強欲少女のヒーローアカデミア 作:pastel
「で、さっきからそこで見てる君は一体なんなのかな? 私も純情な乙女だからさ、影からこっそり覗かれるのは不愉快極まりないんだよ……。しかもこんな所を覗くなんて悪趣味にも程があるよね? ……聞こえてるのかなぁ!?」
影で覗いてる奴の所へ地面を思い切り蹴るレグルス。真っ直ぐに狙った方向へ飛んで行った石に壁が粉々に破壊されるが人に当たった感触は無かった。
本来であれば覗き魔だろうとなんだろうとネチネチと責め立て自分の権利を主張し相手を完全に封じ込めた上で力の差を示すのがレグルスのやり方だったが。先のチンピラを殺した所を見られたのであれば生かしておくのはマズイ、それをレグルスは分かっていた
「これはこれは申し訳ありません……乙女を覗き見するのは紳士としていけませんね……心からお詫びを……」
背後から黒い靄のようなものが発生しそこから声と共に現れたのは体を黒い霧で覆った異形だった。見た目からは想像できない紳士的な口調でレグルスに話しかけていた
「私はヴィラン連合に所属している黒霧と申す者です。どうぞよろしくお願いします。貴女のお名前をお聞きしても?」
「見た目と行動の割には人に対する礼儀を弁えて居るようだね。自己紹介どうもありがとう、私の名前はレグルス・コルニアス。それで私の事を覗いていた理由を聞いてもいいかな? いや聞かせろ、無許可に覗かれて私は今気分を害された。これは立派な権利の侵害だよ、だけど慈悲深い私は残った権利を使って君に質問している。回答を間違えるなよ? まずは手から行くからね。で、もう一度だけ聞くよ? 君の目的はなんだ? もしかしてこの死体に用があったのかな?」
「いえ、用があるのは貴女ですよレグルス・コルニアス。元々貴女を探していた訳ではありませんが、偶然にも貴女達を見つけ一部始終を見物していた所興味深い話が聞こえてきましてね……」
黙って続きを促すレグルス
「貴女……雄英高校に復讐したくありませんか?」
ー
こいつ……何を言い出すのかと思えば……私が復讐? ありえない。こいつは私がそんなにも満たされていない器の小さな女だと思ってるのか?
正解である。黒霧の視界を通じて彼女を見ていた男は彼女のそんな精神性に目をつけスカウトしていた。自らが所属しているチームのリーダーよりも若い15の少女がいとも容易く人の命を奪っている所を見て彼は無意識の内に死柄木弔を彼女に重ねていた。
自分が気に入らないものの悉くを拒絶し自由に生きる彼女なら死柄木弔と共にこの道を歩んで行けるかもしれない、死柄木弔は更なる巨悪になれるかもしれない。そう考えた
「貴女は雄英高校を不合格になったと聞きました。先程の貴女の戦いを見ていれば分かります、貴女のような人がこんな所に居るのは勿体ない! 雄英高校は理想主義の集まりです。教師陣もそれに見定められた子供達も……私達ヴィラン連合は後日雄英を襲撃します、そして教えてやるのです……真の恐怖を、理想を持った所で何一つ救う事など出来ないという絶望を。ただ悲鳴が! 呪詛が! 絶叫が! 永遠と木霊するような……! そんな楽しいパーティーを開きます。貴女も共に来ませんか? レグルス・コルニアス貴女の手で絶望を味わわせるのです、教師陣を……生徒を……オールマイトを殺して……」
ぺちゃくちゃと長話をしやがって……バカは要点がまとめられないから話が長くて煩わしい。会話を成立させず1人で喋って気持ち良くなるなんて、そんなの身勝手さ。相手を完全に無視した礼を失する行いだ
「あのさぁ、1人で喋って1人で悦に浸ってまるで世界の中心に自分がいると思い込むの辞めてよね、そもそも質問したのは私なんだからお前は必要な事だけ喋るべきでしょ、それが無礼を働いた君へ慈悲を与えてやった私への詫びってものだよね? そもそもさスカウトにしても、もう少しやり方ってモノがあるでしょ? 第一声が「復讐したくありませんか?」って陳腐すぎるんだよ、そのヴィラン連合って名前と同じぐらい陳腐な誘い文句だ。第一私が復讐なんて満たされていない器の小さい人間がするような事に興味を持つはずないだろ? 君と違って私は満たされている人間なんだよ。そういう襲撃だの復讐だの、争いとは無縁なんだ。私としては。私はこう、平々凡々とただただひたすら穏やかで安寧とした日々を享受できればそれで十分、それ以上は望まない。平穏無事で変わらない時間と自分、それが最善。私の手はちっぽけで力もない。私には私という個人、そんな私財を守るのが精一杯のか弱い存在なんだから」
長々と中身のない事を喋り続けるレグルス。その言葉の全てが自分に跳ね返って来ている事に微塵も気づいていないし一生気づくことは無い。だが黒霧は諦めない
「……それは失礼致しました、貴女の事を誤解していたようで申し訳ありません。では取引と行きませんか? 貴女が雄英襲撃に参加してくださるのならそこの死体をこちらで処理しましょう、如何ですか?」
……悪くない提案だった。後先考えずに男を殺してしまったせいで今レグルスに選択の余地はない状況、あちらが求めているのは襲撃に参加する事のみ。それ以上の行動は縛られない……その時彼女は閃いた。
