【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !!   作:持麻呂

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ノミの心臓がNC音頭を喜び舞っております。

なんとか更新出来ました


第二話

 流石にタフガイのジャッキーでも、連日のオシゴトは勘弁の様で次の日はダウンしていた。

 わざわざメールじゃなくてコールしてきたくらいだから、相当疲れたんだろうなぁ。

 その時他の会話もしたのだが、どうやらジャッキーは昨日の11万エディの大半をママ・ウェルズに渡したようで、エル・コヨーテ・コホの経営の大きな助けになったようだった。

 詳しく話を聞くと、どうやらジャッキーがヴァレンティーノズを足抜けする時に一悶着あったようで、仁義を切るためにママ・ウェルズが身銭を切ってそれなりの金額を上納したらしい。

 そのせいで、生活水準と経営が少し傾いていたようだ。

 ただ、ママ・ウェルズはとても喜んだ反面だいぶ危険な橋を渡ったのでは無いかと、かなり不安がっているようだ。

 まぁ、確かに一晩で11万エディはかなりハイペースなハンティングだったとも言えなくないかなぁ…

 ミリテク〝アポジー〟サンデヴィスタンの連続使用で一件あたり五分くらいのペースだったけど、ジャッキーとしたら高速で動き回り続ける私に当てないように、銃を撃つためだいぶ気を使わせたようだった。

ちょっと反省しなきゃいけない点だね。

 フレンドリーファイアを気にしなくて良かったゲームと違って、今のここは現実なんだから…

 まぁ、ランク2、3程度のヌエの弾が頭に当たったところでまったくダメージはくらわないんだけどね。

 ちなみに、パークのサンデヴィスタン終了時に電磁パルスを放出するって言う効果はオフにしたよ。被害がヤバいからね。

 それよりも、連続使用で女の子の笑い声が聞こえてくる方がヤバい。

マジで自分がサイバーサイコシスになったのかと思った。

 やるならケレズニコフと上手くスイッチしながら使用しないと良くないかも。

 たぶん、発狂する事は無いと思うけど…

 

 はてさて、そんなこんなで今日は丸々フリーになってしまったから、H4メガビルディングの購入した自宅にある程度の荷物を運び込む事にした。

通販で買った家財は、どうやら今日の昼頃に届くらしいので、それまでにできる事はやっておこうと思う。

 大体、こう言うのは後回しにすればするほど面倒になるって相場が決まってるので、善は急げで早速ベッドマットレスとか枕とかをインベントリにぶち込んで、楽々お引越しをする事にした。

 

 

 3時間くらいで終わってしまった…

 

 

 肉体に20振ってあるせいなのか、通販で届いた荷物も軽々運べたし、他の荷物もインベントリから直接設置できたので、余計に早く終わってしまった…

 これで今日からここに住めるわけだが、どうしようかな。

 

「………そうだ。引っ越しといったら上下左右にご挨拶に行かないとダメだね。そうなったら引越しそばが必要か…通販の出番だね」

 

 思い立ったが吉日、アラサカ社員御用達の日本産食品専門通販サイトで、堂々の評価5である天然物100%の純粋更科そばをとりあえず24人前発注して、4人前を6つに包んで貰うようにした。

 上下左右の部屋の人以外に誰に渡すのかって?

 そりゃ自分で食べる用とジャッキー用に決まってる。

 たぶん、ジャッキーの事だから後の3人前はママ・ウェルズとヴィクターとミスティにお裾分けするに違いない。間違いない。

 

天然物だからね。

1万2千エディしたって仕方ないね。

24人前だからね。

誰も気にしないね…いいね。

 

 ブツはもう明日には届くらしい。さすが2072年だ。

 物流網は鉄道や空路だけでなく、宇宙貨物なんて輸送方法もあるらしい。

 まさか高々そばを宇宙経由で運んできたりはしないよね…しないよね??

 

 

 

 

 

ーーーデイビッド・マルティネス視点

 

 ある日、夜にインターホンが鳴って母さんが玄関のドアを開けると、そこにはフロシキ?に包まれた荷物を片手に知らない女の人が立っているのが見えた。

 プラチナブロンドで紫色の瞳が四つある、一度見たら忘れ無さそうな美人の女の人。

 

 近くで話に聞き耳を立てていたら、どうやら昨日隣に引っ越してきたらしい。

 数日前に神経ブースタージャンキーの隣人が、相変わらず馬鹿騒ぎしながらスキップして引っ越して行ったのは覚えているけど、そのすぐ後にこんな綺麗な人が越してくるなんて思いもしなかった。

 

