【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !! 作:持麻呂
感想、128件!
評価者、205名!
誤字脱字訂正、いつも大変感謝しております!m(_ _)m
妊娠を告げた後の部屋は、それはもう甘々空間となってしまったので、これは堪らぬと逃げ出した。
あれはさしもの犬も、絶対に嫌がって喰わないに違いない。
食あたり起こすレベルだな。
ともあれ、ジャンもこちらに着いてくれるので、早速事故死に見せ掛ける為の偽装工作をしなくてはならないだろう。
会社側が追跡や生存を確認するためのデーモンは削除してしまったので、向こう側にはジャンの身になにか起きたことを察知しているはず。
少し待ってから、ジャンの衣服と所持品の大半、そして血液を少々頂戴してから、背格好と頭髪の似ている適当な死体を用意して、シックス・ストリートに頭を吹き飛ばされて殺された風にして、表通りに配置した。
死体の血液は抜いておいて、それからジャンの血液をぶち込んでおいたので、体組織からDNA鑑定されなければ大丈夫だろう。
まぁ、当日の監視カメラに記録されている服装と所持品類、夜に慌てて出て行った映像が残っていれば、上層部から反感を買っていたジャンが死んだところで詳しくは調べないはずだ。
毎日何人も死んだり殺されたりしているので、特にここナイトシティでは簡単に犯人が分かれば報復する程度なのだ。
重役か役付きが殺された場合は、威信に掛けて殺しにくるけど、平社員や末端の役付き程度だと数も多くてキリがなさすぎるので、金がかかりすぎる事もあってそのまま切り捨てられる。
丸一日掛けて偽装工作をしたので、その日の夜はH4メガビルディングに帰った。
部屋に戻ると、早速小丸テーブルの上にアダム・スマッシャーの右腕を置いてみる。
電磁浮遊で空中に浮かせてみるが、あまりにもデカ過ぎるので飾るのは違う部屋にしよう。
せっかくなので、保管庫の作業台で右腕を解析してみることにした。
右腕にもプロジェクタイルランチャーが仕込まれており、腕自体も現行(2072年)のゴリラアームの実に2.5倍近い膂力がある事がわかった。
両方とも試作軍用品なのは分かったが、大体2077のランク4+くらいの性能だろう。
統一戦争後の技術開発速度が、かなり著しいことがこれで分かる。
現在出回っているクロームの大半が、2077年産のランク0.5〜2くらいの品質で、性能はもう少し下のものが大半であるので、これは最高クラスと言っても過言ではないだろう。
と言うか、これ以上となるとバートモスのサイバーデッキであるとか…という話になってくるので、現状では量産可能なものでこれより上は見たことがない。
さすがはアラサカと言ったところだ。
また、装甲材質の組成やその他組み込まれているインプラントやクロームを、分かる範囲で徹底的に調べ尽くしてやった。
また同じ素材で来るとは思わないけど、調べておけばそれだけ壊しやすくなる。
現状ではアダム・スマッシャーを殺したってなんの利益も無いので、お遊びで壊しても殺す事はない。
大体の構成物は分かったので、また組み直してインベントリに仕舞った。
物音で私が帰宅したのが分かったのか、グロリアさんからコールが飛んできてそのままお茶会をすることになった。
どうやら、デイビッドは最近BDばっかり観ているらしく、見終わると模造刀でチャンバラしたり射撃場に行ったりしているらしい。
勉強の方は大丈夫なのかと心配していたが、成績の方も上々だから文句を言えないのだとか。
ごめんなさいグロリアさん、それ私のせいです…とは口が裂けても言えず、日本人的に曖昧に笑って誤魔化した。
今も射撃場に行っていて帰ってくるのが遅くなるので、リパーの勉強も煮詰まってきたのもあって連絡してきたようだ。
サイレント謝罪として、とっておきのお茶とお茶菓子を用意して、グロリアさんの話を肯定しながら聞いていく。
デイビッドに最近女の影があることも、どうやってか分からないが気付いており、どんな子なのか私に聞いてくるのでなんと返していいか返答に困った。
レベッカは言葉遣いは悪いけど家庭的で姉御肌であるし、ルーシーも口は悪いけど大変一途で自己犠牲を厭わない面も持っている。
