ブルーアーカイブ 〜ハーメルンの狼〜 作:Su-57 アクーラ機
2年前。キヴォトス
息も絶え絶えに走り続けたが、それももう限界だった。このまま後ろへ下がろうものなら、俺達は崖から真っ逆さま。前に進めば、数え切れないほどのPMC兵どもが待ち構えている。
万事休すとは、まさにこのことらしい。
「ゲホッゲホッ! ぐ、ぅ……!」
「隊長っ!」
うめき声を上げて膝から崩れた隊長の元に駆け寄る。右脇腹を押さえるその手からは、すでに大量の血が流れていた。
「へへ……。キヴォトス中のレディーが悲しむな……」
「何言ってんです! あんたモテるどころか彼女ができたためしもないでしょう!」
「後輩のくせに言いやがる……。そこはもうちょっとオブラートに包めよ……」
「そんだけ軽口叩けるなら、まだまだくたばりませんね!」
軽口に軽口を返しながら、俺はファストエイド・キットから止血剤と包帯を取り出す。が、しかし――
「よせ、もう間に合わん。……流しすぎた」
白くなっていく唇を必死に震わせながら、隊長は弱々しく首を振った。
雑草の生えまくった地面は染み込んだ血で赤くなっている。その言葉の通り、誰がどう見ても手遅れだった。
「ここもじきに包囲される。マモル、お前は逃げろ……!」
「なっ、何を言って――」
「いいから聞けっ……!」
両手で顔を掴まれ、引き寄せられたことで俺の言葉は無理やり中断させられた。
「っ……」
「お前は俺が見てきた中で一番優秀な奴だ。才能も腕っぷしも俺が保証してやる。だから頼む。こんなところで無駄死になんてするなっ……」
「おい! こっちだ!」
「逃がすな! 囲め!」
そう遠くない距離から聞こえたPMC兵の怒号に隊長は「もう来やがったか……」と忌々しげに舌を打つ。
「野郎が揃いも揃ってゾロゾロと……。来るなら可愛い女の子にしろってんだ……」
力が抜けて、もうまともに体も動かせないのだろう。
バリッ、バリリッ……!
そんな音を立てて
「失くすなよ」
落とした視線の先にあったのは、分厚い
「……なあ、覚えてるか? お前が入学してきたあの日、俺は『なぜこの学校を選んだ?』って訊いたよな……」
ふと、昔を
「そしたらお前、『守りたいもののために戦える、そんな戦士になるため』って即答してきてよ……」
「覚えてます、覚えてますから! だから無理にしゃべらないでください!」
「忘れてないなら、いい……」
「クソッ、血が止まらないっ……!」
「――これからも、決してその意志を忘れるなよ」
いきなり、胸ぐらを掴まれる。
衝撃に気づいた時にはもう遅く、俺は力ずくですぐ後ろの崖へと突き飛ばされていた。
「たいちょ――!?」
視界の上下が反転し、轟々と音を立てて流れる川へ頭から落ちていく。ついさっきまでいた崖がもうあんなに遠い。
伸ばした右手は、ただ虚空を掴むだけで。
「達者でな」
最後に俺が見たのは、
……
………
…………