【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !!   作:持麻呂

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誤字脱字訂正、いつもありがとうございます!!m(_ _)m

おかげさまで、本編が50話を迎えました!皆様の応援のおかげです。ありがとうございます!!

ということで、後書きに某あの人の末路を掲載しますが、グロテスクな表現が有りますので、苦手な方は飛ばして下さい。
読んでも読まなくても、本編に支障はありません。


第五十話

自分とルーツの一つが同じであるということを知ったルーシーは、最初の態度は何だったのだろうかというくらいに、それはもうフサリアを構い倒していたのでだいぶ3人との仲は進展したと思う。

私としては嬉しい限りで、たまにならフサリアを預かってもくれるとも言ってくれたので、早速次の日に預かってもらった。

後輩ちゃんが遂にちゃんと覚醒したのだ。

 

連絡を貰ってからすぐ様、フサリアを留守番していたルーシーに託してヴィクターのリパーへと向かった。

一月と少し寝たきりだったので、まだ生身の比率の方が大きい後輩ちゃんは、クローム部分と生身の部分で感覚の対比が起きてしまい、上手く体が動かせなかった。

ちょうどリパーに着いた時には、ヴィクターが粗方現状を説明した後だったようで、後輩ちゃんもまた睡眠に戻ってしまったところらしい。

ただ、ヴィクター曰く2、3時間で起きるだろうということだったので、ベッドの脇で待たせてもらうことにした。

最初はジョニーも後輩ちゃんの頭の中に引っ込んでいたようだが、私がベッドの脇に座った時から壁際に現れては葉巻をふかし始めた。

まぁ、大凡私を除く全員が見えていない事を良いことに、盗み聴きをしようと言う魂胆なのだろうが私にはするっとまるっとお見通しだ。

視線で私がジョニーに気付いているのを気付かれないようにする為に、ついでに煽りの意味を込めてジョニーと同じサングラスを掛けてやる。

ただし、残念なことにジョニー視界は後輩ちゃんのものに依存するので、彼女が起きていない状態では何の意味も無いと思い出したのは、暫く後だったのは秘密だ。

 

「すまないな、ネイト。こんなに早く来ると知っていたなら、もう少し起きていてもらったんだが」

 

「いや、まだ脳が再稼働したばっかりなんだから、怪我人を無理させる方が良く無い。どうせ数時間で起きるなら、そのまま待っているさ」

 

「そうか」

 

キャスター付きのリクライニングチェアをベッドの脇まで引っ張ってきて、ヴィクターがもう片方の手に持ってきたグラスを受け取る。

器用に同時に持ってきていたセンツォンを注いでもらい、軽く寝ている後輩ちゃんの隣で乾杯をする。

このセンツォンの風味が堪らない。

私が前世の記憶を覚醒した原因を反省して、アルコールは即時分解されてしまうのでもう酔うことは無いが、それでも香りと味は愉しめる。

 

「美味いね」

 

「あぁ、今度ジャッキーも呼んで3人で一杯やろう。あのタフな色男の事だから、コイツによく合うタコスでも作って、喜んで駆け付けるだろうよ」

 

「そいつは良いねぇ。楽しみだ。……ヴィク、暫くの間後輩ちゃんを診てくれていて助かったよ。ありがとう」

 

ハハッと笑い、手酌で自分のグラスにセンツォンを注いで、ヴィクターはそれを一気に飲み干した。

グイッと手の甲で乱暴に口を拭いながら、止せよと言ってくる。

 

「お前さんと俺の仲じゃないか。それ以上の感謝は不要だぜ。困った時はお互い様だしな」

 

「相変わらずの良い男具合だねぇ全く。降参、有り難くお気遣いを頂きますよ」

 

そうやって、暫く2人で酒宴を開いていると話し声で起きてしまったのか、うぅっと呻き声を漏らして後輩ちゃんが薄っすらと目を開いた。

驚かせないようにサングラスを外してから、ゆっくりと上から顔を覗き込む。

 

「やぁ眠り姫、調子はどうかな?」

 

「…せ、先輩…」

 