 母さんと話している方に目を向けると、その人と目が合ってこちらに笑い掛けてくるのを見て、思わず目を逸らす。

 たぶん、顔は赤くなってたと思う。

 

 その後、その人は包みを母さんに渡して、隣の部屋に帰って行った。

 

「母さん、それ何もらったの?」

 

「あぁ、これね。…うーん、なんと言うか…日本の伝統らしくて、引っ越ししたら上下左右の家の人にソバって言うヌードルを渡すんですって」

 

「へぇ〜、なんかめんどくさそうな伝統だな」

 

「まぁ、その変な伝統のおこぼれに与ったんだから、いいじゃない。…どれどれ〜〜、ええっ!?」

 

 フロシキ?を開けた母さんが素っ頓狂な声を出した。

 どんだけびっくりしてるのか、固まったままぴくりとも動かない。

何してんだろ。

 

 横から覗き込むと、なんか天然の木で出来た箱に漢字でなにか書いてある。

 漢字なら、ウェストブルックのジャパンタウンとかで見るので、翻訳アプリをインストールしてあるから、翻訳して読むことが出来る。

 チカチカと視界に映る漢字がアルファベットに変換された。

 

「えーっと、謹製、サラシナソバ、日本製、特上、無添加、天然素材100パーセント、4人前…?」

 

 謹製ってなんだ??

翻訳されてても日本語は難しくてよく分からないな。

 

「こ、こここれ、本物の天然食材…??ヤバくないかしら、私たちこれ食べたら次の日コーポに攫われたりしない…??」

 

 なんか母さんがブツブツと不安なこと言い始めてる…

 確かに、このナイトシティに生まれてこの方、天然食品なんて口にした事なんか一度もないけど、そんなにびっくりするようなことかぁ?

 

「なぁ母さん。言ったって、高々食品だろ?そんなにびっくりすることかよ」

 

「あんたねぇ…これのヤバさを知らないからそんな事言うのよ。いい?私も実物は見た事は無いけど、これはアラサカの社員が上役の贈答用に使うくらいには、由緒ある食べ物なのよ」

 

「へ〜、難しい事はよくわかんねぇけど、とにかくすげぇ食べ物なのは分かったよ」

 

「いいや、あんたは分かってないね。これは4人前で2000エディくらいはするのよ」

 

「2000エディねぇ……2000エディ!?!?」

 

「だから言ったでしょう。そんなに高級な食べ物を気安く渡すって、あのネイトって人何者なの…?」

 

 前もヤバい隣人だったけど、今度はもっとヤバい隣人が越して来ちまったってことかよ…

 俺、生きて成人迎えられるのかな…

 

 とりあえず、その日の晩飯はソバヌードルを食べる事になった。

 母さんが鍋やらを出して来て、説明書通りにソバを茹でて盛り付けが完成した。

 なんかよくわからなかったから、動画サイトで作り方を見ながら2人で作る羽目になったけど、こう言う事した事なかったから案外楽しかった。

 

 初めて食べた天然食品の味は、もう言葉にすることが出来ないくらいに美味しくて、いままで食べていた飯がいかにケミカルたっぷりで合成された味だったのかが、よく分かる。

 もう、下手なもの食べれないかもしれない……

 

「この一口で100エディくらいかな…」

 

「……やめなさい、デイビッド。今すぐショップに売りに行きたくなるから」

 

「そうだね……ごめん、母さん」

 

 とりあえず、残りの2食は真空になってたので、なにか祝い事があった時に食べる事にした。

 こんなもの連続で食べたら、もう普通のものかなんか食べれなくなる。

幸せな悪夢ってこう言うことをいうんだな。

 

 

 

 次の日、入学したばっかりのアラサカアカデミーに登校するために、制服に袖を通して玄関を出た。

 

 出た先で、スーツ姿で廊下の手すり壁に寄りかかりながらニコーラ・クラシックを飲んでる隣人の女の人とばったり出会してしまった。

 ニッコリと笑ったその人が、ひらひらと手を振りながら話しかけて来た。

 

「やっほー、おはよう少年。これからアラサカアカデミーかい?」

 

「えっ…?ま、まぁそうですけど」

 

「あぁ、ママさんには自己紹介したけど、君はまだだったね。私はネイト。よろしくね〜」

 

「ネイト…さんっすね。俺はデイビッドって言います。デイビッド・マルティネス」

 

「デイビッドくんね。改めてよろしくね?…あー、その良かったらなんだけど、アカデミーまで送って行こうか?ちょうど私もあっち方面に用事があってね」

 

「えっ?いや、でも…」

 

