【完結!!】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !!   作:持麻呂

68 / 72
お気に入り登録、2949件!
ご感想、397件!
評価者、355名!

誤字脱字訂正、いつもありがとうございます!!m(_ _)m

今回は少しですが増量版になります!
ちょうど良いところまで書いていたら、九千字越えてました…
散々これ見よがしに張って、皆さんをモヤモヤさせたかも知れない伏線に関しては、次回で回収できる…かも知れません。
その更に次になるかも…そしたらごめんないさい。

皆さんが良かったら、面白かったフレーズでここすき応援してもらえると嬉しいです。



第六十四話

「さて、どうしたものか」

 

正直に言って、クソ忙しい時に現れてほしく無かった。

まぁ、施錠して隠れていたところを無理矢理こじ開けたのは私なので、自業自得なのは間違いないのだが…

仕方ない。下手に動かれたりした方が危険なので、3人とも気絶させて部屋の奥に転がしておくか。

 

「子供を殺す趣味は有りませんからね。このまま気絶させますか」

 

「それで良いだろう」

 

シロウさんが頷いて了承が得られたので、涙を溜めながら怯えた目をしているカツオ以外の2人をシステムリセットで気絶させて、手を前側で縛ったカツオを隣に座らせておく。

 

「此奴は気絶させなくて良いのか?」

 

「ええ、何かあった時に口が利ける者が1人でも残っていた方がいいでしょうから」

 

本当はそれもあるが、まさか私に素手で殴り掛かってきて、数発とはいえ拳を当てたのだから大したものだと感心しているのだ。

そこはリスペクトをして、気絶している間に全てが終わっているよりは、起きて何となく何が起きているのかを知れていた方が、この先の彼の人生に何かを齎すだろうと判断したのもある。

まぁ、もしあの手に刃物なり武器を持っていたら、即おまんじゅうかダルマにしていたであろうから、そこを含めて運が良かったと言っても良いだろう。

 

「さて、そう言うことだから口は塞がないが、誰か入ってくるまでは黙ってそこで隠れているんだ。いいね?」

 

コクコクと首を縦に振って了解を示すので、ポンと肩を叩いてから立ち上がる。

 

「じゃあ、お父上によろしく」

 

後ろでに手を振ってから、扉を閉めて施錠しておいた。

彼の運がまだ続くなら、メイン達が上に退却してきたとしても巻き込まれずに済むだろう。

 

「中々に気骨のある若者だったな」

 

タケムラおじ様がそう言いながら、向こう側の遮蔽物に向かってグレネードを投げる。

爆発して、まるでおもちゃの人形を放り投げたような感じで、隠れていたアラサカ社員が空中浮遊してからドチャッと力無く地面に落ちて動かなくなった。

久しぶりにゲームみたいなやられ方を見た気がする。

 

「野菜狂いのタナカ氏の息子ですからね。そりゃ気骨はあるでしょう」

 

知らんけど。

 

「あの野菜を見たら人格が変わってしまうようなキチガイにはなってほしくないな。気にはとめておこう」

 

あの人、アラサカ全体だとどう思われているんだろうか…

 

途中余計なことがあったが、やっと階段まで辿り着いた。

この階段を上がればハナコさんの部屋があるので、なんとかタイムリミットまでには着けそうだ。

UI上の時計を見るとまだ25分しか経ってなかったので、心の余裕もある。

 

さて、問題は階段だ。

さっきの階段では、上からサンデヴィスタン持ちのサイバーニンジャが降ってきた。

危うくVの串団子になるところだったので、重々気をつけなければならない。

ということで、ここに用意したるはEMPグレネードが2つと女子力()の必須アイテムミラー付きコンパクト。

パッとコンパクトだけ階段部分に突き出してミラーで上の様子を確認すると、即座に撃ち抜かれて砕かれてしまった。

 

あぁ、私の15€$が…

またメトロのキオスクだかで買えば良いっか。

 

私の女子力()を犠牲にしたのと引き換えに、しっかりと上のどの辺りに立っているのかは見えたので全く問題ない。

居場所がわかればこっちのもので、下手投げで着弾してもギリギリ壊れない速さと力加減でEMPグレネードを相手の顔面にシュゥゥゥゥーッ!!超!エキサイティン!!

