悪虐少女は自由に生きる   作:卓球さん

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こんにちは、暇なのでまた書きました。毎日書いてる人とかすごいなあ


公安の我儘姫

 

 

 

目を覚ますと、白い天井が視界に入った。

…ああ、そうか。ここは病室…公安の管理下にあるであろう病棟。しかし良いベッドなのかよく眠れる。良くしてもらってるし文句は言えないけど、最近病院にばかりいるから頭がおかしくなりそうだ。どうにかならないかな……。

えーっと、今の時刻は7時半。………8時間半眠れたのか

 

体を起こそうとすると、カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。

それにしても……なぜか身体が痛くないな。なんかもう動けそうな感じなんだけど……。あぁ、ヒロアカ世界って医療技術進んでるんだっけか。ヒロアカ世界すげぇぇ……しかしこの感じだとすぐに公安の施設とかに移されてしまいそうだ

 

……やけに静かだな。

 

今までなら、看護師の足音とか、隣の病室の誰かの話し声とかが聞こえてきたのに。

扉の方に目を向けると、黒服の男が二人、無言で立っていた。

 

公安…?

 

昨日までは病室の外に気配があったけど、こんなに堂々と立っているのは初めてだ。

俺を監視する体制が変わったってことだろうか…?

 

「……お姉さんは、来ないの?」

 

何気なく呟いた。

公安の男たちは微かに身じろぎしたが、何も答えない。

 

沈黙。

 

……レディ・ナガンが原作通りに会長を殺したのかな?それでこんなに急に体制が変わったってこと?

 

思い詰めないように慰めたつもりだったんだけど……。裏目に出たのかな?

レディ・ナガンとはもっと仲良くしたかったのに。大人しく10年後を待つしかないのかな……はぁ…

今日起きた時点でここまで体制が変わってるってことは、昨日、ヒーロー公安委員会のトップが殺されたのだろう。まあ俺からすれば悪い話じゃないはず…。こんな有象無象のゴミ2体を配置してるだけってことは公安もそこまで手を回す余裕がないのだろう。その気になったら逃げることはできそうだな

 

それ以降、彼女がどうなったのかはゴミ2体からは聞き出せそうになかった。そのため病室に設置されているテレビをつけてみる。………やってんじゃん。あいつらも驚いた顔をしてあわあわしてる。体制ガバガバすぎない?ふむふむ……ヒーロー殺害の罪になってるな…。あれ?原作でも罪をすり替えたんだっけ??

まあ原作通りならタルタロス行き。しかし私が介入したことで何か変わってることとかあるのだろうか?流石にないとは思うが……

可能性は他にもあるかもしれないけど、今の俺には知る手段がない。分からないものは考えても仕方ない。

それよりも、今は自分の身の振り方を考えないと。

 

ここまで監視されてるとなると…母親とはもう暮らせなさそうかもな

まあそれは全然いいんだけど……

そんなことより公安の管理下に置かれた場合は、自由が制限される…。このままだとホークスと共に公安の駒になる可能性大だ…俺は自由にこの世界を飛び回りたい。まだレディ・ナガン以外の原作キャラにも会ってない。新体制になった今、付け入る隙はあるはずだ。ここは一つ芝居を打つしかないな……。

 

 

 

 

公安の中で監禁されてたら「俺の好きなように生きる」 ことは出来ない

 

 

 

 

 

……………………

 

……………

 

……

 

 

 

その後、色々考えてるうちに病室に母親が来た。

 

「涼子ちゃん……。」

 

泣きはらしたような目をしている。でも、俺の頭を撫でる手は優しい。髪から温かさが伝わってくる。今だけは公安の野郎も空気を読んで、部屋を出ている

 

「……お母さん?」

 

「……ごめんね。」

 

……何となくこうなる気はしていた

 

「涼子ちゃん、お母さんね……あなたのこと、公安の人にお願いしようと思うの……。」

 

声が震えている。心なしか目にも隈がある。きっと母親は水理涼子を愛している。それはこの一身に愛を受けた俺が保証できる。でも、それ以上に怖いんだろう。5歳の娘が人を殺した…しかもあの時は笑っていたはずだ。

あの時の俺の姿を見てしまった以上、「普通の親子」として過ごすのは難しい。

だから、公安に預ける。

母親としては、それが「涼子を守るため」だと思っているんだろう。

 

「……そっかぁ……。」

 

俺はしゅん、と肩を落とす。

 

「お母さんと、一緒にいられないの?」

 

健気な子供を演じる。母親の雰囲気に当てられて少し辛くなる

 

