強欲少女のヒーローアカデミア   作:pastel

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8話『ゼロから始める雄英生活』

 レグルスが文句を垂れながら歩いてる間1-Aは先日のUSJ事件の話で盛り上がっていた。雄英が襲撃された事は瞬く間に世間へ広まりニュースやSNSで話題になっているが、雄英の徹底した情報規制によりレグルスの存在だけは隠されている

 まあ当然といえば当然、一般人の彼女が襲撃に居合わせヴィランを撃破したなど知られては雄英の評判にさらに傷がつき、彼女もマスコミに追われ迷惑するだろう。レグルスについての情報規制は全会一致だった

 

 彼らが今話してるのはそんなレグルスの事。彼らは結果的に彼女に救われた事でそれなりの信頼と尊敬をレグルスに抱いていた

 

「いや〜それにしても凄かったよなあの子! レグルスって言われてたけど名前か? それともあの子も実はプロだったりすんのかな? 相澤先生みたいにあんまり世に出てない知る人ぞ知る……! 的な」

 

「いやありえねえって! あいつは先月ヒーロー科の入試受けてたんだぞ!? 確かにめっちゃ強かったけど、それとこれとは別だろ」

 

「それマジなの上鳴? じゃああの子ウチらと同い歳って事? どう見ても雰囲気が華の女子高生のそれじゃなかったけど……」

 

「それはお前も同じだウェイ!? 「一言余計」

 

「あはは……でも僕も彼女とは入試で1度会話……したと思う……し、一般人だと思う。あんまり思い出したくないけど……」

 

 入試の日、レグルスに理不尽なイチャモンを付けられ沢山の受験者で溢れてる中説教されていた彼にとってはあまりにも苦い思い出だ。彼女との会話と定義できるか怪しいやり取りを思い出し少し顔色が悪くなる緑谷

 

「みんな! 朝のホームルームが始まる!!! 私語を慎んで席に着け!!」

 

「ついてるだろ〜」

 

「ついてねえのお前だけだ」

 

「なぁっ! ……しまった!」

 

 

「ねえ梅雨ちゃん、今日のホームルーム誰がやるのかな?」

 

「そうね、相澤先生は怪我で入院中のはずだし……」

 

 あの場にいた誰よりも傷を負っていた相澤。入院して治療を受けているだろう彼を心配していた生徒達だったが、扉が開く音を聞いて姿勢を正した

 

「おはよ」

 

「「「相澤先生復帰はええ〜!!」」」

 

 現れたのは全身を包帯でグルグル巻きにした相澤だった。どう見ても重症だ、何故彼は当然のように教壇に立っているのか。凄まじいプロ根性に驚愕する一同

 

「俺の安否はどうでもいい、何より戦いはまだ終わってねえ……雄英体育祭が迫ってる」

 

「「「くそ学校っぽいの来た〜!!」」」

 

「こんな時だからこそ開催する事で雄英の危機管理体制が磐石だと示すって考えらしい。それにうちの体育祭は最大のチャンス、ヴィラン如きで中止していい催しじゃねえ。うちの体育祭は日本のビッグイベントの1つ……日本においてかつてのオリンピックに代わる全国が熱狂する祭典……それが雄英体育祭だ」

 

「勿論全国からプロヒーローがやってくる、スカウト目的でな。当然トッププロ達だって来る、プロに見込まれればその場で将来が開けるわけだ。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ……”その気”があるなら準備は怠るな!」

 

「「「はい!!」」」

 

「ホームルームを終える前にもう一つだけニュースがある。ほら、早く(ガラッ)入れ……合図したら来いと言ったんだが……まぁいいか」

 

 扉が開き視線が集まる、教室に新品の制服を着て入ってきたのは記憶に新しい”彼女”だった

 

「やぁ、どうも初めまして。顔見知りも何人か居るみたいだけど改めて自己紹介させてもらおうかな。私はレグルス・コルニアス今日から君達のクラスメイトであり、君達の未来を守ってやった英雄さ」

 

 ー

 

「───って事で今日からこいつもA組だ、質問ある奴は?」

 

「いや頭追いつかん! まずなんだよ雄英生(仮)って!」

 

「こいつの為に用意された席だよ、こいつは入試に落ちたが先の襲撃事件で疑いようのない実績を出した。他の高校に通ってる訳でもないこいつに、校長は特例で席を用意したのさ。つまりこいつが今後の試験や行事で好成績を出した場合ヒーロー科に正式加入する可能性もあるって訳だ。その時は代わりに1人除籍するから、あぐらをかいて追い抜かれる、なんて事にならないように」

 

 一通りレグルスがここにいる経緯と事情を話す相澤。除籍を匂わせ更に生徒達の気を引き締めていく。勿論お分かりだろう、合理的虚偽だ

 

