ガイコツ海賊 作:秀沢
「いやぁぁぁぁ!コワいぃぃぃぃオバケェェェェェ!!」
「えぇぇ?」
狂乱し叫びながら、走り回っているアフロガイコツにモモンガは、唖然ととし呆然としているといたが、落ち着かせるべく口を開く。
「あのー驚かせてしまってすみません。怪しいものではありませんし、貴方と敵対とするつもりもございません。一度、落ち着いて話を聞いてもらえますか?」
「いやぁぁぁ見た目と全然違うー!!逆にコワいー!!」
「えっと、失礼かもしれませんが、私と貴方は同じアンデットだと思うのです。そこで、ここの場所などをお聞きしたいのです。」
「いやぁぁぁぁ!!コワいぃぃぃ!!ワタシはそんな怖くないです!一緒にしないでくださいー!」
「あ、これはすみません。ですが、こちらも何が何だかわからない状況でして、一度冷静になってください。」
会話を試みてもこちらを怖がって、状況が変わらないことにイラ立ちながらも、相手が落ち着くまで待つことにする。
(.......てか、こいつ何なんだ?同じアンデットのくせにこっちを怖がってるし、俺そんなに怖いのか?)
「............」
「それで、何をお聞きになりたいのですか?ヨホホホ!なんでもお答えいたしますよ!」
さっきまでの狂乱ぶりは何だったのか。その突然の変化に呆然としながら、やっと会話ができることに安心する。
このガイコツはティーカップを啜りながら、こちらの返答を待っている。その異様な落ち着きぶりに少しイラつくが貴重な情報源なため、落ち着いて話し出す。
「えっと、ありがとうございます。ではご厚意に甘えまして、最初に私は鈴木悟と言いますが、貴方のお名前をお聞きしてもよろしいですか。」
「おお!スズキサトルさんですか、よい名前ですねー。ワタクシは死んで骨だけブルックと申します!どうぞよろしく!!」
「よろしくお願いします。ブルックさん。....質問なんですが、貴方はプレイヤーですか?」
「ぷれいやー??ワタシはそのぷれいやーではないですね。」
このブルックという男性―おそらく―は戸惑いながら、答える。だが、その返答にそれ以上に戸惑ったのはこちらだ。
(え?プレイヤーじゃないのか?....そういうロールプレイだと思ったんだけど。じゃあ、ヨホホってなんだよ)
戸惑いながらも、質問を続けていく。
「そうなんですね。....もう一つ質問があります。ここはどういう場所で、差し支えなければブルックさんのことについても教えていただけますか?」
「そうですねー。ここの海は、魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)と呼ばれる海域でして、この船はワタクシが所属していた海賊団の海賊船です。今は、ワタシしか乗船していませんが、まぁ、40年以上この船で海を漂っています。.......ワタシについては......」
彼から発せられた知らない情報に処理しきれなくなっていたが、自分について話すときに躊躇していたため、若干困惑しながら口を開く。
「あー、ブルックさん。話しづらいようでしたら、大丈夫ですよ。」
できれば、彼の知るすべての情報を包み隠さず話してもらいたいが、無理強いしてこの世界で初めてあった人物との関係が悪化しては支障になるだろう。
「いえ、スズキサトルさん。大丈夫です。お話いたします。.......続く。」
「.......えぇぇ。」
「ヨホホホ!!冗談ですよ」
彼の冗談に拍子抜けし苦笑するが、話の続きに耳を傾ける。
「ワタシがなぜこのような姿になってしまったのか、そしてなぜここにいるのか。.....それは―――」
彼の過去が自分が何故ここにいるのかなどの現状の把握に役立つだろうと思っていたが、埒外の知識が彼の口から話された。
ルンバ―海賊団という海賊という組織に入団してから、ここの海域ですべての仲間たちと共に死んだこと。
死後にヨミヨミの実という悪魔の実の能力で黄泉の国から戻るも、自分の肉体を見つけるのに1年かかり、白骨化してしまいガイコツとして蘇ったこと。
5年前にスリラーバークのゲッコー・モリアの能力で影を奪われたことで、日が当たる場所にでることができなくなったこと。
(悪魔の実?海賊団?ヨミヨミ?影が奪われた?.......なにそれ)
「以上がワタクシの物語です。」
「.......あ、ありがとうございます。えっとその、悪魔の実とは何でしょうか?」
「悪魔の実とは食べたものに不思議な能力を与える代わりに、その能力者が海に嫌われカナヅチになるものですね。ワタシは、もうヨミヨミの実の力が失われたので、カナヅチの呪いだけ残ったというわけです」
「はぁ、なるほど。すみません、説明していただいたのに分からないことだらけで、すぐに理解できて」
「ヨホホホ!.....なるほど、道理で!ところで、スズキサトルさんはどういう経緯でここにいるのですか?」
あちらからも、こちらの事情に質問がくるのは予測できたため、淀みなく答える。
「はい。もっともです。....私はこちらとは別の世界にいたのですが、いきなりこの世界に転移させられたのです。そのため、何もこの世界について分からないのです。」
「えー!!!!転移ですか?.......ワタクシ驚きました。ワタシもここ最近、情報に触れていないので知らないですけど、最近はその転移というものも当たり前なのでしょか」
「はぁ、あの、影が奪われたと言われましたが、その犯人も海賊なのですか?」
彼は腕にかけていた杖を近くにあるテーブルにかけ、再びカップを口につけたあと、口を開いた。
「ええ。ゲッコー・モリア。人間の影を奪い、ゾンビに張り付けることで本人の力を与えるという能力を持っています。」
(....もうこの世界は完全にユグドラシルではないな。俺が何故ここにいるかは分からないけど。てか、本当にこの世界って何なんだ)
ほかにもブルックに様々なことを質問し、適度にこちらの情報も出しながら、交流を深めていった。
自分の状況は分からないが、この世界についての情報をいくつか聞き出したモモンガはこれからの方針について考える。
(....だいたいは分かってきたけど、悪魔の実を食べた能力者に出会った場合、俺の能力で対処できるのか?)
