強欲少女のヒーローアカデミア   作:pastel

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14話『それは私の権利だ』

 第1試合が終了し選手達が退場していくのを眺めながら先程の試合……レグルスと心操についてプロヒーロー達は語り合っていた

 

「あの心操とかいう生徒、普通科の割に中々やるなぁ! 個性もかなり実用性があるし本人のガッツも中々だ。あれが普通科なんて雄英も惜しい事をするねえ」

 

「もしあの子がヒーロー科だったら、即スカウトして相棒にしたのになぁ……でも雄英は編入制度あんだろ? なら今後に期待する事も出来るって訳だな」

 

 ───心操の個性「洗脳」はとても貴重な個性だ。相手と言葉を交わすだけで無力化出来るなんて、どのヒーロー事務所も喉から手が出る程欲しい存在。ヴィラン向きの個性、なんて自分を卑下していた心操はこの体育祭をきっかけにヒーローとしてのスタートラインに立つ事になる

 

 ───ではレグルスは? 彼女の個性だって強力なものだ。自身と触れたものへの時間停止、あまりにも強力すぎる力。だが此度の体育祭で彼女はその力の末端の末端のそのまた末端しか見せていない上にお得意の口八丁が全員に見られている。そんな彼女の評価は……

 

「あーあの娘は……あー……ちょっと幼すぎるな。うん、確かに仮想敵を腕振るだけで倒せるくらい個性は強いんだろうがあれはなぁ…… 」

 

「敵を目の前にしてもお喋りを辞めない、舐めプも辞めない、追い詰められた時だけ本気を出す……うーん彼女は少し厳しいかな。まだ早すぎる気がする」

 

「騎馬戦の様子見てたら誰だってそう思うだろ。あの娘、今の所協調性の欠片も感じないぞ。馴れ合いを好まない1匹狼って感じでもない。有り体に言えば自分勝手だな。あの娘を抱えて1位を取ったあのチームは凄いよ、余程騎手の立ち回りが上手かったんだろうな。流石はエンデヴァーの息子さんだ」

 

「というかレグルスって体育祭始まる前屋台のおっちゃんにタカってた娘じゃねえか!?」

 

 散々な言われようだが、全て正論である。レグルスにもそれなりのポテンシャルがあるのは事実だが、それ以上に精神面があまりにも未熟な為現時点で彼女をスカウトしたいと思うプロはこの場にはいなかった

 

 ー

 

「なぁ、あの時俺の事殺す気で攻撃したろ。周りの奴らは気づいちゃいないけど、お前が洗脳を解いた時……俺が感じた殺意は紛れもなく本物だった……なぁ、教えてくれ。なんでお前はヒーローを目指してる?」

 

「……もし私が君の事を殺す気だったなら、この場に君はいないしその肉体すら残ってないよ。勘違いしないで欲しいんだけど攻撃を外してやったのは私の慈悲と余裕のおかげだ。あんな事で殺意を持たない相手を殺す程私は器の小さい人間じゃない……君の運とか実力とかそういうのは天秤に乗せられてすらいないんだよ。というか、自分を洗脳した挙句行動を強制しようとした相手に少しの怒りも抱かない人間何て居る訳ないよね? 自分のした事棚に上げて私を悪者扱いするのは辞めろよ、無様に敗北した癖にみっともないとは思わないの? 君が今すべき事はそんな下らない質問じゃなくて私に跪いて感謝する事でしょ。そうやって私の足元でその惨めさを噛みしめるのが君に許された唯一の贖罪なんだからさ」

 

「なるほど……ヒーローを目指してる理由は知られたくないわけか。まぁ別にそれならそれでいいや。なんかさ、お前見てたら今までの悩みが凄いちっぽけに思えてきて……こんな俺でもヒーロー目指していいんだなって、そう思えた。今回は負けたけど、次は勝たせてもらうぜ。それじゃ」

 

