人は誰かに優しくされると…嬉しい。
そして特に誰かに捨てられたり、辛い時に優しくされたらより一層、その人がキラキラして見える。
でも一日、一日と過ごしていく過程で優しさに触れていき、沙花叉はもう逃げられなかった。その優しさは沙花叉のことを放してくれないし、放れようとも思わない。
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「沙花叉、そろそろ夕ご飯だよ~」
「は~い」
そして自室から出てリビングに行くと…何かのお祝いかと思っちゃうぐらいに豪勢な料理がテーブルに置かれていた。
「今日ってなにかお祝いだっけ?」
「ううん、別に普通の日だよ」
「じゃあなんでこんな豪勢なの?」
「あ、そのことね。それは沙花叉が昨日「やっぱりキミのご飯、美味しい!」って言ってくれたから頑張っちゃった!」
そう言った時のキミの笑顔は本当に太陽だった。本当に沙花叉には勿体ないぐらいの優しい人。この人が沙花叉のことを見つけてくれて、拾ってくれて、育ててくれた。
まじで沙花叉の運を全部使っちゃったんじゃないかと思っちゃうぐらいに良い人。そしてそれでもいいと思えるぐらいの人でもある。この人と巡り合えなかった世界の沙花叉はたぶん悲惨だったと思うし。
「嬉しいけど、こんなに豪勢にしちゃって食費は大丈夫なの?」
「そこら辺は大丈夫だよ。しっかりと計算してるしさ。それに何よりも僕は沙花叉が美味しそうに食べている姿が好きだからさ」
「…ほ、ほんとに……」
そういうことをあんまり言わない方がいいと後で注意しなくちゃ。あんな太陽のような笑顔で言われちゃったら…ちょっと意識する。それに沙花叉が食事しているところをキミに見られているっていうのも照れる。これから食べる時も変に意識しちゃうかもしれないじゃん。
「キミって…モテるでしょ?」
「そうでもないと思いますよ」
「いや…絶対にモテるよ」
逆にモテなかったらどんな奴がモテるんだよと言いたい気分。顔だって普通にいいし、優しいし、気配りも出来る。それに料理だって美味しい。こんな優良物件なのに本人はとても誠実でどんな人に対しても分け隔てなく接している。
「そうですかね…。個人的にはそこまでモテてるという実感がないんですけど」
「うわぁ~モテる人間が言うと腹が立つ!」
「ご、ごめんなさい…」
「まあ、キミは意図的にそういうこと言うような人じゃないのは沙花叉も分かってるけどね」
この人は本当に純粋。世界でこの人ぐらいに純粋な人はいないんじゃないかな。正直、今までよく誰かに騙されたりせずに過ごせたなぁと不思議なぐらい。
だからこの人にはこれからも純粋のまま生きて欲しい。その純白さは誰でもなれるものじゃなくて、この人にしかなれない。
「でも…無意識に人を好きにされるのは事実だと思うし…」
気付いていないと思うけど、沙花叉はキミのことが好きなんだよ。あんな風に助けてもらって、それからもこんだけお世話になって、どんな時も優しい人のことを好きにならないなんて無理だった。
それに年だって沙花叉よりも少し上ぐらいだし、頼りがいもあるんだもん。
でも…この気持ちを打ち明けることは難しい。だってこれを打ち明けちゃったら全てを失ってしまうかもしれない。そう考えたら踏み出せずにいた。それに最近は少しずつ働き始めてお金を入れてるけど、今までお世話になった分に比べればまだまだ全然。そんな奴から「好きです」とか「付き合ってください」と言われても快く承諾するなんて無理だと思う。
まずはキミにしっかりと恩返しをして対等な立場にならないと何も始まらない。
「それじゃあ、冷めないうちに食べてくださいよ」
「そうだよ。それじゃあ…いただきます!」
でも、今はキミが沙花叉のために作ってくれた料理を堪能することにしよう。