【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !!   作:持麻呂

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誤字脱字訂正、いつもありがとうございますm(_ _)m
大変助かっております!

Vちゃん視点は今回でとりあえず一旦終わりです。
次話からはネイトに戻ります。
ご感想に多くあった答え合わせは、次になると思います…

それと、最後にアンケートを追加してありますので、良かったらご参加ください!


第三十九話

夢を見ている。

なんとなくそれが感覚的に分かった。

 

サングラスにロン毛の男が、ステージに無理矢理上がり込んで魂に響く歌を熱唱している。

まるで自分がその男になったみたいだ。

 

不満、悔恨、憤怒、そして一握りの愛情。

 

歌っている男の感情が、何故だか私に流れ込んでくる。

銀色に鈍く光る左腕でマイクを握り締めて、社会に蔓延る不条理を叫んでいた。

何故だろうか。

アラサカで散々酷い目に遭ってきたからか、歌詞の内容がスッと心に入ってくる気がする。

きっと、この歌っている男はコーポに対して言っているのだろうから、コーポ側の私が同感したところで不本意であるかもしれないが。

 

歌い終わった男は、ギャラリーに別れを告げた。

 

場面が変わり、男はヘリコプターに乗り込んでいる。

外は大雨が降っていて、どこに向かっているか見当も付かない。

 

狭いキャビンには、ジャッキーみたいな大柄な男と細身の女が居て、どちらも銃で武装していた。

一体彼等は何をやらかすつもりなのだろう。

目的地が近付いて来たようで、ヘリの傾きが緩やかになって来た。

加速が必要なくなった証拠だ。

 

ガラッと開いたらスライドドアから、目下に見えるビルの屋上と思しき場所目掛けて、大柄な男が据付の重機関銃を連射し始めた。

何故だか、猛烈に嫌な予感がしてくる。

 

応射で大柄な男が負傷したので、代わりに銀腕のこの男が機関銃を撃ち始める。

粗方屋上を掃射して、屋上に降り立つと可愛らしいリュックサックを背負ってビルの中に入っていった。

 

うん、どう見てもアラサカだった。

あっちこっちにARASAKAの文字が見える。

しかし、私が知っている限りでは、アラサカのビルが襲撃されたのは50年も前の話だったはず。

私は一体、何を見せられているのだろうか。

 

この男の戦闘能力はそれなりに高いようで、次々に現れるアラサカの社員たちを返り討ちにしては、どんどん先に進んでいって遂にエレベーターの前にまでやって来た。

背負って来たリュックサックを下ろして、中身を確認する。

これはたまげた。

どう見ても、どう考えても小型の熱核兵器にしか見えない。

 

まさかコイツ…

 

タイマーをセットして、エレベーターに乗せた後はケーブルを切断してエレベーターを下層に落っことした。

 

その後はもう滅茶苦茶だ。

アラサカのネットワークに変なウィルスを流し込んで、アダム・スマッシャーに追い掛けられた後はヘリでの脱出に失敗。

場面が切り替わると、窓の向こうには巨大なキノコ雲が見えた。

そこで夢が終わる。

 

 

 

 

ーーーおい、起きろ。

 

ーーーいつまで寝てるつもりだ?

 

ーーー起きろって言ってんだろ、テメェ、このボケカスが!!

 

 

ガツンと、暗闇に星が散らばる。

鼻の奥にツンとした痛みと、喉に鉄錆の味が広がった。

思わず呻き声を漏らして、鼻を押さえる。

ヌルッとした感触から、鼻血が出たようだ。

 

「おっと、やり過ぎたか?ハハッ、コーポ相手にやり過ぎもクソもねぇ。とっとと起きろボケが!」

 

頭に響くような、忌々しい声が横から吐き掛けられて、思いっきり脇腹を蹴られた感覚がある。

身構えてなかったので、息が詰まって苦しい。

 

薄っすらと眼を開ける。

涙で滲む部屋は暗く、知らない天井だ。

壁には、ピンク色のネオンが光っており、リパー用のリクライニングシートもあるので、どうやらどこかのリパードクのところに居るらしい。

側には、苛立たしげな顔をした、夢で見た髭面ロン毛のサングラス男が立っていて、腕を組んで壁に寄りかかっている。

 

「……あ、あんただれ…」

 

「俺の名前なんかどうだって良い。こりゃどうなってんだ!なんで俺がお前の頭の中に同居してんだよ!」

 

「……ちょっと、なにいって…」

 

頭が割れるように痛い。

最後に、最後に見たのは先輩の顔?青い空?

