強欲少女のヒーローアカデミア 作:pastel
USJ広場でイレイザーヘッドと寄せ集めのチンピラ共が戦闘している中彼女はそんな事露知らず、別のエリアで1人突っ立って虚空を見つめていた
全く、目標はオールマイトだなんて言っていたのに肝心のオールマイトが居ないみたい。こんな大層な襲撃作戦を行っておいて間違った情報を掴まされてるなんて滑稽だね。やはり彼らと一緒に行かず別のエリアに飛ばされたのは正解だった
……周りを見渡す
このUSJとかいう施設の説明は黒霧から聞いた。私が飛ばされたのは土砂ゾーンに該当するらしい。私と同じように飛ばされた連中を見てみるがどいつもこいつも寄せ集めのチンピラじゃないか。こんな奴ら倒したって経験値にすらならないだろうね、だから、下衆な視線を向けられても無視だ。こいつらは事が終わる頃には刑務所行きか死んでるかの2択だろうしね
「おい! 雄英生が飛ばされてきた! 野郎共殺っちまうぞ!」
どうやら黒霧が上手くやったらしい、生徒達を分散させ既に配置してあるチンピラ共で嬲り殺す、ワープゲートとか言う汎用性の塊みたいな個性にも関わらずお粗末すぎる作戦だ。脳すら靄で出来てるのかな彼は
この土砂ゾーンにも予定通り生徒が飛ばされてきたみたいだ。髪が赤と白で半分に分かれている、左半身が氷で覆われている男……個性は氷雪系か?
どちらにせよ取るに足らない存在だ
考えながら棒立ちしているレグルスとは真逆にうるさいチンピラ共が雄英生に襲いかかろうとしていたが、そもそも彼とチンピラ共では勝負にすらならなかった
冷気が流れ地面が急速に凍っていく。レグルスは自身に氷が触れそうになった瞬間個性を発動させる。すると氷が彼女の体に触れた瞬間、まるで彼女をすり抜けるように分解されていった。
たった一撃でレグルス以外は氷像になってしまう。子供だからと慢心していたチンピラ共が痛みと寒気に耐えながら呻いている様子にレグルスは少しだけ気分が良くなった
「子供一人に情けねえな……しっかりしろよ、大人だろ」
氷像になった敵に向かって歩いていきながら煽る轟
「あのヴィランはオールマイトを殺すって豪語してた。初見じゃ精鋭を揃えて数で圧倒するのかと思ったら……蓋を開けてみりゃ、チンピラの寄せ集めじゃねえか」
「見た限りじゃ本当に危なそうな人間はひと握りだった……とすると、俺が次に取るべき行動はお前らへの尋問。さぁ教えてくれよ、オールマイトを殺せるっつー根拠は何だ?」
冷静に状況を分析し情報収集を始める轟だったが、彼は警戒を解いてはいないが、無意識の内に思い込んでいた。それなりに数の多いチンピラ達だがその全ては氷像になり、自分の氷結を回避した者など居るはずないと
そんな彼に静かに近寄る彼女
「やぁ私はレグr」
「!? チッまだ残ってやがったか!」
氷像になった敵の尋問に集中していた轟にゆっくり近付いて挨拶を始めるレグルス、だが立場はヒーローの卵と不審者。その選択は悪手すぎた
先程のような凍らせるやり方ではなく、そのまま氷の質量でレグルスを攻撃する轟、完全に敵を制圧したと思っていた轟は想定外の奇襲に焦り、反射的に手加減なく個性を使用してしまった。
「ほあぁ!?」
情けない声を上げながら土砂の山に吹き飛ばされるレグルス
「女!? やべぇ、焦って出力を誤った……クソっ敵か、もしくは敵の人質か分からねえ以上無事を確かめねえと……」
急いで吹き飛ばされた方へ向かう轟。しかし目の前の山の一角が吹き飛ばされた事によりその足が止まる。
轟に容赦なく吹き飛ばされたレグルスだったが一切の傷がついていない状態で復活していた。尤も体は無事でも服は土に塗れ、彼女の精神も既に我慢の限界を迎えていたが
「あのさぁ! 君、人が自己紹介してる最中に攻撃してくるなんてどんな神経してる訳? 君の家庭では挨拶より暴力って思想が一般化されてるのかな? 一体どこまで歪んだ教育者に育て上げられたらそんな人間になれるのか、本当理解に苦しむよ。ただ他者を理解する事すら許さず私を苦しめるなんて君はどこまで強欲なんだ? そもそもさ、私はただ君に挨拶と自己紹介をしようとしただけだ。人間関係を構築していく上で1番最初のステップであり、1番大事なそれを私は君への気遣いで先に行おうとしたんだけど、普通の人はそのくらい察せるよね? それなのに君は私の言葉を無視し……あまつさえ攻撃して来た! これは許されないよ許されていい訳ない。明らかに私の人格を否定している、それって私の喋る権利の侵害だ! 無欲で理性的で慈悲深い私に対する権利の侵害だ!!」
