【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !!   作:持麻呂

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誤字脱字ありがとうございます!

活動報告の方にもあげましたが、急遽手術をする羽目になったので、いつもの上記は予約投稿時点になります。
たぶん、アップロードされている頃にはベッドの上で痛みに悶えている頃でしょう。
命に別状は無いので(多分)、ご安心?下さい。
次回の投稿は、申し訳ありませんが12/13になります。
よろしくお願いします。

ご感想のお返事も、後日まとめてさせていただきます!


第五十四話

ーー2ヶ月後ーー

 

暗い室内で、私は情報端末にジャックインしながらクイックハックで必要な情報を抜き出していた。

もちろん、依頼で来ているのだけど、今回は少し難易度が高い。

先輩経由でワカコさんから依頼が回って来たらしく、どうやら横領しているという疑惑があるタイガークロウズの幹部の家に忍び込んで、情報端末から不正の情報を見つけて来いというもの。

無かったら無かったで、それはそれでいいらしい。

まぁ、まだ疑いなので水面下で行なっているというわけだ。

100%ステルスの上、NO KILLで達成しないといけない。

幸いなことに、先輩から昔貰った光学迷彩の試作品はアラサカ社で支給されたものでも、給料で買ったものでも無いので使用権を剥奪されなかったため、クローム入れ替えの対象にならなかったからそのまま使えている。

これが無かったら、かなり面倒だったのは言うまでも無い。

いつもなら、クイックハックと同時にエディもいただいていくのだが、残念ながら今回は侵入の痕跡を残せないので、大人しくICEを突破していく。

意外にもICEが硬く、突破するのに時間が掛かっているのが気になる。

 

『V、そろそろ巡回の連中が戻ってくる頃だぜ』

 

『待って、あと5秒…突破した!サーチ開始!』

 

『戻って来たぞ!3人居やがる。大体あと30秒ってとこだな』

 

ジョニーが同時に開いている監視カメラのジャックしたUIの映像を見ながら、私に教えてくれる。

3人か…

急がなきゃ。

 

『ジョニー、私のRAMを使って機械をハック出来ない?この間やり方を教えたでしょう?』

 

『あぁん?出来ねえことはねぇが、今回の仕事でそんな事しちまって平気なのかよ。バレちまうんじゃねぇか?』

 

『クソ、それもそうね…』

 

打つ手がないので、更にサーチを急ぐことにする。

ファイルが沢山ありすぎて、どれが該当するものなのか分からない…

こうなったら当たりそうな単語で再検索をかける。

 

『もう来ちまうぞ!あと扉まで5メートルだ!』

 

『…あった!!』

 

急いでコピーしてケーブルを引っこ抜く。

その瞬間に扉が開いた。

反射的に光学迷彩を起動したのだが、ギリギリ間に合ったらしい。

ゾロゾロと3人が部屋の中に入って来たのだが、そのうちの1人は今回の容疑者であるタクロウ・マエヤマだ。

 

彼らに見つからないように忍足で背後に回り込み、閉まる前の扉に滑り込む。

無事に光学迷彩が終わる前に、隠れるところのない部屋を脱出する事が出来た。

 

『今のはヤバかったな。冷や汗出そうになったぜ』

 

「貴方冷や汗かけないじゃない。…でも同感だわ。もうダメかと思っちゃった」

 

他の警備の目を盗み見て、コソコソと物陰を移動し続ける。

監視カメラやオートタレットもあるので、クイックハックで電源をoffにしながら進みつつ、通り過ぎてからonに戻しておく。

本来なら、監視カメラの映像を観るために、度々立ち止まらなくてはいけないが、頭の中のジョニーが常に監視カメラの映像を監視していてくれるので、スムーズに出口まで立ち回ることができる。

一階のドアから出ると目立つため、雑居ビルと隣り合っている側の2階の窓から外に出て、そこから地面に飛び降りた。

そのあとは何事も無かったかのように、平然とした態度で路地から表通りに歩いて行き、人ごみに紛れる。

そうしてそこで、ワカコさんに入手したファイルを送信したら任務完了だ。

 

『ようやったな、V。これで、タイガークロウズは裏切り者を始末出来る。次からは、もう直接Vに頼んでもええ頃やろう。これからもしっかり頼むで』

 

どうやら、ワカコさんからは完全に認められたようだ。

フィクサーにも面子というものがあるので、名声の低いサイバーパンクに依頼を直接渡すわけにはいかない。

なので、今までは形式的に先輩からの下請けという形で依頼を受注していた。

 

