【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !!   作:持麻呂

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誤字脱字訂正、いつもありがとうございます!!m(_ _)m

今回は少し長めで、後半はわちゃわちゃ回です。



第三十一話

食料問題には、ある程度の目処が立った。

いずれは、クソッタレワーム肉と憎きフードペーストを駆逐するべく、成長促進剤を多用してナイトシティの市場を天然食材で席巻してやるつもりだ。

一応、どんなに調べても促進剤使用食品は、人体に悪影響を及ぼす結果は出なかったので、そのまま市場にも流通させることになった。

その第一段階として、採れた野菜の内アラサカの割当て外から、エル・コヨーテ・コホに格安で買ってもらって、ママ・ウェルズとジャッキーに本物の野菜を使ったタコスを提供するようにしてもらったのだ。

原価が生野菜にしては格安に抑えられているので、その分販売価格も低くして提供するように話をつけてある。

それでも、普通のフードペーストを使ったタコスよりは割高になっているのだが、この値段なら少し背伸びしても良いかと思ってもらえるくらいの値段差だ。

 

ただでさえ、フードペースト食材を使っていてもめちゃ旨なのに、前回生野菜で作ってもらった時はミスティが泣くレベルで美味かったので、興味半分で食べたサイバーパンク達がその場で奇行に走る事件が多発してしまった。

とにかく美味すぎるという噂がヘイウッドやグレン周辺に広がり、バーだけでなく食堂としてもとても繁盛し始めたので、ママ・ウェルズから熱い抱擁を受けて私もニッコリだ。

 

さすがに、アラサカとの契約がある以上、ほかの市場には格安で卸すわけにはいかないので、友達価格はエル・コヨーテ・コホだけであるが、それでもバイオテクニカやオールフーズやらが出している天然食材よりはかなり安い。

普段はナイトシティの外から持ってくるので、バカ高い関税やら輸送費が乗っていても上流階級向けなので大丈夫だったのだろうが、これからはそうはいかないぞ。

 

基本的には、中流階級以下はほとんど本物の野菜を食べたことが無いので、どのくらい一般人ウケするのかというエル・コヨーテ・コホを使った実験は、大成功だったと言ってもいいだろう。

元々天然食材は高いものなので、アラサカに割安で売却したとしてもすごい金額になる。

それが、日系の関連企業にまで波及しているので、野菜ビルは全力稼働中だ。

いまはコーポを中心として、あればあるだけ売れている状態なので、あっという間に更にもう一棟の野菜ビルを増築することが可能なほど売れまくっている。

見てくれが悪かったり、収穫物の規格外のものは自動的に弾かれるようになっているのだが、その弾かれたやつでも比較的綺麗なものに関しては、訳アリ品として一般階層でも手の届く金額で流通させ始めた。

見た目が多少悪くても味には変わりがないので、直売所に並べる端から品切れになっているようだ。

せっかくなので、更に認知度を高める為に、上流階級向けに流通させ始めた野菜の広告を打つことにした。

 

誰か良い感じの宣伝キャラクターになってくれる人が居ないものかと、色々考えながらリジーズ・バーにあるジュディのBD工房に遊びに行った。

 

「ネイト!また新しいBDを持って来たの?」

 

「ジュディ、お疲れ様。そうそう、これ新作なんだけど、またお願い出来るかな?」

 

「いつもすごいの持ってくるから、編集してるこっちも楽しくってさ!いつでも歓迎よ!」

 

BDのデータが入ったチップを手渡すと、手を握ったままこちらに顔を寄せて来て、軽く唇にキスをされる。

お淑やかで一歩引いたグロリアさんとは違い、ジュディはどちらかと言ったら積極的だ。

こちらからももう一度キスをする。

 

「そうそう、実は相談したいことがあってね」

 

「相談って、どうしたの?」

 

「いや、今デラマンと一緒に野菜を製造販売し始めたでしょう?実はそれの広告を打とうと思っているんだけど、宣伝キャラに誰を起用しようかと思っているんだよね」

 

