TSしたから女子校で電波系女子ごっこをしていたら、いつの間にかヤンデレ美少女に囲われていた件について   作:ペンギン3

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二十話 もう全員電波だよ……

 昨日からずっと考えてた。

 双葉さんが言ってた、理央ちゃんの頭が浮かれポンチスイーツ梅毒になってるってことについて。

 

 何なんだ、浮かれポンチスイーツ梅毒って。

 理央ちゃんに、一体何が起こってるんだろうって。

 

 ボクに好きって言ってくれたことと、何か関係あるのかな。それとも、単なる自意識過剰?

 

 ……分かんないね、実際に本人に会わないと。

 

 

 妙に気になったまま、寝不足気味で迎えた翌日。

 しょぼしょぼの目をグニグニしながら、学校に登校したボクを迎えてくれたのは……。

 

「おはよ、翼ちゃん♪」

 

 妙に浮かれ気味な、理央ちゃんのニコニコ笑顔。

 ……うん、可愛い。

 

「おはよ、りお」

 

「ふふ、今日も良い一日になるね」

 

「そう……」

 

 なんか、とってもご機嫌。

 いつもの落ち着いた雰囲気じゃなくて、ウキウキしてるのが伝わってくる。

 

 でも、双葉さんが言ってたみたいな、浮かれすぎて頭がヤバい、なんて状況には微塵も見えなくて。

 

 ……いつもみたいに、双葉さんの言い過ぎ案件っぽかった。深刻そうな口ぶりだったから、心配しちゃったけどね。

 

「放課後、いつもの、場所」

 

「うん、分かってるよ、翼ちゃん!」

 

 こんなに楽しそうにしてくれてるなら、これで良かったって感じがする。……お陰で、一方的に感じてた気まずさとか、気にしなくて済んだし。

 

 気にされてないってことは、やっぱりボクの自意識過剰だったんだ。

 

 ……良かった、色々ボクの勝手な思い込みで。

 なにも、変なことしなくて。

 

 

 

 そうして放課後。

 いつもみたいに、いつもの時間が始まるって、ボクは無邪気に信じていた。

 

 

「お待たせ、翼ちゃん!」

 

「???」

 

 けど、屋上に現れた理央ちゃんは、見た目からして様子がおかしかった。

 

 両手には、"翼ちゃんLOVE!"と"愛してるぞ翼"の二刀流うちわ。

 額には、"翼ちゃん命!"と書かれたハチマキ。

 

 明らかに、ミステリアスとミステイクとを勘違いした理央ちゃんが、目の前に立っていたのだ。

 

 さようなら、いつもの日常。

 こんにちは、悪夢みたいな現実。

 

『岸根、壊れた』

 

 ここにきて、昨日の双葉さんの言葉がやっと理解できた。

 理央ちゃん、頭が変になっちゃってるよ!!

 

 

 

「りお、それ……」

 

「あっ、翼ちゃん気がついた?」

 

 ニコニコ笑顔で、うちわをパタパタする理央ちゃん。

 

 これ見よがしに見せつけられてるから、気付かざるを得なかったんだよ。出来れば、永遠に気付きたくなかったんだけど……。

 

「……何?」

 

 本当に何?

 理央ちゃん、どうしちゃったの。

 電柱に頭ぶつけて、パーンってなっちゃったの?

 

「よく聞いてくれたね、翼ちゃん!」

 

 聞かざる得ない状況なんだよ、理央ちゃん。

 じゃないと、ボクの頭もおかしくなっちゃいそうだから。

 

「このうちわやハチマキはね──翼ちゃん激推しグッズ集だよ」

 

 激推し、ぐっず?

