ただのんびり生きていたかった人生…半人生? 作:フリスリンク
俺と母さん、そして人に化けたやまたのおろちと一緒にテドンに帰ってきた。……今でも信じられないくらいだ。母さんが介入しなかったら、こんな事にはならなかったはずだ。……まぁ、いいや。何か悪事を起こしたり、裏切ったりしたら死なない程度に懲らしめよう。最終判断は母さんにゆだねる。
今のやまたのおろちの姿は、黒に近い緑色の髪……深緑って言えば良いのか?深緑の長髪の美女といったところ。……まさか、本物のヒミコ様の見た目で過ごそうとしてないか?(詳しい本物のヒミコ様の姿は知らないが)
「やまたの……やーちゃん?ちょっといいか?」
やまたのおろち「……やーちゃんと呼ばれるのは、なかなか慣れんな…なんじゃ?」
「その見た目……もしかして、本物のヒミコ様の姿じゃないだろうな?だとしたら、かなり面倒な事になるんだが?」
やまたのおろち「この姿は化けておらぬ状態じゃ。ヒミコそっくりに化けなければ、この姿になる。お主の母親と同じじゃ。あやつは魔物である己の姿を、人間に当てはめた場合の姿にしておる。……人間の姿になろうとすると、勝手にそうなるものよ。」
そういうモノなのか…じゃあ、意図した人に化けられるのは結構凄い能力だな…え?やまたのおろちって女なの?(どうでもいい)
「いつから他人そっくりに化けられるようになったんだ?」
やまたのおろち「そうじゃな……バラモス様の命令で、ジパングを支配せよと言われバシルーラをされた後、ジパング代表であるヒミコを喰らった時からじゃの。モシャスとは違う感覚じゃ。」
バシルーラって、敵にとって大事な移動方法だったんだな。
ヒミコ様を食べた後………ジパングの村人が言っていた、神通力ってヤツか?それを受け継いだとか……確認しようがないな。
「今後、絶対に悪用するなよ?」
やまたのおろち「分かっておる……と言っても信用がない以上、後の行動で示すとしよう。それで判断しておくれ。」
ネドラ母「あ、いたいた!やーちゃん、ちょっとこの髪留めをつけておいてね?」
ん?母さんの持ってる髪留め……母さんの魔力を感じるぞ?まさか……
やまたのおろち「ん?髪留めじゃと?そのゴムの事か?どうやってつけるのじゃ?教えておくれ。」
ネドラ母「普通に髪の毛を束ねて……今の私のようにすればいいわ!ポニーテールよ!!」
やまたのおろち「………………こうか?」
ネドラ母「そうそう!そんな感じよ!これからいろんな作業をするんだから、髪が邪魔にならないようにしておかないとね!」
絶対GPSだ!?それらしい理由でつけさせてる!?
……同情するわ。
やまたのおろち「ところで……もう、やーちゃんと呼ばれる事はなんとかして慣れようと思っておる。しかし、せめて別の名前をつけてくれぬか?わらわの存在も公にしないのじゃろ?やまたのおろちではなく、別の名前が欲しい。……愛称ではなくな。」
……俺もやーちゃんと呼ぶのは、今の心情的に嫌だ。
「ジパングから来た女性……ジパングらしい名前が良さそうだな。」
ネドラ母「えー?やーちゃんだけじゃダメなの?」
やまたのおろち「……ダメじゃ。考えてくれ…」
「じゃあ、弥美(やび)とかどう?そこから、愛称でやーちゃんで良いんじゃない?」
やまたのおろち(以下弥美)「うむ!それでよい!感謝するぞ!今からわらわは弥美じゃ!!」
ネドラ母「……どのみち、私はやーちゃんって呼ぶから関係ないわね!」
弥美「関係大ありじゃ!?お主が連れてきたんじゃろうが!?」
……母さん、責任もってくれよ?俺も適当に名前考えたけどさ………まあ、母さんからは実力的にも、呪い的にも逃げられないだろうから大丈夫か。……俺も監視はするけどな!!
…………………………………
レイアムランドに来た。当然パープルオーブを捧げるために……….なんだけど、なんか卵が光輝いてないか!?
塔を登ると、やっぱりラーミアの卵が光輝いていた。
え!?何事!!??