ビュン!と風切り音とほぼ同時にドコッバキッと小気味良い音が鳴る。

次の瞬間には、EMPグレネードが炸裂して一瞬キロシの視界が歪んだ。

それも対策をしてあるのですぐに治る。

 

計算された角度で投げられたEMPグレネード2個から発生した、局地的だが強力な電磁パルスはなんの防御を施していなかったアラサカ社員達のクロームを無差別に浸潤し、その電磁波から生じる過電流でもって受け流すことの出来なかったクロームの電子基盤を滅茶苦茶に破壊した。

そして、その電磁波の波長がぶつかり重なる部分ではさらに強力に作用し、電子機器に対して不可逆的で壊滅的なダメージをまき散らす。

諜報や侵入、ハッキングなどを主な任務とするサイバーニンジャは、その任務の性質上仕掛けられたトラップにEMPを発生させるものがよくあるため、大抵の場合はEMP防御を施しているのだが、2つの電磁パルスが重なったところではその威力が倍増し生半可な防御は貫通してしまう結果となる。

また、階段の上り口の壁がフロア中央部に比べて狭かったため、距離によって減衰していくはずが跳ね返った電磁パルス同士が更に増幅し合い、予想以上に被害が拡大してしまった。

強固なEMP対策をしていても我々の視界が歪んだのはこのためなのだが、上に比べてこちら側の方が広く開放されていたのと、階下という物理的に距離が開いていたためにその程度で済んだとも言える。

上に居る状態でぶちかましていたら、私はともかくVやタケムラおじ様は影響を受けていた可能性は無きにしも非ずだ。

 

耳を澄ませば、アラサカ社員からゲロ吐きザウルス*1に転職を果たした哀しみの嘔吐き声が幾つも聞こえてくる。

サンデヴィスタンを使って一気に階段を上ると、そこには15人くらいがゲロの海を遊泳していたり、白目を剥いて気絶してピクピクしていたりして、死屍累々と形容としても間違ってない惨状が広がっていた。

まったく、こんな酷いことを誰がしたんだ!可哀想に。

 

このまま苦しませておくのは本意ではないので、システムリセットを感染させて全員ノックアウトした。

ゲロが喉に詰まらないように、横を向かせて回復体位を取らせておく。

 

サイバーサムライとサイバーニンジャは、サイバー面頬を装着していてフェイスプレートを露出させられないので、短刀を差し込んで無理矢理ひっぺがした。

メインに殴られてサイバーマスクが吹き飛んでしまったキーウィみたいな感じになるが、死ぬよりはマシだろう。

 

「こりゃ酷いっすね」

 

「まぁこんなもんだって」

 

この階は殆どの人員がこの階段上に集中していたようで、フロアは警報の音しか聞こえない。

すぐそこを左に曲がればハナコさんの部屋なので、もしかしたらハナコさんの護衛までここに来ていた説もある。

大半のサイバーサムライ達は、逐次投入の愚を犯さないために先程までいた階になるべくかき集めていたようだ。

まぁ、本来であればサンデヴィスタンやらを装備したサイバーサムライがアレだけいたら、エレベーターで上がって来れる程度の数のミリテクの戦術部隊なら押し返せるだろう。

私も並の侵入者に対しては、戦略的には正しいと思う。

だが、残念だが今回は相手が悪かったと言うほかない。

 

全員が階段を上り切り、フロアの中ほどまで警戒しながら進んだところでコールが入ってきた。

 

『ネイト!そろそろ限界だ!!連中、ジャングルの床をぶち抜いて部隊を送り込んできやがった!!テメェの弾も心許無くなってきた!そろそろ上にズラかるぞ!!』

 

『構わない。残したエレベーターで一気に上がってきてから、そのエレベーターは破壊してほしい。空中庭園の床を破壊するくらいだから、ここも床を壊して上がってくるだろうが、階段が時間を稼いでくれる。弾は来る途中で落ちているやつを再利用してもらえれば大丈夫なはずだ』

 

『分かった!ルーシー、キーウィ!エレベーターをジャックしろ急げ!!』

 

メインが随分と切羽詰まった感じだったので、爆破したのかどうか知らないが、無理矢理こじ開けた破口から続々と部隊が送り込まれたに違いない。

本人の頬のリアルスキンも銃弾が擦過したのか部分的に剥げていたので、かなりの銃撃戦が行われているはずだ。

無事に全員後退して来れる事を祈るほかない。

 

