強欲少女のヒーローアカデミア 作:pastel
その後もろくに反撃が行えずひたすらミリオに弄ばれているレグルス。手加減を続けていれば相手をつけ上がらせるだけだと考える。事実全力でミリオを殺そうとすれば彼女にも勝ち目はあったかもしれない、だが
───殺さずに勝たなければならない状況で全力を出した時点で私の敗北、こんな所で負ければ剣聖に並び立つ事なんて出来なくなる……!
屈辱に唇を噛むレグルス、そんな事お構い無しにミリオの拳が腹部に突き刺さる。彼女の体は何度も殴られ、壁にぶつかりボロボロだった、それでも彼女は立つ。そのちっぽけなプライドを守る為だけに
「俺も女の子をこれ以上殴るのは本望じゃないから、そろそろ倒れてもらうよ! 君は良い根性してるし、素質もある! これから俺達と一緒に成長していこう!」
「好き勝手させてやったら調子に乗りやがって、思い上がるなよ……私が本気を出せばお前なんて……!?」
まただ、また地面に消えた。どこから来る? あいつの動きを予測しろ……この行動は初見じゃない。あいつが私にトドメを刺そうとしているなら、防御される可能性がある正面からは来ない……となれば!!
背後から出てきたミリオが目にしたのはこちらを向き右手を伸ばしているレグルスだった
「まぁ予測されるよね……そう俺も予測してたよ! 必殺! ブラインドタッチ目潰し!!」
相手の眼球に向けて自分の指を透過させることで、敵は目潰しをされたように錯覚し反射的に目を瞑ってしまうという人間の生存本能を利用したミリオの技
彼はこの隙に彼女の手を避け逆の手で鳩尾を殴ろうとするがそれは叶わない。何故なら彼女は透過した指が目を貫通していても目を瞑らずこちらを見つめ、左手を伸ばしていたからだ。
「図に乗るなよ……! 三下がぁぁぁ!!!」
「おいおいマジかい!?」
予想外の展開に急いで個性を発動させこの場を切り抜けるミリオ。彼女の手は空をきることになった
これまでミリオがこの技を失敗した事はない、目を潰されそうになれば反射的に目を瞑るのが人間の生存本能だ。だからこそ目の前の彼女は異質な存在に思えたが……
彼女は自身と自身の持つ力……個性……権能を何よりも信頼し絶対的な自信を持っていた。ただそれだけの事だった
獅子の心臓の防御性能は無敵という言葉が相応しい。彼女が唯一自分より上だと認めている剣聖ですら、獅子の心臓発動中にダメージを負わせる事は出来なかったのだから、目の前の男が自分の権能を凌駕するなんて不可能であると……
ミリオの必殺技を真正面から受け止め反撃を行ったレグルスに観戦していた彼らは驚愕していた。何故彼女は自分の目が潰されそうになっても恐怖の感情を見せないのか……そもそもレグルスとミリオの勝負は誰が見たって彼女に勝ち目はないと思うだろう。
それ程までに圧倒的な差があった。実力、経験、そして両者共にピーキーすぎる個性の扱い方
なのに何故彼女は諦めないのか、何故立つことすらままならない程傷を負ってるのに立ち上がれるのか……最初は彼女を憐れんでいた。強個性を持ち成功体験を積んでしまった彼女がこれから完膚なきまでにミリオに敗北しその膨れ上がった自尊心を粉々にされてしまう事に
だが勝負が続く内に彼らは無意識の内に彼女に魅せられていた。恐ろしい執念、勝利への執着。彼女の刃が1cmずつ、されど確実にミリオへ迫っているのを彼らは感じ取っていた
何とかミリオを退避させる事に成功したレグルス。この隙に彼への対策を思考する。一見彼は無敵だ、攻撃は全てすり抜け地面や壁の中を移動できる、まさに万能。だがそれでも付け入る隙はあるはずだ、不服だが私の権能だってそうなんだから
あいつは私と同じだ、”完全”じゃない。恐らく個性は「透過」だと結論をつける。でなければあいつが権能を使った私の接触を拒めるはずがない。
あいつもまた個性発動中は”世界から切り離されている”
次に自身の権能を元に体を透過させるリスクを考えるがこれも直ぐに結論が出た。答えは光……音……そして空気もあいつの体をすり抜けているという事、つまりあいつは個性発動中何も見えていなければ何も聞こえていないし呼吸すら出来ていない完全な無感覚状態にある
