TS転生者によるダンジョン配信攻略記   作:三つ眼の荒木

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【ダンジョンソロ攻略】611階層いくぞ~!Part1【SDS/新垣メイス】

 

「こんザコ~。Super Dungeon Streamers所属の新垣メイスで~す。

 今日もザコ達の代わりにダンジョンを攻略していくよ~」

 

 私は配信魔法のカメラに向かってポーズをとりながら挨拶をする。すると画面内に多くのコメントが表示された。

 

《こんざこ》

《こんざこ》

《今日のメイスの恰好いいな》

《こんざこ》

《装備変えた?》

 

 大量の挨拶の中に聞いて欲しかったコメントが流れた。

 

「気づいた?前回の階層主が落とした鱗から装備を作ってもらったの。いいでしょ」

 

 私は新調した手甲を皆に見せびらかす。

 

 先週の610階層の階層主とはまさに激闘だった。あれを一人でしかも初見で倒せたことは奇跡だと思う。

 

 正直600階層以降は私の実力ではきつい。しかし、今更500番代の攻略をしても誰も見ないし、他の配信者との兼ね合い的にも600番代がベストなのも事実だ。

 

 大量に可愛いというコメントが流れる。その中で私は欲しかったコメントを見つけ出した。

 

《この前も変えてなかった?》

 

 私は待ってましたとばかりに答える。

 

「あれは事務所が作ってくれたやつ!今回は私が個人的に作ったの」

 

《装備ころころ変えるのよくないよ》

 

「いいじゃん。私の自費だし。あ、ニートで自称ハンターのザコ達は簡単に装備変えるのも無理か」

 

《こいつ……》

《わからせてぇ》

《あまり大人をなめるなよ》

《どうせロストする》

《ロストしたとき喪失感えぐいぞ》

 

 はい、これでメスガキノルマクリアっと。

 

 ちょっと視聴者を煽るだけでコメントも盛り上がり、切り抜きもしてもらえるからチョロいものだ。

 ただSDSに所属してからは、コンプラもあって強い言葉は言えないし、視聴者が言葉通りに捉えてプチ炎上するしで少し伸び悩んでいるのが今の悩みだ。

 

 皆、メスガキの嗜みを分かっていないのだ。

 

 もちろん『可愛い』とか『すごい』みたいな無個性コメも重要だ。こういったコメントがメスガキを増長させることで、メスガキが煽ってもいい雰囲気が作られる。

 

 こういう小さな積み重ねで敗北という分からせの深みがます。

 

 メスガキとはドラマなのだ。

 

「生意気だな~。ま、前回階層主を余裕で倒したメイスがこの辺のモンスターにやられるわけないじゃん」

 

 そして次なるドラマの布石を打っておく。

 まぁ今日は装備を新調したばかりなので勘弁して欲しいけど。

 

 

「ほらほら~。早くかかってきなさいよ」

 

 攻略開始から2時間。順調に攻略が進み、道中で出くわしたハイネイルコボルトと私は戦っていた。

 もうすでに3体倒しており、残る数は2体。

 

 その内1体は先ほどから微動だにしないため実質目の前のコボルトとの一対一になっている。

 

 コボルトが長い爪で攻撃してこようとするが、私はバックステップでかわす。

 

「ノロマ、そんな攻撃あたるわけないじゃん」

 

 コボルト、というかモンスターに言葉は通じない。

 しかし、それでも煽るのが私の戦闘スタイルだ。

 

「おりゃ!」

 

 攻撃の隙をつき、メイスでコボルトの左腕を殴りつける。

 コボルトが苦悶の表情とともに雄たけびを上げた。

 

「あれ、攻撃してこないの?」

 

 左腕を抑えながら座り込むコボルトを見下しながら配信魔法のカメラの一つを口元に近づける。

 

「ざ~こ、弱虫、素材にしか価値のないやつ。こんなのうちのザコ達でも狩れちゃうよ」

 

 視聴者サービスに囁きながらメイスを振りかぶり、頭に叩きつけた。

 

「はい、これで終わりっと」

 