「この前持って来てくれたタコスもびっくりするくらい美味しくって、モックスの皆んなも驚いていたけど、その野菜のCMを作るってことでしょ?」

 

「まぁそう言うことになるね。誰か良さげな人知ってないかな?有名人でも良いんだけど」

 

そうねぇと顎に指を置いて、ジュディが頭を捻り出すが、ほとんどの有名人は何かしらのコーポと契約していて、そこのイメージキャラクターを勤めていたりするので、新しく野菜のとなると案外難しい。

しかも、地味にバイオテクニカやその他食品関連のコーポからの嫌がらせで、芸能事務所と連絡が取りづらくなっているのだ。

なんとムカつく連中だ。

 

ジュディが名前を挙げて、その度にお断りされた旨を伝えるという作業が暫く続いていた時に、クラウドだかリジーズ・バーだかでの仕事が終わったのか、エヴリンが地下に降りて来た。

 

「あぁ、誰か来てると思ったらネイトじゃない。久しぶりね」

 

「エヴリン、久しぶ…り…」

 

思わずジュディと顔を見合わせた。

 

「「あぁ!」」

 

「2人して、人の顔を見てあぁ!は無いでしょう。失礼ね」

 

エヴリンがいた事をすっかり忘れていた。

フリーで、女優志望のドール。

私から貰った仲介手数料で、顔やプロポーションに手を入れて更に美人度が増している。

ジロジロと上から下まで見ても、かなり有望と言っても過言では無い。

 

「さっきから、人のことをジロジロと見ないでもらえる?」

 

「あぁ、ごめんごめん。……変なことを聞くかもしれないんだけど、エヴリンって今でも女優を目指していたりするのかな?」

 

「はぁ?女優?…えぇ、まぁ一応そのつもりでオーディションとかも受けているけど、それが何か関係があるのかしら」

 

「いやいや、素晴らしい!忘れていた私は恥ずかしいくらいだよ!」

 

「えぇ?何の話を2人でしていたわけ?」

 

大絶賛混乱中のエヴリンを、ジュディと左右に挟んで腕を掴む。

そのまま、BD用のリクライニングシートに座らせた。

ニッコリと笑ったまま、がっちりとエヴリンの両肩を掴んで逃さないようにする。

 

「ちょ、ちょっと!何するのよ!」

 

「いや、実は女優さんを探していたんだよね」

 

「はぁ?女優って、何をさせるつもりなのよ」

 

「デラマンと一緒にやっているコーポで、野菜を製造販売しているんだけど、私と契約して広告キャラクターになって欲しいんだよね」

 

「……つまり、野菜のCMを作るから、そのCMに出て欲しいってわけ?」

 

「そう言うことさ!エヴリンほど美人なら、絶対に良いCMが作れると思うんだよね!ちなみに、ギャラはこのくらいで…」

 

スッとメールで金額を送る。

どれどれと怪訝な顔をして、メールを読んでいるらしいエヴリンが急に立ち上がった。

 

「えっ?ちょ、え?まさか、本当に?」

 

「嘘じゃないよ。そこらへんの裁量はあるのと、めっちゃ儲かっているからこのくらいは平気で出せます。それと、これを契機にエヴリンにも羽ばたいて欲しいって意味合いもあるんだ。先立つものは、幾ら有ったっていいだろう?」

 

エヴリンに提示したギャラの額は10万エディだ。

名前の知られていない新人女優の、CM一本のギャランティとしては破格過ぎるだろうが、大半は私の懐から出すので問題ない。

それだけあれば、ドールをしなくても良いだろうし、更に自分磨きに専念できるはずである。

ゲームでもジュディがエヴリンの事で、演技も上手いと言っていたので、コネや運が無くて女優になれなかっただけだと思っている。

せっかく私がコネを提供できる側に立ったのだから、応援してあげたいと思うのは果たして傲慢だろうか。

私はジュディが悲しむところを見たく無いし、友達としても酷い目に遭っては欲しく無いって言うのもある。

これを機に、世界で輝いてくれるといいな。

 

