【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !!   作:持麻呂

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誤字脱字訂正、いつもありがとうございます!!

大変お待たせいたしました。
ACT1 最終話になります。
1.8話分の文字数があります…
最後は駆け足ですが、なんとか書き終わりました。
よかったら、見ていって下さい。m(_ _)m


第三十五話

神経系に稲妻が走り、サンデヴィスタンが再稼働する。

デイビッドも同じように再稼働させて、それぞれが別の敵集団に向かって走り出した。

一つの戦闘単位がプログラムされているのか、分隊のようなものを組んで数機ずつで固まっている。

そこに突っ込んで、刀を振り回すだけで簡単にアポジーの再稼働分に必要なキル数を稼げてしまう。

デイビッドも同じように逆側のユニットに突撃しては、エラッタを振り回して膾切りにしていった。

その横顔は、以前バイクの後ろに乗せた時と同じように笑っていた。

いいね、そう来なくちゃ。

 

私も負けていられないので、前に前にと何体目になるか分からないロボットR MK2を両断していく。

倒せば倒すだけ、こちらの犠牲者が減るのだ。

味方が死なないに越した事はない。

将来、Vくんちゃんとアラサカが激突することになるかもしれないけど、今は大事な味方なのだ。

 

また稼働限界が来そうになると、お互いに近寄っていって背中合わせになる。

とりあえず、近場にいる奴らには軽くオゾブの鼻を投擲しておく。

手を離れても、加速した状態で投げているのでサンデヴィスタン中でも速度が変わらない。

あまりに強く投げつけすぎると、サンデヴィスタンを終了した瞬間に銃弾よりも速い速度で飛んでいって、物にぶつかったらグレネード自体が着弾の衝撃で壊れて機能しないのだ。

 

稼働時間が終了すると、なかなかの速度でオゾブの鼻が飛んでいって、近くにいるMK2を紫色の炎を撒き散らして木っ端微塵にする。

その爆炎に紛れるようにして、再びデイビッドに抑制剤を打ち込んであげる。

それでも、普通のサンデヴィスタンよりも負荷が大きいようで、肩で喘ぐ息をしていた。

 

一体全体、どれだけの量をビル社屋に隠していたんだというくらい、前線のMK2が減るたびに入り口から吐き出されている。

そのせいで、ある程度までは前線を押し上げることが出来ても、それ以上にまでは押し込めないでいた。

私はまだサンデヴィスタンを使えるけど、デイビッドはもう2回使ってしまったので、これ以上はあまり使ってほしくない。

なので、圧力が弱まったことで上がって来た前線まで後退し、一緒に後ろからやってきた移動式の遮蔽物に身を隠す。

 

「デイビッド、身体に異常はないかな」

 

「いまのところはなんとか!まだサンデヴィスタンだって使える!」

 

「私との約束は、1日3回までだよ。本当に危険な時以外は破ってほしくないから、あと1回分は取っておきなよ」

 

「でも!俺はネイトの役に立ちたくて!」

 

「気持ちはうれし『デイビッド!ネイトぉ!』いんだけど、まぁそれは後にしよう」

 

奥から、ジャッキーとメインがMA70 HBで弾幕を張って支援射撃をしている中、レベッカが駆け寄ってくる。

こちらもそれを援護するために、レベッカに照準を向けているMK2に向けてオーバーチュアをぶっ放す。

反対側からも、デイビッドがM-179E アキレスで正確にMK2頭部を吹き飛ばして、レベッカが進む道を作った。

 

無事に我々が隠れている遮蔽物に、レベッカが滑り込んでくる。

弾が掠った痕もなく、無事そうで安心した。

 

「デイビッド!連続でサンデヴィスタン使っちまって、大丈夫なのかよ!」

 

「大丈夫だって!みんな心配しすぎなんだよ」

 

「まぁ、まだ2回だから大丈夫と言えば大丈夫だね。抑制剤も使ってるし、少なくともあと一回は100%保証する。それ以上は、ちょっとどうなるか分からない」

 

「ほら!やっぱりヤバいじゃないかぁ!」

 

きぃぃぃと、レベッカが自分の頭をガシガシ掻きむしる。

レベッカは、デイビッドが心配で堪らないようだ。

デイビッドも少しバツが悪そうに、片手で頬を掻いている。

そこで何を思ったのか、デイビッドがレベッカを片手で抱きしめる。

 

「レベッカ聞いてくれ。ここは無茶のし時なんだ。俺だってネイトへの恩を返さなきゃいけない」

 

うーむ、男を上げたかな?