《容赦ない》

《結構余裕そうだな》

《あと一匹だし、勝ったな。風呂入ってくる》

 

「最後の一匹かな。ほかのやつらに比べてチビだし、もう楽勝かな」

 

 私は残っているコボルトを見る。

 先ほどまでのコボルトとは違い小さな個体だ。

 600階層では珍しいけどもしかしたら普通のコボルトなのかもしれない。

 

「ねぇ、今どんな気持ち?仲間やられて指くわえて見るしかできなかったのどんな気持ち?」

 

 私は再びメイスを振りかぶり――

 

「これで、終わり!」

 

 ――コボルトの頭を通りすぎた。

 

「へ?」

 

 避けられたのではない。

 メイスがコボルトの頭の位置を通過した。

 

 まるで空気のように当たった感触がなく、私はそのまま体勢を少し崩す。

 

 そして、同時にコボルトの雰囲気が変化する。

 今まで仲間が傷つけられても無表情で動かなかったのに、殴りかかった瞬間牙をむき出しにし唸り声をあげている。

 

 私は再びメイスで殴りつけるがやはり、空を切るのみでコボルトの体を通りすぎた。

 

《どういうこと?》

《とおりすぎた》

《やばい》

《いったん距離取れ》

 

 私はコメントを見ながら距離を取る。コメント欄も困惑しているから普通のモンスターではないのは確実だ。

 

《もしかして霊体(レイス)?》

 

「それだっ!霊体(レイス)なら……聖属性付与(エンチャント)!」

 

 霊体(レイス)というコメントをみて納得する。【物理攻撃無効】のスキル感覚に似ていたからだ。霊体(レイス)の弱点である聖属性をメイスに付与する。

 

「これでどうだっ!」

 

 私は再び振りかぶるが変わることなくコボルトには当たらない。

 

「あれ?」

 

 それどころかコボルトが爪で切りかかってきたため、私は咄嗟にメイスでガードをする。

 

「ちょ、ちょっと!霊体(レイス)には聖属性が効くはずじゃないの!」

 

《効くはず》

《でもコボルトの霊体(レイス)なんて見たことない》

《アンデッドは付近に墓地や死体がないと発生しないはずだから霊体(レイス)じゃない》

《もう一度付与してみたら》

《とりあえず逃げろ》

霊体(レイス)なら魔法攻撃も効くはず》

 

「だったら……炎玉(ファイアボール)雷撃(ライトニング)

 

 覚えている魔法を放つがどちらも通りすぎ、後ろの壁に当たった。

 完全に透過している。

 

「なんでぇ!」

 

 悲鳴にも近い声をあげながら地面に向かって魔法を発動させる。

 

地壁(アースウォール)

 

 突如地面から土と岩でできた壁が出現する。

 

「よし、これでひとまず時間稼ぎ……」

 

 私は逃げようと後ろを振り返ると土の壁が切り裂かれる。そしてコボルトがとびかかって攻撃してきた。

 

「えっと……その、調子に乗ってすみませんでしたぁー!」

 

 私は紙一重で避けると来た道を戻りながら全力で逃げる。

 背後を警戒しながら逃げつつコメントを見て何か攻略の手がかりがないかを探る。

 

《草》

《わからせキターーー!》

《メスガキの謝罪いいね……》

《多分希少(レア)モンスターだろうけど、どんなスキルなんだ》

《コボルトさんやっちゃってくださいww》

 

 あ、駄目だこいつら。

 すっかり敗北ムードだ。

 

「ごめんなさい!煽ってごめんなさい!あ、モンスターの素材あげるから!3割!いや、半分あげるからぁあ!」

 

《これ煽ってるだろ》

《コボルトからしたら仲間の遺品だぞ》

《全部かえせ》

《欲張るな》

《メイスを殺して奪えば全部では?》

 

 全力疾走していると突如背後から何かが通り過ぎる。

 そして目の前にコボルトと何かが着地する。

 

「え、なんで前に」

 

 ぼとっと落ちたものに目を向ける。

 それは腕だった。

 

 コボルトのではない。人間の。

 