さて、ここはこの先の重要施設であるデータセンターとハナコさんのようなVIPの部屋しか無い。

多分というか原作的にも、この先のデータセンターではアダムが中ですし○んまいの社長人形のように待ち構えているに違いないので、あまりここで時間を割くと痺れを切らしてこちら側に来かねない。

 

「ここを曲がった先と言っていたな。ハナコ様が他の部屋に居ることは無いか?」

 

「それは無いはずです。ご本人からの情報ですし、ネットランナーに割り込まれた形跡はありませんでしたから」

 

「分かった。そちらの安全が確保出来次第お連れする」

 

「タケムラおじ様、事前情報だと護衛は5名と言っていましたが、こうなると実際にはどうか分かりません。ご武運を」

 

私に一つ頷いたおじ様は、シロウさんに向き直って一礼した後にハナコさんが居るVIPルームに向かって走っていった。

その後ろ姿を見送る。

 

「こちらも急ぎましょう」

 

右手にエラッタと左手にオーバーチュアCRASHを持ち、サーバールームのスライドドアをハックして開ける。

開いた扉の隙間から、張り付くような冷気が頬を撫でた。

呼気が白くなりながら、3人で中に入る。

 

高さが2mと少しくらいありそうなサーバー用ラックが左右に広い間隔を空けて立っており、真ん中は通路として幅が15mくらい開けている。

空調を効かすために密室になっているので、向こう側も階段の前にスライドドアがあるのだが、その真ん前にアダム・スマッシャーが仁王立ちして待ち構えていた。

背後でドアが閉まる。

 

ドアが閉まった途端、コールが入った。

 

『ネイト嬢!ハナコ様は既に移動させられたあとだ!!これは罠…邪魔立てするなサンダユウッ!!』

 

タケムラおじ様はそれだけ言って、コールが切れてしまった。

 

「チッ」

 

思わず舌打ちが出た。

こうも後手後手に回ると、流石に神経が苛立つ。

タケムラおじ様のクロームもかなり換装したとはいえ、復讐戦になっているかもしれないサンダユウ相手では心配が勝る。

メールでデイビッドに、エレベーターが着いたらサンデヴィスタンでレベッカを担いで最速でタケムラおじ様救援を頼んだ。

 

「随分と待たせるナァ」

 

私の動きが少し止まっているのを見て、アダム・スマッシャーが皮肉気に言ってきた。

奴はこちらに銃口を向けるでもなく自然体で立っているので、どうやら開幕ブッパはしないらしい。

好都合なので、今のうちに後輩ちゃんとシロウさんをサーバーの後ろに移動させておく。

 

「おや、ステイが出来たのかい?躾のなってない野良犬の分際で」

 

久しぶりの口上戦だ。

挨拶がわりの罵り合いなので、お互い何とも思ってない。

だが別件でドタマに来ているので、いつもより口が悪くなりそうだ。

 

「またツラがちげぇガ、その汚ねえ口振りはいつもの奴だナァ?最近見かけねぇから、おっ死んだと思ってたのにヨ」

 

「そちらこそ、久し振りに見たと思ったら随分とナリが変わってるじゃ無いか。アラサカも大変だな?雑魚のために装備を更新するのも」

 

「オレは時代の先を走ってんだヨ。流行に置いてけぼりのオメェとは違ってナァ」

 

「サビの浮いたロートルのくせに、時代の先を走ってるとは笑わせる冗談だな」

 

「股の間に毛も生えてネェようなヒヨッコが、口だけは大きく育ってるじゃねぇカァ」

 

「そうか?殺すはいつも口だけで、実際に出来そうもないのはそっちなのにね」

 

「新しいオモチャを試してみるカァ?」

 

「死ね」

「クタバレ」

 

どちらともなく、相手に向けて銃弾を放つ。

最初の一発目は、空中で衝突して火花と破片を散らした。

オーバーチュアCRASHは、フルオートができるリボルバーだが代わりに連射速度が遅い。

向こうはいつもの大型機関銃なので、横歩きで射線から逃れつつも当たりそうな弾だけをオーバーチュアCRASHで撃ち落としていく。

六発はすぐに撃ち尽くしてしまうので、そのタイミングでサーバーの裏に隠れてエラッタを口で挟み、素早くリロードをしてサーバー越しにGASH対人グレネードを投げながら飛び出す。

