最後のアビドス生徒会長   作:シャッチトムソン

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偶然の出会い必然の別れ

 

今日のホシノは虫の居所が悪かったのだろう。

 

先輩であり、生徒会長でもある彼女が問題を起こすことなんて生徒会では珍しくもない日常であるのに、この時のホシノはユメに対してそれ以外のモノまでぶつける様に自分の感情に従うままに押し付けた。

 

「奇跡なんて起こる訳ないじゃないですか!!」

 

輝かしい日常にピキッと亀裂が入る。

それに誰も気付くことなく時間が進むとともにヒビだけが広がり始めた。一旦入り始めたヒビは修復しない限り直らずそれどころか止まることを知らず広がり続けるだろう。

そして手遅れに立った時、人は直そうと必死に足掻くのだ。

 

もう取り返しが付かないと知った時、

その当たり前が手の届かない星になった時、愚かにも初めて人はソレの大切さを理解する。

 

1人だけの部屋。

床には破り捨てられバラバラになった紙がただそこにあった。

 

 

時は今朝に遡る。

 

財政状況は芳しくない。

今に始まった話ではないが、ユウは少しでも食い止めようと減らそうと融資先を探している。

 

融資先がないわけではない。

だが、完全に足元を見られている。

 

圧倒的な不利な条件を突きつけられ、はいそうですか。と頷くことはできない。自分達はアビドスを救う為にやっている。

 

彼等が提案する契約には未来がなかった。

だからユウは少し前にここから出発して今日も他の自治区を奔走している。

 

彼女が外で協力者を探してくれているなら留守を守るのは私達の仕事だ。彼女の帰る場所を少しでもキレイにするのは当然の行いだ。

 

なのに何故。

あの人の家族であるアナタはそんな風に。

 

いつも いつも

 いつも いつも

 

もういい加減にしてほしい。

 

 

「ごめんじゃありませんよ!!

どうしてそんな簡単に毎回毎回騙されるんですか!!」

 

申し訳なさそうにする先輩にこの時ばかりはすごく腹が立った。

 

1日の大半が先輩のトラブルに巻き込まれて消えていった。実に無駄な時間の浪費。あれらがなかったら作業はもっと効率的に進んだ。もっと活動することもできた。

 

よく転んでよくドジを踏んで周りを巻き込む。事が起こってから申し訳なさそうにするならもう少し気をつけるべきだ。ありもしない起こりもしない理想よりも今を大事にすべきだ。

 

学園の代表なのに

いつも呑気に構えて

 

「それは...」

 

現実から目を背けて。

夢や希望を語ってくる。

 

この人が持ってくるのは迷惑話だけではないか。

 

だから私もユウも苦労する。

彼女が住み慣れた場所を離れ、築き上げたモノを捨てて尽くしてくれているのに。あの子を守る立場にあるはずの姉であるアナタは何故そうして惚けていられるのか私には理解できない。

 

結局あの日は記録的な大雨で結局先輩の家で泊まることになった。

そしてあれ以来、私は私なりにユウを知ろうと思った。

知らないままなのが嫌だったから。

 

「ユウは苦労している。

何もかも捨てたのにこれでは彼女が報われません」

 

「...ユウちゃん?ねぇ?ホシノちゃん?ユウちゃんがどうしたの?」

 

ほらやっぱり。

私でも調べれば手に入る情報を一番近くにいるべき人なのに先輩は何も知らない知ろうともしてない。何よりも現実を見ていない。

 

「さあ知りませんよ!!少しは自分で考えてみたらいいのではないですか。もう付き合っていられません。生徒会は終わりです!!」

 

 

激情に任せて放った言葉。

 

言葉通りの意味はない。

私は生徒会を辞めるつもりはなく、どこか静かな場所で頭を冷やしたら戻ってくるつもりだった。

 

「先輩。戻りましたよ。次は気を付けてくださいね。あれ?もう帰ったのかな?」

 

誰も居ない生徒会室。

私はユメ先輩の帰りを待っていたが一向に帰ってくる気配が無かったので私も生徒会室を後にした。

 

 

次の日になっても先輩はやってこなかった。

いつもならもう来ている時間帯なのに。

 

「ん?」

 

机の上にメモを見つけた。

 

"いつもありがとうホシノちゃん。お元気でね。"

 

「・・・ユメ先輩」

 

私はそれを握りしめて走り出した。

 

先輩の行きそうな場所。

先輩の好きな場所。

先輩の家。

 

