【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !! 作:持麻呂
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ちょっと難産でした…
会話が多めになっています
これ以上ニタニタとしそうなのを意志の力でグッと堪え、前言を撤回される前にさっさと移動することにした。
再びデラマンタクシーを呼んで、診療所から研究室を設置した病院に向かう。
もう彼女はこちら側の人間だ。
逃すつもりはないので、一部機密を見せてそもそも逃げられないようにしてしまえばいい。
研究室には、既に死亡したように見せ掛けてバイオテクニカから引き抜いた、優秀な元社員達が働いている。
そこで開発されている薬や元社員を見たら、段々と気付いてくるだろう。
まぁ、気付いた頃には既に遅いのだが…
タクシーを降りた時に、元々の病院の姿を知っていたのか、同業他社のNCサンダーランド・ヘルスケアサービスを知っていたのか、名前がD&Sメディカルコーポレーションに変わってかなり外観も内装も変わった病院を見て唖然としていた。
無理もない。
あれだけオンボロで、ネズミどころか不審者さえも通れそうな穴が開いていたり、ライトは設置されている場所が少なく天井の化粧板はそもそもない。
リノリウムの床は擦り切れてコンクリが剥き出しのところがあったり、患者用のベッドはマットレスさえ無かったところもあるので、人に行っていた所業さえ無視すれば、精神病院の方が幾分天国に思える酷い有様だったのだから。
呆然とするイングリッドの手を引き、病院の奥の奥、複数のセントリーガンや小型多目的榴弾タレット、レーザーフェンスを越えた先にある研究施設に連れて行く。
病院が木っ端微塵になったとしても、最悪研究室だけは残せるように厚さ200mmの特殊合金製装甲板で覆っているので、たとえ2000ポンド爆弾でピンポイント爆撃されても【理論上は】部屋は残るだろう。
まぁ、本当に爆弾を落とされた場合は、爆圧で中にいる人間は死ぬだろうし、表面剥離した金属片が散弾になって、直下の部屋はズタズタに引き裂かれるはずなので無事な物は残っていないと思う。
そんなわけで、マックス・タックチームやアダム・スマッシャーが来ない限りは、そうそう突破されることはないだろう。
最後の扉は、内側から物理錠によって施錠できるので、クイックハックにより開錠されることもないので裏切ってこちらに着いた元社員達も安心して働いている。
彼らには、既に一年以内にバイオテクニカをナイトシティから追い出す予定を伝えてあるので、期限付きの移動拘束を設けていても納得してくれた。
無期限よりも、期限があると分かれば人間は耐えられるものだ。
「ライアンさん?イワンさんまで、皆さん死んじゃったんじゃ!?」
案の定、部屋に立ち入った時に中にいた研究員や元社員を見て驚愕の声を上げた。
思わずといった様子で駆け寄り、そう言ったイングリッドの姿を見て、彼女のことを知っている人達は苦笑いする。
今ここにいる数人はジャンの部下や同僚なので、ジャンが粉を掛けていた当時やイングリッドが彼女になった後を知っている人もいる。
遅かれ早かれ連れて来られるだろうと推測していた人物まで居たので、こちら側の驚きはほとんどない。
イングリッドの方は死んだと聞かされた人物が、平気な顔をして集団で働いていることに驚きを隠せない。
ここに至って、初めて自分が誰に何を言ったのか気付いたようだ。
パッとこちらを振り返る。
「ま、まさか…最初から知って」
「まぁ、最初から君達を助けることは決まっていたのさ。それがどういうやり方でどんな結果を伴うかは不問だけどね」
逃げられないように肩を掴んで、顔を近付ける。
イングリッドの視覚機器の瞳孔が、小さく収縮するのが見える。
今更もう遅い
「まさか君から助けてなんて言われるとは思ってもいなかったけど、依頼は依頼だ。契約は既に済んでしまった。私の言うことをなんでも聞いてくれるんだろう?」
「そんな…」
「大丈夫、ジャンはきっちりと助け出してあげよう。安心して欲しい」
へなへなと腰が抜けそうになるのを、慌てて後ろにいた研究員達が支えた。
「私は奴らとは違って、簡単に殺すようなことはしないさ。2人一緒に居られるようにしてあげるつもりでもある。しばらくはここに缶詰だけどね」
そのまま、彼女に割り当てた部屋に連れて行くように指示して、イングリッドは両脇を抱きかかえられるようにして引き摺られて出て行った。
視線がこちらに集中しているので、手を振って仕事に戻らせる。
研究室を出て行くと、デラマンの操る球体ドローンが近付いてきた。