私は何をしていたんだっけ…

 

「クソが!!誰も俺の姿が見えないらしいし、視界だってお前の見ている所しかわかんねぇ。なんでったって、こんな訳の分からん女の頭の中で目を覚さなきゃいけなかったんだ?」

 

「ちょっと…黙ってて……」

 

「俺はこっから出たいだけなんだ。分かるか?」

 

また頭がガンガンして来て、目の前が真っ暗になる。

 

「オイ!ふざけんな!!…あぁクソ!タバコが吸いたくてたまらねぇ!」

 

むり……

 

 

 

 

「やぁヴィク。後輩ちゃんの様子はどうかな?」

 

「おう、今日も来たのか。そうだな…ここの数値を見る限りだと、短い時間だが一度覚醒したようだな」

 

「おや、やっとお目覚めかな?しかし、後輩ちゃんがヴァレリーだったとは、しかも彼のコンストラクトが入ったモノだしなぁ…。これは一体なんの因果か」

 

「ネイト、お前さんにとっては今回は不本意だろうな」

 

「そうだね。まさか、こんな事で試作品を使わざるを得なくなるなんてね……まだあと一年くらいは猶予があると思っていたのに」

 

「あの場にアレがあっただけでも、良しとするしかないんじゃないのか?この後、この娘に何が起きるか分からんが、あのまま死ぬよりはずっとマシだろう。このまま置き換わると思うか?」

 

「いや、試作品にはそこまでの機能はないよ。元々脳死状態の被験体に使用するはずだったからね。機能を修復するだけのナノマシンしか入ってない。きっと、今は2人とも混乱しているはずさ」

 

「ソイツは良かったのか悪かったのか…恨まれるかもしれんぞ」

 

「それは承知の上さ。どちらにせよ、私は約束したのに間に合わなかった。パンチくらいは甘んじて受ける気ではいるよ。それ以上は、私にも背負うものがあるから無理だろうけど」

 

「…難儀だな。とりあえず、バイタルはこちらでも監視しているから、また覚醒したら教える」

 

「それで良いよ。ありがとう、ヴィク」

 

「いいってことよ。お前さんの方も気をつけろよ」

 

 

 

意識が、ゆっくりと暗闇から浮上する感覚がある。

なにか、すごい夢を見ていたような気もする。

ゆっくり目を開けると、薄暗い室内にピンク色のネオンが光っている。

 

壁には、前に私を蹴ったサングラスにロン毛の男が腕を組んで寄りかかっていて、その反対側のテレビがある方には、誰かが回転椅子に座ってボクシングの中継を観ながら酒を飲んでいた。

テレビの脇にはどうやらモニターがあるようで、心電図の様な波形が幾つも並んで表示されているのが見えた。

 

その波形を見たのか、椅子に座っていた男が立ち上がってこちらに歩いてくる。

ジャッキーのように鍛えられた太い腕に短い髪。そしてサングラス…

この男も私を蹴った男の仲間なのだろうか。

 

「どうやら起きたみたいだな。先ずは少しでも水を飲め。ゆっくりでいい」

 

水の入った吸い飲みを口元に運んでくれたので、言われた通りに水を飲む。

思わず咳き込んでしまったが、口の中がパサパサだったので非常に有り難く感じる。

謎の男は、時折溢れてしまった水を拭ってくれながら、吸い飲みに入った水を最後まで飲ませてくれた。

咳も落ち着き、飲んだ水分が全身に行き渡るのを感じながら、息が整ったのを待っていた男が話し始める。

 

「混乱しているのも無理は無いな。はじめに言っておくが、俺はネイトからの依頼でお前さんの面倒をみている。ヴィクター・ヴェクターだ」

 

「…せんぱい、の、しりあい」

 

まだ掠れたような声しか出なかった。

 

「そうだ。ジャッキーの友人でもある。アイツからも呉々も頼むと言われているからな。そこに関しては安心していい。さて、まずはお前さんがどうしてここに居るか、という事を説明する前にどこまで覚えている?」

 

どこまで?

どこまでってどう言うことだろうか。

そもそも、なんでこんなところに居るんだっけ?

