【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !!   作:持麻呂

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第十六話

ヴィクターのところで2人とクロームの交換を無事に終え、授業料と交換料金の二つを合わせて大金を押し付けた。

最初はもらい過ぎだと渋られたが、この先Vくんちゃんが現れた場合の原作での出来事を考えて、もっと高級で高性能な設備があれば憂いが多少なりとも減るだろうと、設備の強化を理由に無理して押し付けて来た。

もし万が一、5年後私がどうこうなっていた場合でも、少しでもVくんちゃんの復帰が早くなれば取れる選択肢も増える。

備えがあれば憂いは少なくて済むのだ。

決して、無いと言い切れないところが現実の厳しいところである。

 

もし当日デクスター・デショーンの持っている銃がブーリャだったら、Vくんちゃんはこの世に留まれないだろう。

というか上半身丸々無くなっている事だろうな…

 

さて、これで性能的には超サイヤ人1悟空から1作目ブロリーと化した2人(言い過ぎ)を連れて、パシフィカのコーストビューに向かった。

ゲームであれば、ファストトラベルポイントの教会があったところの少し北側、高級ホテル『HOTEL MARQUESS』のお膝元にあるオレンジ色の出っ張りのような建物に向かう。

その周りは、トタンで出来た戦後の掘立小屋のような有様のスラム市場があり、どこか小汚い住民の間をすり抜けて、壁沿いの途中にあった水色のゴミ箱をよじ登り、5年後でも建設途中で終わったままの壁がないエリアまで進む。

サーシャには手を貸してやり、強化足関節を入れたレベッカは一足で上まで登り切ってしまった。

コンクリートを打つ前に予算でも尽きてしまったのか、鉄筋剥き出しの柱をすり抜けて、その後ろにあるシャッターに向かう。

上部には施錠されている証である赤色灯が光っているが、クイックハックで認証パスを送信すると緑色に変わって勝手に持ち上がった。

 

「さあ、早く入って入って」

 

2人の背中を押して、誰かに見られる前にササっと中に入ってから、シャッターを閉め直して施錠をする。

クイックハックされても大丈夫なように、内側から物理オンリーの鍵で二重にロックする。

 

少し進むと階段があり、それを下がると広い部屋に出た。

そこには、バスタブが2つと点滅を繰り返す大量のサーバー機材が鎮座している。

ここの部屋は、完成したばっかりの『HOTEL MARQUESS』が資金不足で最後まで作れなかった、ショッピングモールの一店舗になる予定だった場所である。

ちょうどゲームで遊んでいる時に発見したところで、ギャング狩りで徘徊している時にふらりと立ち寄ってみたのだ。

建物の管理者を調べてみたらそれがホテルだったので、理由を聞いてここの部屋だけ購入したわけだ。

ちょっとした隠れ家には良い感じの物件である。

入り口が脇から丸見えなのが玉に瑕であるが、まぁそれは良い。

先日から、ギャングの拠点を襲撃して回っていた時に、何か使えないかとネットランナーの機材やらサーバーやらをインベントリに入れて回収していて、遠隔攻撃とかに使えるようにここに設置したのだ。

毎度根こそぎ回収していたので、かなり大規模な設備になってしまったが、まぁマシンパワーがある分には良いだろう。

 

「ネイトー、ここはなにぃ?」

 

「ここはね、やばいところとかに遠隔でハッキングする時用の隠れ家だよ。自宅でやるのはリスクが高いから、こういうすぐには見付からないところからやるんだ」

 

「この機材、どうやって集めたの?」

 

さすがネットランナーと言ったところか、かなり大掛かりな設備を点検するようにみているサーシャがそう言った。

 

「これはね、いろんなギャング達がタダでくれたんだよ。優しいよねぇ。大丈夫、文句を言う人はもう居ないから」

 

「そ、そうなんだね」

 

細かいことは気にしてはいけない。いいね。

賢い子も嫌いじゃないけど、知っても黙っていられる子はもっと好きだよ。

レベッカは、よく分かっていないのか分かる気も無いのか、ウヘーっとした顔でチカチカ点滅しているサーバーを指で突いている。

まぁ、この娘は小手先のハックよりも銃をぶっ放した方が早いタイプだから、少し暇を持て余しちゃうかもね。

 

「そんでよぉ、あーしはここで何すりゃ良いんだよ」

 

新しく手に入れたカーネイジGUTSを手の中で弄びながら、こちらに視線を向けてくる。

自分がハッキングには全く役に立たない事を理解しているのだ。

 

「とりあえず、私とサーシャが身動き取れない間、我々を守ってほしいんだ」

 

