【完結】よういふっ!   作:麿は星

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 時系列は、1年目の2月~3月(原作9~11巻あたり)。
 今話は一之瀬メインです。


1年生編9巻~11巻
過去と未来(前半、一之瀬視点)


 

『一之瀬帆波は犯罪者だ』

 

 少し前から放火されていた炎が学校中に燃え上がっていく。

 現状からこれをした人はもうわかっているけど、いつも私の胃をギュンギュンさせてくれる誰かさんに倣ってやり過ごそうと思う。正直、いつかこうなるんじゃないかって予感もあった。そう考えると、私の自業自得でもあるのもあってか、燃え広げている人達がどうでもよくなってくるから不思議だ。

 私のクラスは良い人ばかりだし、消火してくれる人の心当たりもあるから、じきに鎮静化するだろう。

 

 でも───別の意味で怖くなった。

 みんな、私のことを良い人や善人と言ってくれる。私が本当は違うと言っても謙遜みたく見られて信じてくれない。私自身はそうじゃないとわかっているのに、そう見られてしまう。

 これまでの16年で私に面と向かって「それはどうでもいい」と言い返してきたのは、たった一人だけ。

 私はその現実に恐怖していた。

 いや、厳密には恐怖と言えないかもしれない。嬉しさも感じていたからだ。

 

 しかし、今は過去に犯した罪と再び向き合うことになり、間の悪い体調不良もあって1週間以上も学校を休んでしまっている。

 必然、ネガティブな思考に支配されて、みんなに合わせる顔がないように感じていた。

 こういう時、直感で突き進む異質で滅茶苦茶な人もいるけど、流石に私の部屋までは来れないだろう。……来ないと思っていた。

 

「おっ、できた」

「ホント!? すごーい! 左京君って結構危ない特技も持ってるよね!!」

「……おい櫛田。誉めてんのそれ? 猫かぶりと邪悪の合わせ技やめろ。ともかく僕にできることはしたし、そろそろ帰らせて」

「は? なに言ってるの? ここからじゃない」

「え?」

 

 私が悩み始めてどれくらい経った頃だろうか。

 

「……おわっ、なにをする!? てか、網倉までだと!?」

「左京君じゃないと駄目なの! 千尋は言いくるめるからお願い! 帆波を……!」

 

 色んな感情が私の中でぐちゃぐちゃに暴れまわっていた時分、部屋の外から様々な音が聞こえてきた。話し声やガチャガチャいう音、なにか揉み合うようなやり取りだ。

 だけど、もっと整理してからじゃないと、心配をかけてしまったみんなを安心させられないと私が空回りしていたから、その声を聞き流してしまっていた。

 

「お前ら、いい加減にしとけよ。

 もしも僕がそれをやり遂げた時は、女子は全員裸エプロンで僕に傅かせてやるぞ? それでもいいのか?」

「は、裸エプロン先輩ぃいいい!!? って、現実でそれやったら紛うことなき犯罪者だからねっ!」

「誰が先輩だ。裸エプロンの王と呼べ。そして櫛田と早苗は前払いで傅け。今から君らの制服は裸エプロンだ」

「そこじゃない!! つーか、なんてこと連呼してんのよ!? 3バカ越えでも目指してんの!?」

「ほう? 神であるこの私に裸エプロンで傅け? 愛里ちゃんのいないこの場で良い度胸ですね」

「サイッテー左京君! 冗談でも今の帆波にそんなこと言ったら許さないからねっ!」

 

 それにしても、さっきから外?がそこはかとなく騒がしい。

 

「なら、男の僕にやらせるな。いくらその気にならない一之瀬とはいえ、女子の自室に放り込もうとするとか……。網倉ももっと友達の貞操について考えてやれよ」

「とはいえって、この人ほんっとぅに……!」

「でも左京君に一之瀬さんを襲うような精神性はないでしょう? それなら投げ込むだけ得なのでは?」

「「うんうん! そうだよね!」」

「お、お前ら……僕をなんだと」

「どっちの台詞? 左京君はたまには自分を省みた方がいいよ」

「省みとるわっ。僕ほどの完璧紳士に何を言う!」

 

 今は悩み事の方に集中したいのに、聞き覚えのある声が口々に騒いでいる。そろそろスルーできないレベルになってきた。

 

「それに愛里ちゃんを裏切るような真似を夢月さんがするわけないじゃないですか。いいから行ってきてください」

「だから押すなって!

……わぁーったよ! やるだけやりゃあいいんだろ!? 夢月、行っきまーす!……止めるなら今しかないよ?」

「「「さっさと行けっ!!!」」」

「はぅあっ! 尻が、尻がああああっ!!」

 

 綺麗に揃った掛け声、そして2発の打撃音と悲鳴。

 

「割れたんですか?」

「元から割れてるでしょ、お尻は」

「僕の尻を蹴りあげといてなんという言い種……! まさに邪悪というに相応しい」

「「もう一発カマしてほしい? 夢月さん(左京君)が望むなら」」

「……椎名や網倉も止めてくれないし。クソッ、なんでまともな女子がいないんだ」

「……類が友を呼んだんじゃないですか? 知りませんけど」

「この人っ……! 帆波や神崎君の苦労がわかってきちゃったよ……わかりたくなかった」

 

