TSしたから女子校で電波系女子ごっこをしていたら、いつの間にかヤンデレ美少女に囲われていた件について   作:ペンギン3

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二話 電波と会話が通じてないのは、結構良くあること

 遂に、来てしまったかもしれない。

 ──ボクに、お友達ができる時が!

 

 一人ぼっちだった屋上に、今日初めてお客さんが来てくれたんだよ!

 それも、何と顔見知り!

 

 クラスメイトの岸根さん。無愛想なボクにも唯一、毎日おはようって言ってくれる優しい人。ストレートの黒髪が似合ってる、ちょっと気弱そうな女の子だ。

 

 どどど、どうしよ?

 あっ、まずは挨拶しないとだよね!

 

「きしね、りお?」

 

 夕日に見惚れちゃってるからか、朝の時よりぽややとしている彼女に声を掛けた。

 岸根さん、良い夕日だと思わない? って。

 

 すると、やっぱり口が勝手に反逆してきて、思ったことがそのまま口に出せなかった。

 

 ……ボクのおバカ。仲良くなりたいのに、何で初手フルネーム呼び捨てをしちゃってるかなぁ。あと、せっかく考えてた、良い夕日って言葉も口に出せてないし。

 

 むぅ、第一印象は大事っていうのに!

 ほら、岸根さんだって急に偉そうにしたから、目を見開いちゃってるっ。

 

 ……か、帰っちゃったりするかな?

 ボク、優しい岸根さんとなら、仲良くできるって思ってるんですけど!

 

 待って、て口に出せないから、ハラハラしながら岸根さんを見つめるしかなくて。

 

 すると、岸根さんは。

 

「──あなたは幽霊? それとも、天使様なの?」

 

 ──胸と背筋に電流が流れちゃうくらいの、素敵なお返しをしてくれたのです。

 

 エッ、待って!

 いま、過去最高にドキドキしてる!

 

 岸根さん、すごいよ!

 ボク、たった一言で射抜かれちゃったもん!

 

 そんな格好いいセリフ、簡単に言えちゃうものなんだね。ボクも気の利いたお返事、したいよ!

 

「しろがね、クラスメイト」

 

 でも、とても残念なボクの口から出たのは、極々普通の自己紹介。全然ミステリアスじゃないし、舌ったらずさが余計に残念さを醸し出しちゃってる。

 

 むぅ、むぅっ!

 ボクのお口、ポンコツ侍すぎるよ!!

 

 ほら、岸根さんも呆れちゃって、目をゴシゴシしてるし!

 ……あれ、耳じゃなくて、目?

 

 も、もしかして、本当に幽霊さんだって思われてる? 毎朝、幽霊さん今日も登校してるとか、そんなこと思われちゃってたかな?

 

 ま、まさかね!

 

「…………あっ」

 

 ん?

 

「ああっ!?」

 

 何かに気がついたみたいな、そんな岸根さんの驚いたって感じの声。まるで、クラスメイトだった事実にいま気がついたみたいに。

 

 ほ、本当に今まで幽霊って思われちゃってたの?

 ……岸根さん、そんなの嘘だよね?

 

「ね、ねぇ」

 

「幽霊、違う。足、ある」

 

 足あるよーってアピールすると、岸根さんはボクの顔と足を交互に見遣る。

 

 その挙動で、確信しちゃった。

 完全に、今まで勝手に登校してた幽霊生徒だって思われてたってことを。

 

 ……ん? あれ、逆に美味しい立ち位置じゃないかな、これ?

 

 謎めいた、幽霊に見えるくらい無口で孤高な少女。夕暮れ時の屋上で、意味深に佇んでいる。

 

 ……なんかいける気がしてきた!

 

「し、白銀さんは、どうして?」

 

 おあつらえ向きに、そんなことを聞かれたから。

 ボクは、赤と黒がコントラストを描いている空を見上げて。

 

「──空、歩けそうって、思ったから」

 

 思いっきり、ドヤ顔(心持ちは)で決め台詞を言い放った。

 よしっ、今度はちゃんと言えたよ!

 

 岸根さん、どんな反応してくれてるかなって気になって。見上げた空から視線を下ろすと、岸根さんは夕焼け越しに赤らんだ髪と頬をしていて。

 

「きしね、あなたも?」

 

 そんな岸根さんが、何だか今は仲間に見えて。

 ドキドキしながら、尋ねてしまっていた。

 

 ──屋上でミステリアス、やりに来たんですかって。

 

 岸根さんは、ゆっくり頷いてくれて。

 

 新たな同志、ミステリアス岸根の誕生に、ボクは深くガッツポーズ(体動かないし、心の中で)を決めた。

 

 

 うおおおおーーーーっ!

 遂にボク、友達できちゃうぞおおお!!

