最後のアビドス生徒会長   作:シャッチトムソン

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ご愛読ありがとうございました


たった一人の総力戦

 

車内はその外観に似合った乗り心地をしており座席の座り心地もいい。揺れも少なく不快感はない。車に揺られながら私は隣に座るスーツ姿の大人に問う。

 

「それで話とは」

 

「クックック。いえ、すみません。先程の貴方の態度とは少し違ったものだったので、あの時は無関心。今は警戒と興味があると見受けられます。私も貴方のお眼鏡にかなった様で嬉しく思います」

 

「無駄話をしにきたわけではないのですが、、、」

 

「少し話は長くなります。よければ私のオフィスにてお話をさせて頂いてもよろしいですか?ここだけの話、あまり他のモノには聞かれたく無い話なのです」

 

顔色は目だと思わしき発光する光以外は真っ黒に塗りつぶされた形状によって読み取れない。でも申し訳なさそうな態度でこちらに礼を尽くしてくれる程度には私をそれ相応の相手として扱ってくれているらしい。

 

話は出来そうな相手だと分かると私は警戒レベルを一つ下げつつ私もこの人から話を聞くまでは帰るつもりはないので、その要求を呑む。

 

「ありがとうございます」

 

それからは会話は無く、手持ち無沙汰になったので車内に視線を向けると運転席には見た事のあるシンボルがあった。

 

「カイザーコーポレーション...」

 

カイザーコーポレーション。

あらゆる分野で事業を展開する大企業。

 

その事業形態の総称からカイザーグループなどと言ったりもするが、このカイザーグループは私達にとって無視できない存在。なにせ私達の借金もそのグループ企業の一つであるカイザーローンから借りており、月々の支払いを行なっているからだ。

 

端的にいって印象は最悪だ。

法外に設定された利率、元本を減らされない様に複利契約まで結んでいる。そのおかげで私達は利息を払う事で精一杯になっている。商売相手としては良いカモであろう。

 

「ええ、僭越ながらこの企業で経営コンサルタントを務めさせてもらっています」

 

少し会話しただけだが、会ったこともないタイプの相手。容姿からはそこが見えず得体の知れない恐ろしさがあり、しかしながら誰にでも公平性を保つ様な余裕さ。それは自分達の様な子供など掌で簡単に扱ってしまえるのではと思わせる。これが大人というものだろうか。

 

「さあ、着きました。どうぞ」

 

私よりも一足早く降りるとその扉に手を当て紳士的に下車を促してくる。私はスーツ姿の大人に導かれるままにその大人のオフィスであろうビルの中へと入っていく。

 

中は意外に普通ではあるが、見かけるデスクには従業員は見られない。唯一見かけたのはフロントにいたオートマターでそれ以外は結局会うことなく、スーツ姿の大人の先導は終わった。

 

「さて、どこから話したものか。ここまで来てもらってなんですが、お時間はよろしいでしょうか?」

 

「連絡は済ませてますので気にしないで下さい」

 

私の返答にありがとうございますと応えると自身のデスクであろう部屋で唯一のデスクとそこにある社長椅子に座り彼は話し始めた。

 

「まずは互いの認識を合わせるところから始めましょうか。アナタの家族について、梔子ユメさん。彼女は失踪と言われてますが、違いますよね?」

 

「正直言ってわかりません。お姉ちゃんの遺体を見たわけではありませんので。ですが、砂漠で1ヶ月も生きられるとも思ってません」

 

私の回答が望み通りの答えだったのかそうですかとスーツの大人は満足そうに頷くとさらに問いは続いた。

 

「では遺体すら残らなかったと考えたことは?」

 

「・・・どういうことですか?」

 

そうして語られたのは考えたこともなかったことだった。

そもそも生徒が持つヘイローによって銃弾なんてのはよほどなもので無い限りかすり傷にもならない。それ程に頑丈な体をもっている私達がこのギヴォトスから居たであろう痕跡さえ消し去るなど、私には思いつかない。確かに殺す事は可能だろう。意識を失うまでひたすらに銃弾を浴びせるか神秘を纏わせた攻撃で重傷を負わせるか、でもそれでも殺すことはできても消滅させることは不可能だ。どうしても遺体は残ってしまう。

 

「砂嵐に現れる謎の物体というのは聞いたことは?」

 