 何か大きな物が転がる音と変な会話を最後に、ようやく静かになった。紛いなりにも病人の部屋前で何をやっているのか。

 鍵をかけてるから、本当にただ騒がしいだけだけど、今まさに考えていた本人の声も混ざって騒がれると、なんというかこう……落ち着かない。

 話してみたい。でも今は会いたくない。怖い。何をすればいいのかわからない。

 この時の私の心中を端的に表すと、こうだったからかもしれない。

 

 

 

 いけない。どうも冷静でいられない。

 冷静になるために一旦整理してみようと、まずは思ったことを独り口に出してみた。

 

「どうすればいいの?」

「一之瀬の『好きに』すればいいんじゃね」

「シャ…シャアアアアーーー!!?」

「休み中に野生に還ってしまったか。猫じゃらしを持ってくるんだった」

「にゃっ!? にゃにゃにゃん……で???」

「ま、コイツならこれはこれで需要あるか。でも話が通じないと困るな。……まずは挨拶から入ってみるか」

 

 そんな状態だったから、入って来れないはずの彼が涙目で何故かここにいて、変化した答えが返ってきたことに疑問符で頭が一杯になった。つい四つん這いになって威嚇の声を上げてしまう。

 おずおずとした態度ながら無自覚に掻き乱し続ける彼も、怒涛の常識外れをぶつけてきて私の混乱に拍車をかける。

 

「あ、一之瀬。お邪魔してます。ちょっとの時間、部屋の扉をピッキングした犯人が滞在するけど見逃して? 本当はここに来るのは男の僕じゃなかったはずなのに、網倉や早苗達“4人”が僕を蹴り入れやがったから、クレームは後でそっちにまとめて頼む」

「え…ピッキン……え? は、クレーム……?」

 

 ガチの犯罪者じゃない、とはならず、彼ならおかしくないな、ってなるのは夢月君の人柄ゆえだろうか。呆然とした頭でそんなことを考える。

 

「夢月…君……? 本物?」

「はい、本物の夢月ですよ~。途方に暮れてるけどね」

 

 言葉通りにヤケクソ感を漂わせつつも、まったくいつもと変わりない態度。

 左京君のことだから気にもしないかも、とは思っていたけど……こうして目の前にすると、こう───不思議とすごく安心してしまう。わけのわからない感情の奔流付きで。

 私らしくない、よね。でも、困ってる人のところにいつもピンポイントで現れるこの人は。

 

───当然のように私のことも見逃してくれなかった。

 

 過去に罪を犯した『助けを求めてはいけない私』が、必死に抑えつけていたモノが溢れ出してくる。

 言葉を交わすだけじゃなく、どちらかが少し動けば触れ合える距離だ。意外、でもなく鋭く本質を突いてくる彼にはそれも見えているかもしれない。

 わけもわからないまま逃げ出したくなる。

 そしてそれ以上に、何かのタガが外れてしまった気がした。

 

 これがこの時だけの感情だとわかっている。明日と言わずとも数日抑えつけた後だったら、私の経験上、もっと落ち着いて対応できただろう。

 でも抑えていたモノを圧倒的な安心感で塗り潰されては、私が反射的にそこへ飛びこんでしまうのもわかってほしい。

 

「い、今だけ…今だけでいいから───少しだけ夢月君の胸を貸し……ん?」

 

 懇願するような言葉とともに勝手に動いた身体の言い訳のようなモノをしようとしたら、突然目の前が真っ暗になった。次いで頭?顔面?に襲ってくる痛み…痛み!?

 

「あだっ、あだだだだっ!! え、なにこれぇ!? すごく痛いっ!!」

「どうだ一之瀬? ジェンダーフリー・アイアンクローの味は?」

 

 何も言わずにいきなり抱き着こうとした私も悪かったけど、だからってこんな容赦なく力を込めて顔面を握り潰してくるなんて……!

 すぐに力を弱めてくれたから余裕ができたものの、考えてたこと全部吹き飛んだよ!

 

「そんなこと言ってるとまた炎上するよ!?」

「うるさい。僕は男女平等を体現する男。誰が相手だろうと奇襲は通用しないと知れ」

 

 抱き返してくれるとかは性格的にもなかったかもだけど、夢月君は常識に囚われてなさすぎる。

 

「前から思ってたけど、夢月君って私のこと絶対女の子扱いしてないよねぇ!?」

「されたいのか? ハッ、他を当たれ。僕は不適格だ」

「むぐっ! またそういうこと言うっ……」

「てか、むしろ女扱いしてたら問題だろ。お前、現状を考えろ。一之瀬の部屋で二人だぞ? 僕がお前を女として見てたら、とっくに襲ってるよ。危機感を持った方がいい」

「も、持ってるよ! 夢月君がそんなことしないってわかってるから」

「それが危機感ないって言ってんの。野郎が許可なく自室に入ってきてるんだし、さっさと僕を追い出せよ。扉前で封鎖してる網倉達にも、お前が一言注意すれば軽く実現可能だろ」

 

 密室で二人きりなのだから、私にだって意味はわかる。

 だけど……他の人ならともかく、夢月君がそんなことするなんて到底あり得ない気がしてならない。

 

「麻子達が扉を封鎖? 夢月君を送り込んだ上で……?」

 

 ああ、そうか。

 私が知る夢月君は、思考や理性というか本能的に他者を笑顔にするための最適解を選ぶ人だ。ここに連れてきた麻子達も、そう思っているから安心して“託した”のだろう。

 

「普通に心配してんだろ。ま、一之瀬には関係ないか。自己肯定感低いポンコツだもんな」

「うぐぅ! またポンコツって言った! だけど強引に女の子の部屋に押し入った上で、私の顔面を握り潰してきた夢月君の方がポンコツじゃないの!?」

「ふっ、何を愚かな……あ、あれ? でも確かに?