「大丈夫大丈夫。バイクで行くとすぐだからさ。別に取って食うわけじゃないんだから気にしない!」

 

 なんか知らないけど随分と強引に送迎してもらう事になった。

 逃げようにも、がっしりと右手を掴まれてて、どうしようもない…

 そんなことよりも、母さん以外の女の人に手を握られて不覚にもドキドキしてる自分がいた。

 エレベーターで一階まで降りて、目の前の大通りまで出ると、ネイトのキロシが光る。

 バイクを呼び出してるみたいだ。

 すぐメガビルディングの駐車場から一台の赤いバイクが自走して飛び出して来た。

 大昔の日本のアニメーションで見た事のあるバイクだった。

 

「じゃーん、カッコいいでしょう」

 

「すげぇ…作ったんですか?」

 

「ま、まぁそんなところだね…アハハ」

 

 とにかく、タンデムすることになってネイトの後ろに腰を下ろすが、シートが狭いので必然的に密着する形になった。

 ネイトはどこからか取り出したヘルメットを俺にかぶせて、自分の腰に手を回すように指示してきた。

 

「もうちょっとギュッとして…そうそう。こら、そこはおねーさんの下乳に当たってるぞー。まぁいいけどね。行くよ」

 

「あっ、ここれは違くっ…!!」

 

 思わず手を離そうとしたら、バイクが急発進して身体が後ろに引っ張られる。

 振り落とされないように、慌ててネイトにしがみつくしかなかった。

 バイクはモーター音を奏でながら、グングン加速していく。

 まるで自分が流星になったように感じながら、周りの景色を置き去りにしていくのを横目に見る。

 ネイトの運転するバイクは、車の間をひらひらと蝶のように躱しながら、さらにグングンと加速していく。

 赤信号はどう言うわけか、次々と道を譲るように青に変わっていく。

 背中越しにスピードメーターを見ると、150mph(時速241km)を指していて、現在進行形で更に加速している。

 

 

 事故ったら間違いなく死ぬ。

 

 

 脳内でアドレナリンがドバドバでて、耳の中で血流が聞こえる気がした。

 恐怖はかなり感じる。だけど、それ以上に興奮した。

 今まで鬱屈とした生活で、アカデミーでも庶民は初日から場違いな空気感を醸し出されて、はっきり言ってつまらなかった。

 娯楽と言っても、普通のBD映画を観るくらいで、それも内容は同じようなのばっかり。世の中にはもっとすごい作品もあるんだろうけど、そういったものは大体高くて、子供の小遣い程度では手が届かない。

 けど、その手が届かなかった本当のスリルが今ここにはある!

 

 後ろから見たネイトの横顔は笑っていた。

 

「…ハ、ハハッ…アハハハ!」

 

 それを見て思わず笑い声が漏れてしまった。

 距離はだいたい1.5〜2kmくらい。時間にすればほんの一分弱が、まるで時間が引き延ばされたように数時間に感じられたが、それも終わりアカデミーの前に到着した。

 

 ズボッとヘルメットを脱がされて、簡単に髪の毛を整えられる。

 ネイトの細い指が髪の毛の間を通り過ぎる感覚がこそばゆかった。

 

「これでヨシっと。さ、行っておいで少年」

 

「いや、少年って…今年でもう16だし…」

 

「そう言ってる間はまた少年だよ。ま、私もぴちぴちの20歳だけどね〜」

 

「……いや、普通はぴちぴちとか使わないでしょ」

 

「何か言った?」

 

「いえ、なんでもないです!!」

 

 ヒュッと冷たい何かが首元を通り抜けたような気がして、慌てて否定する。

 やっぱり、女の人って怖ぇぇ…

 

「そうだ。私の連絡先を教えておくから、何かあったら連絡してね。今はもう辞めちゃってるけど、元々はコーポで働いてたこともあるし、相談くらいなら乗れるからね」

 

「あ、ありがとう…」

 

 UIにネイトの連絡先が受信されたことを見ながら御礼を口にする。

 

「それと、送ってもらったのも、その…楽しかった」

 

「どういたしまして。あのスピードで楽しかったって言えるのは、傭兵の素質あるね」

 

「俺に……?」

 

「そ。じゃ、そう言うことで〜、アディオス」

 

 ピッと二本指を切って、颯爽とバイクにまたがり猛スピードで行ってしまった。

 風に乗ってネイトの甘い残り香が鼻をくすぐった気がした。

 

 

 何か夢でも見ていたんじゃないか、と言う感覚がしながら教室に入る。

 いつものように、うざったい視線とクスクス笑う声が聞こえるが、今日は全く気にならない。

 金持ち出身のコイツらでも経験できないような、濃密な体験をしてきた後だからか、逆に謎の優越感が全身を駆け巡る。

 今なら、どんないじられ方をされても笑って許せそうだ。

 

