最後のアビドス生徒会長   作:シャッチトムソン

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砂に眠るお宝

 

「今日は宝探しをやりにいこう!!」

 

生徒会長が言い出すのはいつも突然だ。

なんでもすごい情報を手に入れたらしい。

 

その仕入れ先は聞かなくていいだろう。

この人の事だから耳に聞こえた噂話を直ぐ鵜呑みにしたに違いない。ちょっと息があがっているのは走って帰ってきたのか...それに前科もある。

 

少し前、指定された場所に行けばヘルメットを被った集団達に待ち伏せされて銃撃戦。その前は着いてみれば怪しげな宗教活動をやっている団体が集まる集会場。その前の前は_____

 

なんにせよ毎回毎回聞いた話と違うモノに出くわすのがお姉ちゃんが持ってくる話のオチなのだ。

 

私とホシノは水回りの作業をして濡れた制服を乾かしている途中、干しながらヘェ〜そうなんだと生返事で返せば嬉しそうにはしゃいでいる。私たちの間には明確な温度差。

 

話の始まりはなんでも昔の生徒会長、それもアビドス全盛期に務めていた生徒会長によって不法投棄された物が今回で言うところのお宝らしい。

 

「なんでも一個100万円くらいの花火が有るらしいよ」

 

当時アビドス砂祭りがまだ行われていた時代に使われた花火。

 

聞いた事がある。材料に希少金属を使った高級品で引火性を持った金属が空を発光して彩る。それは凄く綺麗なんだとか一度は見てみたいものだ。

 

適当に大量発注して終わってみれば使えなかったから捨てられたそれらはいくら大々的なイベントとはいえ見せ物としては高すぎる代物だ。

 

全く、、、それだけの財力を後世に少しでも残してくれていたら私達の未来はもっと光で溢れていたのに、今では借金の山に埋もれているのはコチラであるのだから時代の流れは無情である。本当にアビドス全盛期の話は聞くだけでまずは疑ってしまう金に物を言わせたとんでも話ばかり。

 

でも当時は本当に要らなくて捨てた物かもしれないが、それだけの高級品を眠らせたままにしておくには勿体無い。所有権について何か言われたとしても現役の生徒会である自分達には一応の権利はあるはずだ。

 

___話が本当なら干からびたオアシスの下に希少金属の鉱脈。

 

私は賛成。

結局はとりあえず行って見た方が早い。

それで借金の問題が少しでもマシになるなら損はない。騙されたらいつも通り対処すればいい。

 

でももう1人この生徒会には居る訳で、そしてその子は生徒会でも一番の堅物で真面目。こんなお遊び感覚で出された議題に賛成してくれるのか。

 

「何しているんですか2人とも。早く行きますよ!!」

 

準備を終えて扉に手をかけるその人は目をキラキラさせて結構ノリノリだった。あぁそっか、確か昔のお宝とかそれにまつわる地図とか好きだったね君。

 

 

場所は学園から変わって大オアシス。

アビドス砂漠の閉鎖地区で普段なら誰も立ち寄ることのない忘れ去られた場所の一つ。

 

関係者以外の立ち入りも禁止されているが、それを警備する者も咎める人材も不足しているから入りたい放題の無秩序、残り少ないアビドス市民はそんな何も無い場所に近づく訳でもなく、不良やよくわからない連中の溜まり場になっている事も多々あったり。

 

目の前には大きな穴。

厳密にはオアシス跡という表現の方が正しいだろう。

 

近年の砂漠化で水はすっかりと干上がりきって水など一滴もなく、当時を知る者からすると見る影もない。

 

「さあ〜はっじめるよ〜」

 

各々スコップを手にして大きな穴の横に新しい穴を作り始める。作った穴に砂が入り込んで邪魔をしてくるから効率はそこまで良くは無い。まあしかしスピードはこちらの方が上で確実に掘り進めている。

 