…………い、いやいやいや。これはポンコツってより、外道とか盗人猛々しいとかなんじゃないか……?」

「より酷いじゃない! しかも自分でわかってるし!」

「ご、ごめんなさい? し、鎮まりたまえ。常日頃お優しい一之瀬が、何故にそうも荒ぶるのか?」

「謝罪の言葉にさらっとアシ○カを混ぜないで!? というか、私を荒ぶらせてるの夢月君だからねっ!」

 

 だから、夢月君に顔面を掴まれたまま私らしくなく言い争う?落ち着くまでの数分間は───以前の“私が望んだ形”で心が軽くなる時間になった。

 それが私のその後に影響を及ぼしていたのだろう。

 

 

 

 仕切り直して、自分のベッドに座る私。

 時にいつもの軽口を叩きながら、勉強机の椅子に腰かけ、一定距離を維持する夢月君。月に一度、話し合う時と同じ距離感だ。

 お喋りな時と無口な時をランダムに入れ替える完全にいつも通りの彼は、慰めもなく責める風もなく私をじっと見つめている。

 

「夢月君」

「ん、あれ? ま、いっか。なに?」

 

 私が呼び掛けると、何か引っ掛かることでもあるのか夢月君は少し困惑した顔になった。

 人が悪いかもしれないけど、私にとっては安心できる顔だ。

 でも当然かな。いつも私の方がこの顔をさせられていたもん。ちょっとお返しできたみたいで、逆に落ち着ける。

 

「今更だけど、なんで私の部屋に?」

 

 だから、ようやく用件を聞けた。

 

「あー、なんかツラいことあって放置プレイして欲しかったんだろ? 邪魔してごめん」

「そ、それはいいんだけど……いや、よくはない。放置プレイって」

 

 いやいや、やっぱり今はそこは置いておこう。

 まさかとは思うけど、この人……学校中に広まっていた私の噂をほとんど知らないまま、麻子達に投げ込まれた? うん、こっちが正しい。

 以前に私と似た状況に陥った時の夢月君の振る舞いや、興味のないことにはとことん無関心な彼『ら』だからこそありえる。勿論、全く知らないわけじゃないだろうけど。

 

「悪いけど、僕は一之瀬どころか女子のことよくわかってないらしくてさ。なにすればいいとか全然なのに、何故かこんな現状になってるんだ」

 

 何気に夢月君は非常時、うちのクラスで精神的支柱になっていることが多い。私が休んでいる間、この人ならなんとかしてくれると思われて今ここにいるのかもしれない。

 

「だからまぁ、なんか吐き出したいことがあるなら僕にどうぞ? 急に動かれるとさっきみたく反射的に反撃しちゃう可能性はあるし、何もできないだろうけど、一之瀬が楽にはなる…ような気がする。勘だがな。

 ああ、もちろん話したくなければ、ほとぼり冷めるまで部屋の片隅を貸してくれるだけでいい。それと僕を追い出したいなら、外の連中なんとかして。個人的には最後を推奨」

 

 それは一時彼が槍玉に上げられていた体育祭の頃でさえそうだった。自分のことでいっぱいいっぱいになって硬直してしまい、私が動けなかった僅かな間に全て彼自身で片付けていた。それどころかどうしても調子が悪くなっていたあの時の私を逆にフォローまでされた。

……あんなやり方で信頼を示してくるのは本当にズルいと思う。何度も『あの動画』は見返してしまった。いや、本当に酷い動画なんだけどね。

 

「……んじゃ、外の連中が飽きるまで僕は寝させてもらうわ。ちょっとの時間お世話になる。悪いが一之瀬は諦めてくれ」

 

 夢月君は困惑を瞳に滲ませつつ、何も反応を『返せなかった』私を見て口を閉じ───行儀悪く椅子からズルッと床に寝転がった。

 直感的にわかった。

 本気で有言実行するつもりだ。

 本当に駄目な人だ。締まらない人だ。わけのわからない人だ。

 

「ぁ……」

 

 元気付けようとしたり、慰めたりの言動が一言でもあれば……下心の一つでも見えれば、警戒心を持つこともできたかもしれないのに、決して近づいてはくれない夢月君。

 自分の腕を枕に寝転がった彼に、なんというか少し強張りの残っていた身体から力が抜けた。

 

 そしたら何故かわかった。

 近づいてこれないのだと。

 苦手な私と二人きりなのが怖くて。

 よく見たら、2月の寒さとは違う緊張による震えらしきモノも見える。

 夢月君は裏表がないから、わかってしまえば簡単だ。

 