別にここで、こんな形で返してもらわなくても良いと個人的には思うんだけどなぁ。

レベッカが、う〜っと唸りながら耳を赤くしている。

奥の方でルーシーが怒っているのが見えるが、銃声で全く聞こえない。

 

「ああ〜もう!いつからそんなズルい男になったんだよぉ!わーぁったよ!けど、サンデヴィスタンは連発すんじゃねぇぞ!!」

 

デイビッドを押し除けて、レベッカがデイビッドの襟首を掴んでそう言った。

そのあと、プイッとデイビッドから顔を背けて、こちらに手を出してくるのでオゾブの鼻をひょいと乗せる。

すぐさま安全ピンを引き抜いて、一番近いMK2に向かってえいやと投げつけていた。

なんて可愛らしい照れ隠し!

 

「じゃあデイビッド、私は一足先に行くよ。サンデヴィスタンは無理して使わない方がいいけど、そこは任せる」

 

そう言って、再びサンデヴィスタンを稼働させて悟を振るった。

一回振るう毎に、一体のMK2が両断されて、頭の中には女の子の笑い声が響く。

害はないので、適度にオゾブの鼻も投げながら斬撃を続けて、前線を掻き乱す。

もう100体ほど斬り壊しているのだが、まだ終わる気配が見えない。

 

辺りを見回すと、アラサカ社員も5分の1ほどが負傷したのか後送されて、前線の圧力が弱まってしまっている。

このままだと、こちらが先に少数になってしまうのか、バイオテクニカのロボットR MK2が先に在庫切れになるかのチキンレースになってしまう。

こちらは痛みを感じるし、手足一本失ったら戦闘不能に対して、向こうは少しだが装甲化されている上に、手足を失っても戦闘力はそこまで低下しない。

更に痛みを感じないので、そのまま銃撃を加えてくるのがタチが悪い。

同数になった時は、こちら側がだいぶ不利になってしまう。

また稼働限界に達したので、近場の遮蔽物に隠れてやり過ごす。

 

このままじゃジリ貧だ。

 

私1人、社屋に突入するのは簡単だが、ここまで動き始めてしまった以上、好き勝手するわけにもいかない。

弱った…

寧ろ人数が足枷になるとは思わなかった。

何か、何か衝撃力のある突破戦力が必要だ。

…ここで切り札を切るか?

いや、あれは数回しか使えないから、まだ切るべきではないとゴーストが囁いている。

 

前線にいるデイビッドとレベッカを援護する為に、ジャッキーとメインがライトマシンガンで弾幕を張っている。

メインが腕に仕込んだプロジェクタイルランチャーで荷電弾を次々に放ち、爆発と共にスパークを撒き散らす。

ドリオが皮下アーマーとキチンの防御力に任せて突貫し、ゴリラアームの一撃でMK2の胸部を粉砕して沈めている。

ドリオを盾にするように、後ろ側でピラルがついて回りながら量産したオゾブの鼻をあっちこっちにばら撒いて周り、その更に後ろの方からサーシャとルーシーがクイックハックとライフルで、2人の死角から近付くMK2破壊して援護し、キーウィはD5 サイドワインダーとクイックハックを駆使して、アラサカ社員達に対しても援護しながら遊撃手として動いていた。

 

しかし、上空には相変わらずトラウマチームのAVが乱舞しており、契約者保護の権限を拡大解釈したのか、上空から機関銃で制圧射撃を加えているAVまでで始めている。

それでもまだ足りない。

入り口からは、遂にMK2だけではなく、ミリテク・ケンタウロスを装着した保安部隊まで出て来て、ヒートウェーブを彼方此方に放射し始める始末。

 

再度サンデヴィスタンを稼働させて、ケンタウロスの背面から悟を突き刺して動力パイプを切断するように横薙ぐ。

そのままの反動で、左隣のヒートウェーブの幅広な銃身ごと搭乗者の右腕を切り落として、返す刀で右隣の左足を外骨格ごと切り落とす。

燕返しのように振り下ろした悟をカチ上げて、右足の付け根か、右腕を半ばから断ち切って首を刎ねる。

 