掘り進めている。

掘り進めているけれど、そうじゃない。

肝心なのはそこでは無い。

 

 

もうどれくらいの時間を張り続けているのか。

決して浅く無い穴が出来ているのに目的のブツは一向になっても出てこない。

 

初めの方は多かった口数もだんだんと減っていった。

無駄話が無い分ペース自体は上がっているから良いことなのかもしれないが、精神衛生上よろしく無い。なんとなく強制労働させられる労働者の気分になってくるのは私達が同じ衣服を見に纏い統一感が出てしまっているからか。

 

そもそも____

・・・果たしてこれはTPOにあった服装なのだろうか?

 

カンカンとツルハシが砕く音。

ザクザクとシャベルが掘る音。

黙々と掘り進める中でなんとなく思い浮かんだ今更な疑問に私はその張本人に投げかけることにした時。

 

 

「あのね...ホシノちゃん___」

 

「それ以上は何も言わないでください。私も思っていますから」

 

横から2人の声が聞こえてくる。

内容なんて想像がつく。少し前から誰が言い始めるのかのチキンレースが始まっていたのだから。

最初に根を上げたのはお姉ちゃんか...

 

「そうだよね!?私だけじゃ無いよね?・・・もうそろそろ」

 

人間一度弱音が出るとそのムードに陥ってしまいがち。その雰囲気に釣られて周りの者まで感染するのは結構あって、多分お姉ちゃんのそれは皆の内心で思われていた思いでもあったから共感性がヤバい。

穴掘り職人として徹していた私達の心に綻びが生まれた。

 

けど、それを断ち切る様に空に振り上げたツルハシを地面に力一杯叩きつけて遮る1人が居た。

 

「もう少し頑張ってから!!ユウもまだいけますよね!!」

 

「頑張れって言うならやるけど...」

 

私とお姉ちゃんがリタイアしてもホシノはまだ作業を続けそうな感じだ。なら自分自身に納得ができるまで付き合ってあげる。私?私は帰ってお風呂を浴びたい気分だよ。

 

「ほら先輩。ユウもまだやる気ですよ手を動かしてください」

 

「ごめんね皆んな。・・・私達は一体、どこで間違えたんだろ...」

 

渋々とスコップで砂を掻き分ける作業を再開するが、うへぇ〜と肩が落ち込んでいる情け無い姿。

 

「「先輩(お姉ちゃん)がこの話を言い始めた時からじゃない(かな)ですか」」

 

「ひぃん」

 

つまりは今回もダメそうだった。

いつも通りの結果、アビドス生徒会の借金問題はそう易々とは解決させてくれないらしい。

 

「で...でもさ!?2人だって賛成してくれたじゃん!!ホシノちゃんなんて嬉しそうに喜んでいたのに...私のせい?・・・全部?そうなの?」

 

「それは私が一番分かってますから言わないでください!!」

 

それからも作業は続いたがでもすぐに終わった。

ホシノがもうダメですとようやく穴掘りを心ゆくまで堪能してくれたのだ。

 

へとへとの私達を上から容赦なく照らす太陽の光。それは飽きる程に浴びたので皆んなで建てたテントの中でやり過ごす。

汗をかいた分の水分を補給しつつ寝転がれば川の字が完成する。あまり広く無いテントに3人、居心地はお世辞にも良く無いけれど疲労感の方が勝るのか誰からも不満の声はあがらず私もとりあえず横になりたい気分。この時初めてこの服装で良かったと思った。

 

ああそうだった。

聞きたいことを思い出した。

 

「なんで水着なの?」

 

そう。私達は砂漠のど真ん中で水着を着ている。

 

「ほら穴掘りして地下水がドカーンってなったら大変かな〜って」

 

お姉ちゃんの言いたいことは理解した。

伊達に長年妹を務めているわけではない。

 

「なるほどね〜そうして砂漠にオアシスが戻りました」

 