 

「これでね、日々頑張ってくれてる翼ちゃんを応援するんだ!」

 

 爛漫とした笑みで、ずっと理央ちゃんはおかしな事をのたまっていた。

 

 一日ぶりに会った友達が、怪しげな宗教にハマっていた気分。

 

 しかも教祖はボクだし、本当に理央ちゃんの中で何があったのか。偉い人が偶像崇拝を禁止する気持ちが理解できてしまう。

 

「なぜ?」

 

 ボクの妄想よりも苛烈なナニかを叩きつけられて、頭がおかしくなりそうになる。でも、最後の気力を振り絞って、この時間の答えを得ようとした。

 

 理央ちゃん、君はどうしちゃったのって。

 すると、キリリとした顔で、理央ちゃんは……。

 

「──翼ちゃんが私の推しで、世界で一番可愛いんだってこと、気がついちゃったの」

 

 完全におかしくなっちゃったことを口走って、えっへんとしていた。

 

 ミステリアスでカッコいいとか、綺麗だとかなら受け入れられたのに、かわいいなんだ……。

 

 ボクがあの時、いいなって思った理央ちゃん。

 夕陽の中で、素敵な事を言ってくれる友達。

 

 その人が、こんな変な事を口走るようになってしまった。

 

 ボクは一体、どうすれば良いの……。

 

「りお、へん……」

 

「えっ、翼ちゃん?」

 

 おかしくなって、ボクを推しとか言って崇拝する理央ちゃんを見てられなくて、小走りで屋上を後にする。理央ちゃんの声が聞こえるけど、今だけは全部無視した。

 

 だって、頭がおかしくなりそうだもん!

 こんな理央ちゃん、見たくなかった!!

 

 

 

「……ふたば、話、ある」

 

「そろそろ、来ると思った」

 

 逃げるようにして屋上出た後、ボクが向かったのは図書室だった。

 

 頼れる友達が、双葉さんしかいなかったから。

 何か事情、知ってそうって思ったのもある。

 

「りお、へん……あれ、なに?」

 

 理央ちゃんヤバいよ、何であんなのになったの! って口にすると、お口が意訳してくれた。

 

 端的だったから、双葉さんの返事もシンプルになって。

 

「浮かれポンチスイーツ梅毒、アホの岸根になってる」

 

 あんまりにもあんまりだけど、確かにそんな感じ。許してあげたいけど、あんまり許せないタイプの理央ちゃんだったから。

 

「どうして?」

 

 何かが起こってるんだって認識できたから、次は解決の糸口を求めた。早く理央ちゃんに、元に戻ってほしくて。

 

 理央ちゃんが永遠にあのままだと、今度はボクもどうかしちゃいそうなのもある。

 

「なら、聞いて、翼」

 

 双葉さんは、重々しく頷いて。

 順番に、昨日あった事を話し始めた。

 彼女の視点から見た、理央ちゃんについてを。

 

 

「昨日の岸根、浮かれてた。翼に好きと言って頭がパー」

 

「……」

 

 そう、確かに言われた。

 理央ちゃんに、好きって。

 

 嬉しいけど困って。

 本気にしたいけど、真に受けたらダメで。

 

 だから、さっき理央ちゃんに会うまで、心がクシャクシャしてた。

 

 ……さっきの理央ちゃんで、全部心からボトボト落ちてっちゃったけど。

 

「ずっと浮かれっぱなし。でも──時々、思い詰めた顔、してた」

 

 思い詰めた顔って聞いて、思い当たりがあった。

 

 屋上で、時々理央ちゃんがしてた顔。

 寂しそうな、悲しそうな、俯き気味の。

 

 夕陽越しだから、そう見えちゃったのかなって思ってたけど。もしかしたら……何か悩み、あったのかな。

 

「翼、理由、わかる?」

 

 分からない、気のせいかもしれないって思ってたから。

 

 もっと理央ちゃんのこと気にしてたら、頭のネジ、外れなかったのかな。ボクを推しだなんて言って、ミステリアスから電波に転向しちゃったり、しなかった?