「お母さんが、そうしたいなら……いいよ……。」

 

「……涼子ちゃん……ごめんね……!」

 

母親は俺を抱きしめた。その腕は、少しだけ震えていた。抱きしめられるのはきっとこれで最後だろう。温もりが、母親の暖かさが伝わってくる。なんだか少し寂しくなってくる……。俺はこの子の身体以外に転生できなかったのだろうか。この親子を引き離すのは酷ではないだろうか。いくらなんでも残酷すぎるのではないか??それにこの人は未亡人だ。これからずっと1人で一生を暮らすことになる……。水理涼子がいなくなった後、この人は何を活力に生きていくのだろうか

これでお別れ……

俺は静かに目を閉じる。今までの数少ない思い出が頭を過ぎ去っていく。まともに一緒にいた期間は1週間もないだろう。でもその中には確かに幸せだった記憶もある。思えば、沢山抱きしめられていたと思う。最初からちゃんと向き合えばよかった。適当に返事してたこともあったな…。ずっと怪我の心配をしてくれてたな。ヴィランから守ろうと抱きしめて必死に守ってくれてたな…。考えれば考えるだけ気分が憂鬱になっていく。この人のことを考えてしまう。あぁ…そうか。俺は既にこの母親のことを……

どうして今自覚してしまったんだろう

 

 

 

 

さよなら、お母さん。          

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな悲しいお別れがあった後、何食わぬ顔で公安の2人は入ってきた

なんでテメェらのクソみたいな顔なんか見なきゃいけねぇんだよ。

……くそっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日が経ち、完全に怪我が治った俺は病院から公安専用の施設に移されていた。

俺は沢山監視カメラがある部屋に呼び出され、せっせとソファーの上によじ登っていた。身長が足りない

 

「水理 涼子。」

 

スーツ姿の男が2人、真ん前のソファーに座っている。

 

「君を公安の管理下に置くことが決まった。」

 

やっぱりな。

予想通りだ。レディ・ナガンが公安を裏切った今、俺の扱いは「警戒対象」から「管理対象」に変わる。新たに優秀な駒が欲しいんだろうな。

 

「そっかぁ……。」

 

少しだけ悲しそうな顔をする。

事実こいつらみたいなゴミの管理下に入るなんて嫌だ

 

「ねぇ、おじさん!」

 

「……なんだ?」

 

「わたしね、6歳になったら小学校に行きたいの!」

 

公安の男が少し驚いた顔をする。

 

「……小学校?」

 

「うん! お友達ほしいもん!」

 

満面の笑顔を作る。それでも、お前らなんかとは死んでも仲良くならんぞ

 

「それとね! ひとりぐらししたいの!」

 

公安の男たちは一瞬、顔を見合わせた。

 

「……何を言っている?」

 

「だって! もうお母さんとは暮らせないんでしょ? だったら、おうちもらえなきゃやだ!」

 

ソファーの上に寝転がり足をバタバタさせる。

 

「やだやだやだーーー!!」

 

5歳児の駄々こねムーブ、発動。

これで「子供は話が通じない」と思わせられれば勝ちだ。死んでもお前らなんかとは一緒に住まないからな!!

公安の幹部の1人がため息をつく。

 

「涼子、子供は1人で暮らせないんだよ」

 

「えー? じゃあ、おじさんがパパになってくれるの?」

 

公安モブA「……」

 

「ねぇねぇ、おじさんパパになってくれるの?」

 

公安モブB「…………」

 

「なら、やだ! おうちくれなきゃやだ!!」

 

公安の男どもは、明らかに面倒くさそうな顔をした。

よし、いい感じ。

 

「……どこの小学校に行きたいんだ?」

 

来た。

 

「静岡!!!」

 

即答。

公安の男が目を細める。

 

「……なぜ静岡?」

 

俺はにっこり笑った。

 

「だって! 静岡ってすごいんでしょ? テレビで見たよ! いっぱい自然があって、いいところなんだよね!」

 

子供らしく無邪気に言う。

 

「それに、お母さんも昔ちょっと住んでたって言ってたの!」

 

ここまでなら「子供の憧れ」で通る……はずだ

よく覚えてないけどヒロアカ世界の1年A組は、割と静岡県に住んでる割合が多かった気がしなくもない。だからこその静岡県だ。まあ流石に違う小学校に入るだろうが緑谷たちと会える可能性が高まるならなんでもいい。まあ最悪雄英に入学すれば会えるからな

 

「……考えさせてもらう。」

 