「まーそんな事だろうと思った」

 

「一応そこの端末に、有線式で電波の送受信器の付いていない監視カメラの映像が映るから、ぼちぼち外の様子も確認してくれると助かるよ」

 

「へーい、りょーかい」

 

ドカッと端末前にあるリクライニングシートに座って、風船ガムを噛み始めた。

まぁ、ボーッとネットにダイブしている私達を眺めるよりは、外の景色を見ていた方が暇つぶしにはなるだろう。

一応、ニコーラとブリトーXXLを小さい冷蔵庫に用意してあるので、それも食べて良いと伝えた。

早速ニコーラ・クラシックのプルタブを開けて飲み始めている。

 

ダイブの効率を上げるために、バスタブに大量の氷を入れてから水を張った氷風呂を用意する。

私の場合は、そこまで必要では無いので、サーシャが上半身まで浸かっている氷風呂の端に、ズボンの裾を捲って膝下を漬けた。

 

それから、パーソナルリンクをサーバーのポートにジャックインする。

サーシャは、ネットランナーである為首の後ろに高速通信用のポータルがある。

そこにサーバーからコードを伸ばして接続した。

流石にルーシーのような、ディープダイブ用のゴツい雌端子ではない。

 

私の場合は、サンデヴィスタンと同じでミリテクカントMK6の性能もmodで変更されているので、パーソナルリンクで充分なのだ。

本来であれば数十年前の古代兵器なのだが、RAMの数もクイックハックスロットも増量されているので、あの使いにくかったサイバーデッキが名実共に最狂状態になっている。

その所為なのか、中に閉じ込められている不良AI君が聞き分けが良く、ある程度は自分で判断して仕事をしてくれるのだ。

使い勝手が良く優秀なのだが、かつてオルト・カニンガムが溢した『足掛かり』発言があるので、本当はこのまま使い続けて良いのか迷うところだ。

コイツの何が凄いかというと、すでに人間じゃ無いので、そのAI体という処理速度を生かして超爆速で防壁のICEを粉砕突破したり、デーモンを瞬時に相手に送り付ける事が可能なのだ。

軍用ICEモリモリで、たとえブラックウォールゲートウェイを食らってもHPが20%くらいしか削れない、ハードモードの第3波マックス・タックが感染即死するレベルだと言えば、ゲームをやったことのある人はそのヤバさが伝わるはずだ。

もはやただのチートである。

 

ブラックウォールゲートウェイの使用RAMの数が調整されていたりする関係で、事件等に無関係の野次馬などを巻き込む可能性があったり、使い過ぎて不良AIがこちらに悪さをしてきたりしないように、日常戦闘生活ではあまり多用したくないのだ。

今回は、気付かれてないバックドアからバイオテクニカに侵入するとはいえ、襲撃があった直後なので警戒は間違いなくされているはずだ。

素早く仕事を終わらせたいのと、なにかトラブルが有っても相手だけに損害を押し付けられるように、ミリテクカントMK6を使わざるを得ない。

まぁ、せっかく使うのであるから、ジャンの弱みだけではなく各種薬品の化学式やら成分配合表、そして可能であれば目玉商品の複数の汚染物質除去技術を頂こうと思っている。

早めに知っておけるなら、これに越したことはないだろう。

 

「さて、準備は良いかな?」

 

「いつでも大丈夫」

 

「よし、念のため言っておくけど、どんな機密情報を見たとしてもリークしようとは思わないでね。いまはまだその段階ではないから、ひたすら情報をすっぱ抜いてこちらのサーバーにコピーする事だけを考えるんだ。いいね?」

 

「……分かってる。もう同じ間違いはしないから」

 

「頼むよ。レベッカ!護衛はよろしく!」

 

「任されたー!」

 

手が届くところにある端末の接続スタートを押す。

意識が引っ張られるような感覚がして、ネットの世界に足を踏み入れた。

アニメでディープダイブしていたキーウィのように、すっぽんぽんのアバターで電脳空間に立ち尽くしている。

目の前には真っ白な空間にバイオテクニカのファイアウォールやICEが黒い壁のように立ちはだかっていた。

数秒で、自分の真隣にすっぽんぽんのサーシャのアバターが出現した。

 

「これがバイオテクニカの防壁…」

 

「社内から接続するのと、社外からだと全然違うだろう。これから、バックドアを使って突破する」

 

たとえネットウォッチが手伝っているとは言え、固く閉ざされた門も内側から開けられたらお仕舞いだ。

歴史を振り返り、ビザンツ帝国を見ればそれは証明されている。

 

「ひらけゴマってね」

 

