リファイン悪役令嬢とモブキャラ転生者の背中合わせ英雄?譚 作:はめるん用
学園都市『色無しのコラージュ・ガーデン』
大陸中央に位置し、各国からスキルマイスターとしての実力を磨く為に大勢の学生が集まる巨大都市である。
商店や教会、鍛冶場など各種施設はもちろんのこと、学園の管理下にある世界各地の迷宮へと繋がる転送装置も存在する、まさに至れり尽くせりな環境であり……前世にてマゼンタが武力で占拠し『マゼンタ・ガーデン』と名付け活動拠点とした場所でもあったりする。
自分の名前を冠して支配するという冷静になった今現在では黒歴史でしかない事実を思い出し、胃の下のあたりがキリキリするわ喉の奥のほうが酸っぱいわで大変な思いを微笑みの仮面で隠しつつ。
(……うーん。改めて他人がやってるトコを見てるとかなり無駄なことしてるってわかるなコレ。クラス分けの基準になるから張り切るのはわかるけどさ、ターゲット指定じゃなくて範囲指定でスキル使っても魔力のロスが多すぎンだろどー考えても)
入学前からスキルの使い方を学んでいる新入生は、平民、領主貴族、迷宮貴族、王族それぞれに分かれてどの程度使えるのかをテストして実力に応じたクラス分けが成される。
当然、教官からの評価が高いほど今後の学生生活でなにかと優遇してもらえるワケなのだが……さきほどから迷宮貴族の新入生たちが派手にスキルを使うせいで、ターゲットの入れ替えや環境整備に時間が掛かりなかなかテストが進まない。
それを見物するほかの新入生たちも盛り上がっているので特に苦情などは出ていないようだが、領主貴族の新入生たちは盛り上がる生徒や教官たちに冷ややかな視線を向けていた。
領民を守るためにモンスターの駆除や野盗の討伐などに参加して将来に備えている彼ら彼女らにしてみれば、無駄の多いスキルの使い方は実戦で役に立たないどころかマイナスでしかないのだろう。
かつてのマゼンタも才能アピールしなければならないという謎の使命感と自己顕示欲のまま魔法スキルを使っていたが、いまではシアンを指導するためにアレコレと創意工夫を重ねることですっかり省エネに目覚めている。
(今後のことを考えるならアホどもみてーに目立つのは無しだが……だからといってナメられ過ぎてもウゼェのに絡まれるかな? そのへんのバランス感覚はやっぱ難しいトコだ。使用人やお抱え冒険者との会話で多少は学習したつもりだったが、さてさて)
自分の名前が呼ばれ、魔法スキル使用者であることを宣言してターゲットから離れた指定位置に立つ。
指導している生徒の成績が教官たちの評価に直結するのは知っている。だから見た目でわかりやすい派手なスキルを使える生徒は優遇されやすい。
前回は天才たる己は優遇されて然るべき、という発想から学生ではほぼ到達できない第四階級レベルの魔法スキルを景気良く行使した。しかし今回は目立つ必要はないので魔力を節約したスキルの使い方でいいだろう。
結論が出たマゼンタは水と風の魔力操作で氷の弓を実体化させた。体内魔力を直接氷属性に変化させることも可能だが、それよりも大気中の水分を集めて氷結させたほうが自身の消耗を抑えることができる。
シアンの指導のためのアイディアを探しているときに、厨房で鍋から湯気が立ち上る様子を見て、もしかして視認できないだけで空気中には大量の水があるのでは? という考えに辿り着いたからこそ習得できた技術である。
天才の自分に新しい視点を得る切っ掛けを与えてくれるとは。さすが我が妹。さすいも。マゼンタのシスコンは騎兵隊の突撃のように留まることを知らない。
範囲はターゲット指定、放たれた氷の矢は狙った的だけを凍らせ粉砕し、その背後にある別の的や壁は無傷である。
周囲の反応は概ね渋い。平民や教官たちはもちろん、同じ迷宮貴族などは階級が下のシルバー級の生徒たちさえクスクスと笑っていた。
(ま、こうなるか。しかし領主貴族のガキどもにはそこそこウケたみたいだし、手応えとしちゃ悪くねェだろ。一周目はいっつも周囲に取り巻きがいたけど、今回のアタシにとってはただただウゼェだけだろうからな〜)
学園の管理下にある迷宮は全て踏破している。新しい発見を求めるのであれば領主貴族たちが管理している迷宮のほうが価値が高い。これが交流の切っ掛けになれば儲けもの。
なにより、今回は力こそパワー理論で魔力を垂れ流す戦い方を繰り返すつもりはない。そのためには様々なスキルのスタイルを学ぶ必要があるのだから、他人との関わり方も考えなければならないだろう。
嘲笑を鬱陶しいと思いつつも、目的は果たせた。あとはクラス分けの結果を受け取るだけなのだが……マゼンタは平民たちのほうから不思議な魔力の波動を感じて足を止めた。
ひとり。自分と同程度の年頃の男子生徒。将来冒険者を目指すために習得したのだろうか、アイテムを持ち運びやすくするための『カード化』のスキルで収納していた投げナイフを実体化させて投擲する。
入学前にカード化のスキルを習得しているというだけでもそれなりに見どころのある少年だが、さらには火属性の扱いも心得ているのか命中した的がなかなかの勢いで燃え続けている。
平民にしては、よくやる。教官の評価としてはその程度かもしれないが────。
(……いや、やっぱり知らねェ魔力の波を感じる。2種類? の魔力というか、生命力が喧嘩することなく共存している。いくら他人に興味が無ェ人でなしの一周目のアタシでも、未知の魔力を無視したりはしないハズ。どういうことだ……?)