ケンタウロスに乗られていると、身長差が大きくなるので1人に対して使う時間が大幅に増えてしまい、一回の稼働で処理できる人数も減ってしまう。

案の定、ケンタウロス4人目に取り掛かろうとしたところで稼働限界に達してしまい、ケンタウロス軍団の中に取り残されてしまうが、構わず4人目を膾切りにしたところで量子チューナーを発動させる。

一瞬で稼働時間をリチャージして、再び5人目に斬りかかり合計8人のケンタウロスを処理してから下がった。

 

まさか、向こう側も一気に8ユニット処理されてしまうとは思っていなかったようで、一瞬怯んだものの私を最優先排除対象にしたのか、戦場の3分の1ほどがこちらに射線を集中させてくるようになってしまった。

しまった…これでは下がるに下がれなくなってしまった。

 

仕方ないので、活路を前に見出すことにしてわざと乱戦に持ち込む。

これで、ロボット連中は知らないが、同士討ちを誘発させて銃撃を躊躇わせる。

しかし、いつまでも私のスタミナが続くわけでないので、適度に敵の背後に隠れてスタミナを回復させながら攻撃をし続けた。

だんだんと、周囲にケンタウロスの残骸が増えていって、擬似的な遮蔽物に成りつつある。

それのせいで、逆に味方からの援護射撃が妨げられてしまって、完全に敵中で孤立してしまった。

体の9割近くが義体のために、息切れとはほとんど無縁なものの、精神的に疲労してくるのでだいぶキツくなって来た。

 

しかも、これ以上前に進むとバイオテクニカのビル社屋に単騎で突入することになってしまう。

さすがに、内部にまだどれだけの戦力が居るかも分からないのに、死ぬとは露程にも思わないが、何も言わずに突っ込んでいってしまうのは良心が無い。

こうなってくると、本当に進退窮まってしまった。

3分の1が私を狙っているから、人数が減った前線も維持出来ているというのは、なんと言う皮肉であろうか。

 

こうなったら、サンデヴィスタンと隠し玉のバーサークの交互使用をして、殲滅し続けるしか無いか…

そう思っていた時、道路の向こう側がだんだんと騒がしくなって来た。

即席の遮蔽物と言う名の死体に隠れながらそちらを伺うと、埃を巻き上げながら大量の車両の群れがこちらに突っ込んでくるでは無いか。

その車両の荷台やら、窓に箱乗りをしているのはなんとメイルストロームのギャング達で、そのまま車両群が発砲しながらMK2の軍団に横合いから突撃していく。

先頭集団はゴツい戦闘車両やシュヴィロン、ソートン・マッキノーのような大型車両ばっかりだったので、ご丁寧にアニマルガードまで付けてノーブレーキで加速した状態で突っ込んできたので、その質量をほしいままにMKやケンタウロスを跳ね飛ばしていく。

その姿は正に、古の騎兵集団そのものだった。

すれ違い様にメイルストローム達が火力を解き放ち、次々にMK2が薙ぎ倒されて戦場のバランスが一気にこちら側に傾いた。

数台のマッキノーの荷台には、12.7mmの炸裂弾を満載にした重機関銃が据えられており、4連装にされているそれがけたたましい唸り声をあげながら、バイオテクニカのビル入り口に火力線を集中させて完全に敵を釘付けにしている。

一台の車が目の前に止まり、扉が開くと中からダム・ダムが降りて来た。

急いでこちら側に駆け寄ってくる。

 

「ボス!遅れちまってすまねぇ!助っ人を呼んできたんだ!」

 

「なんて良いタイミングなんだ!もしかして、アルデカルドスを連れて来てくれたのかい!?」

 

「おうよ!てっきり声を掛けていると思っていたんだけどよ、聞いてねぇって言うからそのまま連れて来たんだぜ!」

 

そう、ノーマッド達は大事な従業員なので、こんなことで怪我をさせたくなかったから声を掛けなかったのだ。

彼らにはある意味で家族みたいな認定をされてしまったので、巻き込んだら部族全体で犠牲を顧みずに戦闘に加わってしまいそうで、怖かったのもある。

 

「オイ!ネイトお前、俺たちに声を掛けねぇなんてつまらねぇマネしやがって!!ふざけんじゃねぇぞ!!」

 

車のウィンドウが開くと、そこにはソウルが怒った顔をしてこちらに怒鳴りつけてくるではないか。

最高のタイミングで来てくれたのもあるが、そもそも私が声を掛けなかったのが悪いので、何を言われてもお手上げするしかない。

とりあえず平謝りする。

 