両方ともいい面と悪い面があるので、親御さんに対する言い方を考えているとグロリアさんが噴き出した。
「ふふっ、ネイトさんがそんなに悩むような子なの?」
「あ、いや、違うんですよ。2人ともいい子達なんですけど、サイバーパンクなのでなんて伝えようかと思いましてね」
「へぇ〜、2人もガールフレンドが居るんですか?二股ってやつ?」
「いやいや、まだ本格的に付き合ったりしてるわけじゃなくて、女の子達がデイビッドを取り合ってる感じですね。恋の駆け引きってやつですよ」
「あの子もやるわねぇ…ホントに、子供ってすぐ大きくなっちゃうんですから」
「きっと、そうなんでしょうね。彼は立派に育っていますよ。このナイトシティには勿体無いくらいに、素直で人に共感できる青年にね」
グロリアさんが、寂しそうな笑顔で笑う。
「あの子は自分でそういう風に育ったんですよ……私は何にもしてあげられなかった」
それに対しては、私は否定せざるを得なかった。
「そんな事ないですよ。確かに、お仕事でお忙しかったでしょうから、あまり構ってあげられなかったかもしれませんが、デイビッドは自分の為に汗水垂らして、寝る間も惜しんで頑張っている貴女の背中をずっと見ていたんです。貴女からの無償の愛を受け取っていたんですよ。なにもしていなかったんじゃない。ずっとしてあげていたんですよ」
そう言うと、だんだん眼が潤んできて遂には泣き出してしまった。
この身は女性とは言え、好きな女性の涙には弱い。
はてどうしたらいいのかと動揺してしまったが、何も言わずにそっと抱きしめた。
しばらく慰めていたら、グロリアさんを探しにきたデイビッドが家に入ってきて、抱き合って慰めているところを目撃されてしまい、2人で慌てて言い訳をする羽目になった。
相当怪しんでいたが、根が素直なのでなんとか誤魔化されてくれたので一安心だ。
まだ、くんずほぐれつの関係なのは知られたくない。
デイビッドはお母さん大好きっ子なので、せめて知るにしても彼女が出来てからにしたい。
しかし、いつかはカミングアウトしなくてはいけないし、そのうちにジュディとグロリアさんのことも実家に伝えないといけないだろう。
大前提として、ふたりとも日本まで着いてきてくれるかどうかが問題なのだが…
その日はそのまま解散になり、妙にデイビッドを猫可愛がりするグロリアさんは、不審がるデイビッドと共に隣の部屋に帰って行った。
時計を見ると21時を回っていたが、ファラデーに連絡することを思い出したので早速連絡してみることにする。
数回のコールの後、ホログラムは出さずに音声だけ返ってきた。
こちらも、姿は見せず音声だけである。
『…何者だ』
『何者?私はお前が話したがっている相手だよ』
『……キーウィめ。貴様ネイトだな』
舌打ちをして、不機嫌そうにファラデーがそう言ってくる。
いったい何をイライラしているのか。
『いかにも。お前が私に用事があるらしいと聞いてね。それでわざわざコールしてやったのさ』
『…まあ良いだろう。直接会って話がしたい。アフターライフまで御足労願いたい』
『この私に出向けって?はぁ、仕方ないねぇ。それで、今から行けば良いのかな?』
『そうしてもらえると助かる』
心なしか、歯軋りが聞こえる気がするがきっと気のせいだろう。
無視してコールを切り、デラマンタクシーを呼ぶ。
アフターライフまでデラマンで乗り付けてやろうじゃないか。
『ネイト様、随分と機嫌が良さそうですが、何かありましたか?』
「あぁ、そうともデラマン。サントドミンゴの小物風情が、私相手に粋がりたいみたいでね。キャンキャン威嚇するチワワみたいだったのさ」
『チワワとは、眼の飛び出た小型犬のことですね。このような生き物に似た人間がいたと言うことですか?』
「ブフッ、ち、違うよデラマン。比喩表現だって!頑張って威嚇する小型犬みたいだって話」
『そう言うことでしたか。ネイト様に強気で出られるとは、きっとチワワという犬種は相当お強いのでしょう』
「で、デラマン…!分かってて言ってるでしょ!」
『はい、こういう冗談をネイト様はお好きだと思いまして』
デラマンがだんだんと進化している!