情報の収集も重要だが、一番は身の安全である。この世界の初心者であるモモンガにとって、一人で行動することはあまりにも危険である。異世界ともいえるこの世界で、ユグドラシル時代の魔法が通用するとは限らないためである。
(やっぱり、この人に頼るしかないのかな。)
「ブルックさん、私のことは悟で大丈夫ですよ、これが名前なので。ところで、これからどうなさるおつもりなのですか?」
「このまま、この海からでても出ても私の体が消滅するだけです。ですので、ワタシはここに残って影を取り戻せる奇跡の日を待つことにします!!ヨホホホ」
「.....ブルックさん。私なら、あなたの影を取り戻すのに協力できると思います。私も、ここから脱出するために、何かしらの船などの物資を調達しなければならないですし」
もちろん船などなくても、<飛行>の魔法で飛んだり、マジックアイテムを使えば、ここから脱出することは可能である。だが、彼に恩を売ることで、これからの情報収集に協力してくれるかもしれない。そんな打算を多分に含んだ提案を彼は意外な形で応えた。
「.....あなたいい人ですね。サトルさんは今大変な状況にあるのに、ワタクシを気遣ってくださる。しかし、その提案はありがたいのですが、さっき会ったばかりのあなたに、ワタシの為に死んでくれなんて言えるはずがありません。......しかし、今日はなんて素敵な日でしょう。人に逢えた!!...この霧の深い海でたった一人舵のきかない船で、さ迷うこと数十年!!...ワタシ本っっ当に淋しかったんですよ!!淋しくて怖くて...死にたかった!!その優しさが本当に嬉しかったです。どうもありがとう」
「あ....いえ、どうも」
彼の率直な言葉に対して、自分の打算ありきの利己主義的な発言を鑑みて羞恥心が芽生える。そして、彼の数十年の孤独感は、ついこの間まで自分が持っていた寂寥の情と同じである。仲間に会いたい。己が一人でユグドラシルで入っていた時、そう思わなかっただろうか。
ブルックの感情に共感し、意を決した自分は再び提案をもちかける。
「.....ブルックさん。実はワタシは人間ではありませんから、食料などは必要ありません。それに空を飛べるため船も必要ないです。.....しかし、何も知らない私ではこの世界を生きていくことはできないのです。そこで、ブルックさんには協力する報酬として、私が安心できる場所を見つけるまで傍で協力していただきたいのです。どうですか?あなた一人ですることはないと思います。」
これで相互協力という形になることで、彼も断る理由がないはずだ。彼は黙り込みこちらを見つめている。
しかし、考えてみればこの提案をした自分が馬鹿だと思う。恩を売るには、こちらの弱みを見せずに一方的に協力することが一番であり、はじめはそうしようと思っていた。ただ、ユグドラシル時代の仲間たちを思い返せば、彼に協力しないことは、過去の仲間たちを否定するように思えてできなかった。
「......なるほど。サトルさん、お優しいですね。.....わかりました!!ワタシもサトルさんに全力で協力いたしますので、サトルさんの厚意に甘えさせていただきましょう!!よろしくお願いいたします!!ヨホホホ、ヨホホホ!!」
「はい!よろしくお願いします!ブルックさん。.....ところでブルックさんは何歳ですか?」
「ヨホホホ!ぴちぴちの88歳ですよ!!」
「え!そうなんですか。...そうでしたら、もっと砕けた口調で話されてもいいんですよ。私が30歳なので」
「え?30代ですか?その見た目で......いや、サトルさんはワタクシに協力してくださる方なので。サトルさんこそ、こちらに気遣わず砕けた感じでよろしいですよ!」
「......わかりました。どちらとも砕けた話し方でいきましょう。」
「わかりました!!ヨホホホ!!...あ!斜め45度!どうですか?45度になってますか?」
「え?......あ、なってると思いますよ。適応するの早いですね。....あの、さっきから思ってたんですけど、そのヨホホホってなんですか?」
「ヨホホホ!!これは笑い声ですね!!」
「あーそうなんですね。ははは」
(やっぱり、ちょっと変な人かも。......でも、いい人だな)
笑いあい和んだ二人は、影を取り戻すための話し合いを始め、互いの情報共有をしていった。