「オイオイ、見ろよ。貧乏人が肩で風を切って歩いてやがる」

 

 馬鹿なボンボン略してバカボンのカツオ・タナカが相変わらずアホなこと言っては、取り巻きたちが下品な声で笑ってる。

 相変わらず低能な連中だ。

 入学時の学力テストで、俺よりも点数が低かったからって急に絡んでくるようになった。

 そんなダセェ連中を横目に見て、鼻で笑ってやった。

 

「なっ…!アイツッ!」

 

「お、おいカツオ。教室の中はヤバいって…!」

 

 取り巻きに抑えられて、顔真っ赤にしてやがる。

ざまぁみやがれ!

 

 今日はそれから、調子が良かったからか小テストも満点で、初めてハッピーな学校生活を過ごせた。ネイト様々だぜ。

 

 授業も終わった事だし、さっさと家に帰るか…

 アカデミーのビルを出たところで、母さんからコールが来た。

 

『あ、デイビッド?今日お母さん帰るの遅くなりそうだから、代わりに買い物に行って来て欲しいんだけど』

 

「ああ、いいぜ。でも、俺いまそんなに持ち合わせないけど」

 

『今日はやけに素直じゃない。お金は大丈夫、いま送ったわ。リストはメールで送るから、後で確認してちょうだい』

 

 ピロンと100エディ送金されてきた。

 

『お釣りの内、10エディはお駄賃としてあげるわ。残りは後で返してね』

 

「りょーかい。お任せくださいお母様」

 

『なによそれ〜。…はぁ、それにしても、一昨日に引き続いて、やけにあっちこっちで暴力事件があるみたいで、今日だけで何人ギャングを運んだか分からないわ…あなたに愚痴を言ってもしょうがないんだけど。じゃあ、頼んだわよ』

 

 なんだかよく分からないうちにコールが切れた。

 よっしゃ!やっぱり今日はツイてるぜ!

 帰りに買い物に寄るだけで10エディの小遣いかぁ。何買おうか迷うな。

 

 アロヨのスーパーは、寂れてるし治安も悪いから大したものが売ってない。

 売ってなかったら、ハシゴしなきゃいけなくなるから面倒だな。

 ジャパンタウンのデカいスーパーで全部揃えた方が楽で良さそうだ。

 

 ちょっと遠回りになるが、いい運動だと思えば悪くない。

 シティセンターから橋を渡ってウェストブルックのジャパンタウンに向かう。

 

 道すがら、NCPDの車両とひっきりなしにすれ違うけど、何かデカい事件でもあったのか?

 ボーッと歩いていたら目的地に着いたので、買い物リストにある商品をカゴにぶち込んでいく。

 

「結構あるな……洗剤はこれだな。晩飯の食材はこれと、あっちだな。んで…うげ、母さん…息子に生理用品なんか買わせるなよな、まったく……」

 

 悩んでいても仕方ないので、次々とカゴに放り込んで、レジ待ちの列に並んだ。

 店員のヤル気がないのか、ズラッと長蛇の列が並んでる。

 

「はぁ、これを待たなきゃいけないのかよ…」

 

 並んでる連中もみんなうんざりした顔をしてる。

 待つ事10分。まだ5人しか進んでない。

 

「これ何分かかんだよ……うん?」

 

 なんだか外がやたらと騒がしい。

 一緒に並んでる連中も、店舗内の他の客も外の騒ぎが気になり始める。

 そうこうしている内に、突然銃撃戦が始まったみたいで、店舗の自動ドアが吹き飛びギャング達が転がり込んで来ては、外に向かって発砲し始めた。

 内から外から撃ち込まれる銃弾に巻き込まれる客達が出始めて、店内が大パニックになった。

 

「あぶねぇ!?弾が跳弾してる!当たったら死んじまう!!」

 

「外でやりやがれバカヤローッッ!!」

 

 近くで伏せている客達が、口々にギャングと外から店内に発砲してくるNCPDに向かって怒鳴り始めた。

 

「うっせーぞテメェら!!ぶっ殺されてぇのか!!」

 

 こちらに銃を向けたギャングのひとりが、立ち上がった瞬間に頭を吹っ飛ばされて死んだ。

 

「クソったれ!!これじゃジリ貧だ!…おい!誰か人質に連れて来い!!」

 

 嫌な予感がして、這いずって逃げようとしたら、襟首を掴まれて引き摺られる。

 無理矢理立たされて、頭に銃を突き付けられた。

 