 不思議と心の中がスッキリした。

 嫌悪や恐怖とは違う『苦手』という印象。

 この印象を覆すのは難しいけど、夢月君の仲間になりたいならこれはおそらく必須条件だ。東風谷さんや櫛田さん、椎名さんが粘り強く積み重ねて得た前例もある。

 多分、私は夢月君の友達になりたいと思った。

 最初はただそれだけだったのかもしれない。でも今では……どうしても頼ってしまう。余裕がない時に本人を目の当たりにすると、支離滅裂な思考がどんどん変な方向に行ってしまう。

 

「じゃあ…あの。私の話、聞いてくれる?」

「ん、いつでもいいよ。好きにしなー」

 

 なぜなら転がりながら半目を開けて私を見る夢月君は、態度や言葉とは裏腹に───。

 

「私ね。中学の時に……」

 

 気づけば、私は胸につかえていた黒いモノを吐き出すように、ここしばらく学校に蔓延していた噂の一部が事実だと告白していた。

 中学時代にしてしまった万引き、お母さんにこっぴどく叱られて謝りに行った事、お店の人は許してくれたものの引きこもった半年間。南雲先輩に話したのよりも深い部分まで洗いざらい……。

 私が話してる最中も話が終わっても夢月君は口を挟まず、興味ないと態度で示しているような『演技』をしつつ、真剣に聞いてくれた。

 全部吐き出し一息入れると、今度は視界が歪んで知らずに握り締めていた私の手の甲に水滴が落ちていた。

 

「う、うぅ……」

 

 夢月君は全てを受け入れてくれるような独特な雰囲気がある。それはとても残酷なことでもあると思えた。

 だってそんな資格は『咎』を隠そうとした私にはないから。ないはずだから……。

 

「……ひっく…夢月君は……私を…助けてくれる?」

 

 それをわかっていたのに、気づいたら感情が溢れてきて止まらない。ボロボロと零れ落ちてくる涙と、喉の奥から情けない言葉が私の口から漏れてくる。

 それでも。身勝手で厚かましく私が悪いのは承知の上で、今は。今だけでいいから───私に乗り越えるための力を貸して欲しいなんて……。

 

「当たり前だ。

 お前は人に頼るの下手すぎなんだよ、馬鹿め」

「当たり前、なんだ……。夢月君にとっては…うぅ、うっ……」

 

 きっと私は自分の想像以上にツラかったんだろう。

 それでも我慢は……時間をかければ、おそらくできたと思う。独りで心を沈めていくのは一度経験している。だから今この瞬間でなかったら、こんなみっともない姿を晒すことはなかっただろう。

 しかし私の近くには、いるはずのない人がいた。

 そう。左京夢月という何故かいつも、必要な人の前に、必要な時に、必要なモノを持って現れる人が。

 それはまるで───。

 

「そ、そそそれにどっかで、そうなる前に逃げろって言っただろ」

「うぷっ…うー☆」

 

 一方、私がこうなって驚いたのか寝転がっていた夢月君はムクリと起き上がり、恐る恐る近づいて私の顔にハンカチを強く押し付け、不器用な『気遣い』とともにゴシゴシと拭ってくる。その私以上に動揺しているのがわかる姿に、可笑しさがこみ上げてきてちょっと落ち着く。

 場違いだけど、なんか野生動物がやっと少しなついてくれたような嬉しさも湧き上がって色んな感情と混ざり、私に更なる変なスイッチが入った。

 

「て、てか、ツラい時はツラいって言えよメンドクサイ。不適格な僕じゃなくても、お前を助けたいって奴なら多数いるからな」

「…………ふ、ふふ。そう、だね。ここしばらくの私、馬鹿だったかも」

「……あー、もう…えっと、ふぅ。……ヨヨヨヨシッ! こうしよう!

 い、一之瀬が『次』に駄目になったら、おっぱいもぎゅもぎゅの刑かおしりペンペンの刑に処す。ドMの変態的には嬉しい刑罰かもだが、本気で僕が執行しに行くからな? その年齢とドスケベボディだ。楽しみでしかたないな、げ、げへへ?

…………セクハラされるのが嫌なら好きな奴でも親友でもいいから、素直に誰かを頼れよ?」

「ぁ……夢月…君……あ、う……」

 

 そして当たり前のように、私が一番欲しかった言葉をくれる。

 本気が見えないセクハラ風味に。『次』というさりげない言葉に込められた意味に、せっかく抑えられたモノが再び溢れてくる。

 私の最後の引っ掛かりと一緒に……。

 

「ごめんなさい…お母さん……ごめんなさい」

「お母っ…はぁ。いいさ、見ない振りしとくから、今は好きに泣け。僕はなんとかして帰るから…って、お、おい一之瀬?」

 

 あんな台詞を言っていたのに距離を離そうとする夢月君に、私は思わず手を伸ばす。

 

「……うん。好きにする。だから、今だけは───」

 

 顔を拭ったら、空気も読まずに速攻で離れようとする夢月君の背後ろから腕を回して抱きつき、星之宮先生を見習って離さない。

 せっかく蓋をしようとしてたのに、この人が物理的にも精神的にも抉じ開けたんだからこれぐらいは当然だろう。頼っていいって言ってくれたんだから、最後まで頼らせてもらう。

 というか、ここまでやって、なに普通に帰ろうとしてるの? こういう時って、黙って胸を貸してくれるものじゃないの? 私の心を全部晒け出させておいて、自然体でいつものまま変わらないのはホントどうなの?