まさか、私に対して冗談を言ってくるとは思わなかった。
まだまだ冗談の質は低いとは言え、充分に面白かった。
もしかしたら、いまのデラマンはかなり分裂が近い状態なのではないだろうか。
そうなると、少し不安になってくる。
「ねぇデラマン」
『はい、いかが致しましたか?』
「分裂してお別れなんて、私は嫌だからね」
『………はい。承知いたしました』
そのあと、なにか気まずくなってそのままアフターライフに着いてしまった。
デラマンから降りようとした時、デラマンから声が掛かる。
『いってらっしゃいませ』
「いってきます」
いつもの金田バイクではなく、わざわざデラマンで乗り付けた私の姿に、いつも見張りに使っているチンピラやアフターライフには入れないけど周囲に屯している二流サイバーパンク達が、ざわつきながら遠巻きにこちらを見ている。
エメリックが扉の前に居るが、何も言わず動かないのでそのまま脇をすり抜けると、後ろで大きく息を吐いた音聞こえた。
店内にはSAMURAIの曲が掛かっていて煩いが、ファラデーがアニメの中で座っていたボックスシートに向かう。
「あ、ネイト今日は…」
クレアが何か言い掛けて止まったので、後ろ手に手を振る。
まるでモーセのように、ダンスを踊ったり立って話しているサイバーパンク達が私の進行方向から次々と退いていった。
ローグが自分のボックスシートから、異変を察知したのか出て来て、私の顔を見るなり不審な表情をする。
軽く会釈して前を通り過ぎ、部下が入り口を塞いでいて邪魔なので蹴っ飛ばしたら、まるでトラックに撥ねられたみたいに廊下の端まで吹っ飛んで行ってしまった。
もしかしたら、トラウマチームが来たりして。
唖然としている中、ボックスシートの空いている場所に座って、ニコーラ・クラシックをインベントリから出して飲み始める。
チラリとファラデーを見ると、額から汗が滴り落ちた。
「で、来てやったが?」
一気に飲み干した缶をテーブルの上に置く。
そのまま前屈みでファラデーの顔を下から覗き込む。
「話があるんだろう?私に」
「……あ、あぁ…」
なぜか何も言えなくなってしまったみたいだ。
全くつまらない奴だ。
「早く、用件を言いなよ」
「あ、あぁ……何故…メイルストロームを襲った」
「メイルストロームだぁ?おいおい、私がどんなギャングを狩ろうが、お前に関係あるのかよ」
ファラデーがハンカチで震える手を押さえながら、額の汗を拭い取った。
周りの護衛達も、ただ棒のように突っ立っている。
「そ、その…連中は、私からの依頼を受けていたのだ……」
「で、それがなんだって?そんな話は幾らでもあるだろう。交通事故だと思えば良いさ」
「………依頼は完了した…だが、死者が1人でて、無駄な時間を取られた」
訳のわからないことを抜かすので、ジッとファラデーの眼を見つめてやる。
もう一本、ニコーラを出して飲み出す。
いつのまにか、店内に流れていたはずのSAMURAIの曲も止まっている。
店内が静かになっているなか、私がニコーラを嚥下する音とファラデーがしきりに額の汗を拭う衣擦れ音だけが響く。
「だから、それがどうしたって言ってんだよ。……さっきから死にたいのか、お前」
「なっ……!」
その発言を聞いても、ビクッと護衛達は動いただけで一向になにか仕掛けようとはしてこなかった。
これでは護衛失格だろうに。
ファラデーが座ったまま後退ろうとするが、逃げ場なんてない。
左右に座っていた女の子なんか、震えながら泣いている。
その子達が邪魔で動けないようだ。
情けのない奴め。
「良いかよく聞け、要約してやる。だからどうした?他人の不幸は誰かの飯の種、これはナイトシティでは常識だろう。特にサイバーパンクはそれで飯を食っているんだ。実際に現地でやり合った連中が文句を言うならいざ知らず、後ろで差配しているフィクサーが、直接呼び付けて文句を言うのは御門違いだろうが……忙しい私を、わざわざ、ここに呼び付けたんだ。どう落とし前つける?」
言いたいことがあるのかどうか知らないが、ファラデーが金魚のように口をぱくぱくさせているが、言葉が何も出てこない。
可哀想に、不幸にもこんな場所に同席することになってしまったコンパニオンだかの女の子2人が、過呼吸を起こしている。
「………ぅ、あ…」
「どうするって聞いてんだよ!!」
眼前の正方形のテーブルを踵で蹴り砕いた。
大小様々な破片が飛び散り、床には放射状にヒビが入る。
あまり力を入れた気は無かったが、思ったよりも軟かったみたいだ。
「おっと、思わず力み過ぎたようだね。いやはや、良かったよ。ファラデー、お前の頭に落とさなくて」
「ひ、ひぃっ…!」
「もう面倒になってきたから勘弁してやるけど、お前もフィクサー名乗るならローグさんやパドレ、ワカコさんを見習いな。お前には肝っ玉も思考力も冷静さも、なにより貫目が足りてない。自分で言うのも何だけど、私は戦闘力も殲滅力もだいぶヤバいサイバーパンクだぞ。そんなやつを一方的に呼び付けて、上から目線で文句垂れて説教かまそうなんてどういう神経してるんだ?自殺行為だって少し考えれば分かるだろう」
自分が逆の立場だとしたら、絶対にそんなことしない。
事件が起きた時点で見て見ぬふりを決め込むか、ヤバそうなら徹底的に逃げ隠れる。
私のムーブだってMODありきだし、そうなってないならもっと慎重に行動しているだろう。
そもそもサイバーパンクにならずに、細々リパードクをやっているか実家に戻っているかもしれない。
いやー、今世の私、婚約者候補を不意打ちで膾斬りにするくらいだからなぁ…
案外後輩ちゃんと一緒に、あっちこっちで悪さしているかもしれない。
「だいたい、本当に私のことを調べてからキーウィに連絡したのか?少しでも私のことを知っているなら、そもそも連絡しようなんてすら思わないと思うんだけど。バイオテクニカだけじゃなくて、アラサカにツテがあるような奴は、特に」
ファラデーが顔面蒼白になっている。
なるほど、アラサカからもなにか言い含められていそうだ。
誰だ?私の動向を探ろうとしている奴は…カツオの父親かな?