「エヴ!これはチャンスじゃない!どんな形であれ、これを掴んで夢に進まなきゃ!」

 

「ジュディ……そうね、このままじゃ死ぬまでドールでしかいられないかもしれない。ネイト、受けるわ。その仕事」

 

「そう来なくちゃね。エヴリン、ちなみに私はこのCM一本だけじゃなくて、デラマンとの共同経営の会社全体で君を使っていきたいから、そこのところも頼むね?」

 

「随分と忙しくなりそうだわ…」

 

「おめでとう、エヴ」

 

ジュディが、笑顔でエヴリンを抱きしめた。

そっと、エヴリンもジュディを抱きしめ返す。

こんな光景をゲームでも見てみたかったよ。

エヴリンが夢破れて、制御チップも焼かれた上に身体をおもちゃにされて、最後には自殺してしまう…

きっとその自殺も、ヴードゥー・ボーイズがクイックハックで自殺デーモンを送り込んだ可能性がある。

最初から最後まで運が無く悲しい、けれどナイトシティではありふれた1人なのだ。

 

それから、エヴリンを野菜ビルのマスコットキャラクターに起用して、広告をバンバン打ちまくり、デラマン診療所系列のCMにも使ってもらった。

ナイトシティの街を歩けば、至る所でエヴリンの姿を見るようになる。

CMも好評で、水の滴る新鮮なトマトやメロンを頬張り、こちらを振り返りながら微笑む姿はナイトシティ中の思春期男子の股間に直撃していた。

 

おかげで、野菜は常に売れまくって品薄状態が続くので、増産サイクルの見直しとライン増設計画の前倒しをする羽目になった。

エヴリン本人も生活に余裕が出て、底辺から脱出できたおかげか喫煙量も減り、よく笑うようになって魅力も増している。

知名度も急上昇したからか、近々映画のオファーも受けるかもしれないと言っていたので、銀幕デビューも然程遠く無い未来に訪れるだろう。

 

食料問題は少し時間が掛かったが、概ね軌道に乗ったと言って良いだろう。

しかし、まだ最大の問題が残っているのだ。

そう、バイオテクニカが代表する製品、『CHOOH2』である。

これが無くなると、ナイトシティ中の交通系インフラが壊滅する。

あと、この街が太陽光発電だけでは賄えておらず、火力発電も併用していた場合は、都市機能も一部が喪われてしまうだろう。

ペトロケムはバイオテクニカとライセンス契約を結んで、『CHOOH2』を生産しているものの、実際は傘下企業なので、親会社の決定には逆らえないところがあるはずだ。

ナイトシティを撤退すると言う話になった時は、高い確率で一緒に撤退してしまうかもしれない。

ここら辺は賭けになってしまうが、バイオテクニカがほかのメガコーポからの悪印象を嫌って、傘下企業はそのままにしておくかもしれない。

どう転ぶにせよ、燃料問題もある程度は解決しておくべき事だな。

『CHOOH2』は主に穀物から生成されたバイオ燃料であり、原材料はトリティクム・ウルガリス・メガスアウィスという名前の遺伝子操作で産み出された穀物である。

 

南側のバッドランズで、大量にワームと一緒に生産されているのは知っているが、実際にその穀物そのものを見たことはない。

それに、バイオテクニカ自体が原材料の穀物を死滅させられる細菌兵器を持っている、なんて言う噂もあるので、ただ穀物の情報をすっぱ抜くだけでは意味がなさそうである。

ただ、今は何も知らなさ過ぎるので、情報は情報で得るべきではあろう。

 

「と言うわけなので、第二回チキチキクラッキング大会を開催します」

 