「あぁ、無理に話そうとしなくて良いよ。……危機に間に合わなくてすまなかったね」

 

TPRを使わなければ助けられなかったと言う事実は、案外私の心に重い何かを残していたのだろう。

謝罪を口にするだけでも、少しだけズシッとしたものが晴れた気がする。

身体の90%が機械だとしても、まだ私は人間だったのかと斜め方向に客観視している自分も居た。

 

「た、助けて…くれて、ありが…うござい…ます」

 

かなりしんどそうな様子で、なんども言葉につっかえながら私の目をまっすぐと見つめてそう言った。

思わず、後輩ちゃんの頭を撫でる。

 

『はっ、随分な御涙頂戴じゃねぇか。この白髪頭の女が、Vお前の先輩だってか?』

 

私達とは反対側のベッド脇に立っていたジョニーが、後輩ちゃんの顔に向かって葉巻の煙を吐きかける。

後輩ちゃんが顔を顰めて、視線をジョニーに向けた。

 

『あぁん?お前の先輩だろうが、俺にとってみりゃ今日初めて見る赤の他人だぜ。知ったこっちゃねぇな。それに、俺の姿が見えるのはお前だけじゃねぇか、V』

 

残念、私には筒抜けだ。

しかし、後輩ちゃんはジョニーにもV呼びさせているようだ。

ただ、今世の私からしてみれば永遠に後輩かヴァレリーであるらしい。

何だそのこだわり…

 

『何言ってんだお前?大体、どうやってお前の頭の中に居る俺の姿を見るってんだ?2075年には、なんかそう言うヤベえ技術でも発明されてんのか?』

 

まぁ、それはそうなんだけど、何故か私はジョニーの姿が見えているんだよね。

不思議なこともあるもんだ。

ジョニーの声は聞こえているのだが、何故か会話しているはずの後輩ちゃんの脳内音声は聞こえてこないのも不思議である。

 

「あぁ、そうだ。後輩ちゃんに言っておかないといけない事がある」

 

ジョニーに向いていた視線が、私の方に向いた。

 

「な…んです、か?」

 

「まず、君をこんな目に合わせた元凶は適切に処分された。アラサカに特大級のバカが2人ほど居たようでね。1人は君の直属の上司だった男だよ」

 

今頃はとっくに水の底だろう。

脳裏には、丸坊主にされた上、足をコンクリで固められて海の底に沈んでいたミリテクおばさんことメレディス・スタウトの姿が浮かんでいた。

ミリテクだろうがアラサカだろうが、大体社員を処分する時はビルからの紐無しバンジーか海中遊泳か、はたまたキリンさん(物理)になるかが相場と決まっている。

そして、その大抵は自責の念からくる自殺とされて処理される。

とても簡単でスマートな話だ。

 

「あ、んし…です…ね」

 

「そうだね。そこに関しては安心しても良い。ただし、その先が良く無いんだ。君はアラサカからは殉職扱いになっている。もちろん全ての資産は凍結されていて、今の身体に入っているクロームに関してもこちらで全部新しい物に入れ替えてある」

 

「…ね、ねこ…」

 

「大丈夫、そちらも手を回してあって今はデイビッドの家で預かってもらっているよ。君の家自体も私が中身ごと買い取って保存してあるから、気にしなくて良い。身体を治す事だけを考えてね」

 

やはり、猫のことは心配だったらしい。

自分の身体や財産のことよりも、猫の心配を真っ先にするとは…

 

『ほぉ〜、コーポにしては随分と親切じゃねぇか。アラサカにも詳しそうだし、コイツアラサカとどう言った関係なんだ?先輩って呼んでるくらいだしよ、元はアラサカの社員って事くらいは想像が着くが』

 

その後、後輩ちゃんが説明しているのだろう。

葉巻を吸いながら黙って聞いているようだ。

 

『へえ、アラサカの大株主の娘で、本人も自前のコーポを持ってるたぁ、大したもんだな。まだお前と同じくらいの20代なんだろ?ケッ、色々と持ってるヤツは気に食わねぇな。…あ?俺だって音楽の才能があるだ?ふざけんじゃねぇよ。俺は散々努力して来たし経験も積んでんだ。それこそ死にそうになる程な、分かるかV。生まれも育ちも恵まれていて、最初っから全てを持っているような人種とは違ぇんだよ』