「はっ、離せよ…グッ」

 

「おいテメェら!このガキをぶっ殺されたくなかったら、そこをどきやがれ!!」

 

「待て!射撃中止!射撃中止!アラサカのガキごと撃つのはマズイ!!」

 

 どうやらアカデミーの制服のおかげで、NCPDに蜂の巣にされずに済んだらしい。

 たまには役に立つじゃねえか…

 

 しばらく自分を挟んで膠着状態が続く。一秒が永遠に感じる。

 ギャングの高まった心拍数と、興奮した息遣いが緊張感を伝えてくる。

突き付けられた銃のトリガーに、力が入ったのがわかった。

 

もうダメだ…!!

 

 脳裏に母さんの顔がチラつく。次に起こる痛みを想像して、目を強く閉じた。

 

 

「遅くなったね」

 

「オレの腕ガァァァァッッ!!?!?」

 

 目を開けると、銃を持ったギャングの腕が血を撒き散らしながら宙を舞っていた。

 その先には、赤熱した刀身を振り抜いたネイトが居た。

 

「オラオラ!ギャングがガキなんか人質に取ってんじゃねぇぞ!!死ねや!」

 

 その更に後ろで、チョンマゲヘアスタイルの大男がショットガンを乱射している。

 

「もう大丈夫だよ。よく頑張ったねデイビッド。あとはおねーさんと、あのこわ〜いおにーさんに任せな」

 

 ドカンドカン、大口径ショットガンを乱射している大男の脇をすり抜けて、ネイトが残りのギャングに駆け出した。

と思ったら、姿がかき消える。

 

「消えた…!?」

 

 ふっと、また大男のとなりに姿が現れたら、残りのギャング達の手足が急にバラバラにぶっ飛んで、ダルマ状態になってしまった。

 なにこの怪奇現象…

 

 そこに、外で待ち構えていたNCPDが店内に突入して来て、頭と胴体だけになったギャング達を制圧していった。

 呆然とその様子を見ていたら、ネイトが近寄って来た。

 

「いや〜、災難だったねぇ。怪我は無いようでなによりだよ」

 

「…あ、ネイト。助かったよ…ありがとう」

 

「いいっていいって、NCPDからの依頼だったからね。まさか、デイビッドが人質に取られてるとは思わなかったけど」

 

 カタナを鞘にいれて、腰から下げたネイトがカラカラと笑う。

 そこに大男が近寄って来た。

 

「おいチーカ。こっちの報告も終わったぜ。お、さっきの坊主じゃねぇか。ネイトの知り合いか??」

 

「そうそう、H4の家のお隣さん。デイビッド君だよ。可愛いでしょ」

 

「へぇ〜、ソイツは運が良かったな。いや、悪かったか?」

 

「ジャッキー、それどういう意味よ」

 

 バシッとネイトが、ジャッキーと呼ばれた大男の背中を叩く。

 結構強かったのか、思わず咽せていた。

 

「今日はもうここら辺にしましょうか。私はデイビッドを家まで送っていくから。エディは後で送金しておくね」

 

「オッケーだ。また明後日頼むぜチーカ」

 

「了解、チューマも明日はミスティをデートにでも誘ったら?」

 

「へへっ、そうしてみるぜ。じゃあな!」

 

 振り返りながら、片手を上げてジャッキーは帰っていった。

 ドルンッとエンジン音がして、遠ざかって行く。

 

「デイビッド、買い物してたんでしょ?それだけして、私たちも帰りましょうか。送って行くわ」

 

 近くにあった俺の買い物カゴを拾って、ネイトが無人のレジに近付く。

 手際よく商品をスキャンして、エディを支払って俺に渡して来た。

 

「はい。これでしょ?じゃあ行くわよ」

 

「あ、あぁ。うん」

 

 今朝と変わらない強引さで、バイクの背中に乗せられて家路に着いた。

 ハッと気付いたら、もう家の前だった。

 

「さて、今日は散々だったね〜。ゆっくりシャワーでも浴びて寝なよ」

 

 言うだけ言って、ネイトはさっさと自分の部屋に帰っていってしまったので、1人自分の家の前で突っ立ってる状態だった。

 このままだと埒が開かないので、言われた通り帰宅してシャワーを浴びる。

 

「やっぱり、夢じゃないよな……」

 

 もう、今日は何も考えられない。

 あ、母さんが帰ってきた。




やっとデイビッドを出せました。
これでタイトル詐欺にはなりませんね。

高評価して頂けると、ノミの心臓がアダムスマッシャーにお酌をしに行きます。
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