『やぁ後輩ちゃん』

 

『先輩!』

 

『ワカコさんから私の方にも連絡があったよ。随分と褒めていたね。さて、これでクレドもだいぶ貯まったようだし、ワカコさんから認められた以上はアフターライフへの出入りも認められる筈だよ』

 

遂に私1人でも、アフターライフに出入りできるようになれるらしい。

こんなに嬉しいことはない。

もちろん、私の実力ではなく先輩の下駄を履かせてもらっているからこそ、というのはよくわかっているつもりだ。

 

『遂に私もアフターライフに出入りできるんすね…』

 

『2ヶ月で、良くここまでやって来れたね。君の努力には私も脱帽だよ。今回の報酬は今振り込んだから、後で確認して欲しい。アフターライフには、私の方から連絡を入れておくから、あとで時間があるときに顔を出すと良いよ。本当は私も一緒に行きたいのだけど、少し困ったことが起きたようでね』

 

『ありがとうございまっす!また別の機会に一緒に行きたいっすね!』

 

先輩はフフフと笑うと、最後にじゃあねと一言告げてコールが終わった。

今回の報酬は1万エディと高額だ。

かなり難易度が高い依頼だったから、これが妥当な金額らしい。

やっぱり、サイバーパンクは上澄の方になるとかなり稼げるようだ。

ジャッキーやデイビッド達はどのくらい稼いでいるのだろうか。

比較対象が居ないから、比べようもない。

 

『アフターライフだぁ…?もしかしてとは思うが、遺体置き場かなんかを居抜きで使ってんじゃねぇか?』

 

「ジョニー、アフターライフを知ってるの?」

 

『…知ってると言えば知ってるな。どうせ、ローグの奴が仕切ってんじゃねぇのか?』

 

「そうよ。伝説的なフィクサー、ローグが常に入り浸って居るわね。待って、ローグと知り合いなの?」

 

『そんなことだろうと思ったぜ。あぁ、アトランティスが懐かしく感じるな』

 

「ちょっと、無視しないでよ」

 

ジョニーの口から知らない単語が聞こえたが、まぁきっとアフターライフみたいな場所だろう。

あんまり気にしても仕方がない気がするので、深く突っ込んで聞くのはやめておいた。

どうせ、今みたいに聞いたところで無視しそうだし。

 

『さっさとそこに行こうぜ』

 

「えぇ〜、それ今じゃないとダメなの?」

 

『日が照っているうちに干し草を作れって言うだろうが。こういうのは早い方が良いって昔から決まってんだよ』

 

「はいはい」

 

ジョニーが急かしてくるので、仕方なくアフターライフに向かうことにする。

相変わらずのオンボロ中古車に乗り込み、一度H4メガビルディングの駐車場に向かって車を置いてから、歩いて向かうことにした。

大した距離ではないから、そこら辺に路駐して車にいたずらされるよりは歩いて向かった方がマシなだけだけど。

 

また珍しく、アフターライフに行くのが楽しみなのかなんなのか、ジョニーが私の隣を実体化して一緒に歩いている。

いつものお気に入りの葉巻ではなく、どういうわけか紙巻きタバコを吸っていた。

ジョニーが紙巻きを吸う時は大抵の場合、昔のことを思い出していそうな時か、きまりが悪い時だ。

まぁ、今回に限ってはその両方な気がする。

女の勘っていうあやふやなものだけど。

どうせ、女の敵なジョニーの事だから、ローグあたりに酷いことをしたに違いないわ。

 

大通りから路地に入って、ビルの裏側に来るとアフターライフへ続く地下の階段が現れる。

その階段の前には、相変わらず5〜6人の二流、三流のサイバーパンクが屯していて、1人で来るサイバーパンクに絡んだりしている。

私も絡まれたら面倒臭いので、試作光学迷彩を起動させて、稼働時間5秒の間に横を走り抜けた。

2、3人が風を感じたのか振り向いたが、その頃には階段を降り切って入り口の前に着いている。

いきなり現れた私に、アフターライフのセキュリティが腰の拳銃に手を伸ばすので、慌てて止める。

 

「待って待って、上の連中を巻いてきただけだから!」

 

「…紛らわしいことをするな。入って良いぞ」

 