「やったぁ!!!」

 

こうして、俺は公安から「静岡行き」を勝ち取ることに成功した。

ちなみにこの会話をきっかけに公安の我儘姫と裏で呼ばれ始めることになるのだが、それに気がついたのはだいぶ後のことだった

 

 

 

 

 

 

それから俺は自室に戻る。公安の施設に来る際割り当てられたものだ。

公安は俺専用の部屋を用意した。…………そう、5歳の幼女専用部屋を

 

「……何度見ても頭がおかしくなりそうだ」

 

ピンク色の大きなベッド、溢れんばかりの可愛いぬいぐるみ共、壁紙は白く沢山のピンク色の飾りまで付いていやがる。おまけに監視カメラすら可愛くデコってある。まじでどうなってんだよ

 

俺はその趣味の悪いベッドに寝転がる。

寝転がりながら個性について考える。俺の最近のブームだ。

 

『不可能を可能にする』

 

まだヒロアカ世界らしい正式な名前はつけてないが、この個性の特性は分かってきた。俺は銀行強盗犯と戦った時、6つの異なる個性を使った。

 

血液操作

瞬間移動

身体強化

水の生成

水の圧縮

水弾の弾道変化

 

普通、個性は1人1つ。轟みたいに2つ混ざってるのもあるけど基本は1つ。

でも、俺は6種類も使えた。というかおそらく現存する『個性』全て使えそうな感じだ。

俺は緑谷やAFO、脳無と同じ「複数個性持ち」として分類されるのだろう。

だけど、この中で一番近そうなAFOとは決定的な違いがある。たった6回の個性の使用で、俺は戦闘不能になった。というより死にかけてたわけだ。その上アドレナリンが出てなかったらもっと早くリタイアしてた可能性もある。

全身の骨にヒビが入るほどの負荷。

……まさに初期の緑谷と同じだ。まあ身体が幼女な分、木っ端微塵に吹き飛ばなかっただけマシかもな おそらく身体強化は特にダメだ

 

まさに諸刃の剣

この個性を使いこなせなければ、いずれ自滅する。だが使いこなせたとしても寿命は縮むだろう。歴代のOFAは割と早く死んでいた描写があった気がする。おそらく一つの体にいくつもの個性があるのがダメなんだろう。だからこそ、銀行強盗のときのあれはきっととても寿命を削ったはずだ。

それでも俺はこの『個性』で強くならなければならない。強くならなければ雄英に入学できないし、俺の思う「自由」ではなくなってしまう。何にも縛られず、ヒーローでもヴィランでもない…どっちつかずの3つ目として。まあどちらかと言えばヴィランに近いかもしれないが

 

 

そしてこんなに焦って実力を身につけようとしている理由は何よりも…今の状況がかなり不味いからだ。最低限逃げる個性だけでも鍛えないと。この世界には悪の帝王がいる。俺みたいなパチモンとは違って正真正銘のバケモノ…そう、AFOだ。既に俺は4人も殺した上公安に預かられてる。AFOの情報収集力を考えたら既に私のことを知っていてもおかしくはない。「僕のヒーローアカデミア」でも底が知れないバケモノだった。その上今は原作から10年前………つまりOFAとの決戦の前だ。何が言いたいかわかるだろう?そうだ、一切弱体化してないんだ。おそらく今の俺では寿命全てをかけても倒せないだろう。だが、無理矢理接触してくるようなやつでもない。少しずつ力を蓄えて、AFOですら迂闊に近づけないようなバケモノになるしか道はない気がする。本当に神奈川で力を出してしまったことが悔やまれる

 

 

 

あぁ、それと公安についた嘘のおかげで水の個性は訓練場で教官に鍛えられている。駒にする気まんまんでアホみてぇだな。そんなことはともかく嬉しい誤算があり、水の個性だけはどうやら特別みたいで代償が少ないっぽい。沢山使っても気絶するだけで済んだ。その後怒られたけど……。水の個性だと公安には嘘をついたがこの分だとあまり嘘とも言えないかもしれない。とはいえ教官が見ている状況で全力を出すわけにもいかないので全力では試してない。もっと強く個性を使いたいし、他の種類も試してみたい。

 

 

 

 

そうだ、俺には"ひとり暮らし"という切り札がある。きっと多少の監視はあるだろうが、流石に隙はあるはず。

 

 

 

 

 

俺は、未来を想像して静かに笑った。

 

 

 

 

 

 

 




涼子ちゃんの母親は黒髪ロングです。黒髪ロングっていいよね
気分が乗れば続きます
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