そんな事が起こったならまさに奇跡だ。

 

「そうそう。砂漠化問題は解決。私達も花火を見つけて借金返済。めでたしめでたし__」

 

「なってません。ユメ先輩、何も解決してませんよ」

 

「ひぃん」

 

奇跡は安売りなどされない。

だからこそ奇跡は奇跡になるのだ。

 

だが、行動を起こさなければ手の届く奇跡も見逃してしまうのも事実。今日を頑張っていつか奇跡が起こることを夢見る。それくらいの捉え方がちょうどいいのかもしれない。

 

そうだと上半身を起こすとお姉ちゃんは手帳を取り出す。

 

「今日の反省を書いとかないと」

 

たのしいバナナとり。

いつも持ち歩いている手帳が開かれペンがスラスラと進む。

 

「まさか...毎回毎回書いてるんですか先輩!?」

 

「これも生徒会長としての仕事というか、これがあれば後に生徒会長になる人も役に立つでしょ?」

 

驚愕に染まるホシノの視線がお姉ちゃんから私に移る。

言いたい事はわかるとも。そんな失敗談を後世に恥ずかしげもなく書けるのはお姉ちゃんくらいだろうし、お姉ちゃんもそこまで深く考えてない。

 

これはお姉ちゃんの100%の善意。

それはそれで尚更タチが悪いけれども、それでも悪意を疑うならお姉ちゃんの顔を見ればわかるこの顔で平然と嘘をつけるなら大した役者だ。でも残念ながらお姉ちゃんにはそんな才能はない。少しでもあったならどれだけ助かったか、相手に騙される回数も少しは減ったであろう。

 

だとしても残される私達はたまった物では無いけれど。

お姉ちゃんは今年で卒業して終わりかもしれないけど、でも私達は後2年もある。

 

失敗の記録の中には当然として生徒会メンバーである私達の名前も出てくるのだろう。なら次の2年間、入学してくれた後輩に私とホシノは恥を晒し続けることになる。実に良い笑い話になること間違いない。

・・・たまったものではない。

 

開かれたページは半分目くらい。

なら少なくともあの手帳の半分は私達の失敗体験記録か、、、成功体験はないのかだって?お姉ちゃんの一攫千金話の一つでも成功していたら借金で駆け回ってないとも。

 

「残すにしても失敗の記録ばかりじゃないですか!!引き継ぐにしても私は新しいの書いますからね!!」

「同じく私もいらないよ」

 

「ひぃん…」

 

今回の一件で反省点を挙げるとするならばなんだろう。

真っ先に出てきた言葉は人は失敗を学ばない。そんな事を頭に思い浮かべながら私達は帰路に着いた。

 

 

 

 

「あっユウちゃんじゃん何してんの?」

 

私とユウが水道管の修理を行なっていると声をかけられた。

2人組の生徒で確か同じ一年のクラスメイト達。

生徒証も同じ色だから記憶は合っている。

 

髪留めや手先のネイル。手に持つカバンにはよくわからないベロを出したペンギンみたいなナニカ明らかにその目がイッてしまっているぬいぐるみが付けられており、見るからにオシャレに気を遣って流行に敏感そうな言動からもギャルっぽい人。

 

それに一年は1クラスしかないので同じ年の入学生なら必然的に一緒になってしまうのでそもそもクラスメイトしか存在しない。

 

「水道の水が出ないって聞いたから直している最中…かな?」

 

「へぇ〜大変だね」

 

彼女達の興味は私ではなくユウ。

誰も私を気にする事なく私も別に話をするつもりはないので手元に視線を戻すと中断していた作業を再開する。ユウはしゃがみから立ち上がり視線を合わせると背中を伸ばしン〜と固まった体をほぐすとみんなは?と話を膨らませる。私と違って面識がありつつ会えば会話できるくらいの仲ではあるのだろう。

 