デカいセキュリティが横にずれて、入り口を開けてくれた。

まだIDとか見せてないけど大丈夫なのかしら。

お言葉に甘えて中に入る。

 

『ハハッ、帰ってきたぜ』

 

ジョニーがカウンターの空いている席に座って、私の記憶から呼び出したカクテルを飲み始める。

かなり嬉しそうだ。

 

『見ろよ、俺の名前が付いたカクテルだぜ。ハッ、とんだ伝説もあったもんだな』

 

『ジョニー、貴方はアナーキーの中では今でも伝説よ』

 

『だから、俺はアナーキーじゃねぇつってんだろうが。あの頃の政府が嫌いだっただけで、無政府主義じゃねぇんだよ』

 

『でも、貴方権力とか権威とか、そういうの全部嫌いじゃない』

 

『うるせえよ。俺は無秩序は好きじゃねぇんだ』

 

『面倒臭いヤツねぇ〜』

 

『言ってろ』

 

それっきり黙りこくってカクテルを飲み続けるジョニーは放っておいて、私もその隣の空いている席に腰掛けた。

クレアが相変わらずの笑顔で注文を取りに来る。

 

「いらっしゃい。見ない顔だけど…何にする?」

 

顔のパーツを少しいじって、髪型も変えたので私だと気付いていないらしい。

 

「テキーラオールドファッションにビールを少々、唐辛子入りをちょうだい」

 

「ジョニー・シルヴァーハンドね。中々勉強してるじゃない」

 

前も同じようなやり取りをした覚えがある。

私はこれで2度目だ。

 

「ちょっと…勉強したのよ。舐められないようにね」

 

「へぇ……良いことじゃない。いやちょっと待って、貴女、前にもここに来たことない?」

 

クレアも同じやりとりがあったのを思い出したらしい。

まぁ、あの時の私は死んでいることになっているので、もう正直に本名を名乗ることは出来ないけど。

 

「少し見てくれが変わっちゃったけど、有るわよ。同じように頼むのも2回目ね」

 

「やっぱり!案外私の記憶もバカにならないわねぇ。あ、でも名前はなんだったかしら」

 

「…今はいろいろあって、Vって名乗ってるわ。悪いんだけど、あまり昔のことはここで言わないでもらえると助かるんだけど…」

 

生馬の目を抜くようなサイバーパンク達がいる場所なので、どこで誰が聞いているか分からない。

昔のことを知る人は居てもいいが、話題に出てこないに越したことはないだろう。

せっかく先輩がいろいろと動いてくれていたのに、こんなつまらないことで露見しては敵わない。

 

「あーそうよね。ごめんなさい。気が利かなかった…。その一杯は私の奢りよ」

 

「ありがとう」

 

それからは、ジョニー・シルヴァーハンドを飲みながらクレアと情報交換をする。

そこで聞いて面白かったのは、先輩が生きる伝説としてカクテルになっていたことだった。

もちろん、先輩の名前のカクテルでは無いが、【死神】という名前とバイオレット色をしていることから、どう考えても先輩と紐付いているようにしか見えない。

 

ウォッカにパルフェタムール、ドライ・ベルモットを少々、そしてほんの数滴ニコーラ・サクラ。

最後に藤の花を一輪浮かべる。

これは毒があるので食べてはいけないらしい。

 

まるで先輩の瞳の色みたいなカクテルだった。

せっかくだから頼んでみたのだが、高い度数のわりにスッキリとした飲み口で、スミレの香りの後にどこからかサクラが風に乗ってフワッと消えていく。

そんな感じの味わいだった。

スッキリしているので、気付いたら飲み過ぎて前後不覚に陥ってしまいそうなところも【死神】の名に相応しいのかもしれない。

とんでもないレディキラーだ。

 

『マジであの先輩大先生みたいなカクテルじゃねぇか。味はイケてる』

 

ジョニーが早速【死神】の味見をしていた。

 

「あ〜、ちょにー!!うぃーもいる!!」

 

私もジョニーに倣って【死神】を口に運ぶと、意識の外からこんな場所には相応しくない声が聞こえて来た気がした。

まさか、幻聴に決まってる。

きっと、この強いアルコールのせいに違いないわ。

 

「ね〜、うぃー?ちょにー。ちょにー!うぃー!」

 

『うるせえよクソガキ!!静かに酒が飲めねぇじゃねぇか!!』

 

ハッとして横を見ると、リアちゃんがポツネーンと立っていて、両手を挙げながらこちらを見上げていた。

なんで!

