Re:ゼロから始める戦狩りの旅路   作:てつてつ

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2話目になります。大分改変入ってます。


徽章

私はあの街道にいた。

 

どうやら始まりの地点に戻ったようだ…それにしても周りの光景に違和感を覚える。

 

「同じ………?」

 

そう私の目の前に広がる光景。それは来た時とはなんら変わらないものであった。行き交う人々、覗く空、目に映るもの全てが全く同じ。まるで時間が巻き戻ったように。

 

「行かなければ…」

 

確認しなければならない。褪せ人の疑念。それを証明するあの場所へ

 

 

 

 

少しばかりして目的の場所に着いた。溢れんばかりに漂っていた血の匂いはしない。扉のドアノブを掴む…鍵がかかっていた。

 

「誰かいるのか」

 

応答はない。しかし、こちらを伺う気配がある…警戒しているようだ。だが、この気配はあの女のものでは無い。あまりにも気配を消すのが下手だ。

 

「中にいるのは分かっているぞ。それでも出てこないと言うならば…この扉を消し飛ばす!」

 

そう言い褪せ人は有言実行とばかりにある武器を手に取る。

それは最古参とされた坩堝の騎士の獲物。デボニアの大槌である。

 

褪せ人は大槌を掲げ、坩堝の渦の力で浮かせ、激しく回転させる。

徐々に聖性が増し、大槌はキィンキィンと甲高い音を立てながら激しく渦巻く。

すると、その音を聞いて不安に思ったか目の前の扉が勢いよく開かれた。

 

「なんてことをしようとしている!合図と合言葉も知らんで、扉を壊すじゃとってうぉぉ!?なんじゃそれは!?」

 

現れたのはあの時死んでいたはずの大柄の老人であった。褪せ人は彼を見やり、疑念が確信に変わる。

 

「戻ったのだな……」

 

「戻った……?」

 

そう私は戻ったのだ。過ぎ去ったはずの時。過去に。それは即ち、失ったものを取り戻せるチャンスがあるということ。それは正に

 

「Excellent!(素晴らしい!)」

 

 

 

 

それから数分経って、感動で打ち震えている褪せ人に声がかかる。

 

「お主…大丈夫か?」

 

老人の瞳には心配と奇怪なものを見たかのような含みがあった。

 

「大丈夫…むしろ、暴れそうな程には元気だ」

 

「…そうか──まぁとりあえず中に入らんか?」

 

 

 

蔵の中に入った。

古びたテーブルや丸椅子が乱雑して並び、壁際には商品と思わしき物品が数多く置かれている。

 

「おぬしよ…盗品に興味があって来たのか?」

 

「いいや違うが…これ全部盗品なのか?」

 

「うむ…ここは盗品蔵といってのぉ。

王都で盗まれた盗品はここに集まり、売り買いされるんじゃが、その筋じゃないならおぬし、何が目的で来たんじゃ?」

 

「ある事の確認…それとこれから起こることが目的だ」

 

「これから起こることじゃと?なんじゃ、何かする気なのか」

 

その言葉に警戒したのか、老人は傍らに転がる棍棒をいつでも手に取れるよう構えるが、そんなことはお構い無しに褪せ人は答える。

 

「別に、あんたには何もしないぞ。後にやってくる人物に用があるだけだ」

 

「…後に来る人物。──フェルトのことか?」

 

「フェルト?…どんな容姿をしているんだ?」

 

「なんだ知らないのか…赤い瞳が特徴的な金髪の少女と言ったとこかのぉ」

 

──あの路地裏の少女だろうな

褪せ人はそう確信する。

 

「…フェルトは盗品を持ち込む予定があるな?」

 

「うむ。今日は逸品の持ち込みがある、と前もって聞いとる」

 

逸品の持ち込みとは月の少女の盗品であろう。ならば、取り返してやる。理由はない。だがそうすることが私の為になる気がした。

 

「…そうか──ところでなんだが爺さん名前はなんて言うんだ?」

 

「ロム爺、そう呼ぶがいい」

 

「…ロム爺、ここは盗品以外の売り買いはできるか?」

 

「できるぞ。…それでおぬし何を売るんじゃ?」

 

「これを売りたい」

 

そう言い褪せ人はある消費アイテムを見せた。

 

「これはぬくもり石という。二本指の祈祷を施した遺跡石だ。傷を癒し、安らぎを与えてくれる。回復が使えない時に便利だ」

 