わーパチパチパチと1人で虚しく拍手をする。

レベッカも一緒に拍手してくれそうな雰囲気だったが、めっちゃ嫌そうな顔をしているルーシーを見て、躊躇ってしまったらしい。

サーシャは、バイオテクニカをナイトシティから抹殺するためならなんでもするので、猫みたいな可愛い顔に意欲を滾らせていた。

まぁ、前回も一緒にバイオテクニカのサーバーに入り込んで、たくさん悪さしまくった仲なので、今回はあんまり心配していない。

前回と同じように動けば良いだけだからね。

 

「大体、クラッキングするって言っても、どこに仕掛けるつもりなのよ」

 

「今回はペトロケム・ベターライフ社に仕掛けたいと思っています。はい」

 

「ペトロケム?アンタ馬鹿じゃないの」

 

今日もルーシーは、絶好調の辛辣さである。

 

「おや、そんなことを言って良いのかな?少し前に、バイオテクニカが機能不全に陥ったことが有ったろう…」

 

「まさか…アンタ達がやったってわけ?」

 

「もちろん!おかげで、こっちはバイオテクニカの後ろ暗いところから、技術的な機密情報を上から下まで総浚いして掻っ払うことができたってわけだね。カント君が、やばい時限爆弾をばら撒いていたけど…」

 

「いや、カント君って誰よ」

 

「まぁ、そんなことはいいじゃないか。それで、せっかく世界最高峰レベルのサイバーデッキを組み込んだ、おそらく最先端を突っ走っているネットランナーが三人もいるわけだし、ササっと機密情報を頂戴して帰ってくるだけだから、いけるいける」

 

アラサカやバイオテクニカ程ではないにせよ、充分大企業なペトロケムにハックを仕掛けに行くことに、ルーシーはめっちゃ嫌そうな顔をし続けている。

まぁ、普通なら私もそうだろうから、気持ちはわからないでもない。

しかし、バイオテクニカを排除する期限もあるので、さっさとやることはやらねばならない。

 

「それにしたって、専用の機材ってもんが必要でしょう。ここにあるわけ?」

 

「それはちゃーんと用意してあるよ。まぁ、まだ時間が早いから、その前に良いところで時間を潰そうか」

 

「いーところって、どこ行くんだよぉ?」

 

ちょうどパシフィカの隠れ家に出掛けようと思っていたら、デイビッドもやって来たので一緒に連れて行く事にした。

人数が多いので、デラマンタクシーに少し詰めて座り、『HOTEL MARQUESS』に向かってもらう。

直接乗り付けないのは、あんなスラム街にデラマンなんかで行ってしまったら、目立ちまくって隠れ家も侵入しようとイタズラされてしまいそうだからだ。

実際、中には高価なサーバー機材が山ほどあるので、それをされると普通に困る。

今日はなるべく夜に動きたいので、いろんなリスク軽減のために先にホテルへ行くのだ。

 

車内ではみんなで他愛もない話をしながら向かい、デラマンタクシーがホテルの入り口で停まった。

 

ススっとドアマンがやって来たので、私の座っているドアを開けてくれるまで待ってから降りる。

私以外の全員が、そう言った世界とは全くの無縁なので、困惑しながらドアマンの開けてくれたドアから降りて、自分達の場違い感にキョロキョロと御上りさんになっていた。

アカデミー帰りで連れて来たデイビッドは、まだアラサカの社章が入っている制服を着ているのでそこまで場違いではないが、パーカー姿のルーシーや地肌を見せまくっていてサイバータトゥーが眩しいレベッカは、場違いすぎて普通ならドアマンに止められて絶対に入れない。

ちなみに、サーシャは変装のためにコーポスーツを着させているので、全く問題はない。

ドアマンにチップとして200エディずつ渡してから、みんなを引き連れてゾロゾロとホテルの中に入って行った。

 

「な、なぁネイト。なんでホテルなんかに来たんだ?」

 

「あぁ、それは一種のアリバイ工作みたいなものだね。私がお金を出すから、気にしないで良いよ」

 