「君が何を思っても、何を言っても、そんな事はどうでもいいんだよ。そうやって私そっちのけで会話を自己完結させて満足してるのはとても気に食わないけどね。あと今回「は」ってなんだよ、次なら勝機があると思ってるとかどれだけ傲慢なわけ? お前は負けたんだよ、私に負けたんだ。だからお前なんかより私の方が優れてるなんて誰が考えたって分かるだろ、それすら理解できない愚鈍な頭で私に抗う何て君はバカだね! おい……人の話を無視して立ち去るなんてどこまで傲慢な男なんだよ。バカなのに傲慢とか、もうこの私ですら救いようがないよ。せっかく生かしてやったのに恩を仇で返しやがってふざけるなよ!」

 

 どいつもこいつも人の話を聞かなくて本当にどこまでも強欲な人間だな、そうやっていつまでも満たされる事なんて無いのにどうにか満たされようと決定的に必要なものが欠けている自分に気づかず他者の権利を侵害し、平気な顔して奪っていくんだお前らは。そんな事1人でやってろよクズが。そもそもヒーローなんて子供のごっこ遊びを私がやりたがる訳ないだろ、私が目指してるのは英雄だ。私をあいつらのような自分の事しか考えていない恩着せがましい連中と同列に扱うな。私が今ここに居るのは権能が不完全な以上この世界の法に仕方なく従ってやってるだけに過ぎないんだからさぁ───

 

 ─

 

 轟焦凍は自身の在り方に悩んでいた。炎を使わずに、氷結だけでNo.1になる事で大嫌いな父親の望みを完全否定する。そんな想いで雄英に入った彼はUSJで命の危機に瀕した事で己の覚悟にヒビが入る事になる

 

 ───『私が来た』

 

 自分が守るべき存在だった少女に命を救われるなんて、ヒーローなら有り得ない。半端なままじゃ誰も守れない、救いたい人すら救えない。出し惜しみしてる場合じゃないのは心の中で分かっている、だが何年も父親への恨みを原動力に生きてきた轟はそう簡単に左を受け入れられなかった

 

 ───『左を使えば先の2種目共に圧倒出来たはずだ、なのになんだあの醜態は? 最高傑作のお前にはオールマイトを超える義務がある、いい加減子供みたいな反抗は辞める事だ』

 

 ……俺はどうすべきだ、戦闘で左を使わなかった最悪の結果がUSJでの……あの時俺は、馬鹿な真似して死にかけた挙句さっきまで護衛してたレグルスに助けられた。死の淵ですらクソ親父の顔が、辛そうなお母さんの顔が脳裏に浮かんで左を使えなかった俺と違って……レグルスは余裕そうな顔でオールマイトみたいに

 

「───本当信じらんないよ、どんな権利があったとしても私の権利を侵害していい理由なんてある訳ないのにさ。法律なんてくだらない。規則なんてくだらない。満たされていないクズが作ったクズが生きる為の足枷を私に嵌めるって一体何の権利があって……」

 

 オールマイト……みたいに……

 

「……レグルス?」

 

 曲がり角を曲がろうとしたらパンを咥えた美少女が飛び出して来た、なんて事はなくいつも通りグチグチ言いながら歩いて来たのは自己愛とプライドの権化レグルス・コルニアス

 

 普通の人間なら誰も彼女に好き好んで会話を持ちかけたりはしない。彼女は長々と喋るがその内容は殆ど自分の事しか語っておらず、会話自体は成り立っていないから。だが轟焦凍は、知りたかった。レグルスが何を思って戦っているのか、何を原点としてヒーローを目指しているのか

 

「……あぁ、君か。どうしたのかなそんな冴えない顔をして? いや別に君がどんな顔したって本来私には関係ないけどさ。私の前でそういう顔をされると私が君に何かしたと勘違いされるかもしれないだろ? それはいけない。どんなに軽い事でも濡れ衣っていうのは良くないよね? 私という、レグルス・コルニアスという完璧な存在に対する冒涜に他ならないわけだよ」

 

「あぁ……悪ぃな。思う事があって、顔に出ちまってた。なぁレグルス……言いたくないなら言わなくていい、それはお前の権利だから。その上で聞きたい……お前は何がきっかけでヒーローを目指したんだ?」

