もしも孫悟飯が修行していたら~未来編~   作:名もなきWater

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とりあえず完結まで執筆してから小出しにして、一週間に一話くらいのペースで投稿しよう!
……と思ってたんですが、筆が止まってしまったんで書けてる分をちょっとだけ投稿します。①
(とりあえず三話分)


未来での再会

 ◆

 

 ――悟飯は呆然としていた。

 孫悟飯、孫悟空、ベジータ、そしてトランクス。四人のサイヤ人は未来に平和を取り戻すため、タイムマシンに乗って未来にやってきた。

 ……彼らを待っていたのは廃墟。街を照らす人工の光も、道を行き交う車も、ここにはもうない。

 空には暗雲が立ち込め、陽の光は殆ど届かず。

 かつて栄えていたであろう街は、何もかもが壊し尽くされていた。

 想像を絶する光景を前にして、悟飯は言葉を失う。悟空の顔から笑みが消える。ベジータは苛立たし気に舌打ちする。

 

「ブラックは……いないようですね。皆さん、こちらです」

 

 そしてトランクスは――普段と変わらない様子で、三人を案内しようとした。

 彼はいつも通りで、まるで動揺していない。

 それはつまり……この廃墟を見慣れてしまっている、ということだ。かつて人間が暮らしていて、何者かに滅ぼされてしまったこの街を。

 

「……はい」

 

 悟飯は唇を結び、胸に湧き上がった感情を全て飲み込む。

 トランクスはタイムマシンをポイポイカプセルに仕舞った後、気を消して徒歩で移動を開始した。三人もそれに習い、彼の後についていく。

 移動中、ベジータはトランクスに小声で話しかけた。

 

「トランクス。この街に着いたときに見えた巨大なビル……あれは何だ」

「ビル……ああ、街の中心にある建物のことですね。父さんなら見覚えがあるんじゃないですか?

 あれはカプセルコーポレーションの跡地。父さんの時代で言うところのオレ達の家です。今は破壊され尽くしていて、見る影もありませんが」

「!

 チッ……やはりそうか。胸糞悪いモン見せやがって」

「す、すみません……」

「……勘違いするな。オレの気分はこの時代に着いた時から既に最悪だ」

「はは……でも、あのビルがあるからこそ、オレ達は団結してブラックに立ち向かえたんです。いつかカプセルコーポレーションを再建する、があの人の口癖ですから」

「――何?」

 

 ベジータは己の耳を疑った。

 そして思い至る。つい先導するトランクスについて行ってるが……そもそもトランクスは、何処に向かっているのか?

 ビルとビルの隙間。瓦礫に埋もれた道。廃墟の中。進めば進むほど、人目のつかない場所へ案内されている。

 トランクスは瓦礫の山の前でおもむろに立ち止まり、上着のポケットから何かの装置を取り出した。トランクスがそれを操作すると、瓦礫の一部が僅かに動き、人ひとりがかろうじて通れるほどの小さな扉が現れた。

 

「人造人間を全て倒した後、オレ達は人類が同じ事態に陥った時に備えて、幾つか隠れ家を用意しました。ここは、そのうちの一つです」

 

 ◆

 

 この時代において、ゴハンブラックと対等に戦えるのはトランクス一人だけ。ブラックからすれば、地球人の全滅など造作もないこと……かのように思われていた。

 しかし、そうは問屋が卸さない。未来世界の人類は一度、別の案件で壊滅的な被害を受け――立ち直っている。一度絶望を味わった人類が、ちょっとやそっとのことで全滅するはずがないのだ。

 

「こちらです。足元に気を付けてください」

 

 トランクスに案内され、三人は音を頼りに暗闇の道を進む。

 ゴゴ……と鈍い音を立てて、瓦礫に擬態した扉がゆっくり閉まる。それを機に、かすかに残っていた光が完全に消滅した。

 視界は完全に黒。目を閉じているのか開いているのかすら不明。前後左右すら判別不可能な闇の中で、トランクスは声を張り上げた。

 

「明かりをお願いします!」

 