空中で赤く細いレーザーを撒き散らしながら回転するGASH対人グレネードのレーザーを器用に避けながら、機関銃で迎撃しているアダム・スマッシャー目掛けて連発するが、フェイスプレートも特殊装甲のものに変えたのか、火花を散らすだけでびくともしない。

奴の足元には、マッシュルームのようになったマグナム弾が転がる。

毎度毎度、馬鹿みたいに装甲を盛ってくる奴だ。

 

鬱陶しいだろうGASH対人グレネードをすぐに破壊して、機関銃を撃ちながら肩部ミサイルを撃ってくるので、一瞬だけサンデヴィスタンを使ってマイクロミサイルを潜り抜けるが、向こうもサンデヴィスタンを発動させて後ろに下がりながら引き撃ちをしてくる。

 

エラッタを振るって機関銃の重い弾を弾きながらEMPグレネードをアンダースローで投げるが、電磁パルスを嫌ったのか下手に撃ち落とすようなことをせず、再びサンデヴィスタンを使って大きく回り込むように移動するので、こちらもサンデヴィスタンで正面から思いっきり蹴りを入れる。

 

咄嗟にアダム・スマッシャーも肩部にある特殊装甲板で受けるが、そのままカチ割れてノックバックするように後ろにずり下がったところで、炸裂したEMPグレネードの電磁パルスを背部にモロにくらった。

一瞬アダム・スマッシャーの目の所にある6つの赤い光が明滅するが、やはり私とほぼ同じくらいサイバネ化が進んでいるサイボーグ。

それなりの強度の対策がされているようで、すぐに復帰して至近距離まで駆け寄ってエラッタを薙ぐように振るう私に、牽制する目的か頭ほどもある鉄塊のような拳をサンデヴィスタンを使って加速させながら、宛ら破城槌の如き勢いでもって突き出してきた。

 

こちらもその拳を断ち切るように、エラッタの赤熱した刄を立ててそわせるのだが、普段ならそのまま切断出来るはずが奇妙なことに表面が少し赤くなるだけで滑ってしまう。

そのまま拳が迫ってくるので、頭を砕かれてしまっては敵わないと思い、仰反るようにして避けてから勢いのままにサマーソルトキックを繰り出す。

 

サンデヴィスタンの加速が乗ったままの爪先を腕を出し切ったアダム・スマッシャーが避けれるはずがなく、狙った顎先こそ頭を傾けて避けられてしまったものの胸部の特殊装甲板の表面をガッツリと削り取った。

そのまま連続でバク転して距離を置く。

 

「まさか斬れないとはね」

 

「この手は特別製なんでナァ。いつまでもそんなナマクラで切れるわけねぇダロ」

 

「それにしちゃあ、他の部分は足でも簡単に削れるようだけど」

 

「それは、オメェの足がバカげてンダヨ。普通は足が負けんだろうガ」

 

「それは、私の足が特別製だからね」

 

そうやって減らず口を叩きつつも、アダム・スマッシャーから飛んで来るクイックハックをICEで防ぎつつ、こちらからも自殺デーモンを送り付けて、アダムICEとネイトICEのガチンコ勝負が始まった。

 

舐められたもんだ。

クイックハックで私の処理速度に負荷を掛けることで、サンデヴィスタンや他のクロームを使用しづらくする魂胆だろうが、そうは問屋が卸さんぞ。

 

お互いに超危険なデーモンで殴り合っている間も体は動いているわけで、一旦カント君に処理の一部を押し付けて、現実空間ではお互いに銃火器で応戦する。

流石に撃ちすぎたのか、先にアダム・スマッシャーの機関銃が弾切れになって、リロードしなければただの鈍器にしかならないソレを床に捨てて、背中のガンラックから新しくM2067ディフェンダーを外す。

先ほどまで使っていた、形式番号の分からない機関銃よりもM2067ディフェンダーの方が小口径だが、連射速度と連射性能が優秀なため先程よりも濃密な弾幕を張ってくる。

 

馬鹿みたいにデカい図体と、そんじょそこらのゴリラアームの数倍は性能差があるであろう剛腕で、暴れ馬のような反動を完全に押さえ込んでいるので、まるでビームのように真っ直ぐまとまって弾が飛んで来るのだ。

集弾率が良すぎて散らばらない分避けやすいが、一発でも被弾した瞬間に一気に蜂の巣になってしまう。

これじゃあまるで人型のCIWSだ。

 

