【エッジランナーズ2編開始】Good Luck‼︎ EDGERUNNERS !! 作:持麻呂
書き上がったので投稿します。
今回はリパーをする回になるので、あんまりテンポ良くないです。
案の定と言うか、メイルストロームにもちゃんとした資格を持ってるリパードクがいるのだが、このチームはあくまでも身内同士で改造し合っているだけモグリしか居なかった。
もちろん、そこら辺のモグリよりはクロームに詳しいし、自分たちの身体を弄っている分だけあって人体構造についての造詣も深い。
だが、本格的な専門知識があるわけではなし、このままやり続けていたら全員いつかはサイバーサイコ待った無しである。
聞けば、私とデラマンで創り上げた抑制剤もキチンと使っていないと聞く。
他のメイルストロームのメンバーは使っているのに、このタリアという少女はアラサカが関わってそうだから信用ならないと言うので、これには困った。
これの創薬にはアラサカは何の関わり合いも無いのだが、D&Sメディカルコーポレーションを立ち上げる前のNCサンダーランド・ヘルスケアサービングに仕掛けたM&Aの資金の出所をどうやってから探ったらしく、デラマン以外のもう一つの資金源が日本に近しいところであるということを何となく掴んでいるらしい。
アラサカ=日本であるという構図は今のナイトシティだとある程度共通認識であるので、デラマン診療所などにもどうやら警戒しているようだ。
流石にそこの出資者が私であることまでは掴んでいないようだが、やはりトラウマ保険プラチナコース加入者だけあって、親はその手の情報を入手し易いところに居るのだろう。
タリア・ヤン。ヤンと付くのだから中華系の血を引いていると見て良いなら、親は第一候補としてカン・タオの役付きとが浮上してくる。
まぁ仮にそうだったとして、だからどうしたという話なのだが、今回のことが原因でカン・タオとの関係悪化に繋がることもあるかもしれない。
その時はアラサカには頼らず自分で解決することになるだろうが、よっぽどのビックリドッキリメカが出て来なければ、その時でも何とかなるだろう。
とりあえず撮影するのだから、モグリがやってるのを撮るのは自分で証拠を残すようなもので、行政が後で何か言って来ることはないとは思うが、念には念を入れて私が行うことにした。
とは言っても、手脚のクロームの交換などジョイントを外して付け替えれば良いし、スタビライザーのインストールも開胸しなくていいのだから、やることは比較的簡単である。
「えっ、あんたがやんの?」
リパー台に身体を預けているタリアが、首だけをこちらに向けてそう言ってくる。
「そりゃね。君もモグリがやるより資格持ちがやった方が安心だろう?それに、本来私がやる時の料金は破格なんだよ。今回はロハでいいし、運がいいと思った方がいいね」
「なにそれ、私そんなの頼んでないし」
「だからロハなんだろう。勝手にこっちがやるだけだから、君は気にしなくていい。麻酔は使うかい?」
「どっちでもいい」
「じゃあ使っておこうかね」
ジェットのように吸引式の麻酔薬をタリアに吸わせて、早速手足を取り外す。
ジョイントから外して、カン・タオ製の二世代前の高級クロームを丁寧にリパー台脇に吊るす。
私の手元を映すように、ロマン少年が隣にやってきては患部をしっかりと撮影している。
撮られている当のタリアは、もう好きにしてくれと言わんばかりに目を閉じて上を向いていた。
今回インストールする新しい戦闘用義肢を持ち上げて、まずはジョイントを確認する。
大元は同じカン・タオ製らしいが、メイルストロームのカスタムが施されており、大胆な肉抜きによる軽量化とチタンによる強度補強が行われており、外観もかなり変更が加えられていた。
まずは腕を嵌める。
タリアの場合は二の腕や肘先からではなく、肩からスッパリと生身の腕を切り落としてジョイントを付けているらしいので、断面を合わせて少し捻りを加えながら押し込んだ。
カチャッと小気味良い音がして、しっかりと腕が嵌まった。
もう片方の腕も同じように接合してから、クロームの設定調節に移る。
「今から腕の感覚調整とかに入るから、受け入れてほしい」
「…」
うんともすんとも言わないので、肯定と受け取ってタリアのポートに手のひらからコードを伸ばしてジャックインする。
自動でまずはカント君がタリアの内部をクリアリングして、それから私が調整用のドライバを送り込んで作業に掛かる。
カント君が私の方に戻ってくる時、タリアの内部にコッソリとバックドアのようなものを仕掛けていたのは見なかったことにした。