 改めて考えると、どんな印象を持てばいい人なのかわからなくなる……。

 でもそんな夢月君の身体は男の子らしく広く硬めで、されどとても暖かかった。彼が口に出してないのに心から思っている事が伝わってくるから───。

 

「……………………妹の次は母かよ。僕っていったい……」

 

 落ち着いた後で絶対伝えよう。

 心配してくれてありがとう、そしてごめんなさい、と。

 ボソッと零す夢月君の背中に顔を埋めながら、私は彼の周りに変わった人が多く集まってくる所以を理解し始めていた。

 どんな形であれ、この人は絶対に裏切らない。

 不思議とそう確信させてくれる夢月君の近くは居心地がいい。

 

……ただ、それはそれとして。

 

……………………今日の私のこと、全部忘れてくれないかな。

 

 我ながら困ったことに、すがりついてしまったのが恥ずかしすぎて夢月君の顔が見れない。たくさん泣いて酷い顔なのを差し引いても、途中から耳まで真っ赤になってた自覚があった。次からどんな顔して話せばいいのかも皆目見当が付かない。涙が止まって少し冷静さを取り戻してからも、しばらく顔が上げられなかった。

 

 自分で言うのもなんだけど……認めたくないものだよね、若さゆえの過ちって(夢月君風に)。

 過去をぶちまけたことと、謎テンションの変なスイッチが入ってやってしまったこの代償が、私の内心に大きな変革をもたらしていたことに。

 知らず知らずのうちに、最初から自然と下の名前で夢月君を呼ぶようになっていた自分自身に。

 この時の私は気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合宿から約1ヶ月後の2月中旬。

 CPが伯仲する中で行われる学年末定期テスト直前、学年最後のトラブルが発生しようとは数人しか想像しえなかった。

 爆弾をせっせと仕掛けていた誰かさんの策略で学校内を駆け巡っている誹謗中傷によってか、僕のクラスのリーダー・一之瀬帆波が1週間以上を病欠する事態になっていたのだ。

 

 それがうちのクラスや学校内はおろか、愛里や早苗、友達連中ほとんどまで巻き込み、僕をも呑み込んで拡大していくことになろうとは読めなかった。僕の目を持ってしても……!

 いやまぁ、この元ネタの軍師って実績はほぼ皆無だから、むしろ読めないのが正解なのかもしれないけども。

 

 ただ早苗や櫛田、椎名まで網倉達に協力して一之瀬の部屋に投げ込まれたが、僕は結局なにもできなかった。シャツの背中に、一之瀬の目から出た液体が染み込み、貼り付いて不快だったのを我慢したくらいだ。勿論、自室に帰ってから即風呂に入って洗濯機を回した。入浴しながら、改めてさっきのやり取りを思い返す。

 

 あらかじめわかっていたことだが、情報も表面的にしかわかっておらず、一之瀬のことすらほとんど知らない僕では、相談者として不適格だったのだろう。

 何故、そんな僕をあいつらが投げ込んだのか理解に苦しむ。

 一之瀬との会話?の流れも、最後までどうしてああなったのかわからず終いだ。せいぜい僕の下の名前を呼び始めたことと「今だけ」とやけに言うな、ってのが引っ掛かった程度。本当は何がツラくて、何に苦しんでいたのか。助けは求められたものの、本心の理解にまでは到達しなかった。

 

 僕はただ泣いている一之瀬の体温を背中に感じながらオロオロしてただけだ。泣き終わってそこそこの時間を経て落ち着いたら、お礼と謝罪されただけという体たらく。引きこもった奴への対処や心情なら、それなりに理解できるという自負は木っ端微塵である。

 しかし、泣き止んでしばらく静止した後の彼女はもうジメジメしておらず、真っ直ぐ僕を見て言葉を発していた。いつもの陽キャとまではいかなくとも笑顔で、涙の跡も気にならないくらいスッキリした顔だった。

 あの雰囲気を見る限り、もう一之瀬は大丈夫。きっと、たぶん、おそらく、めいびー。曖昧にも見えるかもだが、僕が確信を持てる程度には安心できる雰囲気になっていた。

 

 だからやきもきしながら待っていただろう網倉にメールを送り、思いのほか滞在時間が延びてしまった一之瀬の部屋を後にした。部屋の外に陣取ってるかと思ってたら、僕を一之瀬の部屋に押し込んだ奴らが誰もいなかったからだ。おかげで普通に出られた。

 ま、テスト前で時期が悪かったとはいえ、1週間くらい休むなんてあっても別に不思議ではないし、網倉達の取り越し苦労でもあったのかもしれない。心配するまでもなかったんじゃないかと思うほど普通に立ち直ったのだから、本来は僕もいらなかったのだろう。

 

……僕が彼女持ちの案パイとはいえ、一之瀬に手を出そうとしてたらどうするんだ。愛里や早苗もそうだったが、一之瀬含めて妙に危機感のない奴らが多すぎる。いや、モテない男に彼女ができた時の心理をわかっているというべきか。早苗の言っていた愛里にフラれる可能性を考えると、他に手を出すリスクは到底許容できない。

 女子とは、なんとも男の純情を利用する非道な生物である。

 

 

 

 僕が一之瀬の部屋に投げ込まれたのは金曜(2016年2月19日)だったので、次にクラスメイト達と顔を会わせたのは約3日後。端末を基本放置してた上に、バイト以外の外出はせずに寝て過ごしたから、愛里以外の誰とも会わなかったのだ。