走り回って銃身が焼け付くか弾切れを起こすまで避け続けるしかないが、それよりも問題なのはサーバーラック自体は防弾でもなんでも無いので、景気良く弾をばら撒いてるアダム・ファッキン・スマッシャー=サンの流れ弾で、どんどんブッ壊れて瓦礫の山に変わっていることだ。

データセンターの床はフラットで、隠れられるものがサーバーラックしかないため、全部壊されたら後輩ちゃんは兎も角シロウさんの命が危ない。

 

「お荷物が居ると大変だナァ。避けてて良いのカァ?」

 

「黙ってろ」

 

銃をカーネイジGUTSに持ち替えて、射撃する瞬間だけサンデヴィスタンを使用する。

レール給弾に改造されているM2067ディフェンダーは想像以上に弾切れせず、銃身も放熱性がいいのか特殊合金でも使っているのか、こちらも焼き付いてジャムを起こす気配も見せない。

どうせ特殊装甲板で、アダム・スマッシャー本人には如何にカーネイジGUTSのツヨツヨ散弾とはいえ傷程度しかつけれないだろう。

だが、こちらの狙いはそれではないので問題はない。

 

気持ち程度だが射撃位置を変えて3発放たれた散弾は、サンデヴィスタンを使ってまで避ける必要が無いと判断されたのか、視覚機器を守るために顔面だけを片手で塞いだ。

顔面を狙った散弾が、エラッタでも斬れなかった拳に防がれて火花を散らす。

 

「散弾ではナァ!!」

 

そのままM2067ディフェンダーを向けてくるが、はなから顔面を狙ったものは本命では無い。

大型散弾を多数受けたM2067ディフェンダーは、給弾用レールは破断し銃身は無事だが機関部が変形してしまっている。

そのことに気付かずにそのまま射撃しようとしたアダム・スマッシャーの手元で、M2067ディフェンダーが暴発して機関部が弾け飛んだ。

 

流石は歴戦の傭兵アダム・スマッシャー、動揺する気配すら見せず、即座に肩部ミサイルを視線誘導で全弾発射し破壊されたM2067ディフェンダーを投げ捨てる。

 

後輩ちゃんとシロウさんが隠れているサーバーラックにマイクロミサイルが向かわないように、逆側に誘導しながらカーネイジGUTSで先頭のマイクロミサイルを迎撃した。

爆炎のその切れ間に、向こう側でプロジェクタイル・ランチャーを構えているのが見える。

いくら私でも、流石にアレの直撃はヤバい。

 

今からスモークグレネードを投げても遅すぎる。

しかも、いやらしいことにサンデヴィスタンを使って逃げようとすると、向こうもサンデヴィスタンを使って、後輩ちゃんとシロウさんの隠れている方にチラリと頭を動かすのだ。

完全にこちらの退路を絶ってきている。

 

ふざけた奴だ。

私としたことが、位置取りをミスるなんて。

…クソが、こんなところで切り札の1つを切らざるを得ないとは!

 

まだ試作品に過ぎないが、1つだけ完成したソレに起動信号を送る。

左腕に仕込んだそれは、プロジェクタイル・ランチャーのように左腕全体が幾つかのパーツに分裂・展開し、内部にある砲身を露出させ前進する。

せっかくのコーポレートスーツの袖が、悲しいかなビリビリに破れて台無しだ。

アダムICEと攻防させていたカント君の演算をやめさせて、前はデラマンにやらせていた仕事を肩代わりさせる。

一旦デーモンの押し付け合いはこちら側が不利になるが、相手もすぐにそんなことしてる場合じゃなくなるから問題は無い。

右手でエラッタを地面に突き刺して、柄を握り込んで身体を固定した。

 

爆炎が完全に晴れた。

お互いに腕を突き出して突き付けている。

なんて間抜けな姿なんだろうかと自分でも思う。

 

「…2年でここまで小さくなった」

 

「面白れぇオモチャだナァ…!」

 

まぁ、威力は相応に下がってるけどね。

 

肩の辺りに有る超小型粒子加速器は、2秒で臨界状態を終わらせた。

神経系に稲妻が走り、オーバークロックさせて更にサンデヴィスタンの加速性能を向上させる。

先にアダム・スマッシャーが、レールからスパークを散らすほどの大電圧で電磁加速させた飛翔体を発射した。

どうやらプロジェクタイル・ランチャーだと思い込んでいたものは、レールガンになっていたらしい。

音速の7倍近い速度に加速されて発射された弾体は、MODが当たっていて加速性能が向上している物をオーバークロックさせているにも関わらず、全力疾走をするような速度でこちらに向かって飛翔してくる。

これでは悠長に狙いをつけているような暇は無く、ただ発射信号を伝達するしか出来ない。

 

何がレールガンだ!

