最後のアビドス生徒会長   作:シャッチトムソン

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夢のような日常

 

愛銃が火を吹きその場を一時的に制圧する。

 

「小鳥遊さん。空けたよ」

 

私の声に小さな物体が物陰からもの凄いスピードで駆けていくと敵が居るであろう場所へと彼女は、単騎で乗り込み程なくして銃声と時折の悲鳴が辺りに響く。そうして一方的な銃撃は複雑さを増すと、全部を小鳥遊さんに任せるのもアレなので私もその場から相手の陣地へ乗り込もうと前を伺いながら顔を出す。

 

「お姉ちゃんは待機して援護お願いね」

 

「え〜ひとりぼっちはやだよ〜。私もユウちゃんと行く」

 

「だってお姉ちゃん遅いから置いて行っちゃうし的にしか使えない...」

 

「酷過ぎる!?」

 

ワアワアと騒ぐ我が姉をその場で放置して私も遅れて先行する。

心配しなくてもああ見えて意外に出来る姉だし、防御に関しては目を見張るものがあるのでそうそう不良程度にリンチされるとは、、、

……助けて!!と涙で顔を濡らした自分の姉が不良に囲まれて踏まれまくる姿が容易に想像できた事はお姉ちゃんには黙っておこう。

 

射線を遮る障害物。

それらを止まることなくテンポよく飛び越えると目の前の物陰に隠れていた不良に出会い頭景気良く弾丸をプレゼントした。

 

 

「今日はここまでにしといてやるー!!」

 

引き上げていく不良達の後ろ姿を拝みつつ、その光景で戦闘が終わり襲撃を撃退出来たことが実感する。

 

「各自弾の補給の申請は早めにしておいてください。特にお姉ちゃんはいつもギリギリまで出さないし」

 

「つい忘れちゃうんだよね。・・・でもユウちゃんの銃は便利だよね〜なんたって弾切れしないんだから」

 

そう言ってお姉ちゃんは私の手に下げているまだ熱の残る銃に目を落とす。形状としてはSMGに分類されるらしいが、その火力はアサルトライフルと同等で先の戦闘を見ればそれは一目瞭然、使用者の私が言うのもなんだが、これはSMGの皮を被ったナニである。

 

この銃の種類はパトリオット。

一度ぶっ放せば有効射程圏内の敵を一掃することは朝飯前。その火力はこの銃の特別な特性と合わさることで戦場を制圧することなど容易い。

 

本来であれば銃火器一本で戦場を制圧する事は難しい。

それこそ固定式の重火器なら圧倒的な火力が可能にするだろうが、それさえも銃の構造上、嵐が一旦止む時間がある。そうリロードである。

それに防衛戦ならまだしも動きの激しい戦場では本体の取り回しの問題ある。よほどの戦闘慣れした強者でないとそんな重火器はただ的になるだけだ。

 

でも私のこの銃だけは例外。

戦場での取り回しやすさと重火器にこそ及ばないが、それに匹敵する火力を両立した銃の一つの理想系、無理やりコンパクトにした事でとんでもないじゃじゃ馬な子ではあるが使いこなせればこれ程頼もしいものもない。

 

でも結局リロードする必要がある?

言ったはずだ。この銃は例外だと。

 

お姉ちゃんが先程言ったが、この銃なんと弾切れしないのだ。弾薬の安定供給もままならないここでは常に弾薬の在庫を頭の隅に置いておかないといけないので大変ありがたい。

実家にあったものを前の愛銃が整備不能まで壊れたので丁度良いと拝借して使用してるからその訳は全然知らなかったが、つい最近、整備の為にドラム式のマガジンを開ければ理解できた。なんということだ。この銃のマガジン内部の構造が∞の形となっていたのだ。ならば納得。当然、弾切れなどしないはずである。

 

しかしこれがいわゆるオーパーツと呼ばれるモノであるのではないか?などという疑問もないわけではない。弾切れしない銃などコレを手にするまで考えもしなかった。この銃が特異なのは見るからに明らかだし、梔子家の家宝という名は伊達ではなかった。

 

「なら、お姉ちゃんが使う?」

 

「いいよいいよ。前に使わしてもらった時、周りが穴だらけになったし目も回るし大変だったもん」

 

確かにアレは酷かったと渇いた笑いが出る。

射撃場で試し撃ちをやるっていたばずなのに終わってみれば的とそれ以外のあらゆるものが蜂の巣になるどころか、射撃場自体が使い物にならなくなっていた。背後に居たはずの私も瞬時に飛び込み回避をしなければ絶対に病室送りは免れなかったはず。

 

「最近、他の自治区からの襲撃も増えてきましたね」

 

「今日は比較的少なかったけど、それにあの子達は初めて見る人達だったな」

 

「人の街で好き勝手しないでもらいたいです」

 

「まぁまぁ、無事勝てたんだし。そうだ!!皆んなでラーメンでも食べに行こうよ!!私もうお腹すいちゃった〜」

 

ぐぅ〜とお腹を鳴らしてうへぇ〜と肩を落とすいつも通りのお姉ちゃんを見て私も小鳥遊さんも思わず笑う。

 

私達の変化と言うとやはり小鳥遊さんがこうして時たま笑う様になったことだろうか?入学からいつも難しい顔をしてばかりだったのに、最近では笑顔を見せてくれることがある。