「…ただの石ころにしか見えんが?」

 

「そうか、ならば実際に使ってみせよう」

 

そう言うと褪せ人は何処からか取り出したダガーで自分の腕を引き裂き、ぬくもり石を地面に落とす。

するとぬくもり石から暖かくゆったりとしたオーラが放たれ、それが褪せ人の裂傷を治して見せた。

 

「なるほど……確かに、これは……ううむ」

 

顎に手を当てて、ロム爺は考え込むようにぬくもり石を覗き込んでいる。そして値踏みの結果を話した。

 

「これは治癒魔法が使えない者にはかなりの価値がある。それなりに値はつくじゃろう」

 

「そうか…ならば手持ちに200個ある。その全てを買い取ってくれ」

 

ロム爺はこれに承諾し、ぬくもり石全てを買い取る。そしてその対価として貨幣を得ることができた。これで交渉ができるだろう。

 

 

しばらくの間ロム爺と会話していると、ノック音が鳴り響いた。ロム爺が扉に近づき、外にいる者と話をし始める。

 

「大ネズミに」

 

「毒」

 

「スケルトンに」

 

「落とし穴」

 

「我らが貴きドラゴン様に」

 

「クソったれ」

 

短い問いに間髪入れずに差し込まれる返答。それが合図と合言葉、なのだろう。ロム爺は満足げに戸の鍵を外す

 

「――待たせちまったな、ロム爺。ほんっっとしつこい相手でさ。まくのに時間かかっちまった」

 

親しげに、己の戦果を誇るように、フェルトがロム爺の隣を抜けて蔵に入ってくる。そして私を見つけるとそれまでの笑みを消して胡乱な顔つきを浮かべた。

 

「あ?誰だよ」

 

「私は君の客だ。持っている盗品のことで交渉がしたい」

 

その言葉にフェルトは笑みを浮かべる。

 

 

 

その後、置かれているテーブルの1つに座り交渉に入る。

 

「それでは交渉といこうか。フェルト。盗品は持っているな?」

 

「ああ、持ってるぜ」

 

彼女は懐に手を入れ、入れていた物を抜き出し、テーブルの上に置いた。

 

置かれたのは竜を象った意匠が特徴的なバッジ。恐らくは徽章の類だろう。翼竜を正面から象ったようなデザインをしており、竜の口には赤い宝石が埋め込まれている。…それなりに価値はありそうだ。

 

「さぁ、兄ちゃん。いくら出すんだ?徽章 はこんだけの出来。手に入れるのにかなり苦労させてもらった。それに見合う額なら、お互い嬉しいよな?」

 

「ああ、そうだな。金はかなりある。満足のいく額を出そう」

 

「期待しとくぜ、兄ちゃん!…まぁ、アタシの交渉相手次第だけどな」

 

「…私の他にこの徽章が欲しい者がいるのか?」

 

「いるっていうよりさ、そもそもの話 アタシがこの徽章をギッてきたのは頼まれたからなんだよ。これ一個で、聖金貨十枚と引き換えるって話でな」

 

──ゴンッ!ゴンッ!

 

ふいに、扉を鋭く、二度叩く音が蔵の中に響き渡った。

 

「お、アタシの客が来たようだな。ちょっと出てくるわ」

 

そう言うとフェルトは扉を開けに行き、1人の女を連れて戻ってきた。

 

──あの女だ

私とロム爺、月の少女を殺したあの女。そいつが今目の前にいる。今すぐにでも屠ってやりたい所だが、それは出来ない。なにしろここにはフェルトとロム爺がいる。2人を守り切れる自信はない。

殺るなら盗品蔵を出た後だ。

 

「部外者が多い気がするのだけれど」

 

「踏み倒されたら困るかんなぁ?アタシら弱者なりの知恵だよ」

 

そうフェルトが言うと、女は値踏みをするようにこちらを眺める。

 

「そちらのご老体はわかるのだけれど、こちらのお兄さんは?」

 

「この兄ちゃんはアンタのライバル。アタシのもうひとりの交渉相手さ」

 

 

 

 

 

「なるほど、事情は飲み込めたわ」

 

エルザと名乗った女は状況を把握し、交渉席に座る。私と対になる席だ。

 

「ま、そんなわけで値段の釣り上げ交渉ってわけだ。別にアタシはどっちが徽章を持ってくんでも構わねーし、高い方に高く売りつけるさ」

 