巨大な防壁に手を翳して、特定のデーモンを送り込むと、社内でバックドアを仕込んだパソコンを起点として、社員だと身分を偽って侵入する事ができる。

目の前の壁に両開きの観音扉が現れ、こちら側に向かって開いた。

 

「すごいね。最初でかなり苦戦すると思ってた」

 

「まぁ、馬鹿正直に真正面からぶつかるのは、私も避けるよ。下手こいて脳を焼かれたくはないからね」

 

サーシャの手を引いてさっさと扉をくぐり、社内ネットワークに侵入した。

社内ネットワークの中は、外とは違って薄暗く、空間を埋め尽くすように無数のファイルが展開されている。

進み過ぎたようで、起点のパソコンを通り過ぎて直接サーバーに来てしまったらしい。

こうなってしまうと、社内のパソコンのデータやらがごっちゃになっていて、探すのが一苦労である。

 

「ここから探すの?」

 

「まぁ、こういう時のために、危ない助っ人がいるのさ」

 

「助っ人?」

 

私のアバターの内側から、赤いザリザリした人型のシルエットが出てきたのを見て、サーシャがドン引きする。

 

『愚かな…このような使い方はいずれ人類に…』

 

「あ、そう言うの良いんで、黙って仕事してください」

 

『………』

 

中学二年生に構っている暇は無いのだ。

 

「カントMK6君って呼んであげてね。コイツは言うなれば不良AIって言うやばい存在だから、あんまり近寄らない方がいいよ」

 

「う、うん…分かった」

 

「それじゃあ、仕事に掛かろう。カントMK6は、手当たり次第に機密情報をコピーして、こちらのサーバーにペーストして欲しい。もし気付かれて攻撃されたら、反撃してよろしい」

 

『………』

 

拗ねてしまったのか、無言で仕事に掛かり始めた。

やっぱり、恐ろしい速さで情報のコピー&ペーストを繰り返している。

よく見ると、なんかよく分からないデーモンも残していっているように見える。

本当に大丈夫なのか心配になってくるな…

 

サーシャも手近な所からファイルを開いて、中身をチェックしている。

私もボーッとしている場合では無い。

 

優先的に、閲覧権限レベル1(最上位)のファイルから探していく。

アホみたいに無数にファイルが散らばっているので、捜索するのも一苦労である。

自分の後頭部に突き刺さっている、ミリテクカントMK6の処理速度も間借りして、5分くらい掛かりながら目標物を発見した。

見つかったのは、前回社内で見た人事ファイルではなく、それのさらに上位に位置するものであった。

開くと、構成家族の自社に対する相対関係やら、この先どういった人事を行っていくかという事まで書いてある。

 

手前にイングリッドのファイルがあったので、見てみることにした。

どうやら、父親がここナイトシティ支部に薬品製造用の化学化合物を納入している企業のCEOらしい。

しかし、現在もっと安価に卸すと言ってきている別のライバル会社に、仕入れ先を変える事が内々に決まっているらしいので、その時にクビにしても問題無いように無難な仕事しか任せて居ないようだ。

特別優秀であったなら、話はまた変わってくるのだろうが、他の社員と比べても至って平凡らしいので、まぁ仕方ないのだろう。

ちなみに、退職金を払わなくて良いように、NCPDの如くいつものコースらしい。

やっぱり、コーポって碌でも無いなぁ。

 

ジャンを説得する材料なので、いそいそとサーバーにコピーし、他の人事ファイルを漁る。

2、3人、会社に反抗的な態度を取る社員の人事ファイルをコピーしていたら、ついにジャンの項目が出てきた。

どうやらバイオテクニカ側にばれているようだが、先日の救出マッチポンプのおかげか否か、イングリッドと恋仲になったようだ。

バイオテクニカは、この情報を使ってジャンに言う事を聞かせるつもりらしく、会社側がイングリッドの身柄を押さえた風な感じを出しつつも、当のイングリッド本人はさっさと死んでもらうつもりらしい。

クズすぎる…まぁ、アラサカも必要ならやってそうだから、とやかく言えないけど。

 

ジャンのを読み進めていると分かったのが、家族はもう全員鬼籍に入っているようで、それもあって今まで降格人事しかバイオテクニカは出せなかったらしい。

つまり、天才ゆえに言う事を聞かせられなかったわけだ。

そこにホイホイ恋人が出来たので、これ幸いと暗躍が始まってしまったということらしい。

彼もツイてないなぁ。

 