「じゃあレグルスちゃんは転入生って事だ! それってめっちゃがっぽ〜い! ねぇねぇ、レグルスちゃんの個性って何なの? 凄かったよね〜! 手とか足が触るだけでパーン! ってなったり水掴んだりさ!」

 

「あ、それウチも気になってた。ただの増強系……なわけないよね」

 

「レグルスさんの個性……!? 確かに、彼女の個性には不可解な点が多い……少ない動作で高威力の攻撃をしているのを見て増強系かと思ったけどそれじゃ”水”を掴めるのに理由がつかない……ブツブツブツブツ」

 

「私の個性? そんなに知りたいなら自分達で考えて当ててみなよ。これから一緒に過ごしていくんだ、マジシャンがショーの開始前に種を明かすと思うの? それとも、自分達で思考する機能が欠如してるから私に慈悲を求めてるのかな?」

 

 自身の権能について話したがらない彼女だが、入試の際に個性届けとして獅子の心臓の情報を全て雄英に渡している為相澤には馬鹿を見る様な目で見られているレグルス。彼女は馬鹿なのだ

 

「言わないのは勝手だが、ヒーロー科に来たからにはお前にも受けてもらうぞ……個性把握テスト」

 

 ー

 

 個性把握テストは相澤が生徒達の最大限を知る為に行ってきた合理的なテストだ。相澤はこの個性把握テストで生徒を見極め、見込みの無いものは容赦なく除籍にしてきた

 

 レグルスだって例外ではない。校長が特例で席を用意した事など関係ない、見込みがあるなら残す無いなら普通科へ行ってもらう。それだけだった

 

 第1種目:50m走

 

 権能を全力で行使すれば彼女はこの世の物理法則の一切を無視し、全てを置き去りにするスピードで動ける。瞬きの間に、なんて表現すら生温い程に圧倒的な速度で。だがレグルスはそれをしなかった。時間停止を行った際の高速移動は制御が難しく、ブレーキ無しの車を運転するのと変わりは無い。そもそもそんな速度で動けば、彼女自身状況把握が追いつかなくなり周りへの時間停止で減速する事すら困難なので極論全てをすり抜け地球を一周するか死ぬかの2択である……そう思った彼女はそれを試すことすらしなかった

 

 故に彼女は普通に走り結果12秒だった。

 小学生の方が少しは速いだろう

 

 第2種目:握力

 

 これは楽勝、自身の時間を止めた上で測定器を握れば

 持ち手の部分は一欠片も残さず消し飛んだ。

 

 結果:測定不能

 

「いやセコくね!?」

 

「いやいや、これは正当な結果だよ。私が私自身の力で挑んだんだから、結果が何であれそれは受け入れられて当然だろ? それとも君は私のそんな精一杯の努力を否定できるほど偉い人間なわけ? それってさ─────」

 

 その後も競技をこなしてどれも小学校低学年と同等かそれ以下の結果を叩き出したレグルス。個性にかまけて運動をして来なかったしっぺ返しである。競技中は権能を使い疲労を感じない状態で動いていたがそれもほんの数秒、心臓が痛む感覚を極力味わいたくないレグルスは結局良い記録を出せなかった

 

 最終種目:ボール投げ

 

「これが最後だ、そらとっとと投げろ」

 

 私の事を完全に舐めていやがるなこの男……! この私がわざわざ時間を割いてこいつのしたい事に付き合ってやってると言うのに……! 慈悲深い私に最大限の感謝をすべきだろそれが礼儀だろ、それなのになんだよその無礼は。まるで私がお前より下だと思ってるような態度じゃないか、あんな屑の傀儡に嬲られていたお前がそんな目で私を見るなそんな権利はお前なんかには無いんだよぉ! 

 

 最初こそ期待の目で見られていたレグルスだったが競技をこなす度その視線は減っていった。失望された訳では無い、ただ想像してるよりもずっと

 普通だった為その熱が冷めただけだった。むしろ生徒達は自分達よりもずっと上にいると思っていた彼女の人間らしい所を見て少し親近感すら湧いていた。

 

 そんな事知る由もなく彼らは自分を見下していると被害妄想を膨らませたレグルスは屈辱に唇を噛みながらボールを握りしめていた

 

 理解させなければならない……私はお前達よりずっと上でお前達が絶対に辿り着くことのできない程完璧で、完成された人間であると……! お前らなんかが私の価値を測るな、私を理解した気になるな、満たされてないお前らが満たされている私を見下す権利なんてない。それは私の権利だ、私を評価するのも私の事を完璧に理解するのも満たされていない人間を憐れむのも、全て私に、私の、私だけが許された権利なんだ!! どこまでも人の権利を侵害する事に躊躇いすらない大罪人が……何様なんだよ、どれだけ強欲なら気が済むんだよ!! 

