白上は初めて男の子を見た時に思ったのはとっても可愛い子だった。愛らしく笑う顔が白上の疲れを吹き飛ばすようだったのを今でも覚えている。
だから今、目の前にいる男の子の姿を信じられない。服は汚れていて、やせ細っている。この子の両親に虐待をされて誰よりも苦しい思いをした。それを聞いた時は驚かずにはいられなかった。
そして男の子は白上のことを怖がって孤児院に勤めている人の後ろに隠れてしまった。
「お姉ちゃんは…わるいひと…?」
白上が彼にあったのはもう何年も前のこと。覚えていないとしても仕方のない。
「ううん。悪い人じゃないよ」
「…そうなの?」
恐る恐る、男の子は後ろから出てきて白上の前まで来てくれた。それから白上は腰を落として男の子と同じ目線になった。
これからはお姉ちゃんがいるから大丈夫だからね」
白上は男の子を優しく抱きしめた。本当はもう絶対に離れないように強く抱きしめたいけど、そしたら男の子が苦しいはずだから。
「だいじょうぶだよ…ぼくはなかないから」
「ううん。泣いて良いんだよ…。お姉ちゃんはキミのことを受け止めるから」
それから白上と少年の共同生活が始まった。
――――――――――――――
まず最初に男の子に名前を聞くことにした。これから一緒に過ごしていく上で名前を知らないのはかなり不便だし。
「そう言えば、まだ名前を聞いてなかったですね。キミの名前を教えてくれるかな?」
「なまえ……?」
「うん。お名前。キミはお父さんやお母さんから何て呼ばれてたかな?」
「…………」
それから暫くの間、男の子は沈黙が続いた。その後も色々と質問をした結果、この子は両親から名前というものを呼ばれていない。
「…じゃあ、今日からキミの名前は…『ユキ』っていう名前はどうかな?」
「ゆき…?」
「うん。だめかな。気に入らなかったら遠慮なく言ってくださいね」
「ううん、ゆきがいい!」
そしてその日から男の子の名前が『ユキ』になった。
白上と男の子が一緒に過ごすようになって数日が経った。なるべく寛いで過ごせるように白上は色々なことをした。
「ユキくんはなにか欲しい物ないですか?」
「…だ、だいじょうぶ」
「遠慮しなくても良いんですよ。欲しいものであればどんなものでも手に入れてあげますから」
白上は子供を育てるなんて経験はない。だから何をしてあげればいいか分からない。でも、彼にこの家を楽しんで欲しい。そのためならどんな物でも手に入れてあげたい。少しでもこの場所がユキくんにとって過ごしやすい環境にしてあげたい。
「だいじょうぶ…」
「本当にいいの?」
「うん……」
そこで白上はユキこんの目が白上じゃなくて耳の辺りを見ていることに気付いた。
「白上の耳、触ってみる?」
「え、いいの!?」
さっきまでと違ってユキくんの目は輝きに満ちている。こんな目で見られたら白上に首を横に振るなんて出来なかった。それにユキくんを少しでも笑顔に出来るなら白上は喜んで。
「うん!いいですよ」
白上は床に腰を下ろしてユキくんにも手の届くようにした。するとユキくんは目を輝かせながら白上のケモ耳を恐る恐る触れた。最初こそ白上も少しくすぐったかったけど、ユキくんにはどうやらケモ耳に触るような才能があるのかと考えてしまうほどに…触るのが上手い。ケモ耳は白上にとってかなりデリケートなところ。だから普段は絶対に信頼している人以外には触れさせない。
「お姉ちゃんのお耳、もふもふできもちいい」
「そ…そっか。そ、それならよかった…っ……」
「…もふもふ…」
「…あ、あの…っ……そ、そろ…そろ」
「もふもふ。お姉ちゃん」
それからしばらくの間はユキくんに耳を触られ続けた。
シリーズ
愛を知らない少年と愛を教えたいホロメン