 カチリ、と何かのスイッチが入る音。

 天井と床に備えられた電灯が、目を刺激しないように、徐々に光を放つ。真っ暗だった世界は光を取り戻し、人工の光が道標のように彼らの進む先を照らしていた。

 例えば、孫悟飯にとってのパン、ビーデル。

 例えば、孫悟空にとっての孫悟飯、孫悟天、チチ。

 例えば、ベジータにとってのトランクス、ブルマ。

 人間には誰しも心の拠り所が必要だ。いかに常人離れした力を持っていても、これだけはずっと変わらないらしい。

 即ち、『希望』。

 人類が滅亡の危機にあっても折れなかったのは、二つの希望があったからだ。

 一つはトランクス。地球に残された最後の戦士。

 ゴハンブラックの力は圧倒的だったが、だからこそ力で対抗できるトランクスの存在は、人類に生きる力を与えていた。

 

 あの青年が諦めない限りは。

 同い年のアイツが身体を張っている。

 いつかあのお兄ちゃんを助けたい。

 

 三者三様の想いを胸に、人類は一日ずつ全力で生き抜いてきた。

 そして、もう一つの希望。

 トランクスが人類に『現在を生きる力』を与えていたのなら、彼女は『未来を見据える力』を与えていた。

 廃墟と化した都、その地下に作られた巨大シェルター。人造人間の一件から、彼女達は長い年月をかけ、人類最後の最後の避難場所としてここを作り上げた。

 その最奥。実験の余った素材で作られた簡素な小屋に、その女はいた。

 小屋の扉が開く。

 現れたのは――白衣の女。

 

「…………」

 

 息を呑む音。それは誰のものか。

 最愛の妻を目にした夫か。

 それとも――遠い昔、人造人間に殺されたはずの夫を目にした妻か。

 

「ただいま戻りました、母さん」

 

 トランクスの言葉に、二人は我に返る。

 二人は同じタイミングで、誤魔化すように咳払いを一つ。そしてもう一度互いを見る。

 無愛想な戦闘服。眉間に皺を寄せたお堅い顔。戦闘民族であるこの男は、種族共通の特徴として、若い姿でいる期間が地球人より長い。数十年も昔の記憶、あるいは色褪せた写真と何も変わらない姿。

 くたびれた白衣。顔には皺。ここが未来ということもあり、その女は、男の記憶よりも年老いていた。無理もないことだが、この時代では美容にまで気を遣う余裕はないらしい。

 

「……フッ」

 

 しかしその姿を見て、男は――ベジータは笑みを浮かべた。

 誰が相手でも臆することなく相対する高飛車な女。どうやらそれは、『絶望』とやらが相手でも変わらないらしい。

 

「お帰りなさい。待っていたわトランクス。

 そして……孫君と悟飯君。あとベジータ。ようこそ、未来の世界へ」

 

 その女は、年老いた外見をしておきながらも、年齢を全く感じさせない立ち振る舞いで、戦士達を歓迎した。

 女の名はブルマ。タイムマシンを開発した科学者であり、人類の希望。

 そして――息子の未来のために奮闘する、何処にでもいる『母』であった。

 

 ◆

 

「さて! まずは作戦会議といきましょうか!」

 

 ブルマは四人のサイヤ人達を簡素な椅子に座らせ、使い古されたホワイトボードの前で手を叩いた。

 

「か、会議……」

 

 孫悟飯、ベジータ、トランクスの三人は居住まいを正し、ブルマに注目する。

 ただ一人、孫悟空だけは首を傾げた。

 

「あら孫君、何か不満でも?」

「不満ってほどじゃねえけどよ……作戦会議なんて必要あんのか? 要は、ブラックっちゅうヤツが悪さしてるから、そいつを懲らしめるだけだろ?」

 

 悟空の疑問は尤もだ。人類の危機と言っても、対処すべきはゴハンブラックただ一人。早い話、ゴハンブラックを倒してしまえば未来は救われる。

 

「私達はそのブラックが倒せないからアンタたちを呼んだんだけどね」

「ハハ、それなら心配すんな。オラと悟飯、ベジータにトランクス。こんだけいりゃ誰が相手でも負けねえさ」

「あら、頼もしいわね……って言いたいところだけど、事はそんな単純じゃないのよね。場合によっちゃ、アンタたちの時代も滅びかねないもの」

「!」

 

