戦闘開始した瞬間、私は後方へとバックステップしてメイスから距離を取る。
今の私は生身の身体と変わらない。先ほど私がしたように、
防御系の魔法を覚えていれば良かったのだが、生憎私はスキル構成上、魔法関係は一切覚えていない。
とりあえず敵を知ることから。彼女について私は分析していく。
魔法戦士で装備適正はおそらく600階層付近。近接武器は
結構バランスが良い防具構成だ。イーターアリゲーターは水属性に耐性があるが雷属性には弱い。雷耐性が高いバグサーペントの手甲で補っているのだろう。
防御系の魔法は間違いなく付与されているので弱点と言えるのは頭部のみ。ヘルムをつけていないのは顔を見せたい配信者としての性からか。
すると、メイスはじりじりと距離を詰めていく。
魔法を遠くから延々とうたれるよりは近接勝負がましだ。しかし、あの
確かミスリルとマナメタル、タングステンの合金。SDSに所属した際、作成した特注品だとwikiで見た。
ミスリルを使い付与魔法の伝導性を高め、マナメタルにより最初から魔法を付与、重さと硬さを高めるためタングステンを使用してるなどガチ仕様の武器だ。
正直あの武器だけ700番台の階層でも通用する代物だ。
勿論、普通にくらうだけでも一発アウト。付与魔法によってはかすっただけでもアウトだろう。
では、近接格闘しか手段がない私はどう戦うのか。それは……
少しずつ距離を詰めるメイスに対して不意を衝くように私から一気に距離を詰める。
彼女が
喉をつかれ蹲って喉を守ろうとした彼女の顔を膝でかちあげ、がら空きの腹部に二発ボディブローを入れる。
が、これは悪手だと殴ってから気づく。
私の拳程度では彼女の装備を貫通して衝撃を与えられない。
その隙にメイスは武器を持たない方の手を私に向けた。
咄嗟に横方向へと転がるように避ける。
「
先ほどまで私がいた位置に炎の玉が通り過ぎた。
立ち上がり彼女から距離を取った私に追撃するよう彼女が魔法を放った。
「
走ることで彼女の魔法を間一髪で避ける。
致命傷とはいかなくてもくらったら大ダメージは必至。まともに戦えなくなるだろう。
「
喉を押さえ軽く咳をしながら魔法を放つ彼女だったが、あることに気づいたようだ。
「あれ、アキラさん。もしかして魔法うってたら近づいてこれない?」
私は気まずそうな顔をし沈黙を貫く。
その様子をみた彼女はにやりと笑った。
「
次々と放たれる魔法を部屋中を駆け回りながらなんとか避けていく。
しかし、当然ながら近づく余裕なんてものはなかった。
「あれ?アキラさん、どうしたの?近づいてこないけど」
魔法を放ちながらメイスが私に話しかけてくる。
「え~。最前線のプロが私に近づくことすらできないんだ~。まさか魔法に当たるわけないよね~」
メイスは器用に魔法をうちながら私を煽ってくる。
くそ。こちらがなすすべがないことを良いことに……。
まて、落ち着け。彼女はそうやってこちらのミスを誘う作戦だ。
「え、このまま私が勝っちゃったら~、助けてもらったアキラさんには悪いけど~、た~っぷりと心を込めて言ってあげるね。ざ~こって」
絶対に勝つ。
決してイラついているからじゃない。彼女がここまで綺麗にフリを入れてくれたんだ。しっかりとオチをつけてあげるのが大人としての役割だろう。
煽りながらも一向に魔法が当たらないメイスは、ついに行動を変える。
「
そう、
しかし、私はそれを待っていた。
彼女が
「えっ!」
彼女は目を見開く。直撃した
【雷角轟一】というスキルにより雷属性に対して完全耐性を持っているからだ。
メイスが咄嗟に武器を振りかぶるが、それよりも早く彼女の腕へと蹴りを入れる。しかし手に持つ
私はリスク覚悟で彼女の武器を持つ手首を掴み、とあるつぼを押した。
すると次の瞬間、メイスには痛みとともに体中に雷が流れる。
「くっ」
【雷角轟一】は雷を無効にするのではなく吸収するスキル。一時的に私の武器や体には雷属性が付与されている。
メイスは武器を手放し私から距離を取った。私はあえて追撃せずその場から動かない。
彼女は態勢を整え私のすぐそばに落ちている特注の
そして【アイテムボックス】から別の
取りに戻ることをリスクと考えたのだろう。しかし、これにより勝利の条件は整った。
私は手を前に突き出し声を出す。
「
すると次の瞬間、私の手から
【雷角轟一】のもう一つの効果。雷を溜め込み、一気に相手へと吐き出すことができる。
狙うのは彼女の腹部。メイスは咄嗟に手甲で
しかし、私の狙いはそこじゃない。
私は
ダンッという音ともに建物全体が揺れ、地面に衝撃が伝わる。
その衝撃は地面にころがる彼女が落とした
勝負の条件はあくまで武器を手に持つことの禁止。ならば
地面に浮かび上がった
空中で強い力を加えられた
致死性の攻撃を受け呆然とした様子で転移された彼女に、私はVサインを送った。
「いったい、何が……」
「メイスちゃんにメイスちゃんの
呆然と落ちている
「で、なんて言ってくれんだっけ?」
メイスは気まずそうな顔で視線を逸らす。言葉を濁しながら手をもじもじとさせる彼女だったが突如頭を地面に下げる。
「師匠と呼ばせてくださーい!」
それは美しい土下座であり、清々しく気持ちの良い分からせオチだった。
500階層
世界各地にあるゲートからつながる階層であり、初めて攻略された階層。かつては第一階層と呼ばれていた。
ボス討伐後は階層が広がり、ダンジョン内で唯一モンスターがポップしない階層となった。
そのため全域で世界中の企業が拠点を置いており、世界最大級の都市となっている。
ダンジョンの強さの基準であり、この階層から離れれば離れる程モンスターが強くなる傾向がある。
また、かつて人が生活していた形跡が多くあり、一部の書物から言語を解析することができた。
その結果、各階層で描かれている模様の一部が、数字を意味するものであることが分かり、以降第一階層は500階層として呼び方が統一された。