 

「リアちゃん!?なんでこんな所にいるの!?」

 

先輩といつも一緒に居るはずのリアちゃんがこんなところにいるということは…まさか

 

「誘拐!?」

 

「リア〜、危ねえから俺たちと離れちゃダメって言ったばっかりだろう〜」

 

やや疲れた顔をした見覚えのある顔が、ヨタヨタとしながらこっちに近づいてきた。

シオシオになっていて別な意味で元気そうには見えないが、元気そうでよかった。

 

「デイビッド!」

 

「んん?ん〜、俺たちどっかで会ったか?」

 

「私よ、Vよ」

 

「マジかよ!!ハハッ、元気そうで良かったぜ!」

 

ニコニコしたデイビッドが拳を出してくるので、私もそれに拳を合わせる。

私もあの後デイビッドがどうなったのか知らなかったから、元気な姿を見れてとても嬉しい。

 

「でいぴっどにいちゃとうぃー、ともだち?」

 

「友達っていうか、仕事仲間というか…」

 

「私とデイビッドは友達よ。リアちゃんはデイビッドが先輩から預かっているの?」

 

リアちゃんの保護者が来たので、疑問をぶつけてみる。

 

「それがなぁ…」

 

デイビッドから話を詳しく聞くと、急にリアちゃんを連れた先輩が家に駆け込んできて、暫くの間預かっていて欲しいと頼み込んできたとのこと。

その時の先輩は普段の時と違い、全く余裕が無さそうな雰囲気を纏っており、普段浮かべている不敵な笑みも無く、少し難しそうな顔をして月単位で帰れないかもしれないとだけ言って、リアちゃんと二言三言何かを交わした後に去っていったらしいのだ。

先輩に余裕が無いって、アカデミー時代でも一回くらいしか見たことがない。

何が起きているのだろうか。

絶対に碌でもないことが裏で起きているに違いない。

 

「先輩が急いで向かった先が気になるわ」

 

私がそう言うと、デイビッドは腕を組んでうーんと頭を捻ってから後頭部を掻いた。

 

「まぁそうなんだけどさ。俺たちを巻き込まなかったってことは、俺たちを関わらせたくないような事態ってことだろ?」

 

「それは…そうだけど…」

 

先輩なら確かにそう言う行動をとるだろうなぁ。

 

「向こうから助けてくれって言われるか、分かるようになるまで待ってた方がいいと思うぜ。ネイトの事だから、必要になったら絶対に言ってくると思うしな」

 

デイビッドの言う通りかもしれない。

でも、過去のことを考えるとどうしても不安が拭えないでいる。

私が聞いた限りだと、1回目は無断婚約騒動、2回目は今回だ。

私が見た限りだと、アカデミー時代にテロリストに扮したミリテクの戦闘部隊が校舎を襲撃してきたとき以来だ。

もしかしたら、余人が知らないだけでもう少しあったかも知れないけど…

どちらにせよ、全部碌でもないことばっかりだった。

 

「ぶぅぅぅ〜!!ちょにーもうぃーもあそんでくれない!!ろーくのところいってくるもん!!」

 

「あっ!コラ待って!Vも来いよ、ローグさん紹介するからさ」

 

リアちゃんがほったらかしにされたことに怒って、奥のVIP席の方に走っていってしまった。

デイビッドも慌てて背中を追い掛けながら、こっちに向かってそう言ってくれたので、お言葉に甘えて紹介してもらうことにする。

先輩が連絡をすると言っていたけど、正直手間が省けて助かる。

クレアに挨拶してから席を立って、デイビッドが入っていったVIP席に向かう。

 

『さてと、ついにローグと御対面、と行こうじゃねぇか』

 

いつのまにかジョニーが隣に居た。

 

「ジョニーとローグの関係ってどんなだったの?」

 

『言わせんじゃねぇよ』

 

「不潔よ不潔」

 

『うるせぇ』

 

VIP席の前に来ると、たしかエメリックと言う名前だったか、ガタイのいいナイスガイが私の行く手を阻んでくる。

 

「ここから先はVIP専用だ。向こうへ行け」

 

「エメリック!通してやんな。そいつは私の客だよ」

 

「わかりました」

 

奥のVIP席の方から声が投げ掛けられて、それに返事をしたエメリックが横にズレて通してくれた。

ワカコさんのところのタメもそうだけど、ガタイのいい人ってなんか良いわ。

ジョニーはヒョロイからダメね。

 