最近のカント君の悪い癖で、入り込んだところに署名を残す怪盗のようなことがトレンドになってしまったらしい。
一体誰に似たんだかと思いつつも、今まで散々破壊工作に従事させていたのだから、仕方ないのかと半ば諦めている。
役に立つのか知らないが、いつかどれかが役に立つ日が来るに違いない。
ともあれ、早速調整を施す。
ノーマル設定では反応速度が遅過ぎるし、機敏にし過ぎても返って手足が絡まったり顔面にぶつかったりして危険なのだ。
あとは、視覚情報と脳の感覚機能、そしてクロームに元からある接触センサーの情報を統合させて、チョチョイと弄ってやれば擬似的にだが触感などを再現出来る。
とは言っても、ものに触っているというセンサーからの情報と、視覚情報を脳で処理して記憶から感触を再現しているに過ぎないので、目で見て認識している時限定にはなるが、感触があるというだけで不思議なことに人間性はかなり回復する。
抑制剤を使っていればこんな小細工なんてしなくても平気なのだが、使う使わないのは人それぞれなので、私がとやかく言うような話ではない。
やはり、ちゃんとしたリパーの仕事を間近で見ることは少ないのか、タリアのチームの連中も撮影の邪魔にならないところまで近づいてきて、私の手元を覗き込んでいた。
次に足を付け替えるのだが、既存の足を取り外して新しい足を持ってくると、新しい足の根本にはスプリングコイルのようなサスペンション機構が余計に追加されているせいで、ジョイント接合部の規格が合わずにこのままでは取り付けられない。
「これは、胴体側の受け口を取り替えないとそのままでは付かないね。これの受け口側は用意しているのかな?」
「あっ、ちょっと待ってくれ…これです」
ゴソゴソとパーツの入った真空パックを近くの段ボールから取り出して、こちらに手渡してきた。
一応滅菌真空処理をされていて、真空パックに穴は見受けられないので、カスタムメーカーの正規品なのかちゃんとしたものらしい。
「丸交換か…まぁ、ちょっと今のを外す時に痛むかも知れないけど、やってみようか」
追加でタリアに麻酔薬を吸引させて、意識を朦朧とさせてから受け口と胴体側の接合部にメスを這わせて慎重に剥ぎ取る。
以前行ったやり方があまり上手ではなく、一部が肉と癒着してしまっており、さらにその金属と相性が悪かったのか組織がシワシワになっていた。
あまり良い状態だとは言えないので、少しだけデブリードマンを施して傷んだ組織を切除し、バウンスバックを投与して修復を促しつつ新しい受け口を嵌め込めるように周りの肉を整形して、しっかりと装着した。
少し気になることがあったので、シワシワになっていたところの組織は持ち帰ることにする。
切り取った組織の入ったシリンジをインベントリに仕舞い込んで、もう片方の受け口を取り付けて足を嵌め込む。
今度はしっかりと装着出来たので、同じように感覚調整を施して手足は終わり。
あとは、左胸の脇にあるポートを開いて直接体内にアクセスして、スタビライザーを取り付けるだけだ。
用意されていたのは少し型の古いスタビライザーだが、未使用品を探してきていたのかこれもパッケージングされていた。
袋を破って取り出し、ポートを開いて肉が露出しているところを掻き分けて、心臓の近くに配置したら電極を脊椎に接続させるためのハブに取り付けて、同じように調整したらこれでおしまい。
アクセスポートを閉じる前に、念入りに消毒を施してから繋ぎ目をしっかりと閉じた。
「ざっとこんなもんか。ヴィクターならもっと早く出来るかもだけど、どうだったかな?ロマン君」
「……はぁぁ……」
呼びかけても返事が無いので、振り返るとロマン君がカメラを持ったまま固まっており、鼻から鼻血が垂れている。
「ん?」
なんだと思ったら、足の受け口を取り外す際にサイバーパンツが丸見えになっていて、局部こそ見えていないものの子供にとっては刺激が強かったらしい。
まぁ、小学6年生が高校1年生くらいのお姉さんのパンツを見たら、そんな感じにもなるか…
良くも悪くもナイトシティだと暴力と性はそこら中にありふれているし、否応無しに耳年増というかそう言った知識を得てしまうのも無理はない。
パッとタリアの下半身にシーツを掛けて、ロマン少年からビデオカメラを取り上げた後にハンカチを鼻に当ててあげる。
そこでようやくハッと我に返ったのか、顔を真っ赤にしてアタフタとし始めた。
今更遅いが、こうしていると年相応に可愛らしい。
つい食べちゃいたくなるが、流石にショタコンの趣味はないので鼻チーンくらいで済ませておいた。