明らかに高級ホテルなので、デイビッドがビビり散らかしている。

レベッカはあっちこっちに興味津々で、手綱を離せばすぐにでも気になる方向に走り出してしまいそうだ。

いかにも育ちの悪そうな感じが、前面に出てしまっていた。

金色のリアルスキンで統一されているフロント嬢に、軽く挨拶をして空室があるかを尋ねる。

 

「予約はしてないんだけど、入れるかな?」

 

「はい、いくつか空室がございますが、どのグレードのお部屋をご希望でしょうか?」

 

「五人だからね、ロイヤルスイートでいいかな。空いてる?」

 

「はい、こちらご利用頂けます。御料金は一泊2万€$となっておりますが、よろしいでしょうか?」

 

背後で金額に驚愕する声が聞こえるが、無視してさっさと支払ってしまった。

それから、後ろにゾロゾロと4人を引き連れて、最上階のロイヤルスイートに入って行く。

最上階はロイヤルスイートが2部屋しか無いみたいなので、部屋の広さも相当なはずだ。

中に入ってみると案の定、ナイトシティと太平洋を望める絶景が広がっていた。

部屋もベッドルームの他にもリビングや絶景がそのまま見えるバスルームなんていうのもあるし、ジャパンタウンの隠れ家よりもドレッサールームの方が広くて笑いそうになる。

さすが、一泊2万エディするだけはあるな。

 

時計を見るとまだ17時なので、外を出歩く人とペトロケムの社員が少なくなる22時までは、ここで時間を潰そうと思う。

適当に、ルームサービスで美味しそうなものを幾つか頼んでから、リビングにある巨大なソファーに腰掛けて夕暮れのナイトシティを観ながら、インベントリから取り出したニコーラ・サクラを飲む。

本当はスイートでも良かったんだけど、せっかくだから思い出作りもあってロイヤルスイートにしてみた。

一種の金の無駄遣いをしたあとのニコーラは格別だ!

またやりたいぜ。

 

みんな、思い思いのところで寛ぎながら、好きなことをしている。

やっぱり、デイビッドはレベッカと距離が近いが、ルーシーもかなり近い。

届いたルームサービスの料理とジュースを摘みながら、楽しくおしゃべりしているようだ。

三人とも笑顔で会話している。

サーシャは、多分絶景お風呂に入りに行ってると思われ、ここには居ない。

 

しかし、ただニコーラを消費し続けるのも面白く無い。

せっかくなので、若者集団に爆弾を放り込んでみることにした。

いや、我ながらなんて奴なんだ。

 

「ねぇ、デイビッド君」

 

「ん?ネイト、どうかしたのか?」

 

「君さ、レベッカとルーシー、どっちが好きなの?」

 

「ブーーーッ!!」

 

レベッカが、飲んでいたジュースを噴き出した。

飛沫が少し掛かった。

ペロリ…うーん、若い味がする。

 

「な、なな、何言ってんだよぉ!時と場合ってのがあるだろぉ!!」

「ちょっと!アンタ良い加減にしなさいよ!!」

 

「まぁまぁ、お二人さん。君たちも気になっているクセに、スカすのは良くないとお姉さんは思うんだよね」

 

「こんな時ばっかり歳上ぶらないでよ!」

「そうだぁ!おーぼーだぞぉ!!」

 

「そんな同時に喋られても、聞き取れないなぁ。で、そこのところどうなんだい?」

 

デイビッドが、冷や汗を掻きながら目を左右に泳がせる。

ここで何を言っても、必ず角が立つことを理解しているからだろう。

あぁ、なんて罪な男なんだろうねぇ。

こんなにも美少女2人が、好意をむき出しにしていると言うのに、早く決めないからダゾ。

 

ああじゃない、こうじゃないと、勝手に口喧嘩のキャットファイトが始まったので、その隙にスルスルとデイビッドの隣に腰をおろす。

逃げられないように、腕を肩に回してガッチリとホールドする。

 