「せっかく安定するようになった、君たちノーマッドの生活を壊すかもしれないような事に巻き込みたくなかったんだよ。私が間違ってた!ごめんね」

 

「おう!許してやるよ。次はねぇぞ!!」

 

大多数を引き潰し、敵の出撃地点を重機関銃で制圧射撃を加え続けて押し込んでいるので、外に出ていたMK2は残らずアラサカと我々のチームが片づけた。

束の間の時間に、負傷者を一斉に引き上げさせて、無事な者達も部隊を再編したり弾薬の補給に勤しんだ。

 

「飛鳥井嬢!素晴らしい横撃でしたな!お陰で、我々も一息つけました」

 

タナカ氏がスーツ姿に血の滲む腕をネクタイで荒々しく止血した格好で、弾丸痕の著しいアラサカの社紋と共に野菜命と書かれた旗を靡かせた旗槍を持って、颯爽と近づいて来る。

ジャパニーズサラリーマンの上位互換みたいで、なんか格好良く見えてきたぞ。

 

「ご無事で良かった。そちらの損害は如何程ですか?」

 

「ええ、幸いデラマンの医療技術とトラウマチームの迅速な搬送によって、頭に一撃を貰った者がいなかったことも幸いして、今のところ死者は出ていないようですな。そのまま会社に全員復帰出来るかは不明ですが」

 

「こちらの都合に巻き込んでしまって、申し訳ありません。もしそうなった者が出たら、面倒は我々が見ますので、遠慮なく言ってください」

 

「承知しました。お気遣い有難う御座います。皆喜ぶでしょう」

 

その後、タナカ氏は一度後ろに下がっていって、部隊の再編をしてからバイオテクニカ突入志願者を募るようだ。

アラサカだけ別の作品を見ているようだ。

入れ替わるように、ジャッキー達が走って来る。

 

「おぉ、ソウルじゃねぇか!助かったぜ。ネイトがやられちまうかと思ってたからよ」

 

「ジャッキー!こいつめぇ、知ってたならオレも呼んでくれたって良かったじゃねぇか!ネイトと一緒にやってくれたな!?」

 

「まぁまぁ、どちらにせよ助かったぜ兄弟!」

 

ジャッキーが、車のドア越しに拳をぶつけ合っている。

ジャッキーの友好関係の広さは、一体全体どうなってるの?

ナイトシティの市民全員と友達って言われても、今なら信じちゃうよ。

 

「ネイト!オメェスッゲェじゃねぇか!」

 

「ピラル!そっちもやるじゃんか!いい設計図だろう?」

 

「あたぼうよ!そりゃあもう、あの手榴弾が気持ち良すぎてビンビンダゼェ!!見るかぁ!?」

 

「出さなくていい出さなくていいから!!だから、テントを張った股間をこっちに向けないでもらっていいかな!?」

 

「クソ兄貴がよ!!キッタネェもんネイトに見せんじゃねぇよぉ!!」

 

後ろからレベッカが助走をつけて、ピラルに飛び蹴りを喰らわした。

面白いくらいにピラルがぶっ飛んでいく。

ドリオが爆笑した。

 

「大したもんだな、1人で何機ケンタウロスを狩ったんだ?」

 

「メイン、たぶん10機くらいかな?そっちも、プロジェクタイルランチャーを使い熟しているみたいで、私としたら何よりだよ」

 

「流石だな。それにコイツはすごいぞ。威力も中々だが使い易い上に、スマートリンクと連動出来るのが最高だな」

 

サーシャとルーシー、デイビッドも走ってこっちに来た。

レベッカは、今もピラルに蹴りを入れ続けている。

 

「ネイト!無事で良かった」

 

「アンタ1人で突っ走りすぎよ!バカじゃ無いの?」

 

「2人とも!おかげさまでなんとか無事だよ。ルーシーにも心配かけたね」

 

「べ、別にアンタになんか心配はしてないわよ。どうせ、殺しても死なないでしょ」

 

相変わらずツンツンしているけど、実際予備心臓があるから一回は死んでも生き返るね。

それを言ったら、どんな反応をするのかしら。

サーシャは早く会社にトドメを刺したいのか、ソワソワしていて落ち着きがない。

キーウィは、タバコをサイバーマスクに差し込んで、一服している。

一応、こちらの話は聞いているようだ。

 