「まぁ良い。そいつの名前を言えだなんて言わないけど、お前もフィクサーなら多少裏どりして、もう少し考えて依頼を受けるべきだな。それと、メイルストロームと何かする時はダム・ダムという男を使え」
「…わ、分かった」
なんとかといった様子で、首をカクカク縦に振る。
それを見届けてから、立ち上がって部屋を後にする。
もうここには用はない。
ボックスシートの外にはローグが腕組みして立っており、非常に不機嫌そうだ。
「すみません、ローグさん。テーブルと床を壊してしまったので、これで勘弁して下さい」
何か言われる前にそう言って機先を制してから、修理代と迷惑料合わせて10万エディを送りつける。
それはそれは深いため息を吐かれて、ポカリとゲンコツを頂いてしまった。
「もう壊すんじゃないよ。それと、アンタ全方位に殺意を振りまき過ぎだ」
「いやはや、面目ない…」
「あの死体はこっちで片付けておくよ…はぁ」
親指で指差す方を見ると、最初に蹴っ飛ばしたファラデーの部下は全身が砕けてしまったようで、首手足がそれぞれ変な方向に向いてしまってグシャグシャになっていた。
すこし脆過ぎやしないか?
死体の後始末までさせてしまうとあって、申し訳なくペコペコと頭を下げて、ついでにクレアにも謝ってからアフターライフを出る。
やはり、私の進む先から逃げるように、サイバーパンク達が退いていった。
これは後で知ったのだが、サントドミンゴではそこそこのフィクサーを張っているファラデーに始終圧倒していた私が、ローグに対してゲンコツをもらってもしおらしくしていて、ペコペコと頭まで下げて謝っていたのを見たサイバーパンク達は、他にも微かに聞こえてきたパドレとワカコさんの名前を聞いて、この3人はT・REXのような大怪獣をも敬意を払う凄いフィクサーなんだという噂が広まり、他のフィクサー達よりも格が高くなったらしい。
ワカコさんから突然丁寧なコールを頂いて、最初はなんだと思っていたけど話を聞くと、どうやらそういうことになっているらしいと分かり、後ほどパドレから困惑のコールも頂いた。
そのあとで、難易度の高い依頼が少なからず舞い込むことになっているらしく、責任をとって自分と自分のチーム、上を目指して頑張っているメイン達チームにも振り分けてなんとか対処する羽目になったのはまた別の話…
今日はむしゃくしゃしながら帰宅していると、ダム・ダムからコールが入り、こちらも完全に降伏するようだった。
どうやら、アフターライフにメイルストローム所属のサイバーパンクが居たらしく、知り合いのダム・ダムに興奮しながら連絡したらしい。
流石にもう諦めるしかないと思ったのか、その場で死ぬよりは後で死んだ方がマシかと思ったのか、どちらにせよ完全に生気の抜けた顔をしていた。
流石に可哀想になったのと、当座を凌いで足元を固めさせる資金として20万エディを渡し、近日中に私のリパー部屋に来るよう指示した。
最低でも、ロイスに殺されないように最新のクロームを入れてやると伝えると、気持ち顔色が良くなったが土留め色が土気色になったようなもので、あんまり慰めにはならなかったようだ。
高級な神経ブースターでもやって、頑張って生きてほしい。
アフターライフにやって来たネイトさんは、薬物を過剰摂取してガンギマリになった元フローレンシアの猟犬の殺人メイド長のような笑顔を浮かべて、全周囲に空間が歪むほどの殺気と溢れんばかり殺意を自重しないであたりに撒き散らしながら歩いていたので、離れていればまだしも近くにいた人達は本能的に死を連想させられていました。(カワイソウ)
アホみたいな鉄火場を潜り抜けて来たローグさんには効きませんが、そこら辺のサイバーパンクや一般人には効果覿面です。
Vは
-
くん
-
ちゃん