「・・・オカルト話ですか?」

 

不思議な現象については聞いたことがある。

確かUFOやらネッシー。最近の題材はチュパカブラだったか、その手の超常現象なる眉唾モノの雑誌で取り上げられていたのを読んだことも。

 

アビドスでもその手の超常現象は確かあったはず、なんでも砂嵐の日に現れる値の知れないモノ。それは生物だの珍獣だのはたまた未知の生命体。他の星からやってきた侵略者等々、ウワサが広まり今でもその正体は不明。もっぱら思い込みやら錯覚だろうというのが一般人の認識だ。

 

私もここでオカルト話を振られるとは思っていなかったので一気に胡散臭くなる話に目を細めると「いえいえそうではなく」とスーツ姿の大人にもそれなりの根拠はあるのだろう。

何枚かの写真がどうぞと手渡される。

 

雑誌で見た時よりも画質の良い写真。

それは砂嵐の中に明らかにナニカがいるであろう影があった。そして最後の一枚には砂嵐の切れ目の中に見える白い何か。それはボディの様にも見えて。この写真が作られたもので無いのだとするとその砂嵐の影の正体が実在するモノだと決定づけるに十分に判断できる代物だった。

 

私がその一枚の写真に目を奪われているとスーツの大人が話を始める。

 

「これを見て私も確信しました。これはビナーと呼ばれていたものです」

 

「ビナー?」

 

聞いた事のない名前だ。

 

「はるか昔の産物だとでも思っていてください。そしてこれが今アビドスを襲っている砂嵐の原因かもしれないのですよ」

 

スーツの大人は語る。

そのビナーというのはとんでもない巨体で地中を移動している。そして一度地上に現すだけでその巨体は辺りを揺るがす衝撃波と莫大な砂を巻き上げる。それがいずれ原因不明として突如発生した砂嵐となって一帯を襲う。

 

「お姉ちゃんはそれに巻き込まれた可能性が高い?」

 

「結論付けるにはまだ判断材料が圧倒的に足りませんが、その可能性はあり得るでしょう。偶然にもビナーに居合わせてしまいそれによって引き起こされた砂嵐に梔子ユメさんは巻き込まれた。そのまま戦闘になったとすれば...一介の生徒では相手は務まらない。それ程に強大な兵器です」

 

スーツの大人からの情報はどれも貴重な情報だった。

到底私では辿り着けたとは思えない。

私はお姉ちゃんが殺されたなんて考えもしなかった。

 

「私が情報を差し出した狙いを聞きたそうですね。私達もアレには手を焼かされておりまして企業にとってもマイナス、敵なのですよ。そこだけをみるならば私とアナタの関係はビナーが共通の敵という事になるわけですが、、、」

 

話は見えてきた。

私はそのビナーという存在を話が本当なら生かしておくわけならならない。ソイツが存在するならアビドスに砂嵐は定期的に起こり続ける。元凶でなきとしても砂嵐の原因の一つは潰すことは可能だ。それにお姉ちゃんの仇を討てる。

 

勝算などはわからない。

なにしろ出会ったこともない未知のモノ。

スーツの大人が言うには普通の生徒では相手にならない化け物らしいが知ったことでは無い。

 

私は手が震えていた。

それは願ってもいない宿敵に出会えた気分だった。

 

私はスーツの大人の提案に乗ることにした。

そのアビドスに巣食うビナーを討伐する。

それまではこの大人と協力関係を築くことになった。

 

「ええ、貴方に相談に乗ってもらってやはり正解でした。短い関係かもしれませんが、その様なものは些細な問題。全力でサポートさせてもらいますよ」

 

手を取り合う関係、その形として握手をする。

お互いの目的の為に私達は動き出した。

 

 

 

後日、アビドス近郊の砂漠を車で爆走していた。

 

大人の指示した地点を移動しつつ砂漠を転々とする。

いつ何処で現れるかもわからないそのビナーとやらに自ら遭遇しにいくとなるとその時点で大変な労力が必要になる。砂漠で探しモノをする大変さは身に染みて分かっているつもりだ。

 

 

ドローンによって周辺を索敵しつつ目視で周りを見渡すが砂を巻き上げるのは自分の車くらい。まだ初めて一週間になるが収穫は何も無い。これは根気の勝負だ。

 