迷わず真っ直ぐにボックスシートになっているVIP席に向かって行き、入り口に立って中を覗くと、上座にローグと思われる女性とリアちゃんが座っており、それを囲むようにデイビッドやその仲間と思われる人物達が座っていた。

なんと、その中にはこの前依頼で会った気前のいいサイバーパンク、キーウィとファルコ、そして何より嬉しいジャッキーが座っているではないか。

 

「ジャッキー!」

 

「よぉ、おっと。へへっ、元気そうだな。俺も会いたかったぜ、V」

 

思わず、座っているジャッキーにハグをしてしまった。

恥ずかしい…

ミスティごめんなさい。

 

「感動の再会は他所でやんな。お前がVだな?ネイトからは聞いているよ。とりあえず空いているところに座りな」

 

そう言って、下座のお誕生席みたいになっている円座を指差すので、言われた通りにそこに腰を下ろした。

 

『あれから50年は経っているが、相変わらず良い女だぜ。つくづく、コイツが役立たねぇのが勿体無い』

 

『サイテー』

 

座席に着いたところで、ローグの対面に座っていた白髪で右目のキロシが3つもある独特な容貌の男が、見計らったように立ち上がった。

 

「それでは私はこれで…私はあくまでもメッセンジャーですから、失礼させて頂く」

 

「ああ、ご苦労だったね。ファラデー」

 

「ローグ、くれぐれもあの方によろしくお伝え願えればと」

 

「分かっているさ」

 

ファラデーと呼ばれた男は一礼してから出ていった。

一体彼は何者なんだろうか。

ボックスシートの中を改めて見直すと、ほぼ全員が私の方に視線を投げかけていて、その大半は私を値踏みするような視線だ。

ハッキリ言って居心地が悪い。

アラサカ時代は企業のバックボーンがあるのでかなり堂々としていられたのだが、ここに座っている人達は全員メジャーのサイバーパンクだ。

私の実力が、彼らのどの辺りに位置するかも分からないので、顔には出さないが背中が自然に丸まりそうになる。

 

「さて、役者も揃ったな。若干1人、今日の今日に来るとは思っていなかったが、話が一度で済むので助かる」

 

ローグが仕切って話し始めた。

全員がローグの方を向く。

ジョニーが壁際に立って葉巻を咥えた。

 

「先ほどのファラデーから聞いた限りでは、アラサカタワーで面倒なことが起きた。ここでの詳細は省くが、ナイトシティの勢力図が変動する可能性は高い」

 

「その変動ってのは、最悪の想定でどの程度の物なんだ?」

 

ジャッキーよりも身体の大きい、サングラスを掛けた黒人のサイバーパンクがローグに向かって問いかける。

 

「最悪の想定だと?そうだな…最悪で再びナイトシティで熱核兵器が使用されるかもしれないと言ったところか。反対の最良は現状維持だな。私もデラマンもネイトも、最良を目指して行動するだろうが、万が一もある」

 

「マジかよ…」

「デイビッド、月に逃げましょう…!」

「ルーシー落ち着けって!」

「私らも逃げ支度するべきかしらねぇ」

『BOOOOOM』

「どっかーん!」

 

みんなが口々に不安を吐き出す中、ジョニーは茶化すように両手を大きく広げた。

それを見たリアちゃんが、ジョニーのマネをしてバンザイしている。

しかし何をしたら、アラサカが原因でそんなことになるんだ。

理解が追いつかない。

 

「少し落ち着け。これは最悪であって、実際にはそんなことにはならないだろう。コーポ間の小競り合いくらいはあるだろうがな」

 

ローグが全員に落ち着くように促してそう言うが、全員が不安を隠しきれていない。

それにローグが舌打ちをしたところで、外からクレアがボックスシートに駆け込んできて、壁面にあるホロのスイッチを入れるとN54ニュースが流れていた。

 

 

 

『ーーサカ氏が自宅で死去されたそうです。繰り返します。ただいま速報が入りました。長年アラサカを牽引していた会長のサブロウ・アラサカ氏が自宅で死去されたそうです。詳細は分かり次第お知らせしますーー』

 

 

 

『あのクソジジイがくたばったか!ハハッ、ざあまないぜ』

 

「…他殺だそうだ」

 

『…マジかよ』




皆さんも、健康には気をつけましょうね!!
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