「ぎゃーー!!」

 

 私は右腕を確認すると肘より先に腕がついていない。

 そして遅れて痛みがやってきた。

 

「私の腕がーー!」

 

 ダンジョンでは痛覚が鈍化しているため痛みを感じにくくなっている。

 とはいえ、四肢の欠損ほどになるとさすがにかなり痛い。

 

 動けはするが戦闘なんてできないレベルだ。

 一方視聴者というと……

 

《声が汚い》

《本当に自分の腕を切られたらそんな反応するんだww》

《メイス……腕が!》

《安いもんだ。メイスの腕一本くらい……》

 

 あー、死んだなこれ。

 もう誰も私のこと気にしていない。

 

 まぁ、取れ高にはなったし、いっか。明日の切り抜きは『【神回】メイス、コボルトを煽ったのち分からせられるww』かな……

 

「って、やだやだやだ。死にたくない!この装備高かったのに!ロストだけは嫌!ロストだけは嫌!」

 

 ダンジョン内での死は実際の死ではない。

 ダンジョンの入り口で即座に復活するからだ。

 

 しかしその時装備していた武装は戦闘現場に落とされモンスターに奪われる可能性がある。

 

 私はなんとか逃げようとするが、腕を失い重心が変わったことですぐに転んでしまう。

 何も考えられない頭で必死に命乞いをしようとした。

 

「これ高かったんだよ!15万だよ!15万!PS5二個買えちゃうんだよ!こう思うとPS5高いよ!」

 

《草》

《今際の際だぞ。ほかに言うことあるだろ》

《一本腕ないなったからもうPS5一個分しかないぞ》

《PS5そんなにするんだ……》

 

 コボルトが目の前までやってきて私を見下ろす。

 

「誰か……助けて――」

 

 そして爪を大きく振りかぶり私の頭を――

 

 

「第一戦闘者の救助要請を確認」

 

 

 ――切り裂くより前に背後から体を大きく引っ張られ空中を浮く。

 コボルトの爪が目の前で空を切った。

 

 そして3m以上引っ張られた私は再び地面に落ち倒れこんだ。

 何が起こったのか確認しようと周りを見るとすぐそばに誰かが立っている。

 

 その人物は特殊な装備で身を固めていた。

 一瞬警察の特殊部隊かと思わせるような見た目だ。

 

 腕からは金属製の紐?が伸びていて私の体に括り付けられている。

 おそらくこれで私を引っ張ってくれたのだろう。

 

 するとその人物は膝をつきながら私に話しかけてきた。

 

「大丈夫?」

 

 女性の声だ。

 それも多分かなり若いと思う。

 

「あ、その……」

 

 膝をついたのは私に視線を合わせるためなのだろう。

 しかし、フルフェイスのヘルメットからは威圧感しか感じない。

 

「あいつ、倒しちゃっていい?」

 

 彼女は目の前のモンスターを指さす。

 

「あ、はい。どうぞ……」

 

 私は呆然としながらなんとか返す。正直、まだ理解が追い付いていない。

 

「ありがとう。これ、あげる」

 

 そう言うと、一本のポーションを地面に置き彼女は立ち上がる。

 そして、コボルトのほうへと向かって歩いて行った。

 

 

「第一戦闘者による戦闘代行許可を確認。これより戦闘を開始する」

 

 





新垣メイス

Super Dungeon Streamers ストリーマー部門所属

戦略的メスガキ。
とみせかけて煽るのが好きな性格なのでメスガキの才能はある。
元個人勢。メスガキキャラの切り抜きがバズり有名になった。ダンジョン配信企画に招待されSDSの配信者と仲良くなったことで、SDSにスカウトされた。

視聴者の相称はザコ。
煽るときは、安月給社畜呼ばわりすると想像以上に反発を食らいプチ炎上したので、最近はニート兼自称ハンター呼ばわりしている。

武器はメイス。

戦闘スタイルは遠距離は魔法、近距離はメイスのヒット&アウェイで戦う。基本煽りながら戦うので対人戦では相手のミスを誘うこともある。モンスターには特に効果はない。

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