ただのんびり生きていたかった人生…半人生?   作:フリスリンク

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ラーミアの祭壇の中心に立ったネドラ。どうやら、何かが起こったようです。


第30話 魂の残滓

 

 

何もない。真っ白な場所だ………………………

 

 

 

………この空間はなんだ?どこなんだ?確か、眩しい光に包まれて……ラーミアの祭壇に立っただけで、こんな真っ白な空間に飛ばされたのか?

 

 

ちゃんと、俺の体は動くな。進んでみよう……何か分かれば良いけど……

 

進んでも進んでも景色は変わらない。ラーミアの祭壇に立ったみんなは、これを経験してたのか?でも、ベロニカさんを見た時は、一瞬で終わったように見えた。この空間と外の時間の流れは違いそうだな。

 

 

???「ここだよ。ボクはここだよ。」

 

……声がするな。あっちか?一面真っ白だから、方向感覚がつかめない……

 

 

 

???「そのまま、真っ直ぐ。ここだよ。」

 

だんだん声が大きくなってきた。言われた通りに来ているが……景色が変わらないから、不安だな…

 

 

 

???「もうすぐ会える。ここだよ。ネドラ。」

 

 

声の主は俺を知っているようだ。なんだか、心なしか幼い声だな。またバラモスナイトみたいに、知らないヤツがいるのか?……でも、敵意を感じない。

 

 

………………

 

 

声の主の場所にたどり着いた。声の主は体が透けている……しかも、小さい子どもだ。長い黒髪で、龍の角と尻尾が生えている人。

 

…………もしかして…………

 

 

「「あなたの魂の周りに、少しだけ幼い魂の残滓を感じます。」」

 

 

『その体を見るに、元々その体で育つはずの魂の残滓を感じます。』

 

 

「俺……じゃないな。君が、本物の……本来のネドラか。」

 

 

本来、この体で生きていくはずだった魂。三歳ぐらいで魂が体に耐えきれなくなって、残滓になってしまった本当のネドラ。

 

 

魂の残滓「……ビックリしないんだね。もっと慌てたり、おまえは誰だ!!って言ったりするもんだと思ってた。」

「なんとなく、予想はしてたんだよ。俺は異世界の魂で、俺の……じゃないな、ネドラの体に憑依したんだから。魂の残滓については、ベロニカさんとセーニャさん、キャリーさんに言われてたから、存在は知ってたし。何かしらあるんじゃないかってな。……偽者の俺に用があったんだろ?」

魂の残滓「キミだってネドラだよ?ボクは死んじゃうはずだったんだから。キミの魂があったから、お父さんもお母さんも悲しませなくて済んだんだよ?」

 

 

それは結果論だ。本物のネドラから人生を奪って、好き勝手にやってたんだから。

 

魂の残滓「ボクだったら、絶対にできなかったことをキミはやってくれたんだ!生きてくれてありがとう!!」

「この世界に似た物語を知ってるんだぞ?この世界に生きるヤツからは、絶対にズルいって言われる事だ。……その物語の知識を使って行動したヤツに感謝するなんて……しかも、俺の意志でやったわけじゃないとはいえ、体を奪った張本人に。普通は恨まないか?」

魂の残滓「言ったでしょ?ボクは本当だったら死んじゃうはずだったって。恨むわけないでしょ?それに、お父さんやお母さんを苦しめるようなことはしなかった。キミがいなかったら………お父さんもお母さんも悲しんでたんだろうね……」

 

 

確かに父さんと母さんは、当時熱を出して意識を失ったネドラのためにいろいろしてくれていた。……そこで、死んでしまっていたら悲しんだろうな。

 

魂の残滓「何度も言うよ?ボクはキミを恨むどころか、感謝をしてるんだ!キミがボクの体に来てくれたから、ここまで来れたんだ!ボクの魂がなくなるどころか、今までキミがやったことも、キミの知っている物語も知れた!本当だったら知らずにボクの魂が消えるはずだったのに。……たくさん、面白いことが知れたんだ。十分すぎるくらいにね。」

「今からでも遅くはないはずだ!俺と君が入れ替われば、君が……本物のネドラがこれからを生きられるはずだ!!」

 

 

