自機は主人公張れる気がしなかったので   作:千里亭希遊

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眠る

 このままで、いいの?

 

 それが、何度も何度も頭の中で響く脅迫めいた焦り。

 

 起きたところでわたしにできることなんて、何もない、のに。

 

 からだがうごかない。

 目には何も映らない。

 

 それでも薄々分かってはいたんだと思う。

 起きようと思えば、多分起きれるんだ。

 

「ミナセ……ツキノ、クン」

 

 聞き覚えのない声が聞こえた気がした。

 

 また幻聴なのかな。

 皆死んでしまったんだ。もう、みんなの悲鳴以外、何も聞こえないはずなのに。

 

「キミハシンガタゴッドイーターノテキゴウコウホシャダ。オキテハクレナイカネ?

 ── キ ミ ハ ソ ノ テ デ ナ カ マ ノ カ タ キ ヲ ト ル チ カ ラ ヲ テ ニ イ レ る ん だ よ 」

 

 ピクリ。

 

 今まで、みんなの苦悶の叫びしか聞こえなかったのに、その音は意味を成してわたしを追い立てた。

 

「──…………ゴッ……ド……イぃーター……」

 

 かすれた、声。

 これは、わたしの、声?

 

 ゴッドイーター。

 アラガミを喰らう者たち。

 

「し……だ、さん……!」

 

 熱い。次から次へと溢れて止まらない。

 

 これは、涙、だ。

 それが、とても熱い。

 

 あァ、わたしはまだ、動けるんだ。

 ……動けて、しまうんだ。

 

 

 

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「驚きました」

「何がだね?」

 

 釈然としない表情で呟くオペレーター、竹田ヒバリに、シックザール支部長は愉快そうに問いかけた。

 

「色々とです。……わざわざ彼女が眠り続けている理由を調べたり、支部長直々に出向いたり」

 

 フ、と支部長は笑みをこぼす。

 

「適合候補者自体が貴重な存在だ。加えてようやく見つかった新型君なんだよ? 我が支部初の、ね。これくらいはしてもバチはあたるまい」

「それに」

 

 ヒバリの眉間に深い皺が刻まれる。

 

「あんなに……あんなにボロボロになっている人を、無理やり前線に駆り出すなんて……あんな人まで、データベースに登録されているなんて……本当に、起きてくれるなんて」

 

 彼女は目を開けたまま横たわっていた。

 そして伸び放題の白髪。おそらくあれは生来のものでは、ない。

 

「賭けだったんだよ。もし彼女が、アラガミに対抗し得る力を求めていたとしたら……。私は、あんな状態のままでいるより、目的ができて、きちんと立って動けている方が、幾分ましなのではないかと、ね」

 

 支部長の表情は穏やかで、慈しみすらあるように思えたのに、ヒバリは何故か背中かどこかが寒いような気がした。

 

「……無理ならきっと起きてはくれなかっただろう。それならそれで、他に候補者が現れるのを待つさ。いつまでも、ね」

 

 ヒバリはゆったりと廊下を歩く支部長の少し後ろをついて歩く。

 

 彼女は不安のような何かを抱えて、ただただ口を噤んだ。

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