「良いだろう、言っておくけど私が私の権利でその取引に乗ったことを忘れないようにね。それと君は条件を「参加する事」と言った、故に何かを後から言われても私は一切答える義務なんてない、OKだね? いや聞くまでもない当然のことだけど取引を結んだなら例え口約束でも明言しておくのは大事だから一応形式上聞いてるだけだからね? 後は君が頷くだけでいい」
「かまいませんよ、貴女が参加する。それだけで相当のアドバンテージを得れますからね。では決行の日時は決まり次第お伝えします、それでは」
黒霧は黒い靄を自身の体から広げその中に死体を持って入っていくやがて靄が完全に消えそこにはレグルスが1人残っていた
はぁ、あの畜生のせいでとんだ災難だよ全く。でも私としても得はある。私の権利を侵害しあまつさえ利用しようとして来たあいつらの言いなりになどなるわけが無い。雄英高校が愚かなのは真実だ、だがあそこには認めざるを得ない程の価値がある。この好機を最大限利用してやらないとね……
ー
とあるBARでレグルスの事について話してる3人の男達……彼らはヴィラン連合。今はまだ小さな組織だが、確実に巨悪の芽を成長させていた
「本当にあんなイカレ女いれて大丈夫なのかよ? 先生」
「同感です……何とか引き込む事は成功しましたが彼女がこちらに協力するとは思えません」
「大丈夫さ弔、君なら出来るよ。僕とDr.の傑作を持ってオールマイトを殺すんだ。それにヴィラン連合だって更に大きくなる、リーダーならあのくらい上手く手綱を握れないとね」
黒霧に指示を出し彼女をスカウトさせた男は当然かのように無理難題を押し付けてきた。死柄木弔にもリーダーとしての素質はある、人の上に立てる存在であるのは間違いないが問題は彼女が人の下に立てるのかどうか
「……マジかよ先生が言うなら信じるけどそもそもあの女はヴィランなのか? 初めて見たしまだガキだろ。殺したとはいえ相手はチンピラだしプロ見たらビビって逃げるんじゃないのか?」
「そうなればその程度だったという事だよ。これは彼女の選別試験でもある、もし弔の言う通りになろうものなら……その時は僕のコレクションに加えるとしよう」
15で一切の抵抗なく人を殺せる精神……腕を振れば体を切り裂き石を蹴れば壁を粉砕する強個性……
もう少し成長すれば彼女だって巨悪になれる
その実そこまでの興味は彼にはなかった。彼女がヴィランとして協力してもしなくても良し。彼が彼女に見出した何よりも欠かせない要素……それは彼女がヒーロー志望だったということ。ヒーローを目指していた15の少女が非情な現実に打ちのめされヴィランとなってしまう。ありきたりだがヒーローは絶対に心を痛めてしまうストーリーだ。あいつはその筆頭。彼女を見た憎たらしい宿敵の顔を想像するだけでたまらない……!
ー
数日後ヒーロー科1年A組の面々は災害救助訓練の授業で校内のある施設へと集まっていた
「水難事故、土砂災害、火事……etcあらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も……」
「ウソの災害や事故ルーム! 略してUSJ!」
(((((USJだった!?)))))
「スペースヒーロー13号だあ!? 災害救助を主に活躍してるヒーローだよ! 凄い!」
「わー! 私好きなの13号! 握手してください!」
「麗日さんでしたね、授業が終わった後ならいいですよ」
まだこの学校に入って日が浅い彼らは教師陣のプロヒーローにもしっかり興奮していた。13号も満更ではない
「13号、オールマイトはどこに? ここで待ち合わせてるんだが」
「あ、先輩それが……」
「全く非合理的だな。仕方ない、先に始めるか」
オールマイトは授業の予定がありながらも助けを求めている人を無視できず結果活動時間に限界が来てしまっていた為校長からお小言を貰ってる最中である。校長は言葉に中身が詰まってる分レグルスより話が長いかもしれない
「え〜始まる前にお小言を1つ……2つ……3つ……4つ……」
(((((増えてる……)))))
「皆さんご存知かと思いますが僕の個性はブラックホール。その名の通りどんなものでも吸い込みチリにします……普段はこの個性を使い瓦礫や水を吸い込み災害救助をしています」
「どんな災害からも人を助ける事が出来る個性……!」
「ええ……しかしこれは簡単に人を殺せる個性です皆の中にもそういう個性があるでしょう? この社会は個性の使用を資格性にし厳しくすることで成り立っているようには見えます。しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる力を個々が持っていることを忘れないで下さいね、相澤さんの体力テストで自信の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危険さを体験したかと思いますこの授業では心機一転! 人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう!」
「カッコイイー! 13号先生素敵ー!」
「ブラボー! ブラボー!」
13号の演説に拍手と歓声が上がる。結局の所個性は使い方次第であり人を救う事も殺める事も出来る、当たり前の事だが彼らにとってはとても重要な事だ。
そんな彼らの前に現れる黒い靄……その中から人影が見えてくる
「そんじゃあまずは……? っ一塊になって動くな! あれは……ヴィランだ!」