俺だって死にたくない。死は怖い。前世で死にかけた事があった時、凄く怖かった。ずっと、生きていたいと思っていた。

………でも、それはこの子を差し置いて願っていい事じゃない。このまま、俺が消えれば………痛いのも嫌だし、死ぬのも当然嫌だけど、楽に痛みなく死ねるんだったら悪くはない。未練もこの子ほどないはずだし。

 

魂の残滓「……ボクのせいで、キミは苦労しちゃったのは分かるよ。」

「君に比べたら苦労なんてしてない。ずっと、消える恐怖を味わってたんだろ?」

魂の残滓「そうでもないよ?ボクはとっくに受け入れてる。それに………もうすぐ消えちゃうし。」

 

 

ハァ!?何を言ってるんだ!?消えるって!?どういう事だよ!!??

 

「なんで消えるんだよ!?」

魂の残滓「ボクは本当だったら、とっくに消えてる魂だよ?キミの魂のおかげで、ここまで消えずに済んだんだ。でも、それももうおしまい。時間がもうないんだよ。」

「そんな!?どうにかならないか!?」

魂の残滓「こうやって、キミとおしゃべりができたのは奇跡なんだよ。ボクにそんな力はないしさ。キミがラーミアの祭壇に立って、光の力を受け取ったから、ボクがこうしてその力を使っておしゃべりをしているだけ。……祭壇に立たなければ、キミは知らないまま、しゃべれないボクは消えてたんだ。」

 

 

ラーミアの祭壇の力のおかげで、今も延命できてるのか!!なら、このままいれば!!

 

「だったら、まだ時間はあるはずだ!!ネドラの体は祭壇の中心に今もあるはずなんだ!!光の力をもっと受け取れれば………!!」

魂の残滓「……受け取ってギリギリなんだ。もう魂の限界はごまかせないんだ。……ありがとう。ボクのことをそんなに考えてくれて。」

 

 

何か方法はないのか!?本物のネドラが消える前にできる事………そうだ!!

 

「俺の魂を取り込めないか!?そうすれば延命できるかもしれない!!確証はないけど、やる価値はある!!」

魂の残滓「本当に、キミは……死にたくないんじゃなかったの?毎回、修行でもそうだけど、死にに行くようなことしかしてないよ?」

「今はそんな事言ってる場合じゃないだろ!?時間がないんだろ!?早く!!!」

魂の残滓「………もう…分かった。手を出して。」

 

 

やっと、その気になったか。……思えば楽しい人生だったな。いや、半分は龍の魔物の血を引いているから半人生か?

 

「……こうか?」

魂の残滓「じゃあ、いくよ!!」

 

なんだか力がみなぎってくる……じゃないだろ!?俺がネドラを吸収してどうするんだ!?

 

 

「お、おい!?ネドラ!?君がさらに透けて………」

魂の残滓「ボクよりもキミの方が魂の力が強いんだ!吸収しようとしても、逆に吸収されるだけ!!どのみちキミに生きてもらうしかないんだよ!!だったら、ボクの全てをキミに送るだけだ!!」

「おい!!??ネドラ!!!諦めるなよ!!!」

 

どのみちダメなんて……どうすれば良いんだよ!?

 

 

魂の残滓「頼んだよ!!ネドラ!!もう一度言っておくけど、キミもネドラなんだからね!!ボクが生きられなかった分まで生きてよね!!」

「ま、待ってくれ!!??行かないでくれ!!!」

魂の残滓「ネドラ!!キミを応援してるよ!!だから、ボ…のこ…はかんがえ……ていい!!まえを……!!!」

 

 

 

………消えてしまった…俺のせいで……もっと、何か方法があっただろ!?この世界は現実だけど、魔法や魔物、精霊、神の概念があるファンタジーの世界なんだぞ!?俺の知らない方法があったはずなんだ!!

 

 

俺のバカ野郎!!!!!

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

…………だいぶ暴れちゃったけど、おかげで冷静になれた。周りは相変わらず真っ白だから、被害も分からないけど……

 

俺のおかげで延命できたらしい、本物のネドラは消えてしまった……限界なのは本当だったんだろうな。「応援してる」か……本物のネドラは消えてしまったし、そんな事を言い残したんだ。これで、俺が後追いなんてしたらきっと怒られるな。死にたくないけど……本物のネドラが言ってたな。いつも死にに行くような事しかしてないって。しょうがないだろ!?大魔王ゾーマに目をつけられたも同然なんだから!?やらなきゃ死ぬんだよ!!!