 

 轟焦凍がレグルスに対してそれなりの信頼を置いているのに対して、レグルスもそんな彼の態度に気を良くし聞いていない事すらペラペラと喋り出す

 

「君は彼と違って自分の立場をよく分かってるみたいだね、まあ私も君の事は賢い人間だと信じているからさ、その期待を裏切らずにいてくれてホッとしてるよ。一つだけ勘違いしている所があるとすれば、私はヒーローを目指している訳じゃない、英雄になるんだよ」

 

「英雄……? 平和の象徴って事か?」

 

「平和の象徴……中々いい響きだけど、それでは不十分だね。それはオールマイトを指す言葉だろ? 私には私の肩書きが生まれるだろうさ。いずれ私の名は世界に轟くんだ、世界に愛された英雄としてね。同格の存在はいても、あらゆる要素を加味して最強であり勝てるものは存在しない。そんな絶対的な強者として世界を総べる事で私はあの男を超える……それが無欲で謙虚な私がこの世界に生まれた時から持つただ1つの目標。それ以上の事なんて望んだりしない。私は君達と違って強欲じゃないから、私自身の権利だけを使って私の欲しいものを手にするんだ。ここまで私が他人に喋る事なんて滅多にないよ? 本当に稀有な慈悲さ。それが理解できたなら、与えられた優しさを噛みしめる事だね」

 

「そうか……お前にも憧れた英雄がいたんだな。俺も、オールマイトみたいなヒーローになりたかったんだ。でも俺の親父はエンデヴァーで、あんな奴の炎を使ってNo.1になるなんざ……」

 

「あのさぁ、憧れたっていう表現は辞めてくれない? まるで私があの男の在り方を理想としているみたいじゃないか、勘弁してよね。理想なんて抱かないよ、私は今に満足してるんだからさ。ていうかさ、自分自身の力をまるで他の人のものみたいに言うのも辞めろ。自分が授かった力は自分の力だろ、それ以上でも以下でもない。元々その力を持っていた存在が居たとして、その力の所有権がいつまでもそいつにあるなんておかしな話だよね? それは他者の権利の侵害だよ……いや私の権利の侵害だ」

 

 彼女は父親の個性を受け継いだ事に関する轟の悩みを聞き、自身と全く同じ権能を所有していた屑肉の事をほんの少しだけ頭に思い浮かべてしまった結果、まるで自分の事のように話してしまっていた

 

 そんな自己中心的な彼女の言葉は奇跡的に轟の胸に刺さる

 

 ───『自分が授かった力は自分の力だろ』

 

「俺の力……そうか、それでいいのか……本当になりたいもんから目逸らしてたのは俺だったんだ。クソ親父の個性なんざ……そう思ってた。簡単に割り切れる事じゃない、過去は消えねぇ。でも、それでもこの炎は……俺の個性なんだ───なぁ、レグルス」

 

「何? まだ何か用があるわけ? これ以上私の事を引き止めるのは私の権利を軽視してるとは思わない?」

 

「いや、もう充分だ。ただ……ありがとな」

 

 ー

 

《さぁ第二試合緑谷VS轟が始まるぜぇ!》

 

「緑谷……こっからは全力でいかせてもらう。もう出し惜しみはなしだ、俺は俺の力で、一番になってやる」

 

「そっか……良かったよ。例えどんなに実力差があっても、手加減されるなんて僕は嫌だから。勿論僕だって全力で勝ちに行く! 君を超えて一番になる為に……!」

 

 

 

 ───レグルスに誰かを救いたいという意思などない。今までもこれからも。もし彼女が誰かを救う為に行動を起こすとしたらそれは恩を着せ、自分の慈悲深さと余裕をアピールする為に過ぎない。そんな彼女の自己中心的な行動が結果的に周りに影響を与えていってるのは事実。それが良い影響だろうと悪い影響だろうと彼女は知ろうとも思わないが




「焦凍、オールマイトを越えろ」

「それは俺という個人の権利の侵害だクソ親父」
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