『ネイト様。先ほどレーザーフェンスを通過する際、イングリッド様をスキャンしたところ、イングリッド様の導入しているインプラントからの情報により、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、プロゲストロン、エストロゲンの数値が上昇傾向にあることが分かりました』
「えっ?なにそれは」
突然の報告にビックリしてしまった。
思わず頭を抱えたくなってしまう。
そんな報告聞きたく無かった。
「嘘だと言ってよ…」
『事実です』
「……いや、デラマンが嘘つかないのは知ってるよ…」
『この数値を見る限りでは、イングリッド様は妊娠最初期です。おおよそ一週から二週で、全く自覚症状はないと思われます』
これはますます、この病院から出せなくなる理由が増えてしまった。
まさか、付き合って1ヶ月以内に避妊なしでやっちゃって、しかも当てちゃったのか…
この2人は何考えてるんだ。
呆れてものが言えない。
「仕方ない。知ってしまった以上は、放置もできないか…デラマン、悪いんだけどイングリッドの部屋の内装と設備を充実させてもらってもいいかな?費用は私が持つよ」
『承知いたしました。なるべくストレスを軽減出来るように、ネットを参考にした改装を行います』
「ありがとう」
これは早いところ、ジャンをこちら側に連れて来よう。
そのまま夜になるまで待ち、バイオテクニカの平均的退勤時間になってからジャンにコールをする。
もちろん、こちらの姿は映さない。
『……誰だい?』
『ああ、私はしがないサイバーパンクでね。イングリッドとか言ったかな?君の彼女を預かっているんだ』
『なにっ?!イングリッドを預かっているとはどう言うことだ!』
彼女と連絡がつかないことに気付いているようだ。
なら話は早い。
『そのままの意味だよ。実はイングリッドはメイルストロームに誘拐されていてね?』
『誘拐って、彼女は無事なのか!?』
『あぁ、安心していいよ。もちろん無事さ。誘拐されていたところを私が助けたって寸法でね』
『本当か!?彼女と会わせてくれ!』
『良いとも。そこからジャパンタウンのジグジグ・ストリートに向かってくれ。通りの入り口付近に送迎車を用意してあるから、後部座席の扉が開いているのに乗ってくれれば良い』
『……分かった。ジグジグ・ストリートだね』
『そうそう。言い忘れたけど、必ず1人で来るように。ギャングに狙われているから、分からないところに匿っているんだ。他人にその場所を教えたくない』
『何故だい?僕が言わなきゃ良いだけだろう』
『分かるだろう?サイバーパンクに秘密はつきものさ』
『分かった。従うよ』
そこでコールを切る。
早速、デラマンタクシーでジグジグ・ストリートに向かい、助手席に座ってジャンが到着するのを待った。
しばらく待っていると、大通りの向こう側から辺りを見回しながらこちらに近付いてくる若い男を発見した。
変装をしているつもりなのか、帽子と似合わない太縁のメガネを掛けている。
そんなことをしても、スキャンを掛ければ一発で分かってしまう。
デラマンに道路側の後部座席扉を開けさせて、シートに身を屈めて外からは見えないように隠れて乗り込むのを待った。
まさかデラマンが迎えの車だとは思いもしなかったのか、どうやら躊躇っているようだったが、デラマンが機転を利かせて名前を呼んで乗り込ませた。
静かに発車したところで、鏡の反射越しにオプティクス再起動を掛けて目潰しをする。
「うわっ!?」
「そのまま視覚機器の再起動を中断しろ」
「あ、あんたなのか?分かった、言う通りにするから手荒なことはしないでくれよ」
「素直でよろしい。そのまま再起動を掛けたら私には分かるから、その時はどうなっても知らないよ」
「あぁ、彼女と会わせてくれるなら指示に従うよ」
随分と素直だな。
一応、遠隔だがスキャニングを掛けて、変なデーモンが仕込まれていないか確認する。
入社する際に強制導入されるデーモンが二つほどあったので、それを停止させた。
これでバイオテクニカ側に、ジャンの身になにか起きたのが伝わっただろうが、もう関係ない。
車がイングリッドのいる病院に向かって走る中、落ち着かなそうにしているジャンに話し掛ける。
「君は何故イングリッドが誘拐されたか分かるかな?」
「…あぁ、薄々は気付いているよ。彼女の実家との契約が解消されたのは知っている。僕は最後まで反対したのだが、キックバックを貰った主任と支部のCTOが押し通したんだ。最悪だよ……イングリッドの実家のライバル会社の製品は、多少安いけれど品質がとにかく悪いんだ」
どうやら、そのライバル会社は安かろう悪かろうの代表格らしい。
これでは、さらにナイトシティに流通する医薬品の質は低下する一方だろう。