ベロニカ「あ!!ネドラさん!!見てください!!この光の力を纏った卵を!!強い力を感じますし、ラーミアの鼓動が感じられますよ!!」
「確かに、ラーミアの卵から強い気配を感じますけど……もしかして生まれます?」
セーニャ「い、いえ……オーブじゃないと卵は孵らないので生まれませんが……私がオーブの台座に、ひかりのたまを三つ置いてしまったからこんな事に……」
「……まぁ、害が及んでるわけじゃなさそうですし、これはこれで良いんじゃないですかね?」
オーブの代わりに、ひかりのたまを置くとこうなるのか……知らなかった。というか、知れるわけないだろ!?……て、そうじゃない。用事を忘れるな。俺。
「今回はパープルオーブを持ってきたんですが……」
セーニャ「え!?本当ですか!?見せていただいてもよろしいですか?」
「もちろん、どうぞ!」
セーニャ「……確かにパープルオーブです!!ありがとうございます!!ネドラさん!!ベロニカ、ひかりのたまを一つ祭壇からどけますよ?」
ベロニカ「………もっと光輝くラーミアの卵を見ていたいんですが。」
セーニャ「ベロニカ!?使命を忘れてしまったんですか!?本当に置かなければならないパープルオーブが、手元にあるんですよ!?」
ベロニカ「さすがに冗談ですよ?では改めて……パープルオーブを探しだしてくれてありがとうございます!!ネドラさん!!」
「どういたしまして!では、お願いします!!」
セーニャさんがパープルオーブを受け取り、台座に捧げた。……おお!やっぱり光るんだな!!……中央の卵が光輝いているせいで、パープルオーブの光が霞んでしまっているが……
「これで残るはイエローオーブとレッドオーブなんですけど……場所が分からないんですよね…」
ベロニカ「確か、以前に話していた時は……両方とも海上にあるんでしたよね?」
「はい、エルフの女王様のおかげで分かった事なんですが……移動していて場所を特定できないらしいんですよね。」
セーニャ「何か他にも情報があればいいんですけど……ネドラさんの知る物語では、どこに存在していたか覚えていますか?」
「レッドオーブは海賊が手に入れて、海賊のアジトの隠し倉庫に置かれるんですよ。でも、それは勇者が16歳になって旅立つ後で見つかるので……現状は不明ですね。海賊のアジトもあるか確認してましたけど、今はないようですし……」
ベロニカ「イエローオーブはどういう方法で手に入るんですか?」
「イエローオーブが一番分からないんですよ……さっきも言った通り、勇者の旅立ちの後で見つかるので。しかも、その見つかり方が特殊すぎて、情報も全然ないんですよ。」
イエローオーブは、ゲームの中でも奇跡の連続だからなぁ。俺というイレギュラーもいるし、どうなるか分からない。というか、イエローオーブだけ今まで忘れてないのに、場所が分からないのはヤバくないか!?
セーニャ「特殊というと?」
「エベンジアの西に老人が住んでて、町を作ろうとしてたんですよ。でも、人手が足りなすぎて町作りが進んでいない状態で、勇者一行に会うんです。その勇者一行が商人を老人に預けて、村に、町に発展させていくんですよ。その過程で別の旅の商人から、イエローオーブを勇者一行のために買って、勇者たちが手に入れるというのが物語なんですが……」
ベロニカ「……不確定要素が多すぎますね。」
セーニャ「ないよりはマシな情報ですけど、これでは探しようがありませんね……」
「現在、エルフの里が魔物の襲撃を受けて、エルフの女王様が対応に追われているので、オーブの探知もできないんです。」
せっかくやまびこのふえを持っているのに、全然有効活用できていない。……どうすればいいんだ?分からない……
「俺がいなければ、知ってる物語通りに進んでいたと思うと……本当にごめんなさい…」
ベロニカ「ネドラさんは悪くありませんよ!!」
セーニャ「そうですよ!?勇者が赤ちゃんで満足に動けない中、私たちをずっと助けてくれたじゃないですか!!……それにあなたの知っている物語よりも早く、オーブが集まっていますし、大魔王ゾーマに対する反抗もできているんです。どうか、自分を責めないでください。」
「……ありがとうございます。そう言ってくれて、嬉しいです。」
落ち込んでる場合じゃない。できるだけの事をやるしかない。でも、見当もつかないのが……厳しいなぁ。
「そういえば、オーブについて聞きたいんですけど。オーブって替えは利かないんですかね?そもそも、オーブがどういう材質でできているかも分からなくて。」
ベロニカ「オーブは神々が作りし力の宝玉です。ラーミアもまた神々の手で作られた存在なのですが…」
セーニャ「………今思えば、完全体のラーミアを作れば良いものを、勇者の試練としてラーミアの卵を残したと言われています。」
あ、あれ?セーニャさん?ちょっと神様を下げるのは止めません?