「で、どうなんだい。もうレベッカとはキスしたりしたのかい?」

 

「ちょ、えっ、いや、まだそこまでは…」

 

「へぇ〜、いいじゃないか。アレコレ気にしない甘酸っぱい青春は、若者の特権だからね。ルーシーともデートに行ってるんだろう?」

 

「え?あ、あぁ。うん、まぁ」

 

「随分と歯切れが悪いじゃないか。そこは堂々とうんと言えばいいのさ。恥ずべきことじゃない……2人とも好きなんだろう?だから、どっちも傷付けたくなくて選べない。違うかい?」

 

デイビッドが引き攣った顔をして、俯きながら頷く。

デイビッドなりに、色々と考えてはいるんだろう。

原作の時とは違って、相談に乗ってくれる大人であったメインとは違うチームだし、相談に乗ってくれそうなジャッキーだっていつも一緒にいるわけじゃない。

私だって最近は忙しくしているので、中々構ってもあげられていない。

身近に、頼りにできる大人が居ないのだ。

道に迷って当然だろう。

 

「なら答えは一つじゃないか。2人ともモノにしちゃえばいいのさ」

 

「い、いやだって、それはなんか誠実じゃないって言うか…」

 

「いいかい?どちらかを選ぶと、どちらかは涙を飲むんだ。それがイヤなら、どっちも選ぶしか無いじゃないか。2人の好意に甘えて、いつまでもズルズルと問題を先送りにしている方が不誠実とは思わないかい?私だって、恋人が2人居るけどお互い納得してくれている。君は学生とはいえ、サイバーパンクで収入もあるわけだし、そこらへんの一般人と違うんだから、ここは男の甲斐性の見せ所だと思って良いんじゃないかな?」

 

チラリと、手だけをわちゃわちゃさせている2人を見ると、耳だけをダンボにしてこちらを気にしている。

我々の会話が気になっているようだ。

 

「お、俺は…やっぱり2人とも好きだ」

 

「そうだ、それで良いんだよ」

 

自分だってめちゃくちゃ言っている自覚はある。

はっきり言って、二股を勧めるクズ発言をしているのも分かっている。

だけど、あの寂しい笑顔を浮かべて死んでいったレベッカの姿が、脳裏にこびり付いて離れないのさ。

あー、なんかイライラしてきたから、アダム・スマッシャーをカーネイジGUTSで虐めて来ようか。

全ての力を解放すれば、これ一本で容易く達磨に出来るのだ。

いまヤツを生かしているのは、単に殺しても得にならないからに他ならない。

デイビッドを殺し、レベッカを殺したヤツを私が生かしている理由がない。

まぁ、ヨリノブのオッサンやらサブロウの爺様の安全が脅かされる可能性もあるから、と言うのもないことは無い。

 

覚悟を決めたのか、すくっと立ち上がったデイビッドが2人に向かって歩いて行く。

手を止めてデイビッドを見る二人組。

2人の前で大きく息を吸い込み、真っ赤な顔で叫んだ。

 

「俺は…俺は2人とも好きなんだ!!どっちかなんて選べない!!」

 

「おー、ついに言いおった」

 

それを同じく真っ赤な顔をして聞いている2人は、お互いに顔を見合わせて一つ頷くと、拳を握って大きく振りかぶった。

突然の行動に目を丸くするデイビッドを目掛けて、勢いをつけたパンチが二つ叩き込まれる。

レベッカは鳩尾に、ルーシーはほっぺたに一発ずつ良いのが入って、デイビッドが崩れ落ちた。

 

「ど、どうして……うっ…」

 

「イヒヒヒヒッ、あちゃー」

 

それは言い方が悪過ぎるだろうねぇ。

若いって良いなぁ。




あぁ、哀れデイビッド…
もうお前ら早く付き合ってくれよ…

あと三話くらいで終わりそうだったはずなのに、もう少し続きそうです…

Vは

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