こちらもチームが全員揃ったので、ビル突入に当たって武器の入れ替えやリロードをする。

そして、交互に制圧射撃を続けて弾薬を節約していた重機関銃達の弾が切れた。

地面には、薬莢の山と金属製のベルトリンクが散乱している。

恐ろしいほどの弾薬投射量である。

 

これで、ビル外に出てこようとしていたMK2やケンタウロスは、その残機のほとんどを徹甲弾の雨霰で粉砕されたらしく、弾雨を逃れた数機が外に出てこようとして集中砲火を受け粉砕された。

もうこれで打ち止めだろう。

あとは、一般の社員達がどれだけ武装をしているかだが、あまり勘定には入れなくてよさそうだ。

これであとは、ビル内を掃除してから月までぶっ飛ばせばお終いである。

 

トドメを刺すべく、ビルに近づこうとした瞬間、シナプス加速器が発動した。

反射的にサンデヴィスタンを発動させて、上空を見上げるとデカい何かが降って来るのが見える。

急いで、落下予測地点にいる仲間達を担いで移動させる。

稼働時間が切れる前に、ビル前には誰も居なくする事が出来た。

まだ私に優先目標のタグが付けられているかもしれないので、射線が被らないところの前に出ておく。

 

稼働限界が来て、自分たちが急に別の場所に立っているのを認識した仲間達が困惑した声を上げるが、途轍もない衝撃音と地響き、突風に数人が後ろにひっくり返った。

落ちて来た物の正体は、3機のミリテク・キメラだった。

それが、上部の砲塔を回してこちらに向けている。

よく見たら、砲塔の形状がキメラと少し異なっており、正確にはキメラでは無いのかもしれないが、チャージビーム砲などはオミットされているのか搭載されていないようだ。

代わりに、120mmくらいの砲口があるので、強力な実弾兵器を搭載しているらしい。

どちらにせよ、3機を一度に相手するのは無理がある。

もうこうなったら、切り札の一つを切るしか無い。

 

『デラマン!あの試作兵器を使うよ!』

 

『承知しました。演算はこちらで肩代わり致します』

 

『頼んだ!』

 

キメラがあちこちに向けて、搭載しているミサイルやら機関砲、120mm砲を破茶滅茶に撃ちまくりはじめた。

搭載されているコアAIがポンコツなのか、今回の件に全く関係ない企業のビルにも火線が伸びており、シティセンター全体に被害が及び始めている。

もちろん、製造元のミリテクのビルも例外ではない。

まだ火災は起きていないようだが、ガラスはあっちこっち割れて、遠巻きに戦闘を見ていた人達に被害が出ているようだ。

市街地に戦車を持って来てしまったバイオテクニカに対して、流石に売り主であろうミリテクやら他の企業達も黙ってはおらず、ゾロゾロと携行兵器を持った部隊達が出て来たがキメラを相手にするには、少し火力不足だろう。

いかなミリテクとは言え、シティセンターに配備する警備部隊に対戦車兵器までは持たせなかったらしい。

まぁ、普通ならそこまで想定はしていないだろう。

無理もない。

 

だが、悠長に後から来た連中の増援を待っている余裕など無い。

インベントリから、試作兵器を取り出す。

虚空から長大な砲身が姿を現し、重量のあるそれを何とか担いでキメラの方に向けた。

とんでもない重さに、両手両足の人工筋繊維が負荷に耐えるために膨張する。

一応伸縮素材でもあるスーツやスラックス、シャツが破けてぶっとくなってしまった両手足が露出してしまった。

さながらサスカッチみたいになってしまったが、サスカッチみたいとか言ったやつはコロス。

 

見た目がリック・ドムのビームバズーカのような試作兵器は、デラマンと私が共同で開発した荷電粒子砲である。

人でもビームを撃てるようにするのはロマンがあるとかで、一緒になって夜な夜な設計したらこんな巨大なサイズになってしまった。

本気になったデラマンのおかげで、幾つかの技術的なブレイクスルーが起きて、中性粒子を作るための加速器もだいぶ小型にすることが出来たし、使用する電力も相当に縮小することが出来たのだが、それでも中性粒子に指向性を持たせたり、射程を伸ばすための砲身長が必要だったために、機構を含めて私の身長の3倍程の長さになってしまった。