「いい性格だわ、嫌いじゃない。それで、そちらのお兄さんはいくら付けたの?」

 

「金貨十枚よりかは多く出そう」

 

「そう…実は私、依頼主からある程度、余分なお金を渡されているの。もしもあなたが渋るようであれば、少しの上乗せも考える意味でね」

 

「…依頼主と言ったな。それは徽章を受け取るように頼まれたという事だな?」

 

「そうなるわね。欲しがってるのは依頼主の方。……あなた、ひょっとしてご同業?」

 

「いいや、違う。ただその徽章が欲しいだけだ。…もういいだろう、どちらが値を多く付けれるか確かめるとしよう」

 

それを聞いたエルザは袋の口を開ける。逆さになった革袋から吐き出されるのは、眩い白銀の輝きを放つ聖金貨だ。

重なり合う金属音にフェルトは瞳を輝かせている。

 

「二十枚。私が雇い主から渡されている聖金貨はそれが全て…足りるかしら?」

 

「残念だが足りないな。私は二十一枚出そう。君よりも1枚多い。つまり徽章は私が貰う」

 

お目当ての徽章は手に入らくなった。

さぁ、どうする

 

「そう…残念ね。けどまぁいいわ。私の雇い主も、別にそれが手元になくても構いはしないはずだから」

 

「…つまり徽章は私が貰っていいんだな?」

 

「ええ、いいわ」

 

──なるほど。そういうことか

どうやら依頼主は徽章が欲しい訳ではない。持ち主の手にないことが重要なようだ。それはつまりあの月の少女さえ持っていなければ誰が持とうといいのだろう

 

考えが変わった。

このエルザという女を殺すのはまたの機会にする。依頼を失敗させ、恥をかかした上で殺す。その方が断然面白い。それにこの場にはフェルトとロム爺がいる。人間関係が拗れるのは面倒だ。

 

「あなたはその徽章を手に入れて、どうするの?」

 

「別に、どうもしないさ…私は物集めが趣味。これが何であるかは知らないが価値があるのだろう。ならばコレクションに欲しくなった。それだけだ」

 

「そうなのね…なら、問題ないわ。それじゃ、私はこれで失礼するわね」

 

立ち上がったエルザは振り返ることもなく盗品蔵を出ていった。

 

 

 

 

 

「さて、兄ちゃん。徽章の報酬を支払ってくれ!」

 

破格の報酬が待ちきれないのかフェルトは興奮気味に言う。

 

「ああ、聖金貨二十一枚であったな。勿論払おう。だが、その前に徽章を返しに行くぞ」

 

「徽章を返す?」

 

「そうだ、フェルト。徽章を元の持ち主に返しに行くんだ。それが終わったら報酬を支払う」

 

「兄ちゃん!それは無いだろ…アタシが依頼されたのは徽章を盗って来ることだけだ。返すなんてこと頼まれてもしねーぞ。それに、そんなことしたら捕まっちまうじゃねーか!」

 

「そうならないよう私が守るし、擁護もしよう。追加依頼として報酬の上乗せも約束する。信用出来ないなら担保を立ててもいい。損は無いはずだ」

 

「追加報酬にいくらくれるんだ?」

 

「聖金貨5枚。徽章の報酬と合わせて二十六枚でどうだ?」

 

「…ロム爺どう思う?」

フェルトはこの依頼を受けても大丈夫なのか判断を仰いだ。

 

「受けるしかあるまい。それ以外の選択肢がまずないしのぉ。それに美味い話じゃ。損することはまずない──おぬしよ、この依頼は何が目的なんじゃ?」

 

「私が探す術を持っていないのもあるが、徽章の少女にフェルトが恨まれて欲しくないからだ」

 

「「は?それだけ?」」

 

フェルトとロム爺は拍子抜けしたような声を漏らした。

 

「ああ、それだけだが…何か可笑しいことか?」

 

「おかしいだろ!それだけの為に聖金貨5枚出すなんて…この世に兄ちゃん以外いねーよ!それにアタシは恨まれても気にしないからな」

 

「私が気にするのだが…それで依頼は受けてくれるか?」

 

「ああ、受けるよ」

 

フェルトは呆れながら承諾した。

 




エルザ戦を楽しみにしていた方々申し訳ないです。あと、自分で読んで思ったんですが、今話おもんねぇ!
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