 

随分な言われようだ。

まぁ、ロッカーボーイなんて不満溜め込んでないと傑作は作れないか。

そもそも、世間に不満を抱いていなかったらロッカーなんかにならないか。

 

ヴィクターの方を見ると、後輩ちゃんにTPRが入っているのを知っているからか、中に入っているコンストラクトと会話していると当たりをつけて、黙って酒を飲みながら見守っている。

 

『まぁ、そもそもアラサカに就職している時点で、下級階層出身じゃねぇだろうが。V、お前もそう言う意味では、俺が言っている事を本当には分かってねぇ……待て、なんでコイツらさっきから黙ってるんだ?』

 

面倒だから、そろそろネタバラシと行こうか。

 

「それは、君の声が私には筒抜けだからさ。ヴィクターの場合は、後輩ちゃんにTPRが入っていることを知っているし、それには誰かのコンストラクトが入っているのも知っている。だから、君達が会話をしているのだと察して黙っていたんだよ」

 

『おいおい、マジかよ!んじゃなんだ、ずっと見えてた癖にダンマリ決め込んでやがったのかクソアマが!』

 

「落ち着き給えよロッカーボーイ。キャンキャン吠えるな、弱く見えるぞ」

 

『んだと!?』

 

「比喩じゃ伝わらなかったのかな?黙れと言っているんだ」

 

ジョニーがいきり立って、私に掴み掛かろうとするが残念。

直接TPRで繋がっている後輩ちゃんとは違い、私はただ声を聞いて姿が見えるだけなので、その拳は通り過ぎてしまう。

なんだか発狂しているが、無視して後輩ちゃんに視線を向けた。

後輩ちゃんも困惑している。

 

「さて、君の頭の中にあのロッカーボーイが入ってしまったのは、私の責任でもあるんだ。本当に申し訳ない」

 

「それ、て…」

 

「まずは君にプラグインしてしまったTPRと呼ばれるシロモノは、私達が開発したものでね。正式な名前はrelicって言うんだ」

 

『クソ!俺をVの頭の中に閉じ込めやがった元凶は、テメェかよ!!…あぁクソが!!どうやったら俺が自由になれるのか教えろ!』

 

すぐにこれだ。

面倒くさくて仕方がない。

ジョニーを無視して続ける。

 

「そのrelicの試験用に作られた試作品第一号の頭文字をとってTPR。元々は脳死状態の患者に使用して経過観察をするはずだったんだけど、どう言うわけか情報が漏れていてね。ジェンキンス達が社内政争の道具として利用した結果、本来の輸送計画を捻じ曲げて後輩ちゃん達が運ぶことになった」

 

「………じぇんきん…は?」

 

「言っただろう?適切に処分されたのさ。顔には出さなかったが、サブロウの爺様もだいぶ怒っていたよ。どう思っているかは分からないけど、後輩ちゃんにも申し訳なかったってさ」

 

『あのクソジジイがそんな事思うわけねぇだろうよ。俺をこんな姿にしやがったのも、オルトを殺しやがったのも全部アラサカがやったんだぜ。畜生ふざけんな!!』

 

「…続けるよ。TPRの性質として、内部に自己増殖型の医療ナノマシンが封入されていて、対象者に対して物理的な肉体の損傷を修復すると言う効果がある。これは、物理的な原因で脳死状態になっている患者の脳の欠損を治して、コンストラクトが対象者の身体を動かせるようにするためだったんだ。今回は、後輩ちゃん、君の胸に空いた風穴を塞ぐには、身近にそれしか方法が無かった」

 

『つまり、そのせいで俺がVの頭ん中に囚われるようになったってわけか。クソッ』

 

理由がわかったからか、幾分か大人しくなったジョニーがドカッとベッド脇に腰掛ける。

手がジョニーの尻の下に敷かれてしまったのか、後輩ちゃんが嫌そうに顔を顰めた。

 