 月曜、いつものようにギリギリの時間に登校したら、何故か出入口にいた一之瀬から「キターンッ!!!」って感じの挨拶をされた。迸る聖属性攻撃によって朝から灰になりかけた。コイツの奇行は疲れるので勘弁してほしい。

 愛里や早苗の奇行が感染でもしてるのか、意味不明な挙動をする奴が最近になって増えている。由々しき事態だ。

 まぁでも、珍しくはあっても何が変わったわけでもなし、元からパワーアップしただけならなんの問題もない。一之瀬は、僕との関わりもそう多くないしな。

 

 ただ、一之瀬はお礼だとか謝罪だとか“らしくなく”モゴモゴ言いながら、昼休みになるとお菓子をくれた。細かいところは置いとくと、餌付け目的だったとしても義理堅いものだ。

 すると白波が網倉から羽交い締めにされつつ、謎に睨み付けてきたので、一之瀬にもらったお菓子を何粒か摘みながらこれ見よがしに褒める。

 

「美味い。良い物を選ぶ目を持ってるな一之瀬。きっと君は気遣いのできる良いお母さんになるよ」

「ウッ、ウニョラー!? トッピロキー!!」

「千尋ぉーー!! 気軽に人間やめようとしないで!?」

「お母さん……」

 

 複雑な表情を浮かべる一之瀬を置いといて、みんなにも聞こえるよう言い放ったら、白波はいつかの清隆のように人語を失って暴れ出しかけた。何人かの狂信者も共に。

 

「ハッハッハ、僕が羨ましいか? ざっまぁ、一之瀬のファン共! むはははっ! と煽りたい欲求を僕はなんとか抑え込んだ」

 

 なので、僕は当然のごとく無駄に煽り散らした。なんとなくのノリである。

 中でも柴田と白波の反応が特に良く、やめられない止まらないかっぱえびせん的な味わいがある。

 

「抑えてねぇんだよ! 〆るぞこの野郎!!」

「こきかきこきくけきききっ!!!」

「気持ちは大いにわかるが落ち着け柴田!! 左京を殴るのは試験が終わってからだ! 今はマズイ!」

「千尋、抑えて!? すっごい怖いから!」

「にゃ、にゃはは……。みんな相変わらず元気だねぇ」

 

 嗚呼、イケメンや狂信者どもが囀ずるのを見るのは実に心を豊かにしてくれる。今なら妬みエネルギーを集めた元気玉も作れそうだ。

 網倉はいつもツッコミ&ブレーキ役ご苦労様である。

 てか、何気に物騒なこと言ってたりするのに、元気の一言で包み込んでしまう一之瀬の包容力よ。改めてドン引きである。

 

 一之瀬は苦笑しながら平常運転に戻ったようなので、僕もなにも気にせず教室を抜け出し、そのまま屋上に行って一人で昼食と昼休みを満喫した。冬のピリッとした気温や空気も吹き飛ばす晴れ晴れとした気分だ。

 それにしてもあの菓子。数日前にも自室へ訪ねてきた愛里と早苗、他数名にも貰っているし、女子の間でそういう風習が流行っているのかもしれない。『俺』の時は多分なかった流行だし、いい時代に当たったものだ。

 

 一応アフターケア目的で、無理してないか何度か一之瀬の様子を窺ってみたが、数日前と違って不安を感じる雰囲気は彼女から消え失せている。ついでにクラス内も完全に、とはいえなくとも中心が戻って来たことで元の明るさを取り戻していた。

 僕は当たり前のことしか言えず、理解すらできなかったのに……精神的にはおっさんなのに、無様なものだ。

 それでも2月末にある定期テストの約1週間前に復活してくれたのは、一之瀬が1年間で築き上げてきたモノを裏切らなかった証明でもあるだろう。これならテストもきっと大丈夫。

 

 それとおそらくだが、一之瀬が自分で自分を立て直した結果だと思われる。もしくは確率は低そうだけど、誰かが僕が去った後に復活させたか。

 なんにしろ強い奴だ。

 言葉責めとかすると時々嬉しげな態度で対抗してくる生粋のドM&ドSなど多属性ハイブリッドの変態だが、陽キャの頂点に立つカリスマ性は間違いなくある。なら、なんらかのきっかけや刺激を与えれば充分なのだろう。

 

 坂柳さんや龍園……それに清隆は、前に一之瀬には甘っちょろく欠けてるモノがあってリーダーには向かないとか言ってたが、僕はそう思わない。

 一之瀬の部屋に行く前に何人かから聞かされたところから想像すると、足元を崩されていくような感覚を味わってた中で、ほぼ自力で壁を乗り越えるなんて普通ならできないと思う。少なくとも僕には無理だ。

 相違はあっても、あれは前の『俺』の退社後の状態に近かった。

 ちなみに、その時の『俺』が自分の立て直しに要した期間はおよそ数年だ。それと比べれば僕との差は歴然としている。

 やはり一之瀬は聖人型異常個体だという認識を強くした。

 

 

 

 

 

 さて、それからしばらく経過し───来るべき3月14日である。

 僕は覚悟を決める必要があったため、昼休みの教室で一人、呪文詠唱を行っていた。

 