夜は適当な物陰があればそこにテントを建てて夜をやり過ごす。位置情報は共有されているので何かあれば対応してくれるとのこと。

 

要求を伝えるだけでドローンが飛んできて必要な物資は落としてもらえるお陰で物資には困らず継続して索敵を続けることができている。流石に車などの大掛かりに修理が必要になるものは一旦戻る必要があるが、幸いその様な事態には陥っていない。

今日の物質の受け取りも終わり明日もまたいつも通り始めることができそう。

 

車両の整備を整えていると夜風に体が震えた。

 

そろそろ時期も冬にになろうとする季節、日中も寒くなってきた。雪が降り始めるまでにはなんとか見つけ出さないといけない。

 

そしてその時はようやくやってきた。

 

「付近より不自然な振動波をキャッチしました。それも地上へ向かって大きくなってきている」

 

通信が入ってから直ぐ、揺れは大きくなり走行するのも困難なレベルへと変わるまで時間は掛からなかった。私は転倒を防ぐため急ブレーキをかけて停止すると周囲を警戒しつつ静観すると少し離れた先で急に砂が盛り上がる不自然この上ない現象とそれによって巻き上がる大半の砂が砂煙へと変わるのを眺めると居た。

 

まだ薄い砂煙の中にソイツは確かに存在した。

 

私はそれを認識すると素早く装備を整えて外へと出ると全速力へと現場へと向かう。

 

___大きすぎる。

 

初めてそれを見て思った感想だ。

 

頭の部分と胴体の一部分が出た状態なのに既にビルくらいの大きさがあった。そして大部分はまだ砂の中。一体どれだけの大きさを秘めているのか?想像も出来ないとはこの事か。

 

蛇の様な見た目。

全身は白く何より異質なのはその頭上ある馴染み深いソレ。

 

「・・・ヘイロー?」

 

スーツの大人からビナーと呼ばれていたトンデモ兵器には私達と同じくヘイローがあった。

 

そうとなると話は変わってくる。

ただの装甲車や戦車の装甲をブチ破るのとはまるで訳が違う。

ヘイローがあるということはアレも私達と同じくらい。正直、オートマターを相手するくらいの感覚だったが、これでは生徒を相手取る様なものだ。それにあの巨体、もしかすると想像を絶する防御性能で全身を覆う白いボディにキズをつける事すらも難しいかもしれない。

 

___嫌な汗が身体を伝う。

 

 

逃げるのが先決。

1人で戦っていい様な相手では無い。

暑く無いはずなのに汗は止まらず恐怖心に勝手に震えては生存本能というべきモノがあらゆる症状を使って警告してくる。

 

けれど、そんな選択肢はビナーを探し始めた時点で捨てた。アイツは私が倒さないといけない相手。

 

『_______!!』

 

向こうも私を認識するや否や敵であると判断したのか、機械的な咆哮をあげてそれだけで辺りを揺るがす。対して私は肩に背負ったランチャーを向けて応えた。

 

周囲は爆音が響き渡る。

だが、砂嵐が一帯を覆い尽くし外からは何が起こっているかなどの判別は不可能だろう。

 

微かに聞こえる戦闘を思わせる銃声も砂の音にかき消されその痕跡は無いものとして扱われる。それを偶然にも目撃した人は自分自身がその砂嵐に巻き込まれない様に直ちにその場を立ち去った。

 

周囲を覆う様に舞った砂が視界を遮ると同時に電波障害を起こして外部との通信を拒絶しているのだろう。

状況把握の為にスーツ姿の大人とは通信は適時行なっていたが、戦闘が始まってからはザーザーとスノーノイズが耳元で鳴るだけのうるさいだけのオモチャと化した。

 

通信は途絶され互いに状況を掴みかねる。

ただ言えることがあるとするならここからは先は外部からの支援は見込めないということだ。

私はビナーから放たれる無数のミサイルを交わしながらなんとか距離を詰めようとするが、遮蔽物のない砂地で不用意な行動は隙を晒して無駄に攻撃をもらうだけ、それは私よりも巨体な相手の方が当てはまりそうなのだが、リロード要らずの無限の弾幕で牽制しつつこちらも仕返しとばかりにミサイルを数発打ち込んでもその装甲には傷一つ付いていない。