「私も君がTPRのコンストラクトに封入されているなんて思ってもいなかったさ。なんせ、試作品故に不具合が出るのは見越されているし、ある程度の試験が済んだ後は、機密の観点からコンストラクトは処分されるだろう事は予想が付く。極悪人か死刑囚が使われるだろうと思ってはいたのだけどね。……まぁ、君はアラサカ、ひいてはナイトシティにおいての大罪人ではあるかな?サブロウの爺様からしてみれば、一種の意趣返し、復讐のつもりがあったのかもしれないけど」

 

リパーの中は沈黙が支配する。

誰もすぐに言葉が出てこなかったので、ヴィクターがつけっぱなしにしていたテレビの音がやたら大きく聞こえてくる気がした。

ジョニーが、何度か口を開こうとして開閉させるが、舌打ちを一つして葉巻を咥える。

そして、2、3口吸った後に大きく紫煙を吐き出した。

 

『じゃあ、VがTPRだったか?が入っている事がバレたら、俺ごと処分されちまってた可能性があるのか?』

 

「もちろん。例外がない限りは、意識が無いことを良いことに研究施設でデータを取るだけ取ったら処分コースか、その場で射殺してTPRを無理矢理引っこ抜いて行くかのどちらかだろうね。それを回避するために、私は後輩ちゃんが死んだ事にしたのさ」

 

『コーポのやり方は昔から変わらねぇか』

 

「まぁ変わるわけないでしょうね。50年経っていても変わらなかったのなら余計に。幹部だって、簡単に企業側から骨までしゃぶられるのが今のナイトシティだよ」

 

ヴィクターにセンツォンをグラスに注いでもらって、それを一口で呑み下す。

強い酒精の香りが鼻から抜けていく。

 

「後輩ちゃんの新しい身分はこちらで用意する。髪型と髪色、眼の色は変えてもらわないといけないかもだけど、その程度でとりあえずは大丈夫だと思う。悪いけど、暫くはそれで良いかな?」

 

「は、い…ありが、とうござ…ます」

 

つっかえながらも、後輩ちゃんがそう紡ぎ出した。

ジョニーは黙って葉巻を吸い続けている。

眉根が寄っているので、納得はしていないが仕方なく状況に従うしかないというのがありありと顔に浮かんでいるのが見てとれた。

 

『…オーケー、とりあえず俺とVはアンタのお陰で生きながらえているのは理解した。だが、ずっと俺はVの頭ん中で生き続けるのは勘弁だぜ。それはコイツもそう思っているはずだ。そこんところはどうするつもりなんだよ』

 

まぁごもっともな意見だ。

原作のVの様に、この先この2人が信頼を築いていけば少しは一緒に居てもいいかくらいには思ってくれるだろうが、それでもズッ友のように一生一緒にとなると話は変わってくるだろう。

人生の先が短いのが目に見えていて、死ぬか生きるか、身体を開け渡すか否かの選択を強いられているなら兎も角、もし脳みその侵蝕という名の書き換えという不具合さえ発生しなければ、TPRは人格の並列を両立させられる事がある程度分かっているので、このまま長い時間同居出来てしまう可能性が高いのだ。

 

「ふむ、それについてはこちらもなんとかしようとは思っているよ。ただし、まだ技術的な問題が幾つか残っているから、それが解決してからになるけどね。しかし、たとえ分離できたとしても私個人としてはジョニー、君を野放しにしていいのか悩ましいところだね」

 

またテロリストになられても困るし、ジョニーの存在を上手く使ってミリテクがまたアラサカにちょっかいを掛けたりしそうで怖いんだよね。

昔のアラサカを知る人からしたら、ジョニーは悪夢の権化のような存在だ。

それこそ、どんな手を使ってでも殺しに来そうな気がする。

あと、私がサブロウの爺様についた嘘がバレちゃうっていうのもあるけど。

 

その懸念の理由をそのまま伝えると、流石に思うところがあるのか暫く悩むように葉巻を燻らせながら考え込む。

 

「君は髪型は変えても顔までは変えたくは無いだろう?そうなると、流石にこの監視社会では難しい」

 

『…まだ手はあるのかよ』

 