キロシのオプティクスと連動して、砲口照準が視界上にUIとして表示される。

最後部に発電用のジェネレーターが載っている関係で、銃身バランスを取るのにかなり後方を肩に担いでいる。

そのせいで、上手に砲口をキメラに指向し続けるのが難しい。

 

「クソッ、長すぎて狙いが定まらない…!」

 

「ネイト!」

 

デイビッドがいつのまにか砲身の中程に立って、肩の上に砲身を乗せた。

 

「バカ!これは試作兵器なんだ!実射したらどうなるか分からないんだよ!危険だからはやく離れて!」

 

「ネイトが作ったんだろう!?なら大丈夫だって!」

 

そんな自信を持った笑顔を向けられても、困っちゃうよ…

首筋に抑制剤を打ち込みながら、デイビッドが笑ってこっちを振り向いた。

どうやら、今日3回目のサンデヴィスタンをここに来るのに切ったらしい。

なんて勿体無い事を…

 

「…仕方ない。デイビッド!少しでも火を吹いたら、急いで逃げるんだよ!」

 

「分かった!」

 

支点が出来たために、狙いが容易になったので、最前に居るキメラ目掛けて引き金を引き絞った。

キュゥゥンという小型の加速器が原子と電子をそれぞれ加速させる予備作動音が生じ、2秒の溜めを作ってから中性粒子ビームが発射された。

本来は可視するのは不可能だろうが、一緒に生成されたプラズマ炎が眩い緑色の閃光を放つ。

亜光速で解き放たれた中性粒子ビームは、発射と同時にキメラの正面装甲に着弾。

一瞬で複合装甲が赤色に融解して、砲口と同口径の穴を開けながら反対側へと突き抜けた。

 

砲身の冷却の為に、内蔵された液体窒素が吹き付けられて水蒸気が発生する。

加速器もジェネレーターも加熱していて、連続使用するにはまだ課題が大きそうだが、僚機が一瞬で破壊された事で2機がこっちを向く。

すかさず、もう一機に向けて引き金を引き絞る。

再び2秒の溜めを作ってから、緑のプラズマ炎を撒き散らして中性粒子ビームがキメラを穿つ。

 

冷却を待たずに2発も撃ってしまったので、自分の頭の後ろにあるジェネレーターから小爆発と共に火が上がった。

このままだと、他の素材に燃焼して連鎖的に爆発しそうなので、サンデヴィスタンを使ってデイビッドを担いで逃げ出すと、そこに向かってキメラが120mm砲をぶっ放したようだ。

まだ緑色の視界のなか、5%の速度でも中々の高速で徹甲榴弾が飛翔していくのが見える。

地面に向けて自由落下しつつも、まだ空中にある試作兵器に直撃するかと思った時に、誰も操作していない筈の砲口からプラズマ炎が放射されるのをしっかりと視認した。

それと入れ違うように、残光を放つ砲口に吸い込まれるように徹甲榴弾が直撃する。

みんなのところに帰って来て、サンデヴィスタンの稼働が終わった時には、最後の一機は片側の脚部を全て融解させられて、砲塔部分も片側が赤熱化していた。

片方の脚部を全て破壊されたので、横倒しになりながらなんとか照準をつけようともがいている。

 

徹甲榴弾が内部で爆発した試作兵器は、空中で爆発して残骸が地面に落ちたところで、更に連鎖的な爆発を生じさせて最後には木っ端微塵になってしまった。

その時に小さいキノコ雲ができたのは、あえて見なかったことにする。

 

しかし、あの最後の射撃はデラマンの仕業に違いない。

デラマンが試作兵器の制御をしていたので、理論上は射手が居なくても射撃自体は可能なのだ。

落下しながら、よく照準を合わせて射撃出来たものである。

さすデラと言ったところか。

 

みんな呆然としているなか、一番最初にデイビッドが正気を取り戻したので、先に抑制剤をデイビッドに打ち込んだ。

せっかくデラマンがお膳立てしてくれたんだ。

これをやらない手はない。

 

「デイビッド、アレ2人で壊したら楽しそうじゃ無い?」

 

「えっ?…あぁ、うん。そうかも」

 

「もう一回だけ、サンデヴィスタン使えるかな?」

 

「いけるぜ!」

 