 

 友達のSOSに、気が付いてあげられなかった、のかなぁ……。

 

 考えれば考えるだけ、しょんぼりしてしまう。

 ボク、理央ちゃんのこと、大切なのに何にも気付いてあげられてないって、気がついて。

 

「因みに、私、知ってる」

 

「……?」

 

 だから、双葉さんのその言葉が、耳にスッと入ってきた。

 

「──岸根が、突発性メルヘン梅毒に掛かった要因」

 

 溺れてる最中に、差し出された藁みたいで。

 

「……しってる?」

 

「うん、知ってる」

 

 お陰で、落ち込んで底までいっちゃいそうだった気持ちが、シャッキリしてくる。

 

 何にも分かんないと何か分かりそうでは、天と地の差があるから。

 

「おしえて、ふたば」

 

「いいよ」

 

 だから、双葉さんに心の底から本当に感謝した。

 背後から、後光が差して見える。

 

 救世主様はここにいたんだって、理央ちゃんみたいに怪しい宗教にハマっちゃいそうな心境。

 

 救われるって、こういうことなんだって、何気なく理解して。

 

「でもね、翼」

 

 そんなボクに、双葉さんはそっと耳元まで近づいてきて。

 

「──操って、呼んで」

 

 トーンが変わらなくて、だから何者にも阻まれない。

 そんな、平らな声で双葉さんは囁いた。

 

 名前で呼んで、親しくしてって。

 

 一瞬の逡巡、誰かを想って過る罪悪感。

 ツンとした彼女の態度を思い起こすと、胸が騒めく。

 

 でも、そんな戸惑いに、双葉さんは……。

 

「昨日、岸根と二人でハンバーガー食べた」

 

 変わらない表情のまま、何で悩んでるのか知ってるんだよと、戸惑いを掻き消す一言を放った。

 

 気まずくて、落ち着かず──どうしてか、チクって胸がして。

 

「……そう」

 

 そっか、とその言葉を受け止めた。

 

 ボクとは、気軽に遊びに行かないのに……。

 ……でも、ボクはあんまり喋れないし、退屈だと思われても仕方ない。

 

 すごく複雑な気持ちのまま、ボクは。

 

「──みさお」

 

「ん、上出来」

 

 何だか分からない気持ちのまま、そう呼んじゃっていた。

 

 双葉さんは無表情だけど、口角に指を添えて。

 

「嬉しい。ありがとう、翼」

 

 そっと指で頬を押し上げ、笑顔を作ってくれた。

 

 ……和んじゃった、不器用な笑顔で。

 ボクの方こそ、ありがとうだよ──操ちゃん。

 

 

 

「翼、聞いて」

 

「ん」

 

 それから直ぐ、ボク達は理央ちゃんを正気に戻すための会議を始めた。原因を尋ねたけど、まずは治す方法を先に説明させて欲しいと言われて。

 

「岸根の脳は、異常をきたしてる」

 

「ん」

 

 残念なことに事実だ、残念な事実すぎた。

 今の理央ちゃんは、明らかにおかしいから。

 

「これを治すには、ショックが必要」

 

「……ショック?」

 

「そう、岸根の脳は昭和家電と一緒だから、斜め45度で衝撃を与える必要がある」

 

 ……何か偏見が混じってるけど、頼りにできるのは操ちゃんだけだし、黙って続きに耳を貸して。

 

「だから、破壊する」

 

「何を?」

 

「岸根の脳を」

 

 ???

 

「どういう、意味?」

 

「──岸根の脳を破壊して、メルヘン梅毒を駆除する。言い訳、出来なくして、気持ちを暴くの。二人ともの」

 

 ……えっとさ、よくわかんないんだけど。

 昭和の家電は、破壊したら直らないんじゃないかな?

 

 ちょっと心配になってから。

 けど、すごい自信があるみたい。

 

 無表情なのに、ドヤ顔だって伝わってきたから。

 信じてって、操ちゃんは綺麗な目で訴えかけてきていた。

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