まぁ、うまく対抗馬としてこちらの薬品をぶつけることが出来れば、シェアをある程度は奪えるとは思う。
だが、それをしたら否応無しに表舞台に躍り出る事になるので、準備が整っていない時点では危険が伴うな。
「それは大変だな。……一つ疑問に思っていることがあってね。聞いても?」
「なんだい?」
「君はかなり優秀な方なんだろう?名前だって欧州圏域系だ。何故、こんなナイトシティなんかに配属されたんだい?」
これはずっと疑問に思っていたことだ。
ジャン・サン・テールなんてもろフランス語の名前だし、社員情報にもイギリス系フランス人としっかり書いてあった。
バイオテクニカの本社がイタリアのローマに位置しているのだから、わざわざこちらに来なくても、優秀であれば向こう勤めで居られるはずなのに。
「あぁ、そんなことか…いや、大したことじゃないよ。欧州圏域出身でも、最初から本社勤務はできないんだ。海外の任地で一定期間働いた上で、一定の成果を上げれば目出度く本社勤務ってわけだね」
なるほど、確かに大したことでは無かったようだ。
心配して損した気分だが、懸念は一つ減っただけマシだと思うことにする。
「待てよ?そうしたら、君は欧州圏域に帰るつもりなのかい?イングリッドはどうする」
「もちろん、彼女が許すなら連れて帰るつもりさ。無理なら、僕が新合衆国に骨を埋めることにするよ。君は僕がどれほど彼女を好きで居たか、知らないだろう?」
「まぁそうだね」
視覚機器を停止させられたまま、ジャンが見えないはずの眼を懐かしそうに細める。
きっと昔のことを思い出しているのだろう。
「あれは、僕がまだ14歳の時だったかな。まだ両親が生きていた時に、一度だけコーポ主催のパーティーにお呼ばれしたことがあってね。その時に彼女も来ていたんだよ……まあ、イングリッドはそんなこと覚えていないだろうけどね」
「なるほどねぇ。それでわざわざ、配属されるならナイトシティにって?」
「そういうことさ。実は僕の方が2歳年上でね……最初は、ナイトシティ中を暇があれば探していたんだ。入社してから2年経って、新入社員として入ってきた彼女に再会した時は、もう運命だと思ったさ。可愛さはあの時のままに、大人になった彼女はさらに美しくなっていたんだからね」
「あー、なるほどねぇー。それはすごい出会いだねぇ」
うーむ、自分で聞いた手前、やっぱもう良いですとは言い辛いなぁ。
他人の惚気を聞き続けるのは、意外に疲れる。
レベッカやデイビッドの話は、ニヤニヤしたままいつまでも聞けるのに、これの違いはなんなんだろうね。
「初めて食事に行くのをOKしてくれた時は、本当に嬉しかったんだ」
あぁ、私がバイオテクニカにイングリッドの顔を借りて、大胆不敵に侵入した時の話だな。
たしかに、あの時のジャンから聞いた情報は非常に役立った。
今を思えば、あの時勝手にOKしてしまったけど、イングリッドも憎からず思っていたから結果オーライだよね。
ジャンのイングリッドとの出会い話やら、犬も喰わないような惚気話を到着するまで延々と聞かされ、少しグロッキーになってしまった。
信号に捕まったりしても、せいぜい八分あるか無いかくらいの時間だったのだが、すごい長く感じた。
診察時間が終わって静まり返った病院に到着し、ジャンの後ろから肩を掴んで誘導する。
セキュリティは、デラマンが遠隔操作で私たちの進む速度に合わせて、随時解除しては元に戻してくれている。
そうして、イングリッドに割り当てた部屋に連れて行った。
「ジャン!」
私に肩を後ろから掴まれている状態で入ってきたジャンに、イングリッドが駆け寄って抱きついた。
「イングリッドなのか!」
「あぁ、もう再起動させていいよ」
やっと視覚が戻って、目の前にイングリッドの顔があるのを見て早速キスし始める2人。
頭が痛くなりそうだ。
こんなところでおっ始めないで欲しい。
「お熱いところ悪いんだけどね。イングリッド、バイオテクニカがジャンに対して動き始める前に、彼をここに連れてきた。私は約束を守ったから、次は君の番だよ」
「ちょっと待ってくれ、話が見えないんだけど…」
「…分かったわ。私の出来ることならなんでもする」
「おっと、ジャンはそのまま黙っていてくれるかな?」
イングリッドが私となにか約束を交わしたことを知って、こちらに掴みかかってこようとするので、くるりとイングリッドの後ろに回り込む。
「さて、そしたら私からの要求は一つ。ジャンを説得して欲しい」
「待て、僕のことなんだろう?何故そのまま僕に言わない」
「イングリッドから言ってもらった方が、君も納得しやすいだろう?」
そこから、改めてジャンに今の置かれている状況と、バイオテクニカがイングリッドを使ってどうするつもりだったかを伝えた。
