もしかして:転生者   作:イロハニホテプ

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プロローグ

 

 

 

 

 

俺は今、雨の降る街中を、ヨレヨレの部屋着を着た、小汚い格好で歩いていた。

 

俺は絶賛追い出され中の、24歳ヒキニートだ。高校1年から学校に通うのをやめて、ガムみたいに部屋にくっついて、今の今まで家族に寄生して引きこもっていたな。

で、そんな俺がなぜこんなところを歩いているかというと、家族が水面下で行っていた俺追放計画にまんまとハメられたからで……

 

ああ、くそったれ。何をしても、上手くいかない人生だった。(ナニをするのは上手かったがな)しまいには追い出され、このまま野垂れ死ぬのが関の山のこの現状。

 

いま街中を歩いている俺の体はゲーム、アニメ、インターネット漬けの生活と、飯をろくに食わなくなったことでほとんど皮と骨だ。

だけど、それには親の真摯な呼びかけにも耳を傾けず、現実から逃げ続けた俺の罪悪感が表れているのかもしれない。

罪悪感に耐えられなくなった。そんな自分勝手な理由でも、あるいは、部屋から出ていれば人生をやり直すことも……

 

 

——お前がなにもしなかったんだろ。

——お前が努力しなかっただけだろ。

——それは都合のいい妄想だ。

——もう見放された。

 

「………」

 

 

なんでこんなことになったんだろうな。思い当たる節なんてないのに。

 

……嘘です思い当たる節なんていっぱいあります嘘ついてごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 

「ごめんなさい」

 

つい頭で考えていた言葉が口から零れてしまった。

引きこもりあるあるだ。

俺の精神も限界ギリギリかもしれない。周りから見たら、クスリでもやってるように見えるのだろうか。

 

そんなことをするからか、さっきから周りの視線が痛い。

あ、あいつハゲの癖に俺をゴミを見るような目で見てきやがった。

そんなことよりお前らみたいのは頑張って髪生やすことでも考えとけよ。クソが。

 

そんな益体もない思考をめぐらせながら、傘も刺せずトボトボ歩いていた俺だが、ある現場を目撃した。

高校生と思われる学ランの男2人と、セーラー服の女1人。どうやら痴話喧嘩をしているようだ。

 

(おー、やってるやってる)

 

俺は遠くからその現場を見ていて、そんな感想を抱いた。

どうせならあそこに凸でもしてみようか。

やせいのふろうしゃのおとこあらわれた!

こうかはばつぐんだろう。あの空気をぶち壊せば、少しは気も晴れるかもしれない。今の俺は無敵の人。追い出さた時点で近いうちに死ぬことは覚悟していたし、最後くらいハジケてみようか。

 

そう考えていたそのとき、それは現れた。

 

 

トラックが、男女の元に猛スピードで突っ込んできていたのだ。

 

それに——

 

 

3人の男女は気づかなかった。

 

俺は瞬時に踏み出した。

裸足だったので踏み込んだ足が酷く痛んだ。だが、それでも

 

——体が勝手に動いたのだ。

 

最後くらい、人助けでもして気持ちよく死にたいと思った。

いや、それは後付けの考えだ。俺があの光景を見たとき、俺は違うことを考えていた。

だけど、思い出せなかった。

ああ、これも引きこもりあるあるかもな。さっき考えていたことが思い出せない。RPGをするときには大いに困らされたものだ。

 

それに、あいつらが死ぬよりも俺が死んだ方が社会的にもいいことづくめだ。最近話題の少子化問題も、あいつらの方が貢献するだろう。ほらな、いいことづくめ。

 

——はは。

 

自分でも何を言っているのか分からなくなってきた頃、俺は声を発して「トラックが来る」と警告しようとしたのだが、悲しいかな、俺の声帯は数年間に渡る引きこもり生活により退化してしまっていた。

けれども体は動いていて、俺の手はトラックに背を向けている少年の腕を掴んだ。

 

よし、まず1人。

 

そう思った俺に予想だにしなかったハプニングが起こった。

 

俺の目の前に、俺みたいに少年の腕を掴んだ、俺みたいに小汚くて、デブな男がいた。鬼気迫った表情で、引っ張りだそうとしているように見える。その場合、まずい。

 

そう思った頃には、時すでに遅し。

デブの男の腕力は少年と俺1人くらいなんなく引っ張れるくらい強くて、そして少年は助かったのだが、俺は突然の事態に対処できず、手を離してしまって、少年がいた場所に転がされてしまった。

すなわち

 

トラックに轢かれる——

 

世界がスローモーションになった。

これが走馬灯か、と俺は思った。いや、違ったっけ。まあ、いいや。

 

視線は動かなかったが、視界に入ったものは認識できた。デブの男は自分の体重を支えられなかったのか、俺と同じように道路に投げ出されていた。ざまぁみろ。あんたは俺と一緒に死ぬんだ。

だけど、この人も、あの少年を助けようとしていたのかもしれない。そう思うと、少しだけやるせなくなった。少しだけだが。

 

残りの男と女は大丈夫かな。あ、やりたいゲームもあったな。あのアニメも、まだ見れていなかった……

そんなことを考えながら、おそらく人生最後の時間を過ごす。

 

——世界が少しずつ、加速し始める。

 

背後が淡く光った気がするが、それも気のせいなのだろう。

 

浮浪者のおっさん2人が一緒にトラックに轢かれて死亡。これは傑作だ。明日のニュースとか、ネットの掲示板でも話題に——

 

瞬間、俺と、デブの男はトラックとコンクリに挟まれて、赤色の絵の具をぶちまけたみたいに潰れて死んだ。

 

 

 

 

 

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