 

 


 

 

 赤と黒の境界線上に、白銀さんは立っていた。

 ただ、そこにいるだけなのに、空間の全てを支配している。そんな印象さえ、持ってしまう。

 

 ──この子なら、空を飛べるのかも。

 

 そんなことさえ思ってしまうほど、超然とした空気が彼女にはあった。

 

 だから、私は乾く口で恐る恐る。

 非日常的な、そんな空気感に飲まれながら。

 

「そう、だよ。私、空を飛びに来たんだ」

 

 心臓の音が聞こえるくらいドキドキ鳴らしながら、白銀さんに告げてしまった。私が、ここに何をしに来たかについて。

 

 言った瞬間、肌が騒めいた。

 罪の告白をしてしまったような感覚に、急に襲われる。

 

 身を縮こませながら、彼女の顔を覗いた。

 同じこと、考えて屋上にいるんだよねって。

 

 けど、やっぱり白銀さんは、表情を変えてなくて。

 

「白銀さんも、そうなんだよね?」

 

 不安になって、尋ねてしまう。

 仲間なんだよねって、確かめるみたいに。

 

 ──けど、白銀さんは、ゆっくり首を振って。

 

「飛ばない、歩くの。空を」

 

 そんな、違いの分からない訂正をしていた。

 

 ……どういうこと、なんだろう。

 空なんて、踏み出しちゃえば落ちるだけなのに。

 

「歩けないよ、空なんて」

 

 些細な訂正だけど、どうしてか私を否定された気持ちになって、つっけんどんな物言いをしてしまった。

 

「……」

 

 白銀さんは、私の否定に返事をするでもなく。

 ジィっと、ただ空を見上げた。

 

 赤色が呑まれて、もう殆ど黒に染まりつつある空を。

 

 ……無視、しないで。

 何か、言って欲しい。

 

 じゃないと、何か、困る。

 今、白銀さんから、目が離せないから。

 

「……どうやって歩くの、空を」

 

 結局、私の方が耐えられなくなって、話しかけてしまっていた。

 ……一緒の気持ちを抱いてる人に、どうでもいいって、思われたくなくて。

 

「──階段」

 

「え?」

 

「階段、待ってる」

 

 だから返事が返ってきてほっとして、よく分からなくて困惑する。

 

 階段って何?

 空を歩くって話、何だよね?

 

「ごめん、分からないかな」

 

 今度は素直に聞くことができた。

 白銀さんと世界を共有できたらって、そう思えて。

 

 白銀さんは見上げていた空から、私へと視線を下ろした。

 そうして、ジィっと私を見つめたのだ。

 

 ……な、何かな?

 

「きしねも、登る?」

 

「な、何を?」

 

「──天使の、階段」

 

 白銀さんの言葉が、何でか耳にスッと入ってきた。意味はよく分からないのに、ニュアンスが何となくで伝わってくる。

 

 空から階段が降ってくる。

 天使様が、用意してくれる階段がある。

 少なくとも、白銀さんはそれを信じているんだって。

 

「天国へいける階段なんて、あるんだ?」

 

「時々」

 

「ふ、ふふっ、変なの」

 

 時々。そのあんまりに適当な言い方に、少し笑えた。白銀さんの中での天使様は、結構適当な生き物なんだって分かって。

 

「……へん?」

 

 すごく無表情なのに、白銀さんからキョトンとしてる雰囲気が伝わってくる。

 

 それと一緒に、さっきまで漂っていた空気感が、ふわりと溶けた。浮世離れして感じた白銀さんが、今は普通の女の子に戻っている。

 

 ……でも、教室にいる時の、空気みたいな白銀さんとも少し違って。

 

「少し」

 

「そっか」

 

 ハッキリと、その存在を近くに感じる。

 暗がりの中で、どうしてか、その白い髪が輝いて見える。

 

「きしねが言うなら、そうかも」

 

 多分、それは白銀さんが私を認識してくれたから。

 無視しないで、私を見てくれたから。

 

「きしね」

 

 呼び掛けも、何だか距離が近く感じて。

 

「どうしたの?」

 

「──天使の階段、見よう。一緒に」

 

 甘い、熟しすぎた果実みたいな、そんなお誘い。

 それに、私は素直に頷いた。

 

 きっと今日は、その日じゃなかったんだって思えたから。

 空を歩こうなんて誘い文句──単なる飛び降りより、ずっと素敵に感じざるを得なかったから。

 

「うん、そうしようかな」

 

 私の答えに、白銀さんはやっぱり無表情で。

 けど、トコトコと私の前まで来て、一言。

 

「……うれしい」

 

 抑揚なく、けど小さな女の子みたいな雰囲気で、そう伝えてくれた。その様子が、どうしようもなくいじらしくて、久しぶりに心が華やいだ。

 

 私は今日、この瞬間、初めて本当の白銀さんと出会ったのかもしれなかった。

 

 そんな、久しぶりの嬉しいことで、胸がいっぱいになって。

 

 ──だから、信じられた。

 ──きっと死ぬには、もっと良い日があるんだって。




なんか想像していたより、沢山読んでもらえて震えています。
評価もしていただけて、大変助かっております!(こんなに早くバーに色が付いたの、初めてです)

今後も頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします!
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