すぐに思いついた所は探し尽くした。

そこにはユメ先輩はいなかった。

 

走ってユメ先輩の名前を叫ぶがどこにもいない。

走ってユメ先輩の名前を叫んでも返事がない。

走って走って辺りが暗くなるまで叫び続けて。

 

 

先輩を探す最中、昨日砂嵐が起こったらしい。

それに巻き込まれたのだとしたら。

方向がわからなくなったのだとしたら。

 

いつのまにかメッセージが届いていた。

届いたのは数分前、だけど送られた時間は大幅にずれていた。

 

ユメ先輩から送られてきたその内容を見て私は恐れていた事が現実になり、今更になって血相を変えて彼女に連絡を取った。

 

 

ユウは連邦生徒会に対して更なる支援を求めて連邦生徒会本部であるサンクトゥムタワーへと訪れていた。DU地区がギヴォトスの中心というだけあって様々な生徒が行き交っている。都会の中の都会といった感じだ。

 

窓口で名前を告げて会議室に通されそこで今回の担当者と話をする。連邦生徒会長が直々に対応してくれるとは思っていない。

彼女は全ての業務の中心にいる忙しい立場だと聞く、そして職務としてギヴォトス全土を管理するなんて想像するだけで頭が痛くなる。アビドスの問題だけでも手一杯の私ではとうてい敵わない人なのだろう。

 

話し合いの結果、一応支援の継続と追加の支援の要請に対しては検討の回答をもらえた。追加の支援に関してははなから期待していない。

 

重要なのは見限られない事、アビドスが必要だと再認識してもらい今ある対応を見直され打ち切られることが最も恐れていただけに現状維持ではあるが内心はホッとしている。これで首の皮一枚、これからも学園の形を保つことが出来るだろう。

 

ほかとはちがって援助に対する見返りを求めない連邦生徒会。その支援の継続そこ自力で立ち上がることすらできないアビドスおいて何よりも優先させなければならない事案なのだから。

 

私は相手の顔色を伺いつつ少しでも待遇を良くしてもらおうと協議を重ねていった。アビドスの未来を考えれば私の苦労などちっぽけなもの。そう考えると疲労も気疲れも薄まってまだまだやれるとやる気が湧いてきた。

 

 

今回の出張は1泊2日。

1日目は交渉の場を設けてもらい2日目は都市計画を兼ねたDU地区の視察が予定されているので私は準備された客室内で休む。

 

 

予定通り昨日と同じ担当者と合流し街や設備の案内してもらっている最中にメッセージが届いた。ホシノからだ。

 

 

大まかにまとめるとこうだ。

お姉ちゃんの姿が昨日の夕暮れから今朝まで見えない。考えられる場所はすでに探した。そして同時刻に発生していたと思われる砂嵐に巻き込まれた可能性、それによって遭難した可能性。

お姉ちゃんはコンパスは持ち歩いていなく。

届いたメッセージ以降は新たな連絡はなしと。

 

「・・・」

 

どうされましたかと心配される。

 

「すみません。なんでもありません」

 

私は終わり次第すぐに戻るとメッセージを残すと端末をしまう

 

自分の気持ちを優先するなら直ぐにでも帰りたい。

でも今回の場は私達に都合を連邦生徒会が合わせてもらった形、ここで帰るのはお互いの印象を悪くする。復興の唯一の頼みの綱である連邦生徒会を蔑ろにするのは学園を任されている者として褒められた行動ではない。

ならば私がすべき行動は決まっている。ホシノを信じて私は私の役割を全うするだけだ。

 

 

 

 

時刻は夕方を迎えようとする頃合い。

なんとか切り詰めたつもりだったが、帰る頃には夜になってしまうだろう。そうなると活動範囲は狭くせざるおえない。

 

電気のついていない生徒会室。

アビドス対策プロジェクト進行中と扉に掛けられたプレート。

 

鍵を差し込み開錠、、、したのだけど、扉は開かずカチャカチャと静かな校舎に音が虚しく奏でられると扉は閉まっていますとアピールしてくる。

 

ホシノらしくもなく鍵をかけ忘れたのか。そう思いつつも再び私は鍵を差し込みガチャりと本当に開錠すると生徒会室へと踏み入れる。

 

真っ暗でしんみりとした室内。

だけれどそこには違和感、そして物陰。

 

暗がりに慣れた眼が捉えると警戒しつつ壁に手をやり電気をつけた。

 

「って、ホシノ?」

 