「臆病は許されない」

 

 1ヶ月くらい前、僕はお菓子…チョコレートを何人かからもらった。

 それが先日の早苗の誕生日、「バレンタインのお返しも期待してますね」とネタバレされて存在を思い出したためだ。一之瀬からチョコをもらって煽った時のクラス中からの注目とその後の無意味な襲撃は、これが原因だったと思われる。

 しかし両方とも僕と縁遠すぎて存在ごと忘れていたが、このイベントは約1月後の地獄イベントとセット。

 つまり本日が決起すべき日時である。

 乗りきるには、不退転の決意をもって突き進まねばならない。

 

「体温と脈拍の上昇はなんとか収まった。だが、手には僅かに発汗が見られる」

 

 なにやら教室中から奇異な視線を浴びているものの、そんなことは関係なく自分を鼓舞する。手はズボンでゴシゴシしておいた。

 

「ふ、ふはははっ。心躍るものだな! この僕がプレッシャーを感じているのか……面白い!」

 

 実際にそう思っているかはまた別の話だが、今はブーストが必要なのだ。

 窮地を笑い飛ばすことこそが僕の美学である。

 

「こんな素晴らしい経験ができるなら、恐れや躊躇いなんか考えてる暇はないな」

 

 ミッションの達成条件を整理し、やることを明確にしていく。

 

「できる……! 僕ならできるに違いない! 実に簡単なことなんだ!」

 

 というわけで、自己暗示も兼ねた心の一方は完了。今の僕は鵜堂刃衛だ。

 さあ、往くぞ……!

 愛里と早苗、他数名なら、こんな覚悟を決めなくてもいいが、大々的に教室で義理チョコを渡してきた一之瀬相手だとそうはいかない。

 チョコを貰った日はまだ普通だったのだが、それ以降は一度たりとも話もしてないし、目が合うこともない。合いそうになると、いきなり忙しそうな素振りを見せて何処かへ行く。最近は、会話どころか接触自体がなくなっている一之瀬なのだ。

 一時期はこれが通常だったから、元に戻ったと言えなくはないものの、月イチの会話さえ成立しなくなっている…露骨に避けられている現状である。

 

 おそらくだが、ついに完全に一之瀬から嫌われたのだろう。

 度重なるセクハラやおちょくりに煽り、逃亡・痴漢・不法侵入。この1年で彼女に降り積もらせてきたモノを思えば、ある意味当然であるし、納得もできる。

 しかしチョコを貰ったタイミングで、というのが問題だった。最近では全く話さなくなった人気者女子である一之瀬と接触する必要があるからだ。

 こういうのはきちんとお返しをしないと、釣った魚に餌をやらない某人物達と同類と見做されるらしい(櫛田談)。有象無象はどうでもいいが、流石に友達連中から南雲や清隆のように見られるのは最悪すぎる。

 

 チョコを美味しく頂いている時には見抜けなかった。この僕の目を持ってしても……! もし一之瀬がこれを狙っていたとすれば、大した策謀家だ。

 ともかく人でなしの評価を避けるには、まずなんとかして男女問わずいつも囲まれている一之瀬への道を切り開かなくてはならない。

 ゆえにこそ、僕は擬似的な英雄ムーブで周囲をドン引きさせた。そしてモーゼが海を割るように人並みを割って、一之瀬の元へ直進し、ブツを差し出す。

 

「お返しだ一之瀬……! お前の策は破ったぞ。残念だったな」

「さ、策? むむむちゅき、くんは何を言って……」

「……またこの男は妙な勘違いを」

「……だろうね。左京君、いつも致命的に変な発想に辿り着くから」

「ふっ、ハッピー?ホワイトデー一之瀬。次は上手くやるんだな」

 

 すると策を破られ、狼狽えた素振りを見せる一之瀬。と、おかしな呟きを溢す白波&網倉。

 逆に僕は、困難なミッションをやり遂げた達成感を露わに勝ち誇った笑みを浮かべる。

 陰キャが陽キャ集団の只中に突っ込むのは、高く険しい心理的ハードルがあるのだ。達成感が凄まじいのも理解できるだろう。

 

「ありがっ……ん?」

「んん゛っ!? え、なにこれ??? タッパー?」

「うむ。中身は手製の月見団子と餡・きなこの詰め合わせだ。お好みでどうぞ」

「「「団子……」」」

「ホワイトデーにこれって、どういうセンスよ……」

 

 気分上々でお返しを渡しながら聞かれた内容物を説明すると、一之瀬含む3人は仲良く鳩が豆鉄砲を食ったような顔で半透明のタッパーを覗き込む。

 なんかいた姫野にはダメ出しされたが、お菓子にはお菓子を返すべし、と早苗がニヤニヤしながら教えてくれた。

 怪しくは感じても、性格が腐り果てていても、生物学的には一応女子の助言だ。できることなら従っておくべきだろう。

 

 そもそも手の込んだ洋風お菓子とか僕に作れんし、昨日の日曜にデートがてら覗いたショップの売り場は、リア充カップルの結界が張られてて愛里と一緒に敵前逃亡したくらいだ。あんなところにはとても行けない。僕と愛里もカップルだという正論は捨て置く。

