動を知るというのもやはり悪くない。替えの茶に口を付けながら、今”狩人”が何をしているのかと思いを馳せる。ああ、凡人の生活のなんと良い事か……

 

 若干震える鍾離の手。一瞬だけ感じた強大な気配の裏に感じた小さな気配が草神のモノと、とぉっても良く似ていたことは一旦忘れることにした鍾離であった。”狩人”のやらかすことは半分くらい見て見ぬふりをするのが長生きの秘訣である。




”狩人”:ラージャンがキリンの角食って雷使えるようになるんだから自分も古龍食ったら行けないかな~~って思って試したら行けたバカ。実は記憶がかなり怪しいが、過去の自分の書いたハンターノートのおかげである程度取り繕えてる。

甘雨:最後まで問題を起こされたし、これからも問題を起こされることが確定している。ナヒーダへは同情と心配とその他もろもろが混ざった感情を持っている。なお同情も心配もこれから”狩人”へ振り回される事への感情である。

ナヒーダ:可愛い神様。ずぅっとニッコニコ。裏がありそうな気がするが、裏がある。

瑠璃百合の女の子:”狩人”に男性観を破壊された。

鍾離:嫌な予感がする。茶が美味い。
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