「ラーメン食べに行こうって話になってさ今から行く所なんだけど、ユウが居るってことは今日バイトは休み?」

 

「うんそうだけど」

 

「あらら残念だね」

 

「どうしてこっちを見てくるのかしら?」

 

腕を組んで彼方を見ていたもう1人が2人の会話に入ってくる。不機嫌そうというか高圧的でプライドが高そうな感じだ。

 

「ん?カナちゃんいつもユウちゃんがバイトしてる姿眺めてるしラーメン持ってきてくれたら嬉しそうにしてるじゃん」

 

その言葉でツンとした態度は崩れ手に持っていたスマホがポロッと手から溢れるのをユウが地面に落ちる前にキャッチして事なきを得る。

 

「してない!!してないから!!それに今日はアナタが行こうって言うから」

 

「だってラーメンに誘って断られた事ないからね〜」

 

うぐっともう1人が言葉を詰まらせる。

そうしてユウが拾ったスマホを手渡せば小さいながらありがとうと素直に感謝を示す。キツそうな見た目や態度からは近寄り難い印象だったが礼儀はキチンとするタイプなのかもしれない。

 

「それは…そうよ!!ラーメンが好きなだけよ!!」

 

「ゲヘナ行った時はラーメン拒否ってたじゃん。油っぽいのはカロリー計算が狂うって」

 

「美味しくないかもしれないじゃない」

 

ニヤニヤしているギャルの子を見て分かった。

これは完全に弄んでいる時の悪い顔。

 

「ゲヘナって美味しいお店以外は爆破されるらしいよ」

 

「・・・気分じゃ無い日もあるから」

 

丸め込まれて声も次第にだんだんと小さくなる。

キツそうな子が中心かと思ったが2人の力関係は逆だったようだ。

 

「素直じゃ無いな〜ユウも一緒に行かない?って言っても色々と用事がありそうな感じだね」

 

「ごめんね。コレ結構かかりそうだからその間に待ってもらうのは流石に申し訳ないかな」

 

ユウは言葉通りに申し訳なさそうに謝ると向こうもしゃあないしゃあないと笑って許してくれる。

 

「じゃあさ、次のバイトっていつ?」

 

「ちちょちょっと!?」

 

「えっと来月の一週目の土日には入れてるよ」

 

「了解!!絶対行くからじゃあ明日もまたね〜」

 

会話はこれで終わったのだろう。手を振りその場を後にしようとするギャルの子にユウも手を振りかえすので一応近くに居合わせている私も頭だけをコクリと下げておく。

 

「勝手決めないでもらえる?」

 

「一緒に行くなんていってないけど」

 

「ハァ!?もうアナタなんかしらない!!」

 

早足で1人で歩いて行ってしまった1人を見てありゃりゃやり過ぎたかと言いつつギャルの子もその子の背を追いかけていった。騒がしい人達だけど友人同士の関係としては見ていて好ましいと思う。

 

「よかったのですか?」

 

彼女達を見届けると隣に来て作業を再開するユウに疑問を投げる。

 

「なにが?」

 

「私1人でも作業はできると思い...ます。だからユウは今からでもあの人達と一緒行けばいい」

 

友人というのはかけがえの無いもの。

だから1人でも多く大事にすべきだと思った。

 

「さっき開けちゃいけないバルブ開けて盛大に水を被ってたのに大きく出たね」

 

「それは...初めてだからで、やってれば慣れてくるはずです」

 

数分前の苦い記憶が蘇るとまだ濡れた服がその時の光景を張り付く感触と共に鮮明に伝えてくる。

 

「やり始めたら最後までやらないと私は納得できないから、これは私の問題だからね。ホシノが気を悪くする理由はないよ」

 

さて、早く終わらせないと。

そう言って取り掛かるユウに続いて私も作業を再開する。

 

「えっとこの配管がこうだからここは閉めたから除けて大丈夫だね」

 

「ここですね。わかりました」

 

 

 

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