 だから最適解が不可能ならばと、月見の時によく作る団子セットをお返しにした。和風な菓子でも、お返しはお返しだし問題ないだろう。

 ちなみに、友達連中からはチョコをくれた人の要望に応えた物品を、暇な時に工作室で製作してたモノの中から(愛里にはボトルシップ、早苗と椎名には模型とブックカバー)選んでもらっている。ただ借り1ね、と言ってきた櫛田は保留。それと一之瀬は前述の理由で要望を聞けなかったため、団子にしたわけだ。

 

「夢月君らしいね……。改めて、ありがとう」

「どういたしまして。

 ああ。今晩、天文部で月見するから、よかったらそれ持って参加して。醤油とかのしょっぱい系も準備してるからさ」

「…………ふふっ。にゃはははっ! うん、私も是非っ!!!」

 

 ともあれ悟ったような顔でお礼を言われたので、こっちの方が好みかと月見への参加と別の味を示してみたら、一之瀬は久しぶりにいつもの明るい笑顔を見せて力いっぱい参加表明をしてきた。

 そういうイベントだからチョコにしただけで、しょっぱい系の食い物の方が好きだったのかもしれない。次があるようなら、みたらし団子や五平餅も選択肢に入れておこう。

 しかし、これで許されただろうか? まぁ、この聖人から避けられてたのは微妙に面倒だったし、表面だけでも普段通りに持ち直したのなら言うことはないが。

 

 僕はブラック的なモノや負属性っぽい雰囲気が嫌いなのだ。

 誰かがそれを漂わせてたら、できることをして払拭するのが楽しく過ごすコツだろう。

 優しい奴には優しい未来の道筋が想像できるのが僕の好みである。





 今話は、一之瀬関係のいくつかのフラグを折らなかったIFになります。トラウマへの対処はしたし、耐性も付けた。総合的には多少好感度も上がったはず。これだけやれば、この一之瀬も友達に含めて大丈夫でしょう。

 ネタ帳に眠ってたからバレンタイン・ホワイトデー用(作中時系列も近いし)で1話に整えて作中日時に合わせて投稿してみたけど、ようキャ本編と違う部分もあるので、あくまでIFだとご了承ください。
 ちなみに折られたフラグは、『ようキャ』の3章~5章、オマケのEXあたりにいくつかあると思うので、よかったら探してみるのもいいかも?

 あ、やらないと思いますが、一応注意。
 一之瀬の状況と性格上、彼女を笑わせて締めさせてもらいましたが、ホワイトデーに団子を返すのは女子的にマイナスポイントらしいので、やらない方が無難です(リアルで1敗)。
 あとこの時期の話ですが、けしてAOE攻撃(Area of Effect)のつもりはありません。

……さて、もう1つ。
 蛇足で長めになりますが。どうしてもどこかで吐き出したいことがあるので、すいませんがここで。今話を書いた裏の動機も絡みますが、ただの感想?愚痴?みたいなものですし、ここから数行のスペース下はスルーしても大丈夫です。むしろスルー推奨。






 考えてみたら、『ようキャ』本編では鬱フラグと一緒に綾小路と一之瀬の恋愛フラグが完全に消滅してるわ。ピンチに陥りそうもないわ。陥ったとしても綾小路が介入する余地もないわ。このままだとマジで一之瀬が喪女街道一直線になりそう。原作とどっちがいいかは微妙かもだけど。
……てか、それより『ようキャ』完結させてから2年生編ラストまで読んだ原作が、ね? 原作批判のつもりはないですが、どうしても吐き出したくなった。
 そう。

 原作だと、一之瀬含めてみんなアレすぎるだろぉおおお!
 溜め回っぽいならまだしも、物語でくらいはもっとこう、明るさとか安らぎとか大事にしてさあ!
 最終的に胃が痛くなるような展開予想しかできないのホント勘弁してくれよぉおおお!!
 私にはバッドエンドか、綾小路と極少数『だけ』にとってのハッピーエンドな結末しか想像できなかったんですけど! 騙し合いに暴力等々、負の側面ばかりが幅を利かせすぎだろ流石に! ここ曲がりなりにも高校だぞ! と。

 例えば今話は一之瀬メインの話だから一之瀬周りに言及すると、結果的に最初の足掛かりにされた一之瀬の母と妹は、ある程度でも知ることがあったら精神を病むレベルだぞ、アレらの『成長』とやらは。一之瀬自身も我に返る頃には食い尽くされてボロボロだろ。絶滅危惧種の稀少生物『だった』んだし、少しは保護してやってくれよぉ……。頼むから。
 佐倉愛里の一件から原作読むのしんどくて止めてたけど、更に連続で色んな奴をズンドコの底まで落としてるとは。
 物語の登場人物や展開をどうこう言ってもしょうがないし、ナンセンスなのはわかってるけど! 男女ともに変に歪められて、強みを活かされることなく、次々と退場or泥沼になっていく人物達を見てマジでなんとかしたくなったわ!

 ってのが、『ようキャ』のオマケ4話と今話を書いた裏の動機です。愚痴っぽいのを活動報告に残すのはなんか嫌だったので、後書きに入れました。
 早苗や櫛田と同じく、誰かとまともな恋愛する想像ができない一之瀬だけにすごい子供扱いしてますが、どうか見逃してください。幸せ成分を少しでも自給自足したいんです。

 とっ散らかった書きなぐり、お目汚し失礼しました。
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