パッと見た感じでは、もうこれで目ぼしい人材もいなさそうなので、そろそろメインディッシュに取り掛かりたい。

不良AIに、現在進行させている作業を中断させて、汚染除去技術の記載されているファイルを捜索させる。

1人ではあまりにも時間が掛かりそうなので、探している間にタイムリミットが来てしまいそうな気がする。

持ち前の処理速度でファイルを洗い出してもらい、放射能と重金属の汚染除去技術は見つかった。

しかし、化学化合物の汚染や細菌兵器の汚染除去技術は見当たらなかった。

もしかしたら、これは本当にコアになる技術かなにかで、電子保存ではなく紙媒体で保管しているのかもしれない。

案外可能性はありそうだ。

 

そこから、オマケではないが植物のクローンを作り出すノウハウのような技術書類まで発見出来たが、どうやらタイムリミットが来てしまったようだ。

 

ついにバイオテクニカの情報保全部が我々侵入者に気付いてしまったようで、ネットランナー達が近づいて来る気配がする。

 

「サーシャ!ここで切り上げだ!」

 

「分かった!」

 

聞き分けよく、スパッと現在の作業を中断して、アバター同士の手を繋いだまま出口に向かって全力で向かう。

後ろから追ってきているコーポのアバターが、攻撃性プログラムを放ってきたりするので、避けながらこちらも攻性防壁を展開して嗾ける。

 

今のところ5人が追い掛けて来ているが、1人は攻性防壁に絡め取って足止めできた。

サーシャもアラサカMK5の性能差を活かして、相手アバターにクイックハックを仕掛けたりして、更に1人倒した。

そろそろ相手も本腰を入れて来る頃なので、追手はもっと増えるだろう。

 

不良AIと私達2人で、観音扉から飛び出しては急いでバックドアのプログラムを消去する。

真っ黒な防壁にあった扉は、一瞬で閉じて消え去った。

しかし、内側から外へは飛び出してくるのは簡単である。

そこで、社内をパニック陥れるために、ファイアウォールとICEの防壁に対して不良AIを突っ込ませる。

 

飛ぶような勢いで、真っ黒な防壁に体当たりした不良AIは、全身を大きく震わせると一瞬でファイアウォールとICEを構成していたプログラムの情報をバラバラに分解し、全く意味の無い数列に置き換えて木っ端微塵にしてしまった。

蚕食されるように、虫食いになって消えるのではなく、文字通り粉々になったので、今のバイオテクニカの社内ネットワークはまるで無防備の状態である。

他の大手コーポのネットランナーに見つかる前に再構築出来るかが勝負だと思って居たら、さすがに物理的に回線を断ち切ったようで完全に接続先が消滅した。

 

サーシャが呆然としているので、そのまま手を引いて現実世界に帰還することとなった。

 

目を開けると、レベッカが椅子の上で胡座をかいて、小さなお口でもぐもぐとブリトーXXLを食べて居た。

リスかな?可愛いよ。

 

「んおぉ、おふぁえり〜」

 

「はい、ただいま。なにか変わったことはあったかな?」

 

「ゴクリ…んにゃ、ねーと思うけど」

 

氷水から足を引き抜いて、用意してあったバスタオルで拭く。

数秒後にサーシャも戻ってきて、氷風呂からザブザブ上がってきたので、タオルで背中を拭いてあげる。

気温差に強い改造人間だとしても、寒いものは寒い。

 

「ネイト…あれ本当はなんなの?コーポの防壁が粉々になったことなんて今まで聞いたことない…」

 

サーシャが、私のスーツの裾を摘んで聞いて来る。

 

「うーん、あれはなんと言うかねぇ…本来はブラックウォールの向こう側に居て、こちらには入って来れない筈のヤバいAI…とでも言った方が正解なのかどうか…」

 

そもそも、ミリテクカントMK6に入っている不良AIくんが、SPI(元人間)なのかCPP(親が人間)なのか、はたまた可能性は低いだろうけどTS(原住民)なのか分からないんだよなぁ…

厨二病くさいから、SPIなような気がするけどなぁ…

 

「すごい怖かった」

 

「アレは奥の手みたいなものだから、普段は使わないから安心してね」

 

「うん…分かった」

 

なんだかショックを受けてしまったらしいサーシャを一頻り慰めて、打ち上げと称してご飯を食べてから帰ることになった。

もちろん、サーシャには変装をしてもらった。




今回は、サイバー空間でのお話でした。
ゲームでは、ネット空間での戦闘は殆どなかったので、どういった描写をすれば良いか悩みました…
これから、いくつか用途ごとに新しい隠れ家を登場させていくので、よかったらゲームでも探してみてください。

ミリテクカントMK6にいる不良AIについて、詳しく知っている方がいらっしゃいましたら、感想で教えてくださると助かります!

Vは

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