しばらく考えていて、ジャッキーがなにかこちらに叫んでいた光景を思い出した。

そうだ。確か私は会社の命令で、荷物を運んでいたんだ。

 

「……じゃっきーと、でいびっどは、ぶじ?」

 

「あぁ、2人とも無事だよ。あの2人はかなりタフだからな。……お前さん以外は大した怪我をしていない。さて、多少思い出しただろうが、お前さんは心臓をぶち抜かれて半分死んでたわけだ。ネイトが上手い事やったから、まだお前さんは生きてる訳だな」

 

「あれから、どれだけたった、の?」

 

「そうだな。ここに運び込まれて、ざっとひと月と言ったところだな。……ああ、ネイトからの伝言で、部屋や飼い猫の事は気にしなくて良いとさ。もう少ししたら、クロームと神経接続のテストをする予定だが、今はもう少し休んでおけ。まだ呂律も回ってない様だからな」

 

「……ありがとう」

 

「気にするな」

 

ニヤリと笑ったヴィクターは、壁に寄りかかっている男を無視してボクシング観戦に戻って行った。

このロン毛も先輩の関係者なんだろうか。

まだとても気怠く、また一眠りしようと思って目を瞑ろうとしたら、ロン毛が声を掛けてきた。

 

「お前、心臓をぶち抜かれたんだってな。今の医術だと、そんなんでも生き残れんだな」

 

そんなの知らないわよ…

普通は死んでるでしょ。

 

「じゃあなんだ。お前の先輩とやらは、魔術師だって言うのか?」

 

先輩なら、そう言われても不思議では無い。

でも、予備心臓と言うインプラントがあるのは知っている。

アレなら、生の心臓が無くなってもしばらくは生存出来るだろう。

 

「へぇ、予備心臓ね。準備良く、お前はそれを持ってたわけだな。備えよ常にってか?」

 

まさか、とても高価で希少なインプラントだから、そもそもモノを手に入れるのが大変よ。

私だって、高給取りだけど持ってないわ。

 

「……そしたら、なんでお前生きてるんだよ」

 

さぁ?それがわかれば、私だって苦労しないわ。

…と言うか、なんでアンタ私の心の中が分かるのよ。

さっきから口を開いていないのに、お互いに会話が成立しているのが理解出来ない。

 

「そんな事、俺が知りてえ…と言いたいところだが、教えてやるよ。俺がお前の頭の中に同居しているからだ」

 

私の…頭の中に同居してる??

アンタ、私のイマジナリーフレンドってわけ?

ロン毛が両手を開いて肩をすくめる。

いかにも、一昔前のアメリカ人って感じだ。

 

「それならどんだけ良かったやら。残念ながら、俺がお前の頭の中にもう一つの人格として、間違いなく存在しているのは確かだな。概ね、お前の首に刺さっているチップのせいだろうが」

 

私のチップソケットに刺さっているチップ…?

なんだそれは…

身体が思う様に動かせないので、確認したくてもしようがないのがもどかしい。

 

「一先ずは休戦と行こうか。今の俺とお前の現状について、少し分かったことも有るしな」

 

そう前置きをして、ロン毛は寄りかかっていた壁から離れて、私の横たわっているベッドの脇にあった椅子に座った。

 

「まず、俺とお前は痛覚を共有しているって事だ。つまり、お前が痛がれば俺も痛みを感じる。前にお前を殴って蹴った時は、後から痛くなってきたってわけだ。冗談じゃねぇ」

 

いや、それはアンタの所為でしょ。

そしたら、私が死んだらアンタも道連れね。

 

「茶化すんじゃねぇよ。ついでに言うと、答えはYESだろうな。で、その次は視覚や聴覚、その他の五感もある程度共有してるらしい。これに関しては、俺の任意で遮断出来るみたいだけどな。さっき試した。お前が寝てても、俺が起きている時は聞こえているのも確認済みだ」

 

最悪ね。

私の私生活が、アンタみたいなキモロン毛のオッサンに筒抜けだなんて。

トイレまで見られちゃったりするわけでしょ?

 

「おいおい、キモロン毛とは酷い言われようだな。俺だって好みが有んだ。お前のシャワーだの便所だの覗いたって仕方がねぇ。そもそも、この体じゃあおっ立つモノもありゃしねぇ」

 

そう言って、ポンッと自分の股間をひと叩きして立ち上がる。

やれやれと頭を振って、ポケットからタバコを取り出して火をつけた。

ゆっくりと吸い込んで、紫煙を吐き出す。

 

「その3は、お前の記憶の中にある味やらを追体験出来るって事だな。こんな風に、お前が過去に吸ったことのあるタバコなんかも、自由自在に再現出来るわけだ。これに関しては最高だな」

 

手の中の煙草入れを振る度に、銘柄が変わって行く。

めっちゃ便利じゃない。

次々に銘柄を変えて行っては、昔にもらった事のあるニカラグア産の葉巻で手を止めて、口に咥えてライターで火をつけて吸い始めた。

ズルい!私だってあの味をまた楽しみたいのに。

 

「ソイツは残念だったな。こればっかりは、今の身体になって良かったと思えるぜ。お前さんの体験に乾杯ってか?」

 