最後に、2人で刀を持ったままサンデヴィスタンを稼働させて、壊れかけのキメラに斬りかかった。

エラッタのヒート刃と悟の鋭い刄が、複合装甲や増加装甲を物ともせずに切り裂いていく。

装甲に隠れていた弱点の放熱板や動力パイプも破壊して、まるでマグロの解体ショーのようにバラバラにされていった。

サンデヴィスタンが稼働限界になったときには、残すはあとコアだけになっていた。

 

火花を散らす砲塔の上面に立ったデイビッドが、キメラのコアが収められているところのハッチを斬り飛ばした。

危機を感じたのか、デイビッドの背後で斜め半分に断ち切られたミサイルポッドが持ち上がる。

機能不全にしたと思っていたポッドの中に残っている、無事な一発のマイクロミサイルが、デイビッドの背中に向けて照準されようとした時に、どこかの上方から飛んできたプロジェクタイルランチャーの弾が突き刺さって、最後の武装も完全に破壊された。

飛んできた方向を見ると、アラサカタワーの天辺に見たことのある人影がコチラを見ていた。

余計な事をするやつだ。

そんな事しなくても、私がぶった斬ってやったものを…

 

背後で生じた爆発に意も介さず、露出したキメラのコアを目掛けてデイビッドがエラッタを突き入れた。

コア内部の回路を軒並み焼き切られて、遂にキメラは火花を散らしながら沈黙した。

 

ポカーンと、キメラが一瞬でバラバラに破壊されたのを見た仲間たちが口を開けて、呆然としている中で、レベッカとルーシーが最初に再起動してコチラに駆け寄って来た。

レベッカが、キメラに蹴りを入れてからぴょんぴょんと飛び跳ねる。

かわいい。

 

「うぉぉぉ!デイビッドぉ!!すっげぇ、すっげぇよぉう!!」

「デイビッド!!怪我はしてないの!?」

 

串刺しにしたコアをエラッタごと引き抜いて、尻餅をついているデイビッドに2人が抱き付いた。

妬けるねぇ。

ルーシーは心配そうにしているが、レベッカは自分の事のようにニコニコして喜んでいるのが対照的で興味深い。

 

遅れて、全員がデイビッドを囲んでやんややんやと騒ぎ出した。

揉みくちゃにされながらも、デイビッドは嬉しそうである。

 

さて、これでバイオテクニカ側の戦力はほぼ全滅だろう。

最後の頼みの綱だったのか、キメラ部隊がやられてしまったのを見て、白旗を持ってビルから出てくる社員まで居る始末。

残敵掃討と捕虜確保の為に、アラサカのニンジャ部隊やサラリーマン戦士達と協力してビル内部に侵攻していく。

やはり、中には銃を持って抵抗しようとしたスーツ姿の社員も居たが、そういう連中は一瞬で蜂の巣にされてぶち殺された為、ほとんどの社員は抵抗をせずに投降した。

我々はコイツらなど要らないので、捕虜をどう活用するかはアラサカに全て任せてある。

ボロボロになっていたけど、だいぶ元気そうなタナカ氏にその旨を伝えると、とてもいい笑顔をしていたので上手い事やってくれるだろう。

その先は知らん。

 

アラサカの部隊には、下から順にクリアリングしてもらって、我々はエレベーターを使って最上階に向かう。

そこで、ここのトップを捕まえようと思っている。

サーシャが特殊金属製の鉤爪を伸ばして、扉が開くのを今か今かと待っているので、勝手に飛び出さないように後ろから抱きしめて持ち上げておく。

まるで両脇を掴まれた猫のように、プラプラと足が揺れていて哀愁を誘う。

 

エレベーターの扉が開くと、弾丸が飛び込んでくるので背中を向けてサーシャを守る。

拳銃弾のようで、外皮系のクロームを貫けずに表皮で弾けて転がっていく。

弾倉丸々4つ分の弾を背中で受け切ると、腕の中からもがいて脱出したサーシャが部屋に突貫して行った。

他のメンバーも怒り心頭と言った様子で、部屋の中に突撃していく。

最上階には、護衛と思わしきスーツ姿のマッチョが4人と、ケバケバしい化粧をして毛皮を纏った女が1人いた。

そばには、鎖に繋がれて唸り声をあげているピューマと思しき大型のネコ科動物もいた。

 

拳銃を撃ち切った護衛達は、レベッカのカーネイジGUTSやメインのプロジェクタイルランチャー、ルーシーのモノワイヤーやらでバラバラの惨殺死体に一瞬で早変わりしてしまって、1人残った女はサーシャが馬乗りになってボコボコに殴り続けている。