唖然とする轟。黙って話を聞いていた彼だったがその内容の殆どか頭に入って来なかった。彼が理解したのは彼女が挨拶を遮られ攻撃された事に怒ってる事と父親の屑性は他者から見ても丸わかりであるという事
そして彼女は怒ってはいるがヴィランのような悪意や敵意は感じない。轟は警戒を少し緩めた
「そうなのか。悪ぃ、敵の奇襲かと思って攻撃しちまった……確かに自己紹介は大事だよな、俺は轟焦凍。よろしく……それより何でここに? お前……見た目的に俺と歳同じくらいだろ。迷子か? それともあいつらに連れてこられたのか?」
「私はレグルス・コルニアス。次からは挨拶を遮ったりなんてしないようにね。当たり前の配慮が住み良い世界を作っていくんだから。あぁ、ここにいる理由だったね? 日課の散歩をしていたらチンピラ敵共に攫われてここに連れてこられたんだよ。ほら私ってか弱いじゃない? 流石にあの人数相手じゃ抵抗なんてしようとも思えない訳だよ。あぁでも個性を使えばどうにかできたよ、でも規定があるじゃない? 公共での個性使用は法律違反だ。敵に襲われても律儀に規定を遵守した私って理性的だと思わない?」
全て嘘である
「なるほどな……一瞬で片付けられて良かったな、長引いてたら人質に取られる所だった。とりあえず出口まで行くぞ。先生達の所まで」
「外のヒーローは私を助けに来てはくれなかったけど、勿論君は私を敵から守ってくれるよね?」
「あぁ、絶対に守る、俺から離れるなよ」
ー
轟焦凍に護衛されながら出口まで向かっていくレグルス。途中で透明人間もパーティーに加入したがどうやら彼女もここの生徒らしい、名を葉隠透。服も透明に出来るのなら武器も触れてれば透明に出来るのだろうかなんてレグルスはぼんやりと考えていた。葉隠透が裸であるという考えは頭の片隅にも無いらしい
出口付近の広場に到着した轟達が目にしたのは脳を剥き出しにした怪物に相澤先生が追い詰められていた所だった。
障害物に隠れ状況を観察する轟達
「おいおい……マジかよ」
「そんな!? 相澤先生が……! このままじゃ相澤先生が殺されちゃうよ轟君!」
(氷結で化物の動きを封じたとしてあれじゃ先生事凍っちまう……なら狙うのはあの化物じゃなくてそいつに指示を出してる奴……!)
「葉隠! 俺が敵を凍らせるからその隙に先生を出口へ運んでくれないか? お前は葉隠と一緒に行ってくれ!」
「OK! 向こうで合図を待つね……レグルスちゃん行こう!」
「……あぁ」
葉隠とレグルスが離れた所へ移動したのを確認した轟は先程のように氷結を相手に向かって放つ、狙いはあの”手”の敵とワープゲートの敵。恐らくあの脳の化け物は自我を持っていない、手の敵が命令を出して動かしているんだろうと轟は推測する。だとすれば命令元を攻撃すれば脳の化物は先生の所を離れざるを得ないと考えた
狙いは的中、大きな音を立てて迫ってくる氷塊に気づいた死柄木が脳無を呼び破壊させる。全員の視線がそこに集中した瞬間葉隠と近くに居た麗日が飛び出し無事相澤先生を救助する事が出来た……が
「あーあ、イレイザーヘッドが奪われた……お前何なんだよ……邪魔しやがって……そうだ……! 自分達の代わりに生徒が死んだなんて知ったらどう思うのかなぁプロヒーロー! ……やれ脳無」
命令された脳無が高速で轟に殴りかかる……回避なんて出来るはずもない、苦し紛れで氷の壁を貼り防御しようとしたが容易に破壊される……既に轟の目の前には拳が迫ってきていた
全員が間に合わないと思ってしまった。
1秒先の悲惨な未来を想像して悲鳴をあげる者、目を背ける者、自分の危険を顧みず飛び出そうとする者……相澤の個性にも頼れない絶望的な状況が覆ることはなく脳無の拳が轟の頭を潰そうとした瞬間
脳無の腕は空に飛ばされていた
一連の流れに大多数は思考が追いついていなかったが当の彼女はそんな事お構い無しに喋り出す。それはもう上機嫌に
「全く、人を助ける為に体を張るのはいいけどさ、助けた人の代わりに殺されてちゃ本末転倒ってやつだよね。被害者は自分を助けてくれた人が五体満足で笑顔なのを見て初めて心の底から安心できるんだよ、自己犠牲前提の人助けなんてただの命の押し付けでしかない。そんなの、残された人間に責任を丸投げして逃げる卑怯者でしかないよね? ……君はそんな自分勝手で自己中心的な行いをして家族を先生を級友を私を悲しませる所だったんだ。本来なら許されない、他者の権利の侵害だ……でも、もう大丈夫さ。何故って?」
「私が来た」