これ見よがしにスパスパ吸って、根元まで吸い切らない間に新しいのを用意して、またスパスパこちらに見せつける様にして吸いやがる。

なんてクソロン毛なんだ。信じられない。

 

ある程度で満足したのか、ポイっと吸い殻を放り捨ててこちらに向き直る。

ゆっくりと鼻から紫煙を吐き出して、顎髭を摩った。

 

「さてと、いいか?これから俺とお前は一心同体って訳だが、俺はさっさとお前の身体から独立してぇ。お前だって何時迄も俺と同居したい訳じゃ無いだろう?そこでだ、ここは一つお互いに協力し合おう。とは言っても、実際に動くのはお前にはなるが、俺は俺でなるべく知恵やアイディアを出す。どうだ?」

 

それ、私の負担が大き過ぎない?

流石に、メリットよりもデメリットのほうが上回る。

でも、こいつとは一刻も早く分離したいのは確かだ。

そもそも、コイツが入ってきた切っ掛けであろうチップを引っこ抜いたらどうなんだろうか。

その方が早い気がするけど。

 

「おっと、ソイツはやめておいた方が良さそうだぞ。お前が寝ていた時に来ていた奴らの会話を聞いていたが、俺が入っていたチップがお前の神経系と癒着しているらしくてな。それも脳幹やら小脳にも枝を伸ばして食い込んでる様だから、無理に抜いたら死ぬらしい」

 

腕を組みながらそう言ってくる。

どうやら、チップを抜いたら死ぬらしい。

これは参った。

流石に私だって、このロン毛とおさらばしたいけど、死んでまでって言うのはちょっと躊躇う。

 

「ついでに、それをされると今の俺も御陀仏みたいだからな。流石の俺も、2度も死ぬのはゴメン被りたいぜ。それと、何度もロン毛ロン毛言うのはやめろ!良い加減に聞き飽きた!」

 

だって、アンタの名前なんか知らないし、特徴がグラサンでロン毛で髭で片腕だけクロームってだけじゃない。

外見の個性がそれしか無いのよ。個性が。

 

贅沢なことを言うロン毛に、そう答えてやった。

確かに、グラサンを外したらイケてる顔かもしれないけど、どこからか目の前のコイツからはクズの香りがプンプン漂ってくる。

先輩から聞いた絶対に付き合っては損をする、女を泣かすクズ男の特徴に当てはまる点も多い。

初見でいきなり私のことを殴って蹴ってくる様な男だ。

普通、こんな美女に対してそんな暴力を振るうか?

いや、普通の男ならそんなことはしない筈だ。

つまり、コイツは平気で女を泣かして手まであげるクズに違いないのだ。

 

「……おい、ロン毛からクズに格下げになってんじゃねぇか!!いいか、俺の名前をよく聞けよ。コーポガール。俺はジョニー・シルヴァーハンドだ。今がいつか知らねぇが、前にアラサカをファックしてやったから教科書だかに乗ってんじゃねぇのか?伝説的なロッカーボーイとしてよ」

 

アラサカをファックした…?

……確かにアカデミーでアラサカは過去2回吹っ飛ばされているって習った事はある。

この内一回は、ジョニー・シルヴァーハンドと言うテロリストによって、核分裂爆弾で諸共吹き飛ばされたとか。

でも、その時に一緒に死んでるんじゃなかったかしら。

うーん、アラサカ史なんて社会で使わないから、ちゃんと授業を聞いていなかったのよねぇ…

もう少し真面目に聞いておくべきだったかしら。

 

「やっぱり、何処かで聞いたことあるんじゃねぇか。いいか、俺のことをロン毛や、キモロン毛なんて呼ぶんじゃねぇぞ」

 

じゃあ、アンタも私のことをお前お前呼ばわりしないでよ。

私はヴァレリーよ。Vとでも呼んでちょうだい。

 

「ああ、分かったよ。V、分離できるまでの暫くはよろしくやろうじゃねぇか。頼むぜ、相棒」

 

誰が相棒よ。誰が。

 

もう話すことも無いのか、私の頭の中に引っ込む事にしたのか、グラサン髭面キモロン毛こと改名ジョニーが姿を消した。

私も身体の自由がきかないし、目だけ開けてても意味がない。

疲労感も強いので、諦めて寝る事にした。

はぁ、それにしてもつくづく私には男運が無いみたいだ。

性格が良くて顔も良い男は、大体誰かの唾付きだし寄ってくる男は大抵クズばっかり…

はぁ…




良かったら、皆さんのここすきがあったら是非教えて下さいぃ…_:(´ཀ`」 ∠):

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