リファイン悪役令嬢とモブキャラ転生者の背中合わせ英雄?譚   作:はめるん用

2 / 4
お姉様(の前世)は魔女。

 マゼンタは分類するならば“やり直し型”の転生者だ。

 

 一周目の人生ではスキルの深淵に魅了された結果世界中を巻き込むレベルで厄災をばら撒き『殺戮の魔女』として処刑されている。

 そのスキル狂いは転生しても相変わらずなのだが、一周目にていよいよ終わりかと観念したところで妹が泣いている姿を見たことで価値観は大きく変化していた。

 

 誰に何を言われたところで欲望の歩みを続けていたというのに、妹のシアンが自分の死を嘆き悲しんでいる姿を見た瞬間に“自分は間違えたのだ”と理解したのだ。

 魔女の処刑を誰もが歓声を上げて喜んでいる中、たったひとりだけ。何故それで気持ちが変化したのかはマゼンタ自身にもわからないが、自分を追い詰めた張本人であるシアンへ『感謝』しながら死を受け入れた。

 

 

 そして、いつまでたっても痛みもなにも感じないことを疑問に思い閉じた瞳を再び開けてみれば────そこには、まだ正気らしいころの若い両親の顔がある。

 

 

 なんじゃこりゃぁぁぁぁッ!? と叫んだつもりでも聞こえてくるのは赤ん坊の元気な泣き声のような鳴き声のような音だけ。

 あまりにも突拍子の無い出来事に天才を自称するマゼンタもさすがに混乱したものの、時間だけはタップリあるので考えることはできる。

 

 そう……次のことを、考える。

 

 一周目の人生ではスキルを高めるためにあらゆる犠牲を必要なモノとしたが、その結果が処刑なのだからこの選択は間違いとする。

 なので優先順位を変更する必要があるのだろう。少なくともスキルの探求はひとつ、いや数段下方に修正して心に余裕を持たせるべきだ。

 

 幸いにして知識は引き継がれている。多くの贄や人道とかいう概念に中指を突き立てるような儀式を必要としたモノはすでに自分の中にあるので、アレを繰り返して無意味に悪意をばら撒くのは学習能力のないアホの所業でしかない。

 

 そこで目を付けたのは、将来産まれてくるであろう妹のシアンである。己の過ちを理解する切っ掛けとなったシアンの優先順位を知識の探求より上に設定してみたらどうなるのか。

 スキルの才能については自分のほうが圧倒的に優秀だが、人間性や常識という面では妹の影すら踏めない……ということを転生したマゼンタは知っている。姉より優れた妹がいるのなら、素直に頭を下げるのが最も効率的なのだから。天才としてのプライド? ナニそれ美味しいの? 

 

 スキル狂いは健在。転生したところでソレを抑圧しながら人として正しく生きるのは難易度が高い。

 

 だが、せめて()()()()()()()()()()ぐらいはできるように努力するべきだろう。

 

 

 そして現在。

 

 

「お姉様、見て下さい! 私の魔法スキルでも離れた位置の的を倒すことができました!」

 

「えぇ、ちゃんと見ていたわよ。このまま丁寧に努力を続ければ、必ずシアンも迷宮貴族として恥じないスキルマイスターになることができるわ。もちろん、わたくしも協力を惜しまないから安心なさい」

 

「はいッ!」

 

 

(は? アタシの妹が死ぬほど素直でカワイイんだがどういうこと? まぁいっぺん死んでるけどな! その妹に引っ付いてた連中に処刑されてな! ガハハハッ! 

 う〜ん、それにしても一周目と同じようにシアンはスキルの才能が無ェなぁ〜。そりゃアタシのような天才が指導しなきゃ芽ェなんか出るワケねーわな。むしろ一周目はどーやって花開いたんだべ?)

 

 

 姉バカを発揮しつつもスキルバカのマゼンタは冷静に一周目の記憶を探っていた。指導を始めたころは妹カワイイが思考の十割を占めていたが、シアンがまともに魔力操作ができるようになったあたりから好奇心が顔を出してくるようになった。

 魔女に対抗する形で聖女として祭り上げられていたのは知っている。聖女と呼ばれるに相応しい、かどうかはマゼンタの価値観では判断が難しいが……確かに光属性と聖属性の魔法スキルは最高位の第八階級スキルに届いていたのは間違いない。

 

 スキルは魔法系・物理系ともに基本的な第一階級から始まり、第六階級まで届けば超一流、第七階級まで届けば歴史に残る偉人レベル、第八階級は神話や伝説の領域と言ってもいい。

 

 

(アタシの行使するスキルが第八階級レベルだったから、魔女に対するプロパガンダも兼ねてシアンを聖女に仕立て上げてぶつけてきたんだろう……で、考えることを止めちまってたが。

 冷静に考えりゃオカシイ話だわな、シアンはガチで無能だったのにいきなりそんな覚醒したりすんのか? あるいは……誰かにナニかを吹き込まれて魔女をブッ倒すための聖女として()()()()()可能性がある、ってことになるな……)

 

 

 後天的にスキルの素質を得る方法はマゼンタの記憶にも残っていた。地道な努力と時間を必要とする正攻法もあれば、対価を用意することで短時間の習得が可能な外法と呼ばれる手段も存在するのだ。

 自分が暴れていた期間を考慮すれば、シアンに施されたのは外法の可能性は高い。そこに関しては……本人がそれを知っていたかどうかは不明だが、どちらにせよマゼンタは追い詰めた側の自分はケチを付ける立場ではないと考えている。

 

 だが伝説レベルの第八階級スキルを行使できるほどの改造となれば準備期間もそれなりに必要だったのでは? というところまで考えたあたりで現時点で人造聖女の研究は始まっているか、あるいはもうそれなりに進んでいるかもしれないと気付いた。

 

 一周目の世界では殺戮の魔女という世界共通の敵が存在していたから良い方向に作用したが、大義名分が無いまま人造聖女の研究が進み続けた場合どうなるか。

 かつての自分がスキルの暴力に陶酔して大勢の人々を不幸にしたように、その何者かたちも研究の成果を試してみたいという誘惑に飲み込まれるかもしれない。

 

 

(可能性だけで疑う、ってーのは()()()()()()()()()ンだろうが……だからって、アタシだけが知ってる不幸の種が芽吹こうとしてるかも? ってコトで刈り取ってやるっつーのも()()()()()()()はずだ。

 これから学生生活が始まる以上、あんまりサボって派手なマネはできねーけれど、学生だからとナメられてるからこそできることもあるだろ。……あるかな? 一周目も真面目に学生やってた記憶があんまりないし、自然な学生のフリとかアタシにできんのかな〜)

 

 

 殺戮の魔女が封印された代わりに血塗られた聖女が出現して呪われた讃美歌が広がりました、では転生した甲斐がない。

 正義の味方を名乗るなど言葉通り死んでもゴメンだが、せっかく一周目のことを反省して穏やかにスキルの研究を楽しもうとしているところを邪魔されたのでは面白くないのだ。

 

 ただ……スキルのことしか考えていなかった自分に、果たして普通の学生として上手く振る舞えるかどうか。思わぬところに懸念材料が見付かり少しだけ不安になるマゼンタであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。