待て、ならあいつは素の直感と予測能力だけで無感覚状態の中私の背後を的確に予想し命中させてるって事か? ありえない……何かカラクリが……そもそも透過をした状態で地中に潜ってあいつはどうやって戻ってこれる? 普通ならそのまま地の底まで全てをすり抜け落ちるか、地中で解除し生き埋めになるかだ……いや、私と違って体を透過させるだけなら解除した場合そこに居たことにはならないんじゃないか? 自分の存在が世界から無視されてる訳なんだから、地中で解除したとして土よりあいつが優先される道理は無い
───そうか、あいつは何かと重なっている時に透過を解除した場合自身の体が弾かれるんだ。
「さて、私もあんまり虚仮にされ続けるのは面白くない。いや面白くないっていう問題じゃないよね。私の意思が通らないっていうのは、それはよくない。権利の侵害だ。さっきから何度も何度も攻撃を当てさせてあげてるんだから、そろそろ私の攻撃が当たらないと不公平だよね?」
「その様子だともしかして俺の個性、バレちゃったかな? どんな作戦で来るのか知らないけど、こういう時は先手必勝なんだよね!」
再び地面に潜るミリオ。いくらレグルスがミリオの個性を看破したとはいえ体はもう限界。あと一撃でも貰えば確実に気絶してしまうだろう……チャンスはこの一度きりしかない
「まだ私に勝てると思ってるその残念な頭に私も憐れみを感じられずにはいられないよ。君なんか私の完全下位互換さ、絶対不変の存在になり損ねた半端者でしかない。その中途半端な力が君の小さな世界では最強だったのかもしれないけどさ、上には上がいるんだよ。そしてその上とはどうやったって埋まらない差があるんだ、君もいい加減理解してくれよ」
音を聞かれていないのをいい事に煽り文句を飛ばしながら体育館の床を抉りとり前方と後方に突き刺しそっと手を添えるレグルス。その奇行とも言える行いに3人は困惑する事なくただ集中して彼女を見る。いや、相澤だけはいつでも抹消を使えるよう準備していた
ミリオは彼女の背後を自慢の予測能力で的確に狙い透過を解除した。弾き出される彼の目の前にあったのはレグルスの背中ではなく壁
何故……そう困惑する時間も、一呼吸する時間さえもレグルスは与えなかった。後方の壁に触れていた手を思いきり伸ばし壁を押し出すと壁は床を抉り高速でミリオに迫っていく、急いで体を透過させ壁をすり抜け、呼吸をしようと透過を解除した瞬間視界には彼女の掌が隙間なく広がっていた
呼吸を優先したミリオは彼女に顔を掴まれる。丁度鼻口を塞ぐような形で掴まれてるせいで満足に呼吸ができない状況に焦るミリオ
「君とここまで遊んでやってたのは私の心の広さと余裕のおかげだ。でも安心しなよ、私は優しいから君にプレゼントをあげよう。ほぉら、束の間の小旅行を楽しんでくるといい!!!」
権能をフル活用し思いきり上に投げ飛ばす。天井に到達する瞬間ミリオの体が天井を貫通し空まで打ち上げられる───5秒経過 獅子の心臓解除
上昇が止まり落下を始めるミリオ。もし呼吸が充分に出来てない今落下のダメージを防ぐ為に透過を使えば地中で窒息死するか、またレグルスに同じ事を繰り返されて終わる。とはいえこのまま床に落ちれば無事では済まない……どちらも致命的な選択肢だ。結果ミリオは死だけは回避するべきだと判断しできる限り息を吸って透過を使う事を選択した。
自分が先程までいた体育館に近ずいて来たのを確認したミリオは個性発動のみに意識を集中させていく。だが落下していたミリオの体は空中で止まり、誰かに掴まれていた
「はぁ、無茶はしないでくれよ。見てて胃に穴が開きそうだった……」
「環! 今日の朝食はチキンだったんだね! いや〜参っちゃうよ。イレイザーに頼まれてたのに、彼女予想よりずっと強かった! あれは成長したら更に化けるね」
羽を生やした天喰に救われたミリオがゆっくり着地していく。そんな彼らに一泡吹かせた当のレグルスは心臓の痛みが最後のひと押しとなり無事気絶していた
レグルスさんの戦闘IQだけはある設定好きです、上手く書けてる自信はありませんが。空に投げ飛ばしたのはラインハルト月へ行くをオマージュしたかったのもありますが、どの道上以外に投げても透過使えば意味ないと思ったからです