ベロニカ「オーブもまた勇者の試練として、神々に作られた後に、世界各地に散らばせたそうです。」
セーニャ「神とはいえ、考え方が浅はかですよ!?これで勇者がラーミアの復活の過程で、死んでしまったらどうするんですか!?しかも、今はネドラさん達に負担がかかってしまっています!!大魔王ゾーマという、神々も恐れている存在がいてこちらにも被害が出ているというのに、何故今も傍観して…………………」
「セーニャさん!?それ以上は良くないです!!」
ヤバい!?セーニャさんから怒りのオーラが!?確かに勇者の試練のためだったら、悠長に構えやがってとは思うけども!?セーニャさんの立場で言っちゃいけない!!??
セーニャ「あ……申し訳ございません。取り乱しました……」
「お、落ち着いてくれてなによりです。」
ベロニカ「セーニャの言い分には賛成ですが……こうなってしまっては仕方がありません。神々の力で作られたオーブは替えが利きません。例え、神のつかいである竜の女王様のひかりのたまでも。……つい、試してしまいましたけどね。」
ラーミアの卵を見る限り、ひかりのたまでも効果はあったと思うけどな。あんなに光輝く卵なんか初めて見た。
「たぶん、光の力が増すという意味では効果はあったと思いますよ?」
ベロニカ「では、まだ空いている台座には引き続きひかりのたまを置いておきましょう!!」
セーニャ「………最初にひかりのたまを興味本位に置いたのは私ですけど……ベロニカ?楽しんでませんか?」
ベロニカ「楽しんではないですよ?ただ、光の力が強まる事が嬉しいだけです!!」
セーニャ「………そうですか。」
イエローオーブもレッドオーブもどうにか、場所が分かれば良いんだが……今はキャリーさんとも連絡がつかないし、後回しだな……
今のところ、空いている台座にはひかりのたまが置かれている。……これで生まれて欲しいな……それとも、正規のやり方じゃないから、生まれたとしてもデメリットがあるとかだったら怖いな……考えないでおこう。少なくとも、今はどうする事もできないんだから。
……………………………………
レイアムランドからテドンに帰ってきたけど………どういう状況だ?やまたのおろち事、弥美が倒れている。この村の入り口で何があったんだ?
「大丈夫か?弥美。なんで倒れてるの?」
弥美「お、おお。ネドラか。帰ってきておったのか。……そこら中にいるメタルスライムと、特訓をする事になったのだが………わらわの体力がもたず、この有り様じゃ……」
……いくら、ボス級の魔物でもこの村のメタルスライムには勝てなかったか。
弥美「何故、こんなにも強いメタルスライムが多いのじゃ?」
「ダーマ神殿で修行したメタルスライムのリーダーであるメタランと、母さんとの修行に耐え続けたからだよ?今じゃ、母さんが何も言わなくても修行するから、勝手に強くなるんだ。」
弥美「強くなるにしたって、限度があるじゃろ……!!とんだ魔境じゃな、ここは……」
まぁ、他では見られない光景だよな。俺はもう慣れたし、常連客も慣れてきてるし。
メタラン「ネドラ。弥美の修行を遮っちゃダメ。これから、この村を守るための戦力だから、やるしかない。サランにもキツくやってくれって頼まれてるし。」
「分かった。弥美。回復魔法はかけてやるから、修行頑張れ。」
弥美「うう……感謝するぞ。畑仕事の後の修行はかなり堪えるのう……」
メタラン「老人くさい事は言わない!私たちについてきて!」
弥美「ろ、老人!?わらわになんて事を言うのじゃ!?って待て、待ってくれ!?」
なんとか諦める事なく修行しているし、良い傾向だと思う。まだ始まったばかりだけど、どうなっていくかな?
……………………………………
~~二週間後~~
……今日も全然オーブが見つからなかったな…キャリーさんに聞いても、オーブの位置までは分からなかった。だいおうイカとかテンタクルスを食べつつ、海を探しまくったんだけどなぁ……竜の女王様の所に行って、聞いてみても収穫なかったし(新たに作りまくったひかりのたまを大量に渡された)。ちなみに、アンやコハビンさんには、ちゃんとひかりのたまを渡す事ができた。エルフの女王様の分のひかりのたまも、コハビンさんに預けたし、大丈夫なはずだ。
ん?この気配は……弥美と父さん?