こっちは亜光速だぞ!!

 

前にバイオテクニカでキメラ相手にぶっ放したものよりは威力は低いが、それでも威力は過剰と言っても良い。

強烈な緑色の残光が一瞬視界を覆い尽くす。

もうこうなっては、弾体を目視できないので防ぐのも避けるのも不可能だ。

 

身体を引き裂かれる衝撃を覚悟したが、身体の前面に起きたのは灼熱の液体が掛かる感触だった。

すぐに痛覚エディターで痛覚を遮断して、視覚が回復するのを待つと現実時間で3秒ほどで視力が回復する。

その間、UI上のHPゲージがスリップダメージを受けているようで、ジリジリと減っていく。

やっと見えるようになってから見えたものは、右腕と一部胴体を荷電粒子ビームの超高温によって溶かされ消失したアダム・スマッシャーの姿と、溶けて液体になった金属製弾体を浴びて炎上している私の身体だった。

 

ちなみに、私の左腕も砲身が溶解して可燃物が発火点を越えて絶賛炎上中だ。

肩から腕をパージして、右手で急いで融解金属を叩き落としていく。

その間、背中の排熱機構を全開放して緊急排熱を行った。

スーツの背中部分が全部内側から弾け飛んで、背中のパーツが展開して大型の排熱フィンが体内から排出され、蒸気と一緒に周囲が陽炎のように揺らめくほどの熱気を吐き出す。

 

身体から一気に熱が抜けていく感覚に、思わず膝を突きそうになるので床に突き刺したエラッタを杖代わりになんとか持ち堪えた。

アダム・スマッシャーは、一時的にシステムがダウンしているのか硬直したまま突っ立っている。

このまま熱暴走で脳みそが目玉焼きになっていてくれたら面白いが、生憎奴がそんな簡単にくたばるようなタマではないのは、何回も殺り合ってる私が一番よーく知っているのだ。

 

遂に着弾面の熱が回って、完全に外壁まで円形の穴が開き、外の生暖かい空気が流れ込んできた。

キンキンに冷えていた室内が徐々に暖かくなっていくのをなんと無く感じるが、まだ排熱が追い付いていない私はそれどころではない。

背中の排熱フィンを剥き出しにしたまま、一旦首にバウンスバックを打ち込んでからインベントリより例のブツを取り出し歩いていく。

一歩毎にHPバーが急速に回復して行くにつれて、リアルスキンが急速に復元されるが服までは元に戻らず、悲しいかな随分とあられもない姿になってしまった。

 

いまだにアダム・スマッシャーの視覚機器は赤い光を灯しておらず、気絶しているらしい。

気持ちよく気絶の快楽に浸っているクソボケを見ると、無性に腹が立ってきて仕方ない。

こっちは時間も無い上に、本来なら準備も中途半端。

こんなことさっさと片付けて、ヨリノブおじ様をぶっ飛ばしにいかにゃならんのだ。

本来ならこんな馬鹿馬鹿しいカチコミなんかやってる暇もない。

その上、計画したものがどうにも上手に噛み合わないのはなんでなんだ?

クソが……

どんどん視界が緑色に染まっていくのを拒まず、怒りに任せて身を委ねる。

 

 

 

下郎の真ん前に立って、それを思いっきり振りかぶった。

 

「いつまで寝とるかボケカスゴラァッッ!!」

 

ビターン!とジョン・マラコック卿の御立派様が良い音を奏でる。

 

*1
古のゲームで「THE 歩兵」というのがありまして…




やはり、アダム・ファッキン・スマッシャーにはジョン・マラコック卿が最もお似合いだ!
そこのあなたも、そうお思いでしょう?
是非もう一度ゲームを起動して、気の済むまでディルドの御立派様でワカラセてやりましょう!!
私はレベッカとデイビッドの仇を今一度、羞恥の地獄へと叩き落としてやりましたよ!
さぁ!後に続きましょう!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。