案の定絶望して、膝を突いてしまったがそこで終わらせるつもりはない。
「いいかい?いま私は、バイオテクニカをナイトシティから排除しようと動いていてね。代替として機能させる為の企業は、この通り一つ手に入れたんだ。ただ、開発力には欠けていてね。そこで君の出番というわけなんだよ」
「…相手がどれだけの大企業か分かっているのかい?」
「それは百も承知さ。それに、最近大変だったんじゃ無いかな?例えば…サーバーがネットランナーにクラッキングされて、随分と傍迷惑なデーモンが仕込まれたとか」
「なっ、どうしてそれを知っているんだい…?」
「さぁて、どうだかね。まぁ、お陰で幾つかバイオテクニカの株価を落とせる情報を手に入れたのは確かだよ」
「やはりかなりの情報が、外部に流出したと考えていいのかな」
「それはお好きにどうぞ。でだ、ジャン君。君はこのままバイオテクニカに居続けるつもりかな?」
「いや、しかし…頭では分かってはいるんだ」
まぁ、常識的に考えたら、バイオテクニカレベルの巨大企業を相手に喧嘩を売るのは、普通なら躊躇うよな。
一寸法師みたいなものだし。
ただ私の持つ針は、ボツリヌストキシンAがベットリ付着しているけどね。
コーポの人間だったら尚更だけど、その力を身に染みて分かっているのだから、そんなところに平気な顔して(してない)アラサカに中指立てるジョニーやVくんちゃんの頭はおかしいのがよくわかる。
こちらとしたら、逡巡することは最初から織り込み済みなので、顎でイングリッドに出番だと合図する。
1時間後にまた訪れると言って、一旦部屋を出た。
この研究室の悪いところは、分厚い装甲板のせいで電波が全然通らないことなので、一旦外に出てメールを確認する。
すると、キーウィから気付いたら折り返して欲しい旨が書かれたメールが届いていた。
何事かと思って、すぐコールを入れると氷風呂に入っている全裸のキーウィが出た。
『悪いわね。掛け直してもらっちゃって』
『いや、大丈夫。こちらこそ立て込んでて、すぐに出れなかったんだ。それで、どうしたのかな?』
コール先にキーウィが、なんだか申し訳なさそうに肩をすくめる。
『ファラデーから、私に連絡が来たのよ。どの面を下げて掛けてきてるかしらないけど、アンタの連絡先を教えろって言って来てねぇ』
『それで、キーウィはどうしたの?』
『もちろん断ったわぁ。冗談じゃないってね。私は死にたく無いし…とりあえず、何か話したいことがあるかどうかは知らないけど、一応そういう事があったって教えとくわ』
『なるほどねぇ…ありがとう。ついでに、ファラデーの連絡先教えてもらってもいいかな?』
『……はい、今送ったわぁ。はぁ、なんでいつも損な役回りをさせられるのかしらねぇ』
ザブンと氷風呂に口元まで浸かって、手だけを出してやれやれと言った具合にしている。
メインたちとは上手くやれていると聞いていたのだが、それとは別になにかストレスでも溜まっているのだろうか。
『わざわざ連絡して来てくれて助かったよ。なにかヤバいことに巻き込まれたら、言ってくれれば助けるからね。コーポを使った逃げ道なんかも用意出来るから』
『そうねぇ…出来れば、そんなことにならないように祈っておくわぁ』
『そうだねぇ。まぁ、今度美味しい店なんかにも行こう。ストレス溜まっているみたいだし、奢るからさ』
『それもいいかもしれないわねぇ。期待しておくわぁ』
そう言って、コールが切れる。
しかし、ファラデーの方から私に用事とは、これは一体何事なのだろうか。
私からファラデーをどうこうしてやろうとは思っているけど、そもそもまだ面識がないどころかアクションさえ起こしてない。
首を傾げるしかないが、まぁ後で連絡して用件を聞き出せば良いだろう。
ファラデーの事は頭の隅に追いやり、一時間して部屋に戻るとジャンが決意の決まった眼をしていた。
どうやら、イングリッドがきっちり説得したらしい。
「で、私と共に来るかい?」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
「よろしい。そしたら、明日から頼むね。部屋も2人でここを使うと良い……ああ、そうそう。君たち今日からセックス禁止で」
「……うん?今なんて?」
「だから、セックス禁止ね。イングリッドも気付いてないけど、その娘妊娠してるからね」
ぴたりと2人とも固まった。
そりゃそうだ。
「「えぇぇぇぇ!!」」
それはこっちのセリフだよ、全く…
うーん、そろそろファラデーくんの末路も考えなくてはですねぇ…
すこし、キャラの動きが悪くなって来て、スランプ気味ですがなんとかACT.1完走させます!
Vは
-
くん
-
ちゃん