 ブルマはしれっと、何でもないことのようにそう言った。

 途端、四人の間に緊張が走る。能天気に笑っていた悟空も同様に。

 今回の件は、ブラックを倒してハイ終わり――となるような単純な話ではないらしい。

 

「どういうことだ? オラ達の時代もやべえって……」

「忘れてない? 私達はあくまで別の時代の人間だってこと。過去の時代から来たアンタたちがこっちに関わり過ぎると、そっちの時代にも影響が出ちゃうのよ。例えば、今の孫君みたいなね」

 

「へ? オラ……?」

 

「そ。私達からすれば、孫君とベジータが生きていること自体がタイムパラドックスの影響なのよ。だから同じように、生きてるはずの人間が死ぬ、もしくは死ぬはずの人間が生きる、といった影響が出かねないの」

 

「タイム……パパド?」

「ええと……過去に干渉することで矛盾が生じることですね」

 

 聞き慣れない単語で頭がフリーズしかけた悟空に、悟飯が助け船を出した。

 

「本来の歴史では、父さんは心臓病で亡くなってしまい、そのまま生き返らないはずだった。でも、トランクスさんが介入したことで歴史が変わり、そのおかげで父さんは生きている」

「おう! それくらいならオラでも分かってる。サンキューな、トランクス」

「は、はい」

「トランクスさんのお陰で歴史が変わり、本来死ぬはずだった父さん達は、現代で平和に暮らせています。ですが……トランクスさんから見れば、それ自体が矛盾してるんです。だってこの時代では、父さんもベジータさんもとっくの昔に死んでしまっているんですから」

「んー……つまり、ブルマたちからすれば、オラがこうして生きてること自体がタイム……なんとかっちゅうやつなんだな。あっ、今のオラみたいなってそういうことか!」

「そういうこと。私達は孫君を死なせないことに成功したけど、逆のことが起こる可能性もあるってことよ。例えば……この時代よりも早く悟飯君が死んでしまう、とかね」

「そっか。そこでゴハンブラックが出てくんだな?」

「ええ。ということで……まずは、ゴハンブラックについて分かっていることを確認しましょう」

 

 五人は各々、ゴハンブラックなる人物について把握している事象を確認し合い、ブルマがホワイトボードに記入していく。

 一つ。ゴハンブラックは現代の人物である。

 根拠は、ブラックが現代の孫悟飯の姿だったこと。仮に未来の人物だった場合、未来の孫悟飯の姿……即ち、隻腕であるはずなのだ。

 二つ。ゴハンブラックは界王神の可能性がある。

 根拠は、身に着けていた二つの装飾品……ポタラと指輪だ。ポタラは勿論のこと、指輪もまた界王神しか持ちえない特別なアイテムであり、偶然持っていたとは考えにくい。

 三つ。ゴハンブラックは地球人の全滅を目的としている。

 しかし、理由は不明。ここまで大がかりなことをしている以上、本人なりに深い事情がある……と悟飯は考えているが、まだ想像を域を出ない。

 

「んー……こんなところかしらね。まとめると、ゴハンブラックの正体は現代の界王神ってところかしら。

 で、そっちの悟飯君の身体を奪うか作るかした後、この時代にやってきた、と。並行世界まで絡んでくるなんて、いよいよ面倒になってきたわね……」

「へいこうせかい?」

「簡単に言うと「もしも」の世界よ。世界っていうのは「もしも」の数だけあって、それら全部が横並びに存在してるって考え方。

 例えばアンタたちの世界は、「もしも孫悟空が心臓病で死ななかったら」という並行世界。私達の世界は、「もしも孫悟空が心臓病で死んでいたら」という並行世界だと言えるわ」

「おー……分かるような、分かんねえような。でも、それの何が面倒なんだ? こことは別の世界があるとなんかマズイのか?」

「ええ、そうよ。歴史を変えるということは、並行世界を増やすってことだから。あんまり増やし過ぎると、世界線そのものが消えかねないの。

 ほら、もしもの世界って考え出すとキリがないじゃない? 例えば……もしも孫君が超サイヤ人になれなかったら、とかね」

「そいつは……やべえな」

 

 ごくり、と一同は喉を鳴らす。

 

『孫悟空が超サイヤ人になれなかったら』

 

 それはつまり、孫悟空がフリーザに敗北していたら、ということだ。その場合孫悟空は当然として、ベジータも、孫悟飯も、トランクスも、おそらくはブルマも、この世界には存在していないだろう。

 

「ほかにもいろいろ思いつくわよ? 例えば……超サイヤ人の髪色が金じゃなくて赤だったら、とかね」

「赤? 超サイヤ人ゴッドのことか?」

「……え、なれちゃうの?