 

 

………一人で突っ込んでても寂しいな。どうやってこの空間から出るんだ?早く出たいんだけど………

 

お!?なんだ!トビラがあるじゃないか!!……さっきまであったか?他には何もなさそうだし……開けちゃえ!!

 

 

…………………………………………………

 

一方、レイアムランド……

 

セーニャ「……大丈夫ですかね?ネドラさん。ずっと祭壇の中心に立ったまま、動きませんが……ネドラさんが祭壇の中心に立ってから、かなり時間が経ちましたよ……?」

ベロニカ「祭壇から力が送られているのは分かるんですけどね……今のネドラさんから、先ほどよりも強い光の力を感じますし。最初は凄く強い気配を感じましたが、今は落ち着いてますね……」

メタンガ「しんぱいしても、いみないぞ?オレたちは、ただまつだけ。」

 

 

しかし一向にネドラが動き出す様子がない。メタンガ以外のメタルスライム達も心配をし始めた。

 

ベロニカ「……寝てる……わけじゃないですよね?」

セーニャ「……分かりません。目を閉じたまま立っていますけど。瞑想状態になっているのでしょうか?」

ベロニカ「少しだけ、ネドラさんの体を揺らして見ましょうか!」

 

ベロニカが、立ったままのネドラの肩を掴んで揺らした。

 

ベロニカ「ネドラさん!……あれ?ネドラさん!?なんでこんなにも揺らしてるのに何も反応がないんですか!?」

セーニャ「ちょっと!?揺らしすぎですよ!!……ってベロニカ!!ネドラさんの魂が!?」

ベロニカ「あ!?ネドラさんの魂に寄り添うようにしてた、幼い魂の残滓が!?……成仏した!?」

セーニャ「ネドラさんの身に何が起こっているんですか!?ただでさえ、強いネドラさんの魂がより強固なものになりましたよ!?」

メタンガ「オレたちは、そんなのあったか?」

セーニャ「光の力はもちろん、他の力も強くなりましたが、魂に変化はありませんでした!!ネドラさんだけですよ!?」

ベロニカ「ネドラさん!?目を覚ましてくださいよ!?いったい何が起きているんですか!?」

 

 

一心不乱にベロニカがネドラの体を揺らすが、何も反応がない。息はしている。だが、メタルスライム達がすごく心配をし出し、慌てている。

 

メタンガ「おちつけ!!あせってもいみがない!!いまは、まつだけだ!!」

セーニャ「で、ですが……!!ベロニカ!!私も手伝いますから、ネドラさんを祭壇から移動させましょう!!」

ベロニカ「分かりました!!ネドラさん!!失礼しますよ!!………………!!!!」

 

 

ピカッ!!!!!

 

 

ベロニカ「眩しい!?突然何が!?」

 

 

ゴゴゴゴゴ………!!!!!

 

ベロニカ「キャァァァァ!!??今度はなんですか!?」

セーニャ「すごい圧を感じます!!!大地や空気が震えているのですか!?私たちの時はこんな事ありませんでしたよ!?」

メタンガ「すごくビリビリする!?ネドラはどうなってる!?」

ベロニカ「ネドラさんが発するオーラが大きくなっています!!魂がより強固なものになったからでしょうか!?」

セーニャ「光の力もさらに強くなっています!!祭壇の力もあるでしょうが……こんな事になるなんて!?」

メタンガ「ネドラ!!しっかりしろ!!ネドラ!!!」

 

 

………………………………………………

 

 

メタンガ「…ド…!!…い!!……ラ!!!!」

 

う、うーん?お!?ラーミアの祭壇だ!!……戻ってきたのか。俺は……立ったまま気絶した感じか?

 

メタンガ「ネドラ!!おい!!ネドラ!!!!」

「な、なんだ!?メタンガ、何かあったのか!?」

メタンガ「ありすぎだ!!……おきてよかった。みんな、しんぱいしてたぞ?」

 

え?何か起こったのか?心配?……もしかして、無意識に暴れてたのか!?

