強欲少女のヒーローアカデミア   作:pastel

3 / 46
3話『始まりの終わり』

 1悶着所か3悶着くらいあった雄英の試験を終えて1週間後

 

 レグルスは唯一の家族であり愛猫のパックと惰眠を貪っていた。昼間からベッドに寝そべり腹の上で丸くなってる猫に永遠と喋りかける彼女の姿は傍から見たらただの変人ニートでしかない

 

「君は何て強欲な猫なんだろうねパック。誰にも権利を侵害されずただ与えられたものを受け入れ暇さえあれば惰眠を謳歌する。君みたいに何のしがらみもなく一生を過ごせたらなんて、君を見れば誰だってそう思わずには居られないだろうね。そんな事知るかと言わんばかりのふてぶてしい顔でいる君も愛らしいけどさ、私の方を見つめるのは辞めてくれないかな? 君が何も喋らないせいでまるで鏡を見せられてるような気分だよ」

 

「⋯フガ」

 

「流石、強欲の魔女エキドナに生み出された人工精霊……に似ているだけの事はあるよね、きっと主人の強欲さも似てしまったんだね。そうやって何もせずに私の腹の上を独占できるのは後にも先にも君だけだろう……おっと、お待ちかねの郵便物だ。私の栄えある英雄道への切符が届いたのさ、喜べパック。君はこれから未来の英雄の愛猫として世界に認知される事になる、そのふてぶてしい顔を辞めて身なりを整えておく事だね」

 

「⋯フガ」

 

 今時ネットで合否を確認できるなんて当たり前の事なのにわざわざ書類を郵便するなんて古臭い学校だ様々な所が最先端なのに何故ここだけ……煩わしいな、この後問い合わせてやる。

 

 読まなくたって結果なんて分かりきっているけれどこれは選ばれた40人だけが見れる未来への招待状、読まないのはヒーロー科に落ちた他の人が哀れで救えなくなってしまう。間接的とはいえ私がこれを読まなかったせいで泣く人間が現れたら面倒だ。どこの誰とも知らない虫ケラに権利を侵害される前に、慈悲深い私は読んでやるとしよう

 

 ────────────────────────

 

 レグルス・コルニアス様

 

 

 厳選なる採点の結果 不合格となりました

 

 

 ────────────────────────

 

 彼女の元に届いたのは栄えある未来への招待状などという煌びやかなものでは無かった。むしろその真逆、彼女の脳内で1%の可能性すら感じていなかった不合格通知だった

 

 は、はぁ? 何だよこれ、ありえないありえないよありえていいはずがないこの完璧で非の打ち所の無い、人間として個人として個として誰よりも何よりも完成されて満たされている私が何で不合格になる。この学校は、社会は、大人はヒーローは教師はここまで慎ましく無欲で何も望まずただ今ある平穏を享受しているだけのちっぽけな私という存在すら否定したいのか? どこまで強欲なんだよ、どこまで欲深くて度し難い生物なんだよ、そんなの権利の侵害だ。何者にも犯されていいはずのない私の私というただ1人に許された権利の侵害だ。満たされている私に満たされていないお前らが嫉妬するのは勝手だ、この世界に生まれた時からそれは割り切ってるでもこんなのあんまりだろ私が何をしたって言うんだ? そんなにもこの世界は運命は私に不条理を叩きつけたいのかこのクズ外道が!!! 

 

 黙っていれば美人と100人に聞けば100人がそう答える程端正な顔を激しく歪ませ激昂するレグルス。個性で書類を木っ端微塵にし窓を開け僅かに残ったカスを風に流していく、彼女の雰囲気に寝ていたパックも怯えできるだけ遠くへと冷蔵庫の上へ避難していた。

 

 まぁいいさ……私は慈悲深いんだ。元よりこういった満たされていない人間の愚かな行いを矯正してやるのが私の役目だからね

 

 ***

 

 4月……それは始まりの季節

 無事雄英高校ヒーロー科に受かる事が出来た少年少女達は憧れのヒーローになる為の第1歩を踏み出したのであった

 

 一方その頃

 

「本当に雄英は愚かな選択をしたよね、私を不合格にしておいて未来のプロヒーローを育成する為の教育機関だなんて宣っているのはとてもじゃないけど説得力が無さすぎるよ。未来で英雄として活躍しこの世界をより良くできる人間を選別しているのだとすれば、この私が落とされるのは矛盾してるしね。まぁ私の存在価値は雄英に属しているかいないかなんて、そんな小さな事では決まらないから何も気にしていないけどさ、ただ私を落とす程試験官……あの学校の教師の目が節穴だった事にここ数ヶ月驚きと哀れみが治まらないだけさ。そうだろ? こんなにも完璧で完成された誰もが手本として見るべき存在を不合格にするだなんてそんな事……ダチョウくらい脳が小さくたってやらないと思うんだよね」

 

 長々と雄英に落ちた悔しさを隠しきれずに話すレグルス。因みに彼女が不合格になった理由は筆記である。残念ながら彼女は偏差値79の高校に合格できるほどの高い知能を有してはいなかったしダチョウはレグルスを認知すら出来ない

 

「で、君はそんな私に襲いかかってきたわけだけど、君とその試験官どちらの方が愚かか証明するのはそういう個性を持ってても難しいだろうね。どうだい? 細身の女だからと警戒なんてせず、その欲望のまま獣の如く腕を突き出して来た癖に一瞬で立場が逆転した感想は?」

 

「お、おれ……おれの……腕ぇあぁああぁ……!」

 

「ふん、お前みたいな畜生が私の体に指1本触れれるわけないだろ。いい加減学んで、次からは私みたいに無欲で平和主義なちっぽけな人間として生きる事だね。安心しなよ私は優しいから君を苦しめることなんてしない、それが色欲に塗れた汚らわしい家畜へ贈れる唯一の慈悲さ」

 

 容赦なく真空波を放ちヴィランとすら呼べないただのチンピラの首を跳ね飛ばすレグルス。人を殺すことに一切の抵抗を持たない英雄志望の少女である

 

「満たされている私は聞きたい。死んだ君は、満足して死ねたかい? 死ねたのならおめでとう。満たされてなかったなら、ご愁傷様だ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。