 んー……じゃあ、もしも金じゃなくて青だったら、とか……」

「超サイヤ人ブルーだな」

「青にもなれるの!? はー……サイヤ人はいつから信号機になったのよ」

「ブルーが青で、ゴッドが赤、普通の超サイヤ人が黄色……ハハッ、言われてみりゃそうかもしんねえな!」

「話の腰を折るな、カカロット」

 

 話が脱線しそうになったところを、ベジータが苛立ちながら修正する。

 

「『もしも超サイヤ人4があったら』

 『もしも超サイヤ人以外の力に目覚めていたら』

 もしもの数なんざいくらでも存在する。それこそ無限にな。

 ブルマ。お前が言いたいのは、並行世界は無限に存在する、ということだな?」

「いいえ、寧ろ逆よ。私が言いたいのは、並行世界は無数に存在するけど、無限じゃないってこと。

 歴史を変えて並行世界をいたずらに増やすと、どうでもいい世界から消えるってことよ」

「何っ……それは本当か?」

「ええ。この世のありとあらゆるものには必ず穴があるのよ。よく昔のエライ人は、無限の力とか不死身の肉体とかを追い求めたけど、それは絶対に有り得ない。それは単に、無限にエネルギーを生み続ける仕組みがあるだけ。

 並行世界についても同じ。数が増えすぎて限界に達すると、何らかの方法でいらない世界から消えてしまう。

 まあ正直、私達の世界がピンポイントで消えるのは天文学的な確率なんだけど、警戒するに越したことはないでしょ?」

 

 要するに、これは椅子取りゲームなのだ。存在できる並行世界には限りがあり、数を増やせば同じ数だけ世界が消える。

 そこに善悪の基準はない。重要なのは数だけ。並行世界を一つ増やせば、同じように世界が一つ消えるのだ。

 

「つまり……現代に帰った後、並行世界をなるべく増やさずに対処しなくちゃいけない。そういうことですね?」

「流石は悟飯君、理解が早くて助かるわ。

 そう。ゴハンブラックの誕生を阻止しても、それは並行世界を一つ増やすだけ。

 私達が観測した事実をなるべく変えずに、平和な世界を掴み取る。それがアンタ達に課せられたミッションよ」

 

 ◆

 

 




今回は
①並行世界について整理する回
②全王様の設定改変
③ブルマの生存描写
の回です。

①についてはドラゴンボールではなく別作品……型〇……f〇te……の設定をベースにしてます。
一言で言うなら、『人類が生きている世界は全て正史』です。
スパーキングシリーズで描かれたifを始め、漫画、カカロット、ゼノバース等……これらは全て並行世界として存在しています。(行く方法がないだけ)

ただし、正史として記録できる世界には限りがあり、増えすぎると全ての世界が崩壊します(唐突な謎理論)(独自設定)
そうならないようにしているのが全王様です。(→②)

②全王様の主な仕事は並行世界の管理です。
とはいえ、並行世界は何もしなくても勝手に増え続けるので、実質世界を滅ぼすのが仕事と言えます。
(並行世界は秒単位で増えるわけではなく、歴史が大きく変わるタイミングでのみ発生する)
破壊神も真っ青な残酷な仕事を大昔からこなしているため、精神に異常をきたしており、やや幼児退行しています。
また、付き人の天使たちはこれらの事情を知っており、全王を支えるべく忠誠を誓っています。

③とりあえずハッピーエンドにしてやる、という意思表示。
孫悟空がブルマ、どっちかが生きてればとりあえず何とかなるのがドラゴンボールだと思ってる。
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