そこにはホシノが居た。

てっきりいないものだと思っていたから驚かされた。しかし彼女からの反応はない。ただ何にも反応を示すことなく床に座り身体を丸めていた。

 

近づいてみれば何かを抱え込んでいることに気付いた。その正体はすぐにわかった。だって見慣れた物だったから。

 

昔のアビドス砂祭りのポスター。

嬉しそうにいつかまたやりたいと語っていたのを覚えている。

 

その時、私は全てを察した。

今がどういった状況でどうしてホシノは部屋の明かりも点けずこんな状態なのか。この時ばかり察しのいい自分を恨めしく思ったことはない。

 

「っ!?ユウ帰ってきて...」

 

「うん。今帰ってきた所だよ」

 

私を見るなり挙動不審。何かに怯えるようにオドオドした様子で普段の彼女らしくない。それが自分の頭で考えていた最悪の予想が事実であるとの証明になった。

 

 

 

 

 

 

 

舞い込む書類を処理していく。

未だにお姉ちゃんの生死は不明で梔子ユメは失踪扱いとなった。

 

それはお姉ちゃんの遺体すら出てきてない為の措置ではあるが、もう連邦生徒会からの協力を仰いでから捜索を始めてもう1ヶ月以上は経つ。生死不明とはいってもそんな長時間を遭難した砂漠を生き残れるとは到底思えない。

 

 

お姉ちゃんはもうこの世界には居ないのだ。

 

___捜索から33日目。

お姉ちゃんが砂漠で遭難したと決定付ける手がかりとして見つかった盾。

それ以降は後にも先にも何も進展は無く、その盾が失踪してからの唯一見たかった物として挙げられる時点で私もホシノも理解した。

 

なにも目に見たものだけが真実では無い。

お姉ちゃんを見つける為、掘れども掘れどもしかし何も出てこない見つからない。

 

分からないことが分からないままでも人は結論は出すことができる。だってそうだろう?そうじゃ無いと言うのならいなくなったお姉ちゃんの分も頑張らないといけないと思っている今の私のこの気持ちはなんなのだ。

 

・・・あぁそうか。

単に冷酷に物事に対して単位でしか測れないそこに優先順位を設けている私。それは人の心を失った人の形をした機械と変わらないのでは無いのか。

 

___姉の生存をもっとも信じるべきの私がこんな思いを抱くなんて本当にあってはならないことなのに、認めてしまっている私がいて。捜索が打ち切りになると生徒会長の失踪でできてしまった空席には私がホシノは副会長になった。

 

生徒会長となってしまった以上、個人的な事情だけに目を向けるわけにはいかない。1人の生徒と学園の生徒達どちらを優先すればいいのかなどは秤にかけるまでもない。そう冷静に思考を巡らせて。

そうして私は新たな生徒会長として席に着いた。

 

 

 

 

2人だけの空間というものはこれ程広いのか、お姉ちゃんがただ大きかったのか。いつもと変わらない作業をしているはずなのに、欠けたピースがあるみたいな違和感ある日々を私達は過ごしていた。

 

問題点はいつも通りに山積み。

いやむしろ増えた。

 

生徒会長となった今、この権限を使えば大抵のことはどうにかなる。前なら手が出せなかったセキュリティが掛かった深い情報も開示することさえ。

 

そうして浮き彫りになるのは昔、お姉ちゃんの任期よりも前の旧生徒会が結んだ契約の数々、それによってアビドスのほとんどの利権は企業へと渡っていた。自治区に敷かれた道や廃墟となった建物はもはや私達の物では無かった。手付かずで全てが無事なのはここアビドス学園の敷地だけ。

 

そうと分かれば納得ができる部分もある。

 

不当だと思っていた利子。

いや明らかに利率がおかしいのは間違いないが、あれは私達の借金のみならず他の土地の利用料も含まれているのではなかろうか。

 

必死に守ろうとした物が他人の物だったと分かると、数分前とは何もかもが変わってないのに見る景色は変わって見えてなんともいえない気分になってくる。だけど、それで諦めることはない。他人のものになってしまったのならまた買い直せばいい。それがたとえいつになっても志と行動をしていればいつかはなんとかなるはずだ。

私の世代では到底無理、そんなことは分かっている。

 

だから私たちは私達に出来ることをやるしかない。

それをやって次の世代へとバトンを繋ぐ。

 