弥美「これで、どうじゃあぁぁ!!」
ネドラ父「まだまだ甘いな!もっと打ち込んでこい!!そんなんじゃあ、またメタラン達にしごかれるぞ!!」
弥美「に、人間も強いとか、この村はいったいどうなっておるんじゃあぁぁ!!??」
修行しながら嘆くとかいう器用な事してるな…この村に住んでいる純粋な人間って、よくよく考えたら父さんしかいないな。……しょうがないけどさ。
ネドラ父「お!ネドラ!!ちょうど良い時に帰ってきたな!弥美さんを鍛えてやってくれ!いろんなヤツを相手にすれば、より幅広い戦い方ができるからな!!」
「それは別にかまわないけど、弥美はどうする?」
弥美「す、少しだけ、休憩、させて、おくれ。ツラい、のじゃあぁぁ……」
……俺から見ても、良く頑張ってると思うよ?この二週間でだいぶこの村に体が慣れてきたっぽいし。
……………………
現在、テドン南の修行場。
弥美に修行をつけている。結構、根性がある事が分かった。
弥美「ハァ、ハァ、ハァ……ど、どうじゃ!?力の使い方や体の使い方、魔法はマシになったか!?」
「うん、少しずつだけど強くなってると思うよ?」
弥美「ぐぅ……!これで少しか……お主たちは本当にすごいのう。わらわの見てきた世界が、いかに小さいかを実感させられるな……ぬるま湯に浸かっておったという事か。」
少しずつだけど、弥美は強くなってる。……まさか、俺が殺そうとしていたやまたのおろちを鍛えたり、道具の使い方とか教える事になるとはねぇ……ちょっと聞いてみるか。
「どう?テドンの生活に慣れてきた?」
弥美「……まあな。最初はほとんど分からなかったが、今では畑仕事も服屋の手伝いもメタルスライム達からお墨付きをもらってな。……わらわとした事が、嬉しさを隠しきれんかったわ。おそらく、ジパングの村人たちもやっていた事なんじゃろうなぁ……」
たった二週間で、生活に慣れるとか凄いよ。たぶん、弥美は戦闘に向いてない。生活を支える後方支援が向いてそうだ。メタランも言ってたしな。
弥美「人間の営みを、わらわが汚れながらやるとは思わなんだ。この村では、メタルスライム達の営みかのう?……それでも、やる前の忌避感などとうに消え去ったわ!」
「なるぼとね。確かに出会った時よりはマシになってると思うよ?」
弥美「ネドラ…お主なかなか厳しいな。まぁ、わらわが今までやってきた事を考えると妥当か。」
だいぶ落ち着いてきたしな。あれだけ右往左往してた面影がない。本当に、たった二週間で変わったな……母さんの判断は正しかったのかもしれないな。俺じゃあ、こんな敵を生かすなんて考えもしなかった。敵意のない魔物は、見逃してたけどね……
「村に来る旅人や観光客、アンが連れてくるエルフ達に好かれてたよ?良い人だってね。」
弥美「……そうか。頑張ってみるもんじゃのう。最初は、何故わらわがわざわざ挨拶をしたり、道案内をしたりしなければならないのかずっと思っておったが……慣れた今ではそんな事も思わなくなったな……ヒミコに成り代わって生きていた頃とは大違いじゃが……………今の方が充実感がある。」
「そうか………もう人を食べたいとかそういう衝動はないの?」
弥美「ないな。人間よりも美味しい魔物の味や、人間の食べ物の味を知ってしまったからな………そもそも、サランの呪いで人間を食べる事はできぬがな。」
………魔物食にハマったか。まぁ、洞窟とかに行けばたくさんいるしな。
「ジパングで、人の食べ物は食べた事なかったの?」
弥美「当時のわらわは、人間を見下しておったからな。人間の食べる物を毛嫌いしていたのじゃ。……ジパングの食べ物は質素でな、人間の方が旨かったのじゃ。お主にとっては考えられぬ事じゃろうがな。」
………もう、信じても良いかもな。母さんの呪いで暴れられないとはいえ、普通にこの村の仕事を受け入れて生活をしているし。……本人には言わないけどな。
修行を終えて弥美と一緒に村に帰った。弥美は料理担当のメタルスライム達の料理がお気に入りのようで、凄く美味しそうに食べていた。
………これが、あのやまたのおろちなんだぜ?知ってる人が見たら、あり得ない光景だ。
メタラン「明日はもっと修行を厳しくするから!弥美、逃げないでね!!」
弥美「どこに逃げ道があるというんじゃ!?やらぬと言っても無理やりやらせるじゃろうが!?」
なんだかんだメタランとも打ち解けてるみたいだし、大丈夫だろう。それはそれとして、監視は続けるけどね!!
サマンオサ関連や、ガイアのつるぎについて忘れてしまっているネドラ。ガイアのつるぎに関しては、もうバラモスを倒してしまっているのでしょうがないかもしれませんが……
やまたのおろちがテドンに馴染みました。テドンに住むみんなやアン、コハビン、レイアムランドの二人の巫女も知っています。
現在のテドンでは、やまたのおろち事弥美は最弱です。