 

 人知れず屈辱と憤怒に苛まれていたレグルスだったが、それでも彼女は彼らのやり方に則り自分の力を証明する事を決意した。この場で感情のままに攻撃すればそれは自分の敗北であり奴らに死に逃げされる。自分が完璧な勝利を得るにはそうする訳には行かなかった

 

「……君達、よく考えて見ているといい。私はこんなボールに限らず何にだってこれを片手で行う事が可能だってねえ!!」

 

 不格好なフォームで勢いよくボールを投げるレグルス。轟音を響かせながら高速で飛んでいったそれは重力なんて存在しないかのように一直線で空の彼方まで飛んでいった

 

 ────結果:無限

 

「ぅぐ……! はぁ……はぁ……どう? 理解できたかい? 私は既に君達の手が届かないような領域に達してるんだよ。私は寛大だから、君達にわざわざ教えてやったわけ。私と自分を比べるんてそんな烏滸がましい事をすれば、君達は埋まらない差に絶望して死にたくなるだけだって事をさ、これに懲りたらもう二度と──────」

 

「すげー! 無限出たのこれで2回目だぞ!?」

 

「さっきの運動音痴さからは考えられない結果だな……」

 

「……はぁ? あのさぁ! 君達がどうしようもない程強欲な生物なのは理解したから優しい私もこうやってわざわざ実力の差を見せてやったわけ、そんな事すら理解できないの? それってもう考える事を放棄したってことだよね? それは相手の思いやりに対する礼儀としてちゃんちゃらおかしいでしょ、明らかに礼を失する行いだ、それってつまり私という存在を軽んじてるって事でしょ? 私を軽視してるからそんな事が出来るんだろう? それってさ、私という個人の権利の侵害だよ──んぐぅ!?」

 

「まだ満足に腕動かせねえのに使わせるなよ、痛えな。少し落ち着けレグルス。別に誰もお前を見下したりなんてしてない」

 

 いつまでも話が終わらず不穏な雰囲気が漂うこの場を相澤が捕縛布でレグルスの口を塞ぐことで収める。ギプスをつけ指先だけで捕縛布を正確に扱う相澤のプロ根性に再び驚愕する一同

 

 そんな中レグルスは権能を行使し捕縛布を破壊しようとするが出来なかった。自身の権能が不発するという今まで一度も味わったことの無い感覚にパニックを起こすレグルスを、髪が逆立ち目を赤く光らせた相澤が見つめている

 

「ん、んぐぅ!? ん、んぬぅ……!? (私の個性は!?)」

 

「無駄だよ……はぁ、既視感を覚えるな。どいつこいつも、少しは自制しろ。無駄に個性使わせるな……俺はドライアイなんだ」

 

 捕縛布をどうする事も出来ずもがいているレグルスを横目に相澤は考える。テストの結果だけ見ればぶっちぎり最下位の彼女をどうするか……

 

 光るものはある、レグルスの戦闘力は本物だ。その辺のプロと比べたってレグルスには遠く及ばない。あの脳無と実際に戦った相澤は彼女の実力が無敵の個性だけではない事を感じ取っていた。

 

 体力も無く運動能力が低いのは些細なこと、それはこれからたっぷりと時間を使って絞っていけばいい。重要なのは彼女の精神性がヒーローに向いているかどうか。USJでレグルスが生徒を救いヴィランを退治した時の事を思い出す相澤

 

(あいつは幼稚で自己中な、死柄木とはまた違う意味での子供だ……もし彼女がヒーローの夢を諦める事になれば次はヒーローではなくヴィランとして俺達の前に現れるだろうな……あんな力が無差別に振り回される事になれば……どちらにせよ彼女をヒーローとして育て上げるしかないって事か……校長はこの事を危惧して、ただ保護するだけでなくヒーロー科へ参加させることを選んだんだろうな)

 

「はぁ……静かにしておけよレグルス。結果発表だ……レグルスは緑谷を超え見事最下位。よって除籍処分は無し、(仮)ではあるが改めてヒーロー科へようこそレグルス・コルニアス。実力的に足りないものが多すぎるお前をこれからビシバシ鍛えていくからくれぐれも死なないようにな。はい解散、早くクラスに戻れお前ら」

 

「あのさぁ、私の何が足りないって? 満たされていない人間が私に嫉妬するのは仕方の無い事だと割り切るけどさ、流石に言っていいことと悪いことがあるでしょ? その分別すら付けられない人間が私を鍛える? 烏滸がましいにも程があるよね。少しだけ奇妙な個性を持ってるからといって良い気になるなよ!」

 

「放課後俺についてこい。お前は言葉より体で理解する方が得意そうだからな」




原作レグルスと違って常時時間停止を行っていないなら、精神年齢も時間が経てば少しは育つのでは?と考えてみました。無理かも
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