 

セーニャ「良かった……ネドラさんが無事に起きましたし、圧も気配も元通りに……」

「いったい俺は何をしてしまったんですか!?暴走してたんですか!?俺は!?」

セーニャ「い、いえ……暴走ではありませんが……急激なパワーアップによる強い威圧感と、強い気配でしょうか?大地と空気も震えている感じでして……魂が強固なものになった事は分かったのですが……」

 

……暴走はしてなかったのか。じゃあなんだ?意識がない状態で、威圧感と気配をばらまいたのか?……あの真っ白な空間って、精神世界だよな?そこで、暴れまくったから表に出たのか!?

 

「すみません……ちょっと真っ白な空間に漂ってまして……たぶん、精神世界だと思うんですけど、暴れちゃったんですよね……」

メタンガ「まっしろ?せいしんせかい?オレたちは、そんなのなかったぞ?」

ベロニカ「私もそんな所には行ってませんよ?」

セーニャ「私もです。……もしかして、魂が強固になった事と関係があるのでは?」

 

魂が強固に?……本来のネドラが送り込んだ力の影響か?みんなが、あの真っ白な空間を見ていないという事は……本来のネドラが干渉したからか?

 

「……ベロニカさん、セーニャさん、俺の中にある魂の残滓はどうなりましたか?」

ベロニカ「ネドラさんにあった魂の残滓は、成仏しました。」

セーニャ「その後に、ネドラさんの魂がより強固なものになったのです。」

 

……そっか、成仏したんだ。アイツの分まで、ネドラとして生きないとな。

 

「ちょっと、ここで休憩しても良いですか?疲れてしまって……」

ベロニカ「構いませんよ?きっと、負担が大きかったと思いますし。」

セーニャ「私たちの時とは全然違いましたからね……本当にご無事で良かったですよ……」

メタンガ「もうだいじょうぶそうだな!オレたちは、もちばにもどるぞ!!みんな、いくぞ!!」

 

 

……メタンガ達が塔から降りていく。さて、話すか。二人に。

 

 

…………………………

 

 

俺はラーミアの祭壇の中心に立った後の話を、ベロニカさんとセーニャさんに話した。

 

ベロニカ「……なるほど。だから、魂の残滓は成仏したんですね。」

セーニャ「本物のネドラさんから力を貰った事によって、魂がより強固なものに……それならば納得ですね。」

 

やっぱり、俺特有の状態だったんだな。……本物の……本来のネドラと話せて良かったな。

 

ベロニカ「あなたもネドラさんなんです!!特に、私たちの知っているネドラさんは、あなただけなんですよ!!生き抜かないとダメです!!……落ち込まないでくださいね?」

「分かってますよ。精神世界で、イヤというほど暴れて冷静になれましたから。……すぐに死んだら、それこそ怒られちゃうと思いますし……頑張りますよ。」

セーニャ「ネドラさんの中で、区切りがついたのなら良いんですけど……ネドラさんって、一人で背負い込みますし……」

 

そ、そんなに信用ないですか?俺は……?周りに頼りっぱなしなんですけど……?

 

 

この後、自分の中で強くなった光の力に集中しながら、ビーストモードの要領で引き出してみた。ベロニカさんとセーニャさんが言うには、強い光のオーラに包まれていて、体が光輝いていたと言っていた。……光のオーラは分かったけど、光輝いていたのは実感がなかったな。慣れるために修行しよう!!強くなったんだから!!

 

 

 

興味本位で、もう一度ラーミアの祭壇の中心に立ってみたが、俺の力が増すだけでさっきみたいな事は起こらなかった。……アイツの最初で最期の干渉で、あの真っ白い空間に飛ばされたんだな。絶対に……生き抜いてみせる!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ネドラから魂の残滓が成仏し、異世界の魂のみになりました。魂の残滓から力を送られているので、実質融合に近いですがネドラに自覚はありません。
そもそも、三歳の頃に憑依した時に三歳までの記憶が流れ込んでいる時点で、融合の兆しはありました。




本来のネドラ

魂が龍と人間のハーフである体に耐えきれず、下の世界で起きていた事と同じように消えかけていた。この作品の主人公の魂とネドラの体は相性がとても良く、引き寄せられるように憑依する形となった。
異世界の魂が経験した事や思った事は、本来のネドラも知っており、楽しんでいた。三歳児の頃よりは魂が成長しているが、まだ幼い。自分が消える事はとっくの昔に受け入れており、異世界の魂に全てを託すつもりだった。
大量のひかりのたま、ラーミアの祭壇の改造がなければ話す事すらできなかった。
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