 

とは言っても口元に薄く浮かべる程度だけれど、それでも何処となく堅苦しく近づき難かった小鳥遊さんと話しやすくなったのは間違いなくお姉ちゃんのおかげだ。

 

「うん。私もラーメン食べたいかな」

 

「よしよし。ホシノちゃんはどうかな〜かな?」

 

「ラーメンですか?…はい先輩、私もちょうどお腹が空いた所ですから構いませんよ」

 

「よっし!!なら決まりだね!!そうと決まれば善は急げだね。ほらほら行こう行こう」

 

場所は柴関ラーメン。

アビドス地元民なら知る人ぞ知る名店。

 

ラーメンマニアの間でも話題になる程の味で他の自治区からも食べにやってくる生徒がいるとかいないとか。

 

「へいらっしゃい。おっ?生徒会長と副会長さんじゃあないかい」

 

店に入れば歓迎のあいさつが迎えてくれるのでこちらも一礼をする。店内を見るにタイミングよく空いている。待たずに座れそうだ。

 

私たちはまっすぐ目の前のカウンター席に着くと私は何にしようかと悩む。お腹は空いているが今日の気分はガッツリ系ではない。追加トッピング無しのスタンダードでいいだろう。

 

「大将いつものお願い!!」

 

大将と呼ばれた犬の獣人はこの店を1人で切り盛りする店長の柴大将である。たまに私もバイトとして雇ってもらったりしているので、個人的にも何かと色々と助けてもらっている気立てのいい人。

そんないい人を困らせないで欲しい。

 

「いつものって言ったって、お姉ちゃん気分で毎回注文変えてるじゃん」

 

「あっそっか!?うん今日はガッツリいきたい気分だね〜柴関ラーメンの野菜マシマシでお願いします」

 

「あいよ。柴関ラーメン野菜マシマシ」

 

ふぅ〜ん♪ふぅ〜ん♪と鼻歌を奏でるお姉ちゃんは実に上機嫌そうだ。よほどお腹が空いていたのだろう。

 

私も注文が決まったので、どうせなら一緒に注文を通しておこうと大将を呼ぶ前に隣のもう1人に声をかける。

 

「小鳥遊さんは決まった?」

 

「…すみません。このお店は来たことがないので何を頼めばいいのか」

 

どうやら小鳥遊さんはここに来るのは初めてだったらしく、悪いことをしてしまった。

 

ごめんねと謝ると私も早くに言うべきでしたと小鳥遊さんから謝罪を受けるがこれは私達の落ち度である。謝らないで欲しい。

 

とりあえず小鳥遊さんにはメニューとオススメを教えると、一応として私が今から注文する予定のシンプルなラーメンを伝えておく。

最初だからと全部マシマシにして食べきれないと自分も困るし、お店の人にも迷惑がかかるし良いことはない。

 

そういったものはお店に慣れてからがちょうどいい。

だからまずはスタンダードなものを勧めよう。そもそもスタンダードを知らずに追加オプションの判断のしようがないだろうし。

 

「では私も柴関ラーメンを」

 

「うん。分かった。大将!!柴関ラーメン二つ、以上で」

 

「あいよ!!ラーメン二つね」

 

程なくして私達の前には美味しそうなラーメンが並ぶ。

 

「「「いただきます」」」

 

そろって一口食べると馴染み深い味。

安心感があり、やはり美味しい。

 

「…おいしい」

 

そう言って黙々と食べ進める小鳥遊さんを見るに彼女も満足してくれているようだ。

 

 

ラーメンを食べ終えるとどうせならこうして座っているのだからやる事を今の内にやっておこうという方向になった。

 

大将も場所を貸してくれるとのこと。

それに甘え遠慮なく席を使わしてもらう。

 

 

各々自分の手にする愛銃の確認をしながら戦闘後のミーティングが始まった。戦闘で気付いたこと、それが自分か仲間か問わず情報を共有する。そうすることでチームワークを高め、私達はそれを武器に自分達の自治区から侵略者や無法者達を追い返してきた。

 

こちらの戦力は3人しか居ないのだ。

十分な補給もない状況下、戦力も補給も劣る私達ではマトモに正面からやり合えば勝機はない。今すぐに出来ることとして頭を使って賢く生き抜くそれが私達のやり方だ。

 

 

少数精鋭と人聞きはいいのだろうが、ただ内情を知る者からすれば風前の灯なだけになんとも言い難い気分。

 

だとしても負ける訳にはいかない。

私達が負ければ侵略者の好き勝手を許すことになる。

 

砂害だけでも大変なのにこれ以上砂害以外で私達の街が荒らされることはあってはならない。

 

もうすぐ日が落ちようとする頃。

帰り道を歩きながら私はもう1人の同級生に声をかける。

 

「またみんなで食べにこようね」

 

「はい。また来ましょう」

 

私も小鳥遊さんとは少しは仲良くなれただろうか?

 

「あっ!?2人が私をのけものにしてるよ。ダメだよそれは私も行くから置いて行かないでね」

 

 

学園まで揃って歩いていく。

こんな毎日がずっと続けばいいと明日も明後日も今日みたいな変わらない日々が続くのだろうとこの時は信じていた。

 

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