そうやって他人をあてにして、でもそう考えないと人は全員が全員強く生きれるわけじゃ無い。高すぎる山脈を前に努力する人現実を受け入れて生きていく人。努力する人はその目標が無理だと分かった時にどうするのだろう?自身の意味さえ見失ってしまうのだろうか。

 

 

「「・・・」」

 

ホシノとは会話は減った。

最近では部屋を出る時のあいさつさえしていない気がする。

 

また外へと繰り出すのだろう。

出ていくのをパソコンに向かい合ったままにその背を横目で流しつつ私はまた意識をパソコンへと戻す。

 

夜遅くまで外を出歩くホシノには何度か注意したが、それでも辞めないので今はもう何も言わずに放置している。

 

そうこうしていると時間だ。

私は役割を果たさないと。

 

 

 

 

「そうは言ってもね」

 

「そこをなんとか砂漠横断鉄道の再開をお願いします」

 

深く深くと頭を下げる。

頭を下げるだけで意見が通るならこの頭くらい何度でもいつまでも下げてやる。

 

前は門前払いだったが、こうして中に入れてもらえただけでも進展していふ。

 

「いや、しかしだね。あそこには...」

 

___ネフティス社。

アビドスと共に発展して全盛期にはアビドスの経済の根幹にいた大企業。それはアビドスが崩壊すると同じく連鎖して誇っていた栄華は失われた。

 

起死回生で学園との合同で行われた砂漠横断鉄道のプロジェクトは始まると少しして頓挫。それに希望を見出していた者達も巻き込んで衰退に拍車がかかりアビドスは今に至る。そしてアビドスの地から真っ先に離れた者。

 

「こちらもそちらの立場を考慮しています。しかし、私達も企業です。慈善活動家では無いのです。わざわざ沈む泥舟に誰を乗せろというので?」

 

「そこをなんとかお願いします」

 

「生徒会長さんね。ダメなものはダメなんですよ。頭を下げても無駄だから、今日の所は帰ってくれませんか」

 

ソファーから立ち上がり切り上げようとする担当者に私は一緒に立ち上がると床に膝をつける。

 

「ちょっと!?そんなのは困るよ生徒会長さん!!」

 

「お願いします」

 

足をたたみ床に頭をつける。

プライドなんてのはもう捨てた。

 

学園に生徒が戻ってくるなら他の自治区みたいに人が溢れかえるなら私1人でなんとかなるなら。他人からこんな惨めな自分を見られて何を思われたとしてもそれでアビドスが助かるならそれ程に安い行為はない。

 

肩を掴まれ強制的に立ち上げさせられる

 

「貴方も生徒会長なんだ。まだ就いたばかりかもしれないけど、学園の長というのをもっと理解した方がいい」

 

それは綺麗事だ。

力無い者は選ぶ手段の選択肢も暇さえなく、足掻き続けるしか守る術はない。

 

「・・・分かった。今回は稟議にあげてみよう。その代わり結果は期待しないでください」

 

「ありがとうございます!!」

 

「なら要件は終わりですね。あんな行為は他のお客様のご迷惑になりますから早く帰ってもらえると助かります」

 

私は追い出される形で外へと強制的に退出させられた。

ブラックリストに入ってしまったかもしれない。

 

でも、話だけでも聞いてもらえるならなんとかなるかもしれない。鉄道計画が再開すれば事業によって地域の活性化も期待できる。

 

私は少しばかり心が軽くなり帰路を進むと横に黒色の高級車が止まると扉が開く。出てきたのはスーツ姿の異形、というのも顔が真っ黒に塗りつぶされていたから。

 

「アナタは確か、新しい生徒会長でしたね」

 

どうやら向こうは私の事を知っている様だ。

 

「そうですけど、何か?」

 

何故かクックックと笑われる。

学園の為ならなんでもするが、無意味に貶されるのはまた意味が変わってくる。私はムッとなると向こうも謝罪を入れてきた。

 

「気分を害してしまいもうしわけない。それと少しお時間よろしいですか?」

 

そう提案されるが、あからさまに怪しい大人である。

ついて行けば楽なことがないと直感が叫んでいる。

 

それに従い私はすみませんと断りを入れてその場を足早に立ち去る。

 

「梔子ユメさん。生徒会長前任で貴方の姉、今は失踪されているだとか、その件についてご協力できるやもしれません」

 

私はそれを聞いて思わず振り返る。

 

「お話だけでも聞いてもらえますか?」

 

私は大人に導かれるまま車に乗り込んだ。

 




次の1話で完結です。
もう少し駄文にお付き合い下さい。
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