 

そこら辺に放り捨てた使用済みの筒の数が戦況を伝えてくる。

 

立ち止まるだけでめり込む足元に体力を奪われながら決定打もないまま戦闘は続く。このまま長期戦になるのは不味いのはわかっている。

 

 

ミサイルの雨が頭上から降り注ぐのを撃ち落とし爆煙から撃ち漏らしたミサイルを盾を前に構えて防ぎ盾の背に隠れて作戦を練る。

 

あの装甲の強度は分からないが尋常では無いのは攻撃を無傷で防がれている事で想像がつく。それがヘイローに守られてより強固になっているとすればどうする___

 

私は愛銃に力を込める。

狙いは鉄の塊。

アレを貫けるだけの力が欲しい。

 

 

そう願いながら盾から顔を出しトリガーを引けば銃弾は光を帯びて光弾となって相手へと襲いかかる。

 

『_____!?』

 

「効いているの?」

 

アレにも痛覚があるのかは分からないが光弾を受けて咆哮が放たれる。そして煙が晴れるとどうやっても傷が入らなかったビナーのボディに損傷が見られた。

 

 

_____いける。

 

私はそう確信すると身に付けていた武装を解除してその場に落とす。有効打になるのは力を込めた攻撃だけ。手榴弾も目眩しくらいにはなるかもしれないが、なら身軽にして手数を増やす方が勝率は上がる。

 

砂に足を取られるものの身軽になった分だけ、前よりも一段も2段も早く動ける。一気に距離を詰めて至近距離から一点狙いのフルバーストを叩き込む。その壁に風穴を開けて通気性をよくしてやろう。

 

『キュィィィーー!!』

 

痛いの?

そう痛いのか...でもね。

お姉ちゃんはお姉ちゃんはもっと痛かったよ。

 

 

 

 

ユウはひたすらに掘削機で岩盤を削るかの様に巨体の内そこだけにひたすらに撃ち込み続ける。ビナーも纏わり付く虫を追い払おうと巨体で体当たりをすると夢中になっていたユウは避けることも叶わずモロにその年相応の身体で全衝撃を受けた。

 

「カハァ!?___」

 

その衝撃に肺の中の空気が強制的に排出され砂へと叩きつけられる。なんとか立ち上がるものの頭を強く揺さぶられたおかげで軽くめまいがする。

 

相手に配慮してくれるわけもなく、ビナーはミサイルを打ち出し追い撃ちユウも応戦して右から左へと掃討しこれを撃ち落とすとペッと鉄臭い液体を吐き出すと砂は真っ赤に染まった。

 

 

___骨が何本かやられたか。

 

痛む身体に鎮静剤を打ち込み楽になるってくるとまた作戦を練り直す。集中して攻撃していた所は装甲が剥がれ落ちて配線が剥き出し状態、バチバチと漏電もしているが貫通までは至ってない。

 

「頭をやるしか無い」

 

ビナーがどの様なシステムで動いているかは知らないが動きを見る限りはコチラを認識しているのは頭の眼の部分。

ならば人間の脳に該当する物もあそこにあると考えたのだ。

 

ユウは狙いを頭部に絞り込み小回りを生かして頭だけに執拗に光弾を浴びせる。鎮静剤は効いているし足もまだ動く。あれだけの質量、馬鹿正直に真正面から戦う道理はなく、機動翻弄しないと勝てない。

 

「キィガァァァァ!!」

 

片目をやった。

ならばもう片方も貰って視界を奪い形勢を傾ける。

 

生まれた死角を利用して徹底的に有利な位置取りで攻撃を加えて機を待つ。

 

相手の意識を乱しつつここだ!!と直感で判断したタイミングで飛び上がり一気に高層ビルの屋上位の位置にあるビナーの頭へと詰め寄ると私はトリガーを引こうとする。

 

そうして銃口を構えた先、ビナーは瞬時にコチラに顔を向けると今まで閉じていた口を開放して間も無くして口から放たれた閃光がユウの視界を覆った。

 

 

砂嵐が止むとそこには誰も居らず、しかし異質な光景が広がる。

高温によって溶けガラスと化した砂。

埋もれた爆弾や銃火器、少し離れた場所には放置された無人の車。

 

 

梔子ユウはまだ見つかっていない。

 






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