デイビッドくらいの年齢なら、まぁ考えても良かったかなぁ…
いや、グロリアとジュディがいる事だし、流石に浮気になるからダメだな。
2人が悲しむ顔は見たくないものだ。
ともあれ撮影は無事に終わったので、コレの編集は私も一枚噛ませてもらうことにする。
流石にタリアのプライバシーの問題もあったりするので、こちら側の検閲を入れないでBDショップに持って行かせるわけにはいかなかった。
一旦中身のデータを私が抜き取って空になったビデオカメラを返却し、わーわー言っているロマン少年を一先ず無視しながら、追加の麻酔薬でいまだに意識朦朧としているタリアに対して抑制剤を打ち込んでおく。
意識がはっきりした時には、多分何をされたか覚えていないだろうが、一本でも使っているだけでだいぶ違うはずだ。
「さて、実際にリパーのやっていることを見て、自分たちの今まで行ってきた改造とどのくらい違うか分かったかな?」
「全然違いましたぁぁぁ!!サンコーになりまぁぁぁす!!あざまぁぁぁぁす!!」
「あ、今そういうのいいから」
「あぁぁぁっす!…あ、そうすか。すんません」
「君たちが足の受け口側を作ったのか分からないけど、正直言って仕事が粗いね」
「すんません、タリアの手足をやったのはオレたちじゃ無いっす」
「そうなんだ。じゃあ見当違いだったね」
となると、装着されていた手足の製造元と彼女の親の就職先第一候補を考えると、これがカン・タオの仕事になるのかと思ったが、感覚調整のためにタリアにジャックインした際にあっちこっちのログで見つかったのは、ナイトシティ・メディカルセンター*1の名前だったので、多分ここがやったのかも知れない。
もしそうだとしたら、アイツらとんだヤブ揃いである。
タリアの意識がはっきりするまで、ロマン少年を入れてタリアのチームの面々と談笑をして時間を潰した。
やはりメイルストロームということもあって、彼らはかなりクロームに対しての知識を保有していることが分かったが、逆に生身の人体についてはあまり深く知識を持っていないことが分かり、どうやって今まで人体改造を行ってきたのかと聞くと、ネットで調べたりリパードクのBDを観たりして覚えていったらしい。
流石に顔面、特に前頭葉にめり込む形で付けるような複合大型レンズとかに関しては、流石にメイルストロームのリパードクにやってもらったりしたようだ。
かなりの金額取られたらしいが、費用が高かろうが私も絶対その方がいいと思う。
「しかし、メイルストロームは我流のモグリが多過ぎるのは問題だね。抑制剤が作られてからはクローム由来のサイバーサイコになる人数はかなり減ったけど、それ以外の要因で発症する人は減ってないから、リパードクの資格は取れないにしても、やはりキチンとした訓練なり勉強は受ける機会を得た方がいいだろうなぁ」
「だけどよ…ですけど、オレらそんなツテや金なんて持ってないっすよ。リパーから教えてもらえるなんて、弟子入りくらいだと思うんすけど、オレたち含めて学がねぇ連中ばっかりだし、教えてもらったとしてもどこまで吸収できるもんですかね」
リーダーの頭頂部頭蓋骨剥き出し君が首を捻りながらそう自虐した。
だが、彼の言っていることも確かに一理ある。
メイルストロームにもリパードクは居るが、彼らはそこそこトーテンタンツや自分の店で忙しくしているみたいだし、教えてあげる時間も暇もないだろう。
それに金にならないことなんかやりたがらないに決まっている。
最近でこそ、ダム・ダムの頑張りによって識字率やその他の知識の普及率が上昇してきてはいるが、まだまだメイルストロームには自分の名前が書けなかったり、小学生の算数すら出来ない奴がそこそこいる。
自分たちの教義に関わることなので、他のことよりは覚えがいいだろうが、教えたところでどこまで定着させられるか分からない。
人材発掘だと割り切ってでもやるべきなのか…ダム・ダムと相談しなくてはならないだろう。
どれだけ効果が出るか分からないことに投資するのは正直厳しいものがあるが、私も少なからず支援してやれば不満もそこまで貯まらないはずだ。
「とりあえずダム・ダムと相談をして、その手のちゃんとした知識を得られる機会を定期的に作れないか、少し相談してみるよ。それだけでもだいぶ変わってくるはずだ」
「おぉ……!そいつは助かるぜ…ます」
きゃいきゃいとメイルストローム連中が盛り上がっているのを横目で見つつ、タリアも覚醒するのはもう少しかかりそうだ。
椅子に深く座り直しながら、インベントリから取り出したニコーラのプルタブを開けた。
D&Sとか、だいぶ昔過ぎて企業名すら忘れてました笑