そのままだと殺しかねないので、ジョン・マラコック卿を渡してそれで殴らせた。

みんなにもジョン・マラコック卿を渡したので、全員でタコ殴りにされていて少し可哀想だった。

 

結局、ディルドでボコボコにしたこの女は誰なんだという話になり、ピューマを連れているところから見るに、バイオテクニカの西海岸支社長であるティナ・カルソではないかという推測が立った。

ディルドとはいえ、10人近くからそれで殴られ続けたせいで、顔面が腫れ上がって誰かわからなくなってしまったのだ。

ロープで簀巻きにしたティナ・カルソをニンジャ部隊に引き渡して、支社長室と支部長室にあるPCを確保して、ついでにメインフレームも頂戴した。

 

その後、アラサカのタナカ氏立ち合いの元、ティナ・カルソに敗戦処理をさせてこの一件は解決へと向かったのである。

バイオテクニカは、市街地であるシティセンターでキメラまで持ち出して他の企業にまで被害を出した事で、あっちこっちの大企業から損害賠償請求が山のように来てしまった。

株価は下落とちょい戻しを繰り返して下降を続けており、全ての賠償要求に応えるに必死なようだ。

ナイトシティにあるバイオテクニカの資産は、我々デラマン診療所とアラサカで割合分割する事になり、バイオテクニカ・フラッツのプロテイン・ファームとトリティクム・ウルガリス・メガスアウィスのバイオファームは我々の物となった。

アラサカはバイオテクニカから、生体クローン技術や医薬品関連の特許や技術を貰い、薬品の製造工場も手に入れていた。

その他の細々としたものは、今回の件で被害が出た企業達で分け合う形になったのである。

 

サーシャに関しては、ナイトシティからバイオテクニカが撤退する事にあたり、指名手配が解除されて堂々と表を歩けるようになった。

また、セキュリシンの副作用問題で賠償を要求して、それなりの賠償金を獲得した事で胸を張って慰霊堂の母親の元に報告することが出来た。

他のみんなも、ある意味で伝説的なサイバーパンクチームとして、大手を振るってアフター・ライフに出入り出来るようになっており、依頼もあっちこっちから来ているので、選べる立場になってメインもジャッキーもニッコリしていた。

今回の件で、レベッカとルーシーもデイビッドと正式に付き合うようになったので、私としてもニヤニヤが止まらない。

 

さて、この街は記憶を取り戻した時と比べて、だいぶ変わってしまった。

まぁ、大半は私のせいなんだけど、このナイトシティに関しては病院の質が高く、誰でもきちんとした治療を安心して受けることが出来るので、余所の街からわざわざ治療を受けに来たりする人も出るようになったらしい。

また、ナイトシティは天然食材が多く出回り、外に輸出出来るようになったので、食の街としても栄えるようになった。

これにはアラサカもかなり関わっており、昇進したタナカ氏やヨリノブのおっさんが前のめりで推進しまくったせいだ。

ウチとしては儲かるので良いが、野菜ビルばっかり大きくなっていくので、いつの間にか会社としての上下関係が逆転しそうで頭が痛い。

 

そんなわけで、ナイトシティを破茶滅茶パニックにした張本人である私は、関係各所に感謝の御礼参りをしまくってから日本の実家に呼び出されたので、ジュディとグロリアさんを連れて機上の人になったのである。

下手したらマッマにぶちのめされるので、帰りたくないな…

 




皆様、ACT1の最後までお付き合い頂きまして、大変ありがとうございました。
ある程度プロットは決まっていたとはいえ、途中で何度も脱線したことでエタらないか心配しておりましたが、応援してくださっている皆様のおかげでここまでくることが出来ました。
本当にありがとうございますm(_ _)m
ノミの心臓としましては、まさか初投稿の小説がここまでの方々に読んでもらえることにただただびっくりしております。
UAも10万を越えてしまって、後ろにひっくり返りそうです。()

よく考えたら、ここまで原作を改変してしまったので、もうゲームのナイトシティは存在しません。
どつやってVちゃんを動かせば良いのやら……
とにかく、ACT2は構成を考え直すので、再開は1ヶ月後くらいを考えています。
ご迷惑をお掛け致しますが、よろしくお願いします。

とりあえず、数話後日談か間話を入れたいと思いますので、そこからになります。

本当にありがとうございました。
持麻呂 敬具

Vは

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