「ない、というまではいかないけど、その手段だと君が人では無くなるね。それでも良いならまぁ近いうちに再現可能」

 

『ソイツは却下だ。そうなっちまったら、コイツを使う機会が2度となくなりそうだしな』

 

そういって、ズボンの股間をポンと叩いて紫煙を吐き出した。

うーん、フサリア連れてこなくて良かったわ。

 

「君のそれが通常に機能するかは兎も角」

 

『おい!ざけんな!』

 

「人で無くなれば使用は出来ないでしょうねぇ」

 

『じゃあそいつは無しだ』

 

チソチソが無くなるのはNGらしい。

肉体が無くなってもクズ男は変わらないようだ。

まぁ、その人で無くなるというのはデータのままオルトと同じところに行ってもらうというもので、要するに『死神なんて怖くない』の再現をするということ。

それには、オルトに接触して計画を説明してから《神輿》に接続する必要がある。

私ですら《神輿》の場所までは行けないから、後輩ちゃんを鍛えてアラサカを強襲させるか、ナイトシティ中を引っ掻き回して大人数でアラサカを攻撃した隙に忍び込むかだろうな。

どちらにせよ、事態は間違いなく大事になるし犠牲者も経済的損害も許容できる範囲を余裕で飛び越えるだろう。

流石にそれは私も勘弁してほしい。

それをされると、私も深淵まで巻き込まれるのは決定だ。

ジョニーがやれと言ってきたとしても、あくまでプランBにしておきたい。

私は、オルトとジョニーが一緒になるところを見たいっていう欲もあるので、ブラックウォールの向こう側でデータとして一緒くたになるのは少し許容し難い。

 

「オーケー、じゃあ暫くは2人で協力して吉報を待ってね。長くても2年以内には技術を成立させるからさ」

 

『2年か…俺は待つしかねぇが、Vはどうなんだ?』

 

「おねが…します」

 

『だとよ。待っても2年だ。相棒共々頼んだぜ。それ以上は何しでかすかわからねぇぞ』

 

「そんな脅しは無用だよ。良いかい?分かっていると思うけど、皆ここでの会話は絶対に外には漏らさないように。私が後輩ちゃんを庇ってTPRが紛失したと言う嘘がバレた場合、全てが御破産になるかもしれないからね」

 

『あぁ、分かっているさ。まぁ、俺の声やら姿やらを見れるのは、Vとお前だけらしいけどな』

 

「そちらの方が都合がいい。ヴィクも悪いけど、オフレコで頼むよ」

 

「あぁ、俺は何も聞いちゃいないさ」

 

「助かるよ。後輩ちゃんも君の命にかかわることだからね。ヴァレリーの名前は捨てて、そのままVとこれからは名乗ると良い。それと、元気になったらまずは隣の診療所に顔を出してね。少し顔のパーツを変えて別人に成り済ました方がいいだろうから」

 

後輩ちゃんは、こくりと一つ頷いて答えた。

よし、取り敢えずこれで謝罪と現状の認識を共有することが出来た。

ジョニーとは、姿だけでなく会話すら出来るという事も分かった。

これはかなり大きい収穫である。

 

それじゃ、と腰を浮かして立ち上がる。

次に会うのは、後輩ちゃんがリハビリの為にデラマン診療所に移動した後になるだろう。

その間に私ももう少し工作に精を出すことにする。

 

「せんぱ…い、ありが…」

 

「いいよ、早く良くなりなね」

 

後輩ちゃんの肩に手を置いてから、ヴィクターのリパーを後にした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

はい、という事で諸事情によりこちらが後書きになります。

ジョニーとネイトは身分も出自も全く真反対なので、相性はすこぶる悪そうという考えから、初対面はこうなりました。

しかし、ジョニーは資金と権力とカードを持っているネイトには逆らえない…!

次回には、フサリアとジョニーを会わせてみたいと思います。

来週もよろしくお願いします。




暗い路地を太ったの男が必死に走っていく。
顔全体から脂汗を吹き出し、今にも爆発しそうな心臓を片手で押さえながらとにかく路地を次々に曲がり、追手を撒こうとしているようだ。
その後ろを少し間隔を開けて、3人の男女達が追跡していく。
逃げる男は必死であるが、追跡者達は余力を残したまま足跡をスキャニングしながら追跡していた。
逃げる男がどこへ行こうとも、3人にはお見通しである。
逃げるだけ無駄というやつだ。

遂には路地も行き止まりになり、焦った男は近くのドアを開けて中へと入り、ドアに鍵を掛けて近くのタンスにそのみっともない身体を押し込んで、息を殺してやり過ごそうとするが、残念ながら追跡者達の前では何の役にも立たなかった。
鍵を掛けた扉は1秒ももたずに破壊されて、男は隠れていたタンスから引き摺り出される。
ホコリの積もった床に放り出された男は、これから自分の身に起きるであろう結末にみっともなく命乞いをするしか残された手はなかった。
小便を漏らし、涙と鼻水を撒き散らして震えながら、両手を胸の前で組む。

「た、頼む!命だけは助けてくれ!金なら欲しい額をやる!!これでもフィクサーなんだ、口利きだってしてやれる!殺さないでくれ!!」

その姿と口上を聞いて、3人の追跡者達はまるで奇妙なモノでも見たかのように嘲笑した。
自分達がナイトシティから遠く離れた南米のチリまで来たのは、この目の前でみっともなく鳴き続ける豚男に掛けられた懸賞金が莫大な金額だったからで、その金額と同じ額を言ったところで払えるとは到底思えなかったからだ。
実際、目の前の男は自身に掛けられた懸賞金の額が300万€$という大金になっていることなど、露ほども知らなかったし、そんな巨額の金など持ってすら居なかった。
この3人の追跡者達に捕捉されてしまった時点で、彼の運命は決まったも同然であったのだ。

「おいおい、仮にもフィクサーだったんだろう?自分に掛けられた額すら知らないのに、良くそれでフィクサーなんか名乗ってられたよなぁ」

「ホント、マジ笑えるわ!あぁ、そうそう。金で見逃せっているのは無理よねぇ。たとえ同じ金額をもらったとしても、それで見逃したことがバレちゃったら、私たちが殺されちゃうわ」

「全く、フィクサーやってたんなら、今のナイトシティで一線を超えた事したら、D&Aのところの死神に目を付けられるに決まってるだろ…だからアンタは他のフィクサーと比べて中堅以下止まりだし、多く敵を作るんだよ」

口々に太った男に向けて言葉を浴びせる。
金や口利きを対価に命乞いをしても無駄だと悟り、何とか立ち上がって逃げようと踠くが、脚に銃弾を撃ち込まれてもんどり打って倒れた。
余りの激痛に、泣き喚きながら脚を押さえる。

「無駄無駄。さて、さっさと片付けますか」

「確か〜、頭をタイガークロウズに持って行くと追加報酬貰えるのよね」

「あとは心臓を抉り出してパドレに持って行っても、それとは別に貰えるらしいぞ」

各々が凶器を手にして最期まで泣き喚く男、かつてパシフィカのフィクサーの1人、デクスター・デショーンに近付いていく。

「や、やめどぅッ」

暴れる手脚を無理矢理押さえ付けられて、首にデカいナイフが突き立てられる。
デクスターは熱した火箸を押し付けられたような熱さを感じ、切断力の低いナイフで強引に自身の首が切り取られるのをただただ見ているしかなかった。
血が盛大に吹き出して、追跡者3人の身体と部屋を赤く染めていく。
デクスターは、頭を切断されて鷲掴みにされながら、泣き別れとなった自分の胴体を見てゆっくりと意識が徐々に遠くなっていくのを感じた。
脳裏には、凄まじい速さで今までの人生が走馬灯として流れていき、激しい後悔と自分がこんな目に遭う原因のネイト・アスカイへ御門違いな増悪を向け、届くはずのない呪詛を2度と声の出る事のない口で吐き捨てる。
遂に脳の酸素が欠乏して完全に意識が無くなる寸前のその耳に、3人